近年、注目を集めるM&Aのイグジット。
イグジットとは、株式を売却することで利益を得て、投資資金を回収する手法です。
M&Aのイグジットは、ベンチャー企業の戦略や事業再生の場で活用されています。
この記事では、イグジットの意味や種類、メリットをわかりやすく解説。
ベンチャー企業がおさえるべきイグジット戦略や成功のポイントとあわせて紹介します。
目次
- 1 イグジットとは
- 2 イグジットするための会社の売却方法と戦略
- 3 M&Aでイグジットするメリット・デメリット
- 4 M&Aのメリットは時間短縮と高確率な成功
- 5 M&Aのデメリットは経営権の失効
- 6 IPOでイグジットするメリット・デメリット
- 7 IPOのメリットは経営権の保持と社会的信用
- 8 IPOのデメリットは費用と時間
- 9 MBOでイグジットするメリット・デメリット
- 10 MBOのメリットは経営権の一致
- 11 MBOのデメリットは株主との対立の恐れ・上場の廃止
- 12 イグジットを成功させるためのポイント
- 13 利益を出せる企業を目指す
- 14 選択の幅を広げておく
- 15 事前にゴールを定めて計画を立てる
- 16 ベンチャー企業のイグジット戦略、50%以上の株式取得がポイント
- 17 イグジットは戦略的な経営がポイント
- 18 イグジットで大切なのはM&Aの時期
- 19 イグジット戦略で攻めの「M&A」を実施しよう
イグジットとは
イグジットとは、会社を売却することを指します。詳しくは、経営者が保持していた株式を手放し、経営から退くことです。
最近ではベンチャー企業の戦略としても注目されています。株式を売却して利益を得ることで投資資金を回収する戦略的な手法です。
直訳で「出口」という意味があることから投資の出口とも言われることもあります。
ベンチャー企業はファンドに出資してもらい、資金を回収し新たな経営の運転資金にします。
出資を望むベンチャー企業は起業前からイグジットを意識した戦略が必要なのです。
イグジットをする時期はいつ頃なのか、創始者や出資者へのリターンはどの程度なのか、具体的に事業計画書に盛り込むとよいでしょう。
イグジットを前提とした事業計画を作ることで関係するメンバーへのモチベーションアップを図れます。
ベンチャー企業やスタートアップ企業が戦略として目指すイグジット。
どのような種類やメリットがあるのでしょうか?
次の項で詳しく解説します。
イグジットするための会社の売却方法と戦略
イグジットはM&A・IPO・MBOの3つに分かれます。
その内、頻繁に使われるのはM&AとIPOにより会社売却をする手法です。
IPOは新規株式公開と呼ばれ従来のイグジットの主流となる手法でした。
アメリカでは元々M&Aによる会社売却が盛んでしたが、日本では「身売り」や「大企業買収された」などマイナスなイメージがあるため敬遠されてきました。
日本では以前まで、M&Aは会社売却により企業や事業を譲渡する意味として認知・実行されていましたが、現在では日本でも会社売却や買収だけでなく、戦略的な面でも使われるようになりました。
次の項でそれぞれのイグジットの手法やメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
M&Aでイグジットするメリット・デメリット
M&Aは会社や事業を他の企業に売却する手法です。
株式譲渡や事業承継などがあり、売り手企業と買い手企業の話し合いにより、会社の譲渡額や承継後の統合方法を決定します。
売り手企業は売却益としての資産を得られ、会社の利益になります。
現従業員の雇用も大抵の場合は継続されます。
オーナーが自分の退職のためにM&Aをして事業を承継する場合は、売却益の一部を退職金として受け取れます。
買い手企業は、買収により自社と売り手企業の長所を生かしたシナジー効果を得ることで、利益増大や事業拡大・新製品の開発を進めることができます。
M&Aのメリットは時間短縮と高確率な成功
M&Aによるイグジットのメリットは短時間で完結できる点です。
買い手企業が売却価格に了承すればM&A成立でイグジットの成功と言えるでしょう。
最近では市場の流行やサイクルが短期化しています。
イグジットが長期化すると、その分だけ現実できないリスクも高まります。
そのため、短かい時間・高い確率で成立するM&Aのイグジットは相性が良く、主流になりました。
