2022年3月、複数人の株主・企業とリ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)とによるナガホリの株式大量買付けが判明しました。
その後、ナガホリは買収防衛策に当たる共同協調行為等認定基準を制定し、買収を阻止したのです。この件は、その前年に起きた三ツ星事件と類似しているため、2つの事例は比べられることが多くあります。
この記事では、リ・ジェネレーション側とナガホリ側それぞれの視点を紹介し、ナガホリ側の買収防衛策である共同協調行為等認定基準について詳しく解説します。
目次
リ・ジェネレーション株式会社によるナガホリ買収騒動
2022年3月、リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)とマイルストーンマネジメント株式会社の他、ナガホリの複数の株主らがナガホリの株式を共同で大量に買い付けていることがわかりました。この行為に対して、ナガホリは、自社が買収されるのではないかと考え、買収防衛策を施行しました。
リ・ジェネレーション側とナガホリ側はお互いに質問状とそれに対する回答状の送付を幾度も実施し、リ・ジェネレーション側が損害賠償請求訴訟を検討したり、株主名簿閲覧謄写仮処分命令を申立てしたりと大きな騒動となりました。
騒動の時系列と経緯
まずは、騒動を時系列で見てみましょう。
2022年3月 | リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)やナガホリの株主がほぼ同時にナガホリの株式を買い始める |
2022年4月 | リ・ジェネレーションが純投資を目的とし、株式大量保有報告書を提出 |
2022年4月 | リ・ジェネレーションにナガホリが2度の質問状を送付する |
2022年4月 | ナガホリが買収防衛策のため取締役会で独立委員会を設置する |
2022年5月 | リ・ジェネレーション側が質問状に遅延して回答、ナガホリの買取行為を否定 |
2022年6月 | 何度かのやり取りの後、リ・ジェネレーション側がナガホリの書面に記載された内容が名誉毀損になるとして、損害賠償請求訴訟を提出 |
2022年6月 | ナガホリの取締役会と株主総会で収防衛策が可決される |
2022年8月 | マイルストーンマネジメント株式会社が、ナガホリの株式を大規模に買付けた旨の通知書と証明書を送付。女性の積極的な役員登用を理由に代表の島﨑紀子をナガホリの役員として提案する。 |
2022年8月 | ナガホリがマイルストーンマネジメント株式会社に対してリ・ジェネレーション側と連携があるとし、情報提供の要請 |
2022年8月 | リ・ジェネレーション側はマイルストーンマネジメント株式会社とは無関係であると回答 |
2022年9月 | ナガホリの独立委員会が「共同協調行為等認定基準」を制定 |
2022年10月 | マイルストーンマネジメント株式会社がナガホリの株式大量買付けを撤回する |
2022年10月 | リ・ジェネレーション側がナガホリの株式を速やかに売却すると記載した書面を送付すると同時に、今回の件で風量被害を受けており名誉毀損で損害賠償の請求訴訟を検討していることを表明。 |
2022年11月 | ナガホリの独立委員会は買収防衛策の中止を公表したが、その後、株式の不自然な高騰を発表。 |
2022年11月 | リ・ジェネレーション側に臨時株主総会の招集を請求するがナガホリ側がこれを拒否。 |
2022年12月 | リ・ジェネレーションがナガホリを相手方に東京地裁に株主名簿閲覧謄写仮処分命令の申立てをする |
騒動によるナガホリの対応
ナガホリ側は買収を阻止するべく、取締役会と株主総会において買収防衛策の基本方針を決定しました。
そして、リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)と共同していると疑われる複数の株主とマイルストーンマネジメント株式会社の株式購入履歴を調査し、これらの企業や人物がほぼ同時期に株式を大量に購入していることを公表し、これに対し全面的に対抗する意思を表明しました。
ナガホリ側はリ・ジェネレーション側が株式大量保有報告書の提出を大幅に遅延していることと、株式大量保有についての理由を一切公表していない点を強く指摘し、金融商品取引法に違反していると言及しました。
そして、リ・ジェネレーション側を株式購入の非適格者と認定し、独立委員会を設置してこの件に関して情報提供を求めました。
出典:リ・ジェネレーション株式会社らによる当社株式を対象とする買集め行為を踏まえた当社株式の大規模買付行為等への対応方針について|株式会社ナガホリ
騒動によるリ・ジェネレーションの主張
対して、リ・ジェネレーション側はどのような主張をしているのでしょうか?
