M&Aは重要な経営戦略の一つです。
譲渡企業にとっては事業承継や不採算事業からの撤退、資金の確保という観点から有力な選択肢です。
譲受企業にとっては新規事業への参入や事業の多角化など今後の経営に活かすことができます。
M&A実行にあたって最初のステップが取引相手の選定です。
譲受企業や譲渡企業をスムーズに見つけることによって、円滑にM&Aを進めることができます。
この記事ではM&Aマッチングサービスの概要や、メリット・デメリット、どのようなマッチングサービスを利用すればよいのかについて解説します。
目次
- 1 M&Aのマッチング
- 2 M&Aマッチングサービスとは
- 3 M&Aマッチングサービスの3つのメリット
- 4 M&Aマッチングサービスのメリット1.多くの会社にアプローチできる
- 5 M&Aマッチングサービスのメリット2.直接コンタクトできる
- 6 M&Aマッチングサービスのメリット3.利用料が安価である
- 7 M&Aマッチングサービスの3つのデメリット
- 8 M&Aマッチングサービスのデメリット1.情報拡散リスク
- 9 M&Aマッチングサービスのデメリット2.相手が見つかるまで時間が必要
- 10 M&Aマッチングサービス利用のデメリット3.M&Aのサポートが不足
- 11 M&Aマッチングサービスの種類
- 12 種類1.M&Aマッチング業者
- 13 種類2.顧問税理士
- 14 種類3.商工会議所などの商工団体
- 15 種類5.金融機関
- 16 M&A専門家にマッチングの相談をしよう
M&Aのマッチング
M&Aは、譲渡企業や譲受企業双方にとってメリットの大きい取引です。
しかし、最近では中小企業庁が「中小M&Aハンドブック」を策定するなど、中小企業の事業承継手段として注目されています。
中小企業のM&Aのニーズが年々増加している中で、よい買い手や売り手を見つけることが最も重要。
M&Aの成否はマッチングがカギを握ると言っても過言ではありません。
そのような中で譲渡企業と譲受企業のニーズをプラットフォームに登録し、双方のマッチングを目的としたマッチングサイトも増えています。
M&Aマッチングサービスとは
M&Aのマッチングサービスとは、マッチングサイトに会員登録をすることで事業の売却を検討している譲渡企業と事業の買収を希望する譲受企業のニーズを閲覧し、気になる企業にアプローチすることができるプラットフォームです。
中小企業のM&Aに対するニーズが増加する中でM&Aのマッチングサービスは進化を進めており、少ないコストでマッチングサイトを利用することができるようになっています。
M&Aの取引相手が見つからない企業にとって、M&Aマッチングサイトは心強いサービスです。
M&Aマッチングサービスの3つのメリット
M&A取引を進める上で、M&Aのマッチングサイトを利用するメリットとは何でしょうか?