M&Aでは企業価値も評価として盛り込み売却価格を決定します。
たとえ現在赤字だったとしても、将来性やシナジー効果が認められる場合、イグジットとして成立する可能性があるためです。
無形資産や優秀な人材、将来性が見込めるのなら、是非M&Aによるイグジットを検討してみると良いでしょう。
M&Aのデメリットは経営権の失効
おすすめ度の高いM&Aによるイグジットですがデメリットもあるため注意しましょう。
M&Aは一般的に、事業を承継する手法であるため、成立後の経営権は相手企業に譲渡されます。
経営者としての権限はほとんどなくなってしまうと考えた方がいいでしょう。
またIPOのイグジットと比べて簡単に進められるため、利益率が低いこともデメリットのひとつ。
特に会社の利益が出ていない状態で譲渡すると売却額も低くなります。
IPOでイグジットするメリット・デメリット
IPOによるイグジットは、限定された範囲内で所有されていた株式を市場に流通させます。
会社を上場させ、株価が一気に上昇したタイミングで自社の株を売却し利益を得る手法です。
上場することは、誰もがその会社の株式を買えると言うことになります。
そのため、株主総会や決算説明会などを開催し、企業情報を公開する義務があります。
上場した企業は、会社の知名度や社会的信用を上げ、資金調達が可能になります。
IPOのメリットは経営権の保持と社会的信用
IPOでは株式を全て売却するわけではなく、一部は自分の手元に残すため、経営者はイグジットの後も継続して経営に携れます。
上場で会社の経営や地位を上昇させたことにより、更なる成長につなげられます。
経営そのものにやりがいを感じている方におすすめの手法です。
会社を上場させるため、社会的信用を得られ、新株発行や銀行からの融資など、資金調達がしやすくなります。
M&Aと比べて、多額の利益を得ることができるのもメリットのひとつと言えるでしょう。
IPOのデメリットは費用と時間
IPOはM&Aと比べると膨大な費用と時間を要します。
IPOでは監査を受けますが、そのためには純資産や利益額などに条件があります。
上場後も、証券会社や東京証券取引所に支払う維持費がかかります。
株主総会の人件費などを含む開催費用は安く見積もっても年間1億円程度のコストが必要でしょう。
そのため最近ではIPOよりもM&Aが主流になってきています。
MBOでイグジットするメリット・デメリット
MBOは経営陣が自社株式を回収する手法のイグジットです。
第三者が所有する株式を自社の経営陣が買い取ることで、上場している企業は非上場になります。
株式の所有者と経営者を一致させることで、経営の迅速化を計ります。
オーナーが親会社から自社株式を買い取ることで経営権をオーナー自身に移す方法も考えられるでしょう。
MBOのメリットは経営権の一致
経営が現場にいるオーナーになることで意思決定が自由になります。
経営をスムーズに進めることができ、そこで働く従業員の理解も得やすいでしょう。
第三者が経営者の場合、従業員の理解を得ることは難しく不満が生まれやすい状況です。
経営者がオーナー自身になると従業員も安心して働けるため、モチベーションアップにもつながります。
また経営陣ではない外部の多数の人が株式を所有している場合、株主達は短期的な利益を求めます。
そのため、長期的な経営計画を立てにくい傾向に。
経営陣が自社の株式を買い取ることにより長期的な目線で経営戦略を立てられます。
MBOのデメリットは株主との対立の恐れ・上場の廃止
MBOで経営陣が自社株式を買い取る場合、なるべく安い値段での買取りを考えます。
対照的に株主は、できるだけ高い値段で株式を売却したいと考えるでしょう。
既存の株主との対立が生まれやすくなるので注意が必要です。
また、MBOをすると上場が廃止されます。
上場廃止で銀行などの融資が難しくなり、資金調達が苦しくなる恐れがあるため注意しましょう。
イグジットを成功させるためのポイント
次にイグジットを成功させるためのポイントについて解説します。イグジットを成功させる上で重要なのは以下の3点です。
- 利益を出せる企業を目指す
- 選択の幅を広げておく
- 事前にゴールを定めて計画を立てる
1つずつ詳しく見ていきましょう。
利益を出せる企業を目指す
