「固定資産を売却したら、消費税はどうなるの?」「売却益が出た場合、消費税の計算方法がわからない…」と悩んでいませんか?
固定資産の売却益と消費税の関係は、事業形態を問わず理解を深めるのは難しいものです。
特に、簡易課税と一般課税の違いや、土地・建物・機械など売却する資産の種類によって消費税の取り扱いが変わるため、正しい知識は必須。
本記事では、固定資産売却益と消費税の関係を基礎から解説します。
事業形態に応じた消費税の計算方法や、売却する資産別の固定資産売却益と消費税の関係も、あわせてご覧ください。
なお、本記事で解説する内容に該当しないケースがあるため、税務処理は必要に応じて税理士をはじめとした専門家への相談をおすすめします。
目次
- 1 【基礎】固定資産売却益と消費税の関係
- 2 固定資産売却益とは
- 3 消費税がかかる売却とかからない売却
- 4 簡易課税と一般課税の違い
- 5 【個人事業主】固定資産売却時の消費税計算方法
- 6 簡易課税の場合の消費税計算方法
- 7 一般課税の場合の消費税計算方法
- 8 売却益が生じた場合の消費税
- 9 【法人】固定資産売却と消費税の計上・納付・税務調査対策
- 10 固定資産売却益の計上方法
- 11 消費税の申告と納付
- 12 税務調査対策
- 13 【ケース別】固定資産売却と消費税
- 14 ケース1:土地を売却した場合
- 15 ケース2:建物を売却した場合
- 16 ケース3:機械を売却した場合
- 17 固定資産売却益と消費税の理解がスムーズな売却につながる
【基礎】固定資産売却益と消費税の関係
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固定資産売却益と消費税の関係は複雑です。
そして、複雑さゆえに基礎知識を理解することが大切です。
本章では、固定資産売却益と消費税の基礎知識を解説します。
固定資産売却益とは
固定資産売却益とは、土地・建物・機械装置などの固定資産を売却した際に、売却価格から取得原価と減価償却費を差し引いた残りの利益です。
この利益に対して、消費税の課税の有無や計算方法が適用されます。
消費税がかかる売却とかからない売却
固定資産の売却益に消費税がかかるか否かは、事業の性質・売却対象の資産の種類・取引の形態などによって異なります。
一般的に、事業として行う資産の売却益には消費税が課税されますが、例外もあります。
たとえば、個人間の売買や事業に直接関係のない資産の売却などは、消費税が非課税となる場合があります。
具体的には、以下の点を考慮する必要があります。
項目 | 消費税の課税有無 | 備考 |
---|---|---|
事業に関連する資産の売却 | 課税 | 事業として行う資産の売却益は、原則として消費税の課税対象です。 |
事業に関連しない資産の売却(個人資産など) | 非課税 | 事業に直接関係のない資産の売却は、消費税が非課税となる場合があります。 |
土地・建物の売却 | 課税(原則) | 土地・建物の売却益は、原則として消費税の課税対象です。ただし、例外もあります。 |
機械装置の売却 | 課税(原則) | 機械装置の売却益は、原則として消費税の課税対象です。ただし、例外もあります。 |
正確な課税の有無は、個々の取引状況の精査が必要です。
簡易課税と一般課税の違い
個人事業主の場合、消費税の課税方式は簡易課税と一般課税の2種類があり、詳細は下記の通りです。
- 一般課税:実際の仕入れ取引をもとに税額を計算する方式
- 簡易課税:売上の税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」をかけて税額を計算する方式
固定資産売却益への消費税の取り扱いも、下記の通り課税方式によって異なります。
課税方式 | 固定資産売却益への消費税の取り扱い | 備考 |
---|---|---|
一般課税 | 売却益に標準税率(10%)を適用 | 売上の課税売上割合に応じて消費税を計算します。 |
簡易課税 | 課税売上高に係る消費税額を計算 | 固定資産の売却は「第4種事業」として扱われ(参照:国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分)、売上高の一定割合を消費税として納付します。売却益の金額に関わらず、一定の割合が適用されます。 |
どちらの課税方式を選択するかは、事業規模や収益状況などによって異なります。
【個人事業主】固定資産売却時の消費税計算方法