具体的なメリットは以下です。
- 多くの会社にアプローチできる
- 直接コンタクトできる
- 利用料が安価である
自社単独でM&Aの取引相手を見つけるよりもM&Aのマッチングサイトを利用することで上記のようなメリットがあります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
M&Aマッチングサービスのメリット1.多くの会社にアプローチできる
M&Aのマッチングサイトが登場する以前は、多くの企業は単独でM&Aの取引相手を探す必要がありました。
取引先に適当な取引相手がいればいいですが、そうではない場合は莫大なコストと労力をかけて取引相手を探す必要がありました。
また、投資銀行や証券会社など取引のある金融機関から紹介を受けることもできますが、紹介される企業の数にも限界があります。
しかし、M&Aのマッチングサービスには多くの譲受企業が自由にアクセスできるため、効率的に取引先を見つけることができます。
単独で探すよりも遥かに多くの企業にアプローチでき、取引先を探すコストも大幅に下げることが可能です。
人的リソースに限界のある中小企業でも手軽に相手を探すことができます。
情報開示の点で注意すべき課題もありますが、多くの候補先から最適な条件の相手を探すことが出来るのは大きなメリットです。
M&Aマッチングサービスのメリット2.直接コンタクトできる
M&Aのマッチングサービスを利用することで自社で直接相手企業にコンタクトを取ることができます。
M&Aの仲介会社などに依頼すると売り手や買い手を紹介してくれますが、仲介会社を通して相手方とコミュニケーションを取ることに成ってしまい、伝言ゲームに陥ってしまいます。
しかし、M&Aのマッチングサービスならば希望条件を入力して、条件に合う企業に対して直接メッセージを送ることが可能です。
M&Aの仲介会社のスキルや能力に左右されず、連絡したい事項をありのままに伝えることが可能です。
匿名を維持したまま相手企業に直接アピールし、M&A交渉に要する時間や手間が削減できます。
M&Aマッチングサービスには連絡を取る手段がシステム化されているため、マッチングのメッセージのやり取りもスムーズに進みます。
M&Aマッチングサービスのメリット3.利用料が安価である
M&Aの仲介会社やサポート会社を利用する場合には登録料やシステムの利用料、成功報酬などが掛かることがよくあります。
特に成功報酬は高額になることもあり、資金に余裕のない中小企業にとっては経営負担になる可能性もあります。
しかし、M&Aのマッチングサービスを利用すれば、登録料が無料で、譲渡企業は成功報酬も不要というケースも珍しくありません。
たとえ、費用がかかったとしても仲介会社に依頼するよりは遥かに安く済みます。
資金力のない中小企業であっても低コストで効率的に多くの企業にアプローチできる点は魅力的です。
M&Aマッチングサービスの3つのデメリット
M&A取引を進めるにあたり、M&Aマッチングサイトを利用する具体的なデメリットは以下です。
- 情報拡散リスク
- 相手が見つかるまで時間が必要
- M&Aのサポートが不足
M&Aのマッチングサービスは、自力で取引相手を見つける人的リソースが不足している場合や、資金力のない中小企業にとっては魅力的なサービスです。
しかし、デメリットがないというわけではありません。
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
M&Aマッチングサービスのデメリット1.情報拡散リスク
M&Aのマッチングサービスを利用する場合に最も気になるのが情報拡散のリスクです。
M&Aは自社の従業員や取引先、金融機関などの利害関係者に影響を与えるため、情報管理を徹底する必要があります。
マッチングサービスを利用し、自社の企業概要を掲載する場合には企業名を特定できない形で概要情報をまとめた「ノンネームシート」を掲載するのが一般的です。
しかし、マッチングサービスの会員であれば、誰でもノンネームシートを確認できるため、企業概要から企業名を特定されるリスクがあります。
自社の従業員や取引先などを含む不特定多数の人に自社情報が閲覧可能な状態となり、買い手を探していることが筒抜けになってしまうかもしれません。
情報の拡散を制限することはほとんど不可能なため、マッチングサービスを利用する場合は情報のリスクを考慮に入れておきましょう。
M&Aマッチングサービスのデメリット2.相手が見つかるまで時間が必要
M&Aのマッチングサービスを利用する場合は仲介会社などから候補先を紹介される手法に比べて長期戦となる覚悟が必要です。