イグジットを成功させるためには、実行前に会社として利益を出しておくことが必要です。利益を出し、コストの管理を徹底しておくことで企業価値を高めることに注視しましょう。
また、自社の強みと弱みを把握し、競合他社に対抗できる体力をつけることも大切です。
それにより、より良い条件でイグジットを成功させることができます。
選択の幅を広げておく
先の章でイグジットの3つの手法(M&A・IPO・MBO)について解説しました。これらのどの手法かを始めに決定してしまうのではなく、どの手法でも実行できるよう準備しておくことをおすすめします。
主な手法であるM&A・IPOだけでなくMBOや2段階イグジットもあります。
2段階イグジットとは、上場していない企業が第一段階はM&Aとして上場企業である大企業の傘下に入り、その後IPOを目指すイグジットの手法です。
さまざまな方法を視野に入れてみることで選択肢の幅が広がりイグジットの成功へとつながるでしょう。
事前にゴールを定めて計画を立てる
イグジットでは事前にゴールを定めて計画を立てることも重要です。選択肢の幅を広げながらゴールの計画を立てるのは難しいことですが、いくつかの道筋を立ててゴールを設定することをおすすめします。
1つ1つに対して、時期や経営権のあり方、獲得するべき利益など具体的な計画を立てて、自分の理想に合う手法を選ぶことが重要です。
ベンチャー企業のイグジット戦略、50%以上の株式取得がポイント
多くの企業はイグジットを考える際、IPOかM&Aの手法を検討することになるでしょう。
従来の日本では多くのベンチャー企業がIPOでのイグジットを目指していました。
これは前述の通り、M&Aにマイナスなイメージを持つ人が多くいたためです。
しかし近年ではM&Aを肯定的に考える人が増え、ベンチャー企業の戦略や企業再生の場面でも使われるようになりました。
そこには日銀の超低金利政策が影響しています。
買い手企業への金利が低くなり、新規事業をするよりも既存の事業を買収する企業が増えました。
新規事業を立ち上げるよりも、迅速かつコストを抑えて事業展開できるためです。
ベンチャー企業がM&Aで戦略的にイグジットをする場合、株式の50%がポイントになります。
株式を50%以上取得した時点で経営権はその人(会社)に移動するためです。
次の項でM&Aのイグジットについて、ポイントや重要な点を紹介します。
イグジットは戦略的な経営がポイント
M&Aによるイグジットを視野に入れる場合、自社の価値を客観的に判断する視点が必要です。
経営者は自社を過剰判断してしまう傾向があるため、第三者である専門家に依頼して自社を分析してもらうのもおすすめです。
他社に売却を考える場合のポイントは以下の3点があります。
- 創業者がいなくても事業を継続できるか
- キャッシュフローが黒字であるかどうか
- シナジー効果を提案できる力があるか
会社や事業をスタートさせた時点で、上記のポイントを意識しながら経営を進めましょう。
次第と、買いたいと名乗り出てくれる企業や投資家が増えていくはずです。
このように、より良いM&Aのイグジットを成功させるには、入念な準備が欠かせません。
イグジットで大切なのはM&Aの時期
ベンチャーがM&Aによるイグジットをする場合、最も大切なことはタイミングです。
高額なM&Aの時期を見極めることが重要になります。
高額なM&Aが成功しやすい時期は以下の4点です。
- 景気が良く投資家や海底企業が楽観的な時
- 金利が低い時
- 自社の市場に対する期待が大きい時
- 競合他社がM&Aを頻繁に行っている時
タイミングを逃すと買い手企業が限定され、売却額も下がってしまいます。
よいタイミングで売却できるよう、情報収集をしましょう。
イグジット戦略で攻めの「M&A」を実施しよう
今回はイグジットについて解説しました。
株式を売却して利益を得ることにより投資資金を回収するイグジットの中で主流なのはM&Aのイグジットです。
M&Aのイグジットは比較的短期で完結できるため、流行が短サイクルな現代に合った手法です。
M&Aは戦略的に進めることでマイナスなものではなく、攻めの戦略になります。
専門知識を持った第三者企業に依頼することでより良い結果になるでしょう。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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