M&Aは、大企業にだけ関係があるものだという印象がありませんか?
中小企業の経営手法で、今注目を浴びているのがM&Aです。
近年、中小企業においても、会社の課題解決のためにM&Aを行う企業が増えてきています。
そこで、今回はM&Aにおけるシナジー効果について紹介します。
M&Aの成果に直結する、シナジー効果を起こせるかどうかが企業の発展の鍵です。
目次
- 1 M&A成功の鍵、シナジー効果とは?
- 2 売り手企業に起こるシナジー効果
- 3 買い手企業に起こるシナジー効果
- 4 シナジー効果の起きやすい相手企業
- 5 M&Aのシナジー効果、5つの種類とは?
- 6 1.販売シナジー
- 7 2.生産シナジー
- 8 3.投資シナジー
- 9 4.経営シナジー
- 10 5.負のシナジー
- 11 M&Aでシナジー効果を高めるためには?
- 12 アンゾフの成長マトリックス
- 13 内部リソース
- 14 外部リソース
- 15 シナジー効果を正しく算出する方法とは?
- 16 シナジー効果の算出
- 17 シナジー効果とM&Aの取引価格
- 18 M&Aシナジー効果の「成功事例」
- 19 JT(日本たばこ産業株式会社)のM&Aの成功に学ぶ
- 20 シナジー効果を最大限発揮するためには、信頼できるM&A専門家に依頼しよう
M&A成功の鍵、シナジー効果とは?
シナジー効果とは、日本語では相乗効果といいます。
M&Aで、複数の企業が1つになることによって、得られる効果の事を指します。
まずは、M&Aを行う売り手企業、買い手企業の目線から、シナジー効果について見ていきましょう。
売り手企業に起こるシナジー効果
売り手企業にとって、M&Aが成立した時点で以下のようなメリットを受けることが出来ます。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用を守る
- 経営資金や創業者利益の確保
- 経営者の個人保証の消滅、減少
また売り手企業は、上記のメリット以外にもM&Aのケースによって、シナジー効果が起きます。
シナジー効果が起きる一例は、売り手企業が、大手企業に買収された場合です。
売り手企業は大手企業のブランド力を得ることや、買い手企業から技術力やノウハウを得ることで、売り上げを伸ばすことが出来ます。
買い手企業に起こるシナジー効果
買い手企業は、M&Aを行う上でシナジー効果を起こすことが重要です。
買い手企業に起こるシナジー効果は多く、売り手企業と買い手企業の利益の単純な和ではなく、1+1=2以上の成果を出すことが期待できます。
例えば、資本力・ブランド力の向上による売り上げの増加や、開発から生産、販売までを手広く行えれば時間コスト、費用コストを削減し効率よく経営をすることができます。
シナジー効果の起きやすい相手企業
シナジー効果を起こしやすくするためには、買い手企業が重要です。
M&Aを行う前に買い手企業が、どのようなシナジー効果を求めているのかを明確にしていることで、シナジー効果を大きくすることが出来ます。
例えば、買い手企業が技術力や研究部門でシナジー効果を求めるのであれば、売り手企業は同業種で技術力が高い企業であれば、求めているシナジー効果が起きやすくなります。
また、買い手企業が新規参入したい部門があれば、売り手企業は、新規参入する部門の企業であることが重要です。
どのような企業同士であっても、シナジー効果を起こすことは可能です。
しかし、買い手企業は、どの部門に力を入れたいのかを明確にしていることでシナジー効果をより大きくすることが出来ます。
M&Aのシナジー効果、5つの種類とは?
