M&A市場に大きな衝撃をもたらした、2006年10月のGoogleにおけるYouTube買収。10年以上経った現在でも世界のM&Aの歴史を語るのに欠かせない案件です。
その理由の一つは、買収金額が16.5億ドル(約2000億円)と高額だったためです。当時スタートアップ企業だったYouTubeへなぜこんなにも高額の金額を出したのでしょうか?
今回の記事では、GoogleにおけるYouTubeの買収について、詳しい背景やその目的、シナジー効果について解説します。
目次
GoogleによるYouTubeのM&A
まずは概要について、詳しく見ていきましょう。
2006年10月、Googleはスタートアップ企業であったYouTubeを16.5億ドル(約2000億円)で買収すると発表しました。手法は株式譲渡です。当時は動画共有サービスに注目が集まっており、Googleの他にもYahooやMicrosoft、News Corpなどの大手通信企業もYouTubeの買収を狙っていたため、買収額が大幅に引き上がったと言われています。
Googleの背景
Google主な収益は、GoogleAdSense(グーグルアドセンス)とGoogleAdWords(グーグルアドワーズ)の2つです。
GoogleAdSenseは、所有するコンテンツ内にコードを貼り付けることで広告が表示されて、クリックされると報酬がもらえる仕組みです。GoogleAdWordsは、広告主に向けた広告出稿サービスです。
Googleのアカウントを持つ無料ユーザーの行動パターンや傾向、検索履歴を提供することで、広告主はターゲットを絞った効果的な広告を打つことができます。
Googleは、これらのビジネスを展開する中で、新たな広告媒体を探していました。そこで注目したのが動画での広告配信でした。
YouTubeの背景
2000年当時、動画市場が急激に成長しました。その中でも、YouTubeのシェア率は、圧倒的でしたが、資金調達が追いついていないという問題がありました。
さらに、著作権の問題でコンテンツクリエーターから訴訟される可能性も抱えていました。もし訴訟に敗れてしまえば、多額の賠償金を支払うことになります。
これらの問題を抱えながら企業活動をしていくには、企業規模が足りていなかったと言ってもようでしょう。
GoogleがYouTubeを買収した目的とは
GoogleがYouTubeを買収した目的は、大きく2つあります。
- 動画配信市場の市場独占のため
- 競争力を向上させる
動画配信市場は、当時、YouTubeが40%以上を独占していました。GoogleもGoogleVideoというサービスを提供していましたが、シェア率は10%程度と決して多いものではありませんでした。
YouTubeを買収することで50%以上の独有率を獲得して、動画配信市場を独占する狙いがありました。
そして、検索エンジンからの広告収入だけでなく、新たな層のユーザーを取り込み企業全体の競争力を向上させる狙いがあったとも言われています。
YouTubeが買収に応じた理由
当時、事業拡大を図っていたYouTubeですが、前述のとおり十分な資金力の問題と著作権侵害による訴訟の懸念などがありました。そこで、安定したキャッシュフローや企業として大きな交渉力を持つのGoogleの力をたよりにして買収に応じたといわれています。
それにより、YouTubeは技術開発や向上に力を入れられるようになりました。
GoogleのYouTube買収におけるシナジー効果
次に、GoogleがYouTubeを買収することによって起こるシナジー効果について考えてみます。
- 売上げの増加
- コスト削減
- 市場規模の拡大
シナジー効果は以上の3つです。1つずつ詳しく見ていきましょう。
売上げの増加
YouTubeは、動画配信市場で最も売り上げの多いサービスです。Googleは、このYouTubeを取り込むことにより売り上げの増加につながると考えました。
コスト削減
広告サービスを主軸とするGoogle、動画配信サービスを主軸としているYouTube、双方ともに、インターネットビジネスを主軸としているため、通信速度の改善が必要です。
両者の人材や技術力で研究開発をすることにより大きくコスト削減できます。
市場規模の拡大
Googleの買収の目的でも取り上げたように、YouTubeを買収することで動画配信サービスの市場を独占することができます。実際に、Googleのビデオ検索サービスで検索すると、表示されるほとんどの動画がYouTubeであることからもよくわかります。
GoogleのYouTube買収は歴史的なM&Aだった
今回の記事では、GoogleにおけるYouTubeの買収について、その背景や双方の目的とシナジー効果について考えてみました。
このM&Aは、数あるGoogleのM&Aの中でも最高額の案件です。
新たな広告媒体を求めていたGoogleと、企業力としての資金力や訴訟に対する交渉力を求めていたYouTube。両者の希望が合致してYouTubeがGoogleの売却に応じる形となりました。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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