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個人事業主が固定資産を売却する場合、消費税の計算方法は、簡易課税か一般課税かによって異なります。
また、売却益の有無によっても計算方法が変わるため、注意が必要です。
簡易課税の場合の消費税計算方法
簡易課税を選択している個人事業主の場合、売却益にかかる消費税の計算は比較的シンプルです。
簡易課税では、売上の6%(または10%)を消費税として納付します。
そのため、固定資産の売却益に6%(または10%)を乗じた金額が消費税額です。
たとえば、固定資産を100万円で売却し、売却益が50万円だったとします。
この場合、簡易課税の場合の消費税額は、50万円 × 6% = 3万円(消費税率10%の場合:50万円 × 10% = 5万円)と計算します。
項目 | 金額(消費税率6%の場合) | 金額(消費税率10%の場合) |
---|---|---|
売却益 | 50万円 | 50万円 |
消費税額 | 3万円 | 5万円 |
売却総額 | 53万円 | 55万円 |
ただし、売却した固定資産が事業の用に供されていた期間や、売却益の算出方法によっては、消費税の計算が複雑になる場合があります。
一般課税の場合の消費税計算方法
一般課税を選択している個人事業主の場合、固定資産の売却益に係る消費税の計算は、売却益の金額とともに固定資産の取得時の消費税の処理も考慮する必要があります。
具体的には、売却益から取得時に控除した消費税相当額を差し引いた金額に対する消費税の計算です。
固定資産取得時の消費税を処理していない場合は、取得時の消費税と売却時で二重課税となるため注意しましょう。
たとえば、100万円で取得した固定資産(取得時消費税10万円を含む)を150万円で売却した場合、売却益は50万円ですが、取得時消費税の10万円を差し引いた40万円に対して消費税を計算します。
また消費税率6%の場合、消費税額は40万円 × 6% = 2.4万円です。
項目 | 金額(消費税率6%の場合) | 金額(消費税率10%の場合) |
---|---|---|
売却価格 | 150万円 | 150万円 |
取得価格(消費税含む) | 100万円 | 100万円 |
売却益 | 50万円 | 50万円 |
取得時消費税 | 10万円 | 10万円 |
課税対象となる売却益 | 40万円 | 40万円 |
消費税額 | 2.4万円 | 4万円 |
売却総額 | 152.4万円 | 154万円 |
売却益が生じた場合の消費税
固定資産の売却により売却益が発生した場合は課税売上として取り扱います。
簡易課税の場合は売却益に税率を乗じて消費税を計算し、一般課税の場合は取得時の消費税を考慮した上で計算します。
【法人】固定資産売却と消費税の計上・納付・税務調査対策
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法人における固定資産売却は、企業体としての適切な税務処理に欠かせない要素です。
固定資産売却と消費税の関係性を理解し、トラブル防止にお役立てください。
固定資産売却益の計上方法
法人が固定資産を売却した場合、その売却益は「第4種事業」として扱われるため、本業の事業とは別の消費税の課税対象です。
なぜなら、固定資産の償却方法(原則間接法償却)が通常の商品販売とは異なるためです。
具体的には、売却益の計算は、売却価格から取得原価と減価償却累計額を差し引いた金額となります。
この売却益に対して消費税が課税されます。
勘定科目 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
現金 | 売却価格 | |
売掛金 | 売却価格 | |
固定資産 | 取得原価 | |
減価償却累計額 | 減価償却累計額 | |
固定資産売却益 | 売却益 | |
消費税仕入 | 消費税額 | |
消費税等 | 消費税額 |
上記は簡略化した例であり、実際には、売却にかかる諸費用(仲介手数料など)の処理も必要となる場合があります。
消費税の申告と納付
固定資産売却益に係る消費税は、ほかの事業の消費税と合わせて申告・納付します。
申告時期は、課税期間(原則として1月~12月)の翌々月の末日です。
たとえば、2024年1月~12月の課税期間の消費税は、2025年2月末日までに申告・納付します。
申告には、消費税の申告書(参照:国税庁 消費税及び地方消費税の申告書・添付書類)を使用し、売却益に係る消費税額を正確に記載しなければなりません。