M&Aで起こるシナジー効果は、5つに分類することが出来ます。
5つの種類を、各種類ごとに紹介していきます。
1.販売シナジー
販売シナジーとは、企業の売り上げにシナジー効果が起きることです。
買い手企業にとっては、売り手企業の販路獲得により、新しい地域での販路の開拓を行うことが出来ます。
また、売り手企業にとっては、買い手企業のブランド力により新商品の信頼を担保することが出来るため、販売しやすくなります。
買い手企業、売り手企業ともに、M&Aによる相乗効果が起きると売り上げも自ずと伸びていきます。
2.生産シナジー
生産シナジーとは、生産面にシナジー効果が起きることです。
買い手企業と売り手企業の設備を共有することで、生産コストを抑えて効率よく生産を行うことが出来ます。
また、人員や設備の確保が出来るため、製品の大量生産も可能です。
大量生産を行うことのメリットは次の2つです。
- 商品の数が増えるため、売り上げの最大値を上げることが出来る。
- 仕入れの量も増えるため、仕入れ先との価格交渉でコストを下げやすくなる。
生産シナジーは、販売シナジーと並び企業の利益に直結するシナジー効果になっています。
3.投資シナジー
投資シナジーは、研究開発や新規事業への投資面にシナジー効果が起きることです。
研究開発は、金銭的にも時間的にもコストがかかる分野です。
同業種の高い技術力のある企業同士がM&Aを行うことで、研究開発の成果が加速・投資シナジーは起こる可能性が高くなります。
また、研究開発と製品開発にそれぞれ特化した企業でも、同様にシナジー効果が起きる可能性は高くなります。
4.経営シナジー
経営シナジーは、経営面にシナジー効果が起きることです。
買い手企業と売り手企業のそれぞれのノウハウがを共有することで、経営も上手くいく可能性が高くなります。
経営シナジーでは、同業種よりも異業種の方が、より効果が大きくなる傾向にあります。
例えば、買い手企業が新規参入したい部門の売り手企業とM&Aを行うことで、必要なノウハウを獲得することです。
これにより、新規参入のリスクを大きく削減することが出来ます。
5.負のシナジー
負のシナジーとは、マイナスの効果を生むことです。
ディスナジーやアナジーといいます。
主な負のシナジーは次の3つです。
- 買い手企業と売り手企業の企業間のルールに違いにより、コストが余計にかかる
- 取引先との関係が悪くなる
- 企業の規模が大きくなることで行政支援の制限を受ける
近年では、負のシナジーは異業種とのM&Aで起きやすいとされています。
また、負のシナジーを回避する代表的な方法には、特定の事業に専念する「ピュアカンパニー」という方法があります。
M&Aでシナジー効果を高めるためには?
シナジー効果を高めるためには、戦略的にM&Aを行うことが大切です。
M&Aを戦略的に行うための3つの要素を紹介します。
アンゾフの成長マトリックス
アンゾフの成長マトリックスとは、イゴール・アンゾフ氏によって提唱された経営指針です。
アンゾフの成長マトリックスでは、事業の成長を「製品」と「市場」の2軸におき、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分けて4つの企業の成長戦略を表しています。
4つの企業の成長戦略とは、「市場浸透」、「製品開発」、「新市場開発」、「多角化」です。
アンゾフの成長マトリックスは、以下のような表になります。
それぞれの企業戦略を行う上で、おすすめするM&A相手企業の特徴は以下です。
- 市場浸透 → 【同業種】企業の規模を拡大し、売り上げの拡大、コスト削減を狙う
- 新市場開発→ 【同業種】買い手企業が持っていない販路や、地域、事業によって収益を上げる
- 製品開発 → 【同業種・異業種】新製品を開発するための、製品開発力の向上を狙う
- 多角化 → 【異業種】新たな参入先のノウハウを持つ企業によって、リスクを削減する
内部リソース
内部ソースとは、M&Aを行う上で売り手企業の所有物です。
売り手企業の内部リソースである、「人」「所有地」「資本」。
この3つの要素で、シナジー効果が起きるのかを考える必要があります。
「人」「所有地」「資本」の3つの要素について解説していきます。
「人」とは、企業で働く人の職業であり、人数です。
どのような部門があって、どのような仕事をしているのか、業種・規模感からM&A後にシナジー効果が起きるのか検討します。
「所有地」とは、企業の持っている土地です。
買い手企業の参入したい地域で、売り手企業が根付いているのかは、シナジー効果が起きやすいかにおいて重要です。
「資本」とは、「お金」のことを指します。
企業の資金力は、投資をするうえでも重要です。
外部リソース
外部ソースとは、M&Aを行う上で売り手企業の外部との繋がりです。
売り手企業の外部リソースである、「顧客基盤」、「仕入れ先」。
この2つの要素で、シナジー効果が起きるのかを考える必要があります。
「顧客基盤」、「仕入れ先」の2つの要素について解説していきます。
「顧客基盤」とは、売り手企業の販売先と、共同で開発している企業について、調べることです。
「仕入れ先」とは、製品を作っている会社であれば、商品をどこで買っているのかを確認し、もし買い手企業と同じ場所から仕入れていれば、コスト削減につながります。
シナジー効果を高めるためには、買い手企業は、方針を固め、売り手企業の内部リソース、外部リソースからシナジー効果を予想することが重要です。
シナジー効果を正しく算出する方法とは?
