「建設業のM&A動向を知りたい」
「建設業のM&Aにはどのようなメリットがあるんだろう?」
建設業のM&Aをご検討中の方は、上記のようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
本記事では、建設業のM&A動向をお伝えしつつ、価格相場・M&Aのメリットについて紹介します。
目次
- 1 【2022年】建設業のM&A動向
- 2 建設業界の現状
- 3 建設業界が抱える課題
- 4 建設業界では課題解決に向けたM&Aが増加
- 5 建設業のM&A価格相場
- 6 建設業がM&Aを行うメリット
- 7 売り手企業のメリット
- 8 後継者問題の解決
- 9 倒産や廃業を回避
- 10 後継者問題の解決
- 11 売却益の獲得
- 12 買い手企業のメリット
- 13 事業規模の拡大
- 14 スケールメリットの享受
- 15 建設業M&Aの売り手が注意すべき2つのポイント
- 16 ポイント1.請負中案件の引き継ぎ
- 17 ポイント2.建設業許可の引き継ぎ
- 18 建設業企業を買収する際に確認すべき3つのポイント
- 19 ポイント1.取得可能な権利・資格の確認
- 20 ポイント2.取引先・関連企業との関係性
- 21 ポイント3.潜在的リスクの有無
- 22 専門家のサポートのもと建設業M&Aを成功させよう
【2022年】建設業のM&A動向
建設業は、数ある業種の中でもとりわけM&Aが活発におこなわれる業界です。
人手不足や経営層の高齢化など、さまざまな理由からM&Aを実施する企業が増加しています。
本章では、建設業界の現状と課題を踏まえ、M&A動向について紹介します。
建設業界の現状
国土交通省が発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、建設業界の市場規模は1976年から1992年にかけて大幅に拡大。
ピーク時の1992年には市場規模が約84兆円を超え、過去最大となりました。
ただその後は、景気悪化に伴う工事の減少で市場規模が縮小し、2010年には、約42兆円でピーク時の半分にまで縮小しました。
また、近年にかけては震災の復興需要や民間需要の拡大に伴い、56兆円(2020年)にまで回復しています。
建設業界が抱える課題
昨今の建設業界では、主に下記2つの課題が深刻化しています。
- 人手不足
- 就業者の高齢化
1996年には、685万人だった建設業界の就業者人口ですが、2020年には492万人にまで減少しました。
過酷な労働環境や賃金水準の低さなどが、就業者人口減少の要因とされています。
また、少子高齢化の影響もあり、建設業界における就業者の高齢化が顕著です。
建設業界では、全就業者のうち3割以上が55歳以上、29歳以下は約1割程度にとどまっています。
こうした課題は慢性化しつつあり、次世代への技術継承が大きな課題とされています。
建設業界では課題解決に向けたM&Aが増加
建設業界では、先に述べた課題の解決に向けたM&Aが増加しています。
代表的な例を挙げると、後継者不在を理由としたM&Aや、人的資源の最適化を目的としたM&Aなどです。
一方、買い手としても、若手従業員の確保や技術承継などが課題となっており、経営資源の1つであるヒトを目的としたM&Aが増加しています。
また、建設業界では、1つの建設案件を複数の会社で分業するケースが数多く見られます。
自社事業と隣接する業種が多いため、シナジー効果を獲得しやすい点も、M&Aが活発におこなわれる一つの要因です。
建設業のM&A価格相場
一般的に、M&A価格に相場は存在しません。
というのも、M&Aの取引価格は、対象企業の収益性・経営資源、技術力に加え、買い手企業が得られるシナジーを総合的に考慮して算出されるためです。
たとえ同じ会社を売却する場合でも、取引する買い手企業によって、取引価格に大きな差が生じるのです。
ただし建設業は、発注者が国や地方自治体である場合も多いため、会社ごとの技術・ノウハウの差が少ない傾向があります。