ノンネームシートに掲載する情報は一般的な情報のみのため、掲載内容が曖昧であり、買い手の関心を引くことが難しいという難点があります。
その一方で、公開する情報量を増やそうとするほど情報漏洩のリスクが高まるというジレンマがあります。
売り手側の方からメッセージを送ることができるマッチングサービスもありますが、M&Aは買い手の立場が有利ですので、レスポンスが期待できない場合もあります。
自社に関心を持ってくれる企業が存在するのかわからないまま、掲載情報を常に最新のものに更新し、送信するメッセージを工夫するなど地道な作業が必要になります。
M&Aマッチングサービス利用のデメリット3.M&Aのサポートが不足
M&Aのマッチングサービスは利用料金が安い反面、候補先の選定や交渉のプロセスは自己責任であり、専門家のサポートが不足することが一般的です。
M&Aは複雑なスキームを活用したり、煩雑な契約書を締結するなど専門家のサポートがあったほうが効率的に進みますが、マッチングサービスからの手厚い支援を期待することは難しいでしょう。
コストとサポートの質はトレードオフの関係にあり、誰でも手軽に利用できる反面、複雑な作業を自社で行う必要があります。
なかにはM&Aのサポートを受けられるサイトもありますが、関与が一切ない場合のほうが多いようです。
M&Aマッチングサービスの種類
M&Aのマッチングサービスを利用したい場合には、どのように調べれば良いのでしょうか。
ここでは、M&Aのマッチングサービスを提供している機関やサービスについて解説します。
それぞれの特徴を押さえて、自社にとって最適なマッチングサービスについて考えてみましょう。
種類1.M&Aマッチング業者
M&Aのマッチングサービスというと真っ先に思いつくのがM&Aのマッチング業者かもしれません。
インターネットで「M&Aマッチングサービス」などと検索すれば、多くのマッチングサービスがヒットします。
それぞれ得意とする企業規模や業種などが異なるため、自社の特徴にあったマッチング業者を選ぶことができます。
手軽に利用でき、手数料も安いというメリットがある一方で、手厚いサポートが受けられないというデメリットもあります。
種類2.顧問税理士
M&Aのマッチングを依頼する相手としてまず最初に思いつくのが、顧問税理士かもしれません。
財務内容に精通している専任の税理士がいればまず最初に相談する相手になるでしょう。
中小企業の場合は財務や経理をすべて税理士に委任していることも珍しくありません。
日頃から相談している相手がいれば事業承継についても話しやすいはずです。
税理士は複数の企業の税務や財務を担当していることが一般的なため、担当先の企業を紹介してもらえる可能性があります。
一方で、税理士はあくまで「税金のプロ」であって、M&Aの専門家ではありません。
そのため、税理士に聞いても紹介先が見つからなかったり、納得できる答えを得られないことも多々あります。
種類3.商工会議所などの商工団体
商工会議所とは非営利の経済団体であり、商工会議所法に基づき、地域経済の発展や地域の企業の発展のために一定地域の商工業者によって組織される公益経済団体です。
会員制の組織であり、全国に500以上の拠点を持っています。
地域の個人事業者や中小企業に対して、経営相談などにも乗っており、M&Aに関してもアドバイスをもらえる可能性があります。
また、依頼すれば、会員の企業をM&Aの取引先から紹介してくれることもあるそうです。
一方で、M&Aマッチングを事業としていないため、マッチング機能が充実しているとは言えません。
種類5.金融機関
ここでいう金融機関とは主に銀行のことです。
銀行といえば「融資」というイメージがあるかもしれませんが、実はメガバンクではM&Aや事業承継に力を入れています。
銀行は多くの企業と取引があるため、銀行の取引先のなかから最適なM&A取引先を紹介してくれる可能性があります。
また、メガバンクはフィナンシャルグループとして内部に銀行やM&A専門部署、FPも在籍していますので、親族承継・従業員承継・M&Aなど様々な選択肢を提示してくれます。
一方で、メガバンクの場合は相談料が高く、規模の小さい中小企業には大きな出費となることもあります。
また、銀行員はあくまで自分たちの利益のために動きますから、手数料のかかる選択肢を勧められる可能性も否定できません。
M&A専門家にマッチングの相談をしよう
M&Aマッチングサービスにはデメリットや注意点もありますが、人的リソースや資金力が限定されている中小企業にとっては心強い味方です。
一方で、マッチング機能に特化しており、専門家から手厚いサポートを受けられないことが注意です。
したがって、M&Aに関して専門家のサポートが欲しい場合は、専門家に相談することをおすすめします。