M&Aとは、企業にとって大きな決断ではないでしょうか?
そのため、正しく成果を判定することが重要です。
シナジー効果の正しく算出する方法を紹介します
シナジー効果の算出
シナジー効果の算出方法は次の式になります。
- M&Aにより増加した利益=M&A後の利益ーM&A以前のそれぞれの企業の利益
- M&Aにかかった費用=買収価格ーM&A以前の売り手企業の利益
- M&Aによるシナジー効果=M&Aにより増加した利益ーM&Aにかかった費用
①と②で求めた金額を③の式に代入をして、シナジー効果を算出します。
③の答えが、プラスであればシナジー効果は起きているということになります。
シナジー効果とM&Aの取引価格
M&Aを行う場合に、シナジー効果を含めて金額を決めるのかどうかは明確に決まっていません。
シナジー効果は、不透明な部分が多く、取引価格にシナジー効果を含めないことが多いです。
M&Aシナジー効果の「成功事例」
M&Aによってシナジー効果が起き、成功されている企業があります。
企業の成功からM&Aのシナジー効果について学びましょう。
JT(日本たばこ産業株式会社)のM&Aの成功に学ぶ
JTは、海外企業とのM&Aを行うことにより、たばこの世界シェアを拡大しました。
海外企業とのM&Aを行う前に、JTでは多角化を目的に国内で多くの事業とM&Aを行っていましたが、結果的に上手くいかず撤退をしてきた過去があります。
そこでJTは、自社の強みである「たばこ産業」に専念し、国外での販売に乗り出していきます。
海外の企業とのM&Aは、イギリスのマンチェスター・タバコを皮切りにRJRナビスコの海外たばこ事業やギャラハーの買収など各国のたばこ事業の買収を積み重ねていきます。
結果的にJTは、世界でも上位のシェアを誇る企業になりました。
JTの成功には、シナジー効果が最も大きく起きる自社の強みを生かした、新市場開拓に絞って動き出したところにあると思います。
シナジー効果を最大限発揮するためには、信頼できるM&A専門家に依頼しよう
シナジー効果について紹介しました。
シナジー効果とは、M&Aを行う時点では不透明なことが多いです。
そのため、M&Aの専門家に依頼することで、シナジー効果をふまえたM&A戦略を立てることが重要です。
M&Aの経験が少ない企業では、多くの事例をもとに専門家とM&Aを行うことが、M&A後のシナジー効果を最大限に生かすことに繋がります。
また、IT分野でM&Aを行う場合には、パラダイムシフトのようにIT分野を専門的に行っているM&A会社に依頼してみてはいかがでしょうか。
IT分野に関わらず、各分野で専門的にM&Aを行っている企業があります。
買い手企業、売り手企業だけでなく、M&Aをサポートする企業が間に入ることで、後のシナジー効果も最大限に発揮することができます。