したがって、IT業界やサービス業界と比較すると、M&Aの売却価格が安定しているといえます。
あくまで参考ですが、M&Aマッチングサービスでは、下記の希望価格でM&A取引が提示されていました。
A社 | B社 | |
売上高 | 約5億円 | 約1億4千万円 |
営業利益 | 約1,500万円 | 約1,700万円 |
従業員 | 10~20名 | 5~9名 |
譲渡希望価格 | 2億円 | 3,800万円 |
建設業がM&Aを行うメリット
建設業がM&Aを行うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
本章では、売り手企業・買い手企業双方の視点から期待できるメリットを紹介します。
売り手企業のメリット
M&Aにより、売り手企業が得られるメリットは、下記の4つが挙げられます。
- 後継者問題の解決
- 倒産や廃業を回避
- 従業員の雇用安定
- 売却益の獲得
後継者問題の解決
ひとつ目のメリットは、後継者問題の解決です。
先述のとおり、建設業では人手不足や高齢化が慢性化しており、後継者不在によって事業を存続できない企業が増加しています。
ただし、会社を廃業すると、これまで頑張ってくれた従業員や長い付き合いのある取引先へ大きな影響を及ぼす恐れがあります。
そこで注目されているのが、M&Aです。
会社をそのままの形で残しつつ、経営権のみを譲渡できるため、後継者問題解決の手段として用いられています。
倒産や廃業を回避
倒産や廃業を回避するために、M&Aを実行するのもひとつの手です。
会社を廃業するにあたり、負債がある場合は、返済義務が生じるケースもあります。
たとえば、金融機関から融資を受ける際、代表者が個人保証人になっている場合は、廃業後も負債を返済しなければなりません。
M&Aで会社を譲渡できれば、負債の返済義務を負わずに済みます。
また、会社の廃業には手間とコストがかかるため、これらを回避するための手段としてM&Aは有効です。
後継者問題の解決
M&Aは従業員の雇用維持・継続の観点でも有効な手段です。
一般的なM&Aでは、従業員の雇用を継続する主旨が契約に盛り込まれます。
そのため、当事者が合意する場合、会社を売却した後も雇用を引き継ぐことができ、従業員を失業させずにすみます。
売却益の獲得
M&Aを行う最大のメリットは、売却益の獲得です。
M&Aで会社を売却すると、まとまった資金を獲得できる可能性があります。
ある程度の会社規模ともなれば、売却益が数億円になるケースもあるでしょう。
買い手企業のメリット
M&Aにより、買い手企業が得られるメリットは下記の2つです。
- 事業規模の拡大
- スケールメリットの享受
事業規模の拡大
建設業では、権利・資格の影響で事業が細かく細分化されています。
そのため、一部の業務を外注するケースも多いでしょう。
M&Aでは、対象企業が有する権利・資格も承継できるため、従来外注化していた業務を内製化できたり、新たな事業へ参入できたりと事業規模拡大に効果的です。
また、新天地へ0から事業を拡大する場合、業界特有の商習慣により思うように進まないこともあるでしょう。
しかし、M&Aでは既存の会社を買収できるため、短期間での事業拡大を実現できます。
スケールメリットの享受
M&Aで会社を買収した場合、さまざまな場面でスケールメリットを享受できます。
たとえば、資材を調達する際、大量に発注をかけることで単価交渉を優位に進められるでしょう。
また、人員が増加することで、複数の案件を並行して受注できるなど、会社の売上増加も期待できます。
建設業M&Aの売り手が注意すべき2つのポイント
M&Aで建設業企業を売却する場合、下記の2点に注意が必要です。
- 請負中案件の引き継ぎ
- 建設業許可の引き継ぎ
上記のポイントは、M&A後トラブルにつながる恐れがあるため、ぜひ参考にしてください。
ポイント1.請負中案件の引き継ぎ
