世間をにぎわせているZホールディングスと、LINE、Yahoo!の3社合併。2019年、既に経営統合しているLINE、Yahoo!がさらに今回は、ZHDを含め合併をしたのにはどのような意図があるのでしょうか。
今回の記事はLINE、Yahoo!の経営統合から始まった3社の歴史とその関係性、M&Aにおける経営統合と合併の違いについて触れながら解説していきます。
目次
LINE・Yahoo!・ZHDの合併
2023年2月、ZHD(Zホールディングス)と、LINE、Yahoo!の3社の合併が発表されました。取締役会の決議によると2023年度中に詳細を固めて実施されるとのことです。
ZHDは2019年に現行の持ち株式会社になりました。その中核を担う完全子会社のLINEとYahoo!は2019年に経営統合して、シナジー効果を発揮させようとしていました。
今回の合併では、以下のことを目指すとされています。
- LINEとYahoo!が進めていたシナジー効果のさらなる加速
- 現在のZHDの複雑な企業体制を整える
- 持続的な成長と資源の確保
合併と経営統合の違い
今回、既に経営統合をしている企業が合併するということに焦点があたっていますが、合併と経営統合の違いはどこにあるのでしょうか。
合併と経営統合は両者ともに、M&Aの手法の1つです。その中でも明確な違いは、法人格が維持されるのかどうかという点にあります。
経営統合は、それぞれの法人格が維持されます。それだけでなく、企業体制や人事制度等の維持も可能です。従業員に混乱を与えることなく、緩やかな協力体制を築くことができます。
しかし、デメリットとして思うようなシナジー効果が発揮されなかったり、無駄なコストが発生してしまう恐れがあったりします。
合併は、該当する企業が1つの法人にまとまり、企業体制の整備や修復を目的として選択されることが一般的です。そして、M&Aの中で合併が選択されるのはシナジー効果が大きいと判断された場合が多いでしょう。
3社の合併で今後なくなるサービスはあるのか?
現時点で合併に関する詳細は未定とされてる部分が多くありますが、3社に既存している10個程度のサービスを閉鎖したり、統合したりして新たな体制を整えていく方針となっています。
具体的に公表されている事例では、「Yahoo!占い」が「LINE占い」に吸収され、「PayPayモール」は「Yahoo!ショッピング」に吸収されます。そして、「Yahoo!チケット」や「Yahoo!副業」は閉鎖が発表されています。「PayPay」と「LINE Pay」、「PayPay銀行」と現在、設立準備中の「LINEバンク」については明確には言及されていません。
LINEとYahoo!は2019年に経営統合していた
そもそも、LINEは2021年に株式公開買付けによりZHDに吸収合併されて完全子会社となっています。その際に、ZHDの中核で同じく完全子会社であるYahoo!と協力して「コマース」や「ローカル・バーティカル」、「Fintech」、「社会」を中心領域に定めて事業を拡大していくとされていました。
両社は既に、日本国内では個人だけでなく、行政サービスや自治体などでも取り入れられる重要な社会的なインフラになりつつあります。
このように大きな影響力を持つ2社が合併したことにより、さらなる大きな期待が高まり、一部ではGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に対抗するためではないかともささやかれていました。
そして今後は、両社でユーザーを抱え込み、アジアでの事業拡大を目指すこと掲げていました。
LINEとYahoo!の経営統合のシナジー効果は?