納付方法は、税務署への現金納付、銀行振込などです。
税務調査対策
税務調査では、固定資産の売却に関する取引の正確性が厳しくチェックします。
そのため、以下の点に注意し、税務調査に備えてください。
対策項目 | 具体的な対策 |
---|---|
証拠書類の保存 | 売買契約書・領収書・登記簿謄本など、売買取引に関する全ての書類を適切に保管しましょう。電子データで保管する場合は、改ざん防止対策を講じることが重要です。 |
正確な帳簿の記載 | 固定資産の取得原価・減価償却累計額・売却価格などを正確に帳簿に記載しましょう。不明瞭な点がないように、詳細な記録を残すことが重要です。 |
税理士への相談 | 税務に関する専門知識を持つ税理士に相談し、適切な税務処理を行うことで、税務調査のリスクを軽減できます。 |
税務調査は、企業の経営状況やコンプライアンス意識を評価する重要な機会です。
適切な対策への取り組みが、税務調査への適切な対応や企業の信用度向上につながります。
【ケース別】固定資産売却と消費税
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固定資産には、土地・建物・機械など、さまざまなものが含まれます。
また、固定資産の内容によって消費税との関係性が異なります。
ケース1:土地を売却した場合
土地の売却益は、消費税の課税対象外です。
なぜなら、土地の譲渡が非課税取引とされている(参照:国税庁 No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など)ためです。
そのため、土地を売却した際の売却益に対して、消費税を計算したり、納付したりする必要はありません。
売買契約書においても、消費税に関する記載は不要です。
項目 | 内容 |
---|---|
売却益 | 消費税非課税 |
消費税計算 | 不要 |
消費税納付 | 不要 |
ケース2:建物を売却した場合
建物売却益には、消費税が課税されます。(参照:国税庁 Mo.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税)
建物は、消費税課税事業者が事業用に供する資産である場合、売却益は課税売上です。
消費税の計算は、売却益の金額に消費税率(10%または8%)を乗じて算出します。
そのため、売買契約書には、消費税の金額の明記が必要です。
免税事業者(基準期間の売上高等が1,000万円以下の事業者)の場合は、売却価額と固定資産の帳簿価額の差額を損益に計上するのみで、消費税はかかりません(参照:国税庁 No.6501 納税義務の免除)。
たとえば、建物の売却益が100万円の場合、消費税額は10万円(100万円 × 10%)と計算します。
項目 | 内容 |
---|---|
売却益 | 消費税課税対象 |
消費税計算 | 売却益 × 消費税率 |
消費税納付 | 必要 |
ケース3:機械を売却した場合
機械の売却益は消費税の課税対象です。(参照:国税庁 事業者の事業用固定資産の売却)
売却代金全体が課税売上となり、消費税は売却益だけでなく、収入全体にかかります。
消費税の計算方法は建物と同様で、売却益に消費税率を乗じて算出します。
ただし、機械の種類や使用状況によっては、減価償却の計算方法や適用される税率が異なる場合があるため注意が必要です。
たとえば、機械の売却益が50万円の場合、消費税額は5万円(50万円 × 10%)となります。
項目 | 内容 |
---|---|
売却益 | 消費税課税対象 |
消費税計算 | 売却益 × 消費税率 |
消費税納付 | 必要 |
固定資産売却益と消費税の理解がスムーズな売却につながる
本記事では、固定資産売却益と消費税の関係について、基礎知識・事業形態別の計算方法・ケース別の関係性などを解説しました。
固定資産売却益と消費税の関係性の理解を深めることで、税務上のトラブルを回避し、スムーズな売却につながります。
固定資産の売却は、M&Aの際にも実施されるため、本記事の内容を理解することが企業間取引後の税務・財務関連業務の業務効率化にもつながるでしょう。
固定資産売却益と消費税の理解を深め、想定外のトラブル防止やM&A後のスムーズな運営に役立ててください。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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