1つ目のポイントは、請負中の案件を買い手企業に引き継ぐことです。
M&Aを開始する段階で、全ての案件を完了している状態が望ましいですが、場合によっては進行中の案件を抱えたまま取引に臨むケースもあるでしょう。
この場合、買い手企業が案件を引き継げるのかどうかを確認しなければなりません。
また、案件にかかる費用負担や報酬の受け取り手など、細かな内容についても買い手企業と話し合いましょう。
万が一、引き継ぎ作業に失敗すると、M&A後に案件が打ち切られ、取引先や買い手企業から損害賠償を請求される恐れがあります。
こうしたトラブルを避けるためにも、進行中の案件について当事者間で話し合うことが大切です。
ポイント2.建設業許可の引き継ぎ
2つ目のポイントは、建設業許可の引き継ぎです。
建設業許可の引き継ぎ可否は、M&Aの取引内容によって異なります。
株式譲渡によるM&Aの場合、会社が丸ごと承継されるため、建設業許可も買い手企業へ移転します。
しかし、一部の事業のみを切り出して承継する事業譲渡では、建設業許可が買い手企業へ移転しません。
建設業許可を取得するには、最大で4か月ほどかかるため、空白期間に不利益が生じる恐れがあります。
そのため、M&Aの交渉段階で、建設業許可の引き継ぎ可否を話し合っておくと良いでしょう。
建設業企業を買収する際に確認すべき3つのポイント
一方、建設業企業を買収する際にも、気をつけなければならないポイントがあります。
- 取得可能な権利・視覚の確認
- 取引先・関連企業との関係性を把握
- 潜在的リスクの有無を確認
上記3つのポイントを順に紹介します。
ポイント1.取得可能な権利・資格の確認
1つ目のポイントは、M&Aにより取得可能な権利・資格を確認することです。
建設業は、保有する資格によって施工可能な作業が異なります。
そのため、対象企業の買収でどのような資格を獲得でき、どのような施工が可能なのかを把握することが重要です。
通常、権利・資格に関する調査は、法務デューデリジェンスの一環として行います。
ただし、売却企業の中には、有資格者の不在による更新の停止や労災事故など自社にとって不都合な情報を積極的に開示しない会社も存在します。
法務デューデリジェンスは限られた時間内で、多くの情報を引き出す必要があるため、万全の準備を整えておくと良いでしょう。
ポイント2.取引先・関連企業との関係性
2つ目のポイントは、取引先・関連企業との関係性確認です。
建設業は歴史ある業界のため、横のつながりが強く、合理性のみならず関係性を重視する傾向があります。
中には、経営者の人間関係で成り立っている会社も存在するため、周辺企業の調査が不可欠です。
また、M&A直後は有資格者の引き抜きや契約の売り切りなどの被害を受けるケースもあるようです。
特に、他業種から建設業へ参入する場合は、業界の商習慣を把握した人材を起用しておくと良いでしょう。
ポイント3.潜在的リスクの有無
3つ目のポイントは、潜在的リスクの有無を把握することです。
潜在的リスクは、現状明るみに出ていないものの、顕在化した際会社へ大きな損害を及ぼすおそれがあります。
たとえば、架空の売上を計上し、利益を水増しする粉飾決算や、貸借対照表に記載がない簿外債務などです。
いずれも、M&A後に顕在化することで、罰則や損害賠償など、買い手企業へ大きな損害をもたらします。
建設業は、中小企業が多いこともあり、こうした潜在的リスクが多い業種と言われています。
M&Aを進める際には、専門家のサポートのもと適切なデューデリジェンスを実施することが重要です。
専門家のサポートのもと建設業M&Aを成功させよう
この記事では、建設業のM&A動向をお伝えしつつ、価格相場・M&Aのメリットについて紹介しました。
建設業は、市場規模が縮小していることもあり、競争力効果に向けたM&Aが活発化しています。
しかし、建設業のM&Aでは、資格や許認可などの法的知識が求められます。
自社での実施が難しい場合は、専門家によるサポートを受けると良いでしょう。