リ・ジェネレーション(Re Generation)は、共同で株式を購入しているというナガホリ側の主張に対抗するとともに、以下のことを主張しています。
- ナガホリの業績低迷のため全取締役6名の解任を要求
- 女性役員の登用
- 2022年6月に株主総会で可決された買収防衛策は経営陣の保身にすぎず、企業の抑制となる
- ナガホリの子会社「仲庭時計店」で起きた従業員の盗難・横領を隠蔽したことに対する役員の善管注意義務違反
これらを理由に2022年12月に臨時株主総会の招集を請求しましたが、ナガホリ側はそれを拒否し、リ・ジェネレーションはそれを強く批判する声明を発表しました。
出典:株主の皆様へ|リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)代表取締役 尾端友成
三ツ星事件から施行された共同協調行為等認定基準とは?
では、共同協調行為等認定基準とはいったいどのような基準なのでしょうか?
「共同協調行為」とはある企業や個人が関係を持ち、共同でその行為をしていることを指します。ナガホリ側は、今回のリ・ジェネレーション株式会社とマイルストーンマネジメント株式会社の同時期の大量株式買付は、共同協調行為にあるとし、「非適格者」として認定しました。
そして「共同協調行為等認定基準」を設けることで、それを阻止する防衛策を取ります。
共同協調行為等認定基準は、「非適格者」や「共同協調行為」を認定するための客観的な基準として制定されます。そして、非適格者に認定された企業(個人)は、その企業の株式を購入できなくなるのです。
- 非適格者の対象を決定する際には以下の内容が基準となります。
- 対象会社の株式取得の時期に関する事柄
- 買収者との共同協調行為の有無
- 買収者との関係性
- 対象会社への権利施行について
- 双方のアドバイザーとの関係について
- 意思の連絡の有無
これらの事項について問題や不正がある際には、共同協調行為等認定基準として公表することができます。
三ツ星事件とは?
この「共同協調行為等認定基準」は今回のナガホリの件の前年、三ツ星の株式をアダージキャピタルと複数の株主が共同行為により買い増しし、三ツ星がその買収防衛策として新株予約権無償割当ての差止めの許可抗告の申し立てた事件です。
結果は、最高裁において三ツ星の許可抗告が棄却されてしまいます。そのため、三ツ星は独立委員会の設置後、対抗措置を発動し、アダージキャピタルと一部の株主を非適格者として認定。これに合わせて裁判所に、先の新株予約権無償割当ての差止めの仮処分に対して異議申し立てをしました。
その後、最高裁で本件新株予約権無償割当てについて仮処分命令の申立てを認める決定が下され、株主の意思確認総会でも新株予約権無償割当ての決議が実施、多数の可決によりアダージキャピタルの保有株式は減少しました。
この事件は、今回のナガホリの件と類似していることから、共同協調行為等認定基準が再注目されました。
株式会社ナガホリとリ・ジェネレーション株式会社の会社概要
最後に株式会社ナガホリとリ・ジェネレーション株式会社双方の会社概要について確認しておきましょう。
株式会社ナガホリの会社概要
名称 | 株式会社 ナガホリ NAGAHORI CORPORATION |
設立 | 1962年6月 |
株式上場 | 東証スタンダード市場 |
代表者 | 代表取締役社長 長堀 慶太(2008年6月26日就任) |
所在地 | 〒110-8546 東京都台東区上野1丁目15番3号 |
資本金 | 53億2,396万円 |
年商 | 単体:78億4,466万円 連結:169億2,701万円(2022年3月期) |
従業員数 | 単体:314名 連結:527名(2022年3月末現在) |
事業内容 | 宝石・真珠・貴金属製品の輸出入、製造加工、国内・国外販売 |
取引銀行 | りそな銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、常陽銀行、北陸銀行 |
株式会社ナガホリは、宝石やジュエリーの企画・販売を手掛ける会社です。日本国内だけでなく、海外にも販売経路を持っています。
リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)の会社概要
社名 | リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation) |
代表取締役 | 尾端友成 |
住所 | 東京都港区芝5-13-13 サダカタビル5F |
電話番号 | 03-6809-5650 |
事業内容 | 物品の販売 情報通信並びにインターネット関連事業 広告代理店業 経営全般に関するコンサルティング 投資業 前略号に付帯する一切の業務 |
出典:COMPANY|リ・ジェネレーション株式会社(Re Generation)
公式ホームページを見ると、今回のナガホリの件に関する事柄が多く登載されています。
ナガホリとリ・ジェネレーション、今後の動向に注目
今回の記事では、リ・ジェネレーション株式会社による株式会社ナガホリの買収騒動とこれに対するナガホリの買収防衛策について時系列と双方の主張について解説しました。
また、この騒動は同じ年2022年に起きた三ツ星事件と類似していることから、この件で取り上げられた「共同協調行為等認定基準」が再注目されました。
リ・ジェネレーションによるナガホリの買収騒動は未だ終結しておらず、今後の双方の動きを注視していく必要があるでしょう。
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