LINEとYahoo!は同じ分野のサービスがいくつかあります。例えば「LINEニュースと」と「Yahoo!ニュース」、「LINE Pay」と「PayPay」などです。
会社が経営統合をすることにより、これらサービスを総合的に自由に使用できるようになりました。そして、相互的に両社のサービスにユーザーを誘い込み、お互いの顧客を誘導し合えるシナジー効果があります。
一般消費者に身近な例として「PayPay」と「LINE Pay」の連携があります。「PayPay」の使える店舗では、QRコードを読むだけでLINE Payも同じように使えるようになったことは記憶に新しいでしょう。
その他にも、Yahoo!から提供された災害情報をLINEで配信したり、「Yahoo! JAPAN」のトップページから「LINE MUSIC」に遷移したり、ZHDの子会社である出前館に導線を作れるようになったりなどの事例があります。
ZHD・LINE・Yahoo!の経営統合や合併までの歴史
次に、ZHD・LINE・Yahoo!それぞれの会社形態や事業内容についてと、3社の関係性について確認してみましょう。
ZHD(Zホールディングス)の企業内容と事業内容
ZHDは「ソフトバンクグループ」の連結子会社で、親会社が「ソフトバンクグループ」ということになります。筆頭株主は「Aホールディングス株式会社」で同社は、「ソフトバンク株式会社」と韓国に本社を置く企業「株式会社NAVER(ネイバー)」による合弁会社です。
社名をZHD(Zホールディングス)に改名する前は「株式会社Yahoo!(初代)」でした。2019年、同社の再編成に伴い、金融系の企業統括を「Zファイナンシャル株式会社」へ分割。残った経営管理事業を統括することとなり、社名を「Zホールディングス株式会社」に変更しました。
現在の「株式会社Yahoo!」はそのあとに誕生した二代目ということとなります。
主なグループ会社には「株式会社ZOZO」や「アスクル」、ホテルやレストランのインターネット予約サイト「株式会社一休」など、私たちも知っている企業が多くあります。
LINEの企業内容と事業内容
「株式会社LINE」はコミュニケーションアプリ「LINE」を中心にインターネット関連の事業を展開する企業です。
元々は、韓国最大のインターネット会社「NAVER(ネイバー)」が運営する「バンゲーム」の日本拠点設立に伴い、2000年に日本での運営会社「バンゲームジャパン」を設立したところから始まります。
その後、2010年に「livedoor(ライブドア)」が全株式を取得し「NHN Japan」への社名を変更しました。そのため、現在でも出澤剛代表取締役を始めとする元ライブドアの従業員が多く在籍してる経緯があります。
こうした中で、サービスを開始したのがLINEアプリです。LINEは爆発なヒットを果たし、ネイバーグループ全体の総売上でも30%以上を締めるほどでした。
その後、2013年には会社名を「株式会社LINE」に変更します。
Yahoo!の企業内容と事業内容
Yahoo!は、「Yahoo! JAPAN」などのポータルサイトを運営する日本のインターネット企業です。サイト内広告やオークション事業などを収入源としています。もともとは、1996年にアメリカのインターネット企業「Ziff Davis」の傘下であった「米Yahoo!」と「ソフトバンク」の合弁でヤフー株式会社が作られました。
2017年に、アメリカのヤフーは他社に買収されましたが、日本のヤフーはその影響を受けず、国内で「アルタバ」を設立。翌年の2018年に、「ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)」が全株式を買収まし、米ヤフーとの関係はなくなりました。
その後、ZHDの章でも紹介した通り、2019年の再編成により、現在のYahoo!は初代Yahoo!とは別会社で、二代目のYahoo!ということになります。
3社合併までの歴史
2019年、Yahoo!とLINEは経営統合しました。その後、ZHDを含む3社が合併という形を取りましたが、これまでの歴史からYahoo!とZHDは元々同じ組織であったことがわかります。
また、2019年12月ZHDとLINE株式会社は、それぞれの親会社である「ソフトバンク株式会社」及び「NAVER Corporation」を含む4社間で経営統合を実現するための資本提携を結びしました。
そして今回、2023年2月に新体制である3社合併が発表されたのです。結果として、今回の3社合併が大きく報道されていますが、それ以前からこの3社の関係が深かったことがわかります。
出典:経営統合に関する最終合意の締結について|Zホールディングス株式会社
LINE Yahoo! 経営統合を経ての3社合併。今後さらに企業力が拡大する
今回の記事では、LINEとYahoo!による2019年の経営統合を中心に、これまでの両社の歴史や、関わりのある会社などについて紹介しました。
そして、2023年にZHDを含めた3社が合併したことで、企業体制が整理されて意思決定が迅速化します。そして、シナジー効果の拡大で企業力はさらに拡大することが予測されます。
今後、合併が完了して3社が協力することで、日本を代表するインターネット企業としてだけでなく国外でも影響力を持つ企業にもなり得るかもしれません。
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