クラウドワークスは、国内の470万人のフリーランスと76万の会社が利用する国内最大級のクラウドソーシングサービスです。
働き方改革が提唱される中で拡大するスキルシェア市場で大きなシェアを獲得しています。
クラウドワークスは、クラウドソーシング市場で大きな成功を収めていますが、その背景には同社の巧みなM&A戦略があるのです。
この記事では、クラウドワークスが実施したM&A案件を確認し、同社の狙いやM&Aによって得られる効果を分析します。
目次
M&Aによって事業を拡大させるクラウドワークス
クラウドワークスは、企業と個人をオンラインでつなぐオンライン人材マッチングプラットフォームを運営しています。
2011年11月に設立された比較的新しい企業ですが、全国で470万人のフリーランスと76万社の企業が利用する国内最大の仕事マッチングサイトに発展しました。
副業や働き方改革といった社会の変化に対応したサービスが人々のニーズに上手くはまったことから事業が成功しました。
また、オンライン人材マッチングと親和性の高いベンチャー企業を次々と買収することによって、事業を拡大してきた会社でもあります。
これまでに「グルト」「コデアル」「サイタ」「電縁」「graviee」といったベンチャー企業のM&Aに成功しています。
クラウドワークスとグルトのM&A
クラウドワークスは、複数のプレスリリースで2022年4月26日に株式会社グルトを子会社とすることを決議したと発表しました。
グルトは資本金1,300万円の小規模な会社ですが、同社が提供するオンライン上の月額決済プラットフォームの「メンバーペイ」はフリーランスを中心に幅広い利用者がいます。
M&Aの背景
プレスリリースの中でクラウドワークスとグルトはM&Aのテーマについて「個の時代に即したサービス展開により、クラウドワークスグループの新たなコア事業を創出」と規定しています。
グルトが提供する決済サービスは、オンラインサロンやスキル販売を行うフリーランスを対象に利用料の徴収や会員管理を行うサービスです。
クラウドワークスが抱えるフリーランスにグルトのサービスを利用してもらうことで高いシナジー効果を得られると考えたようです。
グルトは、クラウドワークスとの連携によって「個が尊重される労働市場の実現」を成し遂げられると発表しています。
M&Aの経過
詳しい交渉の内容は公表されていませんが、クラウドワークスはグルトの株式を全部取得することでM&Aを達成する予定です。
グルトの資本金は1,300万円ですので、大きな負担なく株式を全部取得することができるでしょう。
プレスリリースの中でグルトの小田代表は「クラウドワークス社が目指す「日本一の就業インフラ」の一助になることをお約束します。」と述べているので、M&A後も引き続き同社の代表に留まると予想されます。
M&Aによって期待される効果
クラウドワークスは「個のためのインフラになる」というミッションを掲げています。
グルトのM&Aによってミッションの実現を加速させると発表していることから、今回のM&Aは、フリーランス向けの事業拡大にあると考えられるでしょう。
クラウドワークスが提供するプラットフォームは仕事を発注する企業が支払う手数料で成立しています。
グルトのサービスを取り込むことで、受注するフリーランスをターゲットとした事業展開が可能になります。
クラウドワークスとgravieeのM&A
クラウドワークスは、2017年5月にgravieeの株式のうち51%(6,140万円分)を取得し、子会社とすることを決議したと発表しました。
gravieeは、2012年に設立された会社で、Webのクリエイティブ領域に特化したフリーランスを対象に週3日の仕事スタイルが特徴の「3スタ」という仕事を紹介しています。
M&Aの背景
クラウドワークスの目的はgravieeが提供する「3スタ」サービスを取り込むことで、フリーランスを顧客層に加えることです。
gravieeは、主にWeb領域のフリーランスを対象とした事業を展開しているので、両社が提携することで大きなシナジー効果が見込めます。
また、M&A実施当時のgravieeは、5名程度の小さな会社であり、社長自ら採用や契約書の確認業務を行っていたようです。
クラウドワークスの傘下に入ることで、バックオフィス業務の負担軽減が可能となることが見込まれたことも背景の一つです。
M&Aの経過
クラウドワークスとgravieeは、国内最大のM&Aマッチングサイト「トランビ」で知り合いました。
出会ってから1ヶ月という異例の早さで、クラウドワークスはM&Aを決断。
2017年5月にgravieeの株式51%を6,140万円で取得し、2020年7月に残る49%を追加取得しました。
gravieeの資本金は1億円以上と予想され、クラウドワークスにとっては比較的大きなM&A案件となります。
もともとgravieeは、M&Aではなく事業提携を想定していたようですが、今回の案件では51%取得の少額出資から全部取得という方法を採用しました。
M&Aによって期待される効果
クラウドワークスが、gravieeの顧客層であるWeb領域のフリーランスにアプローチできます。
実際にM&Aを契機としてクラウドワークスの売上や売上利益は伸びているようです。
子会社となったgravieeは、大手の傘下に入ったことで信用度が向上し、売上・利益が伸びています。
優秀な社員の採用や取引先の開拓も容易になり、事業強化を後押ししています。
また、顧客に対して、クラウドワークスが保有する仕事情報を共有することで、顧客の満足度が上がったと感じているようです。
クラウドワークスとコデアルのM&A
クラウドワークスは、2021年9月27日にプレスリリースでハイレベルIT人材のダイレクト型マッチングプラットフォームを運営するコデアルの株式を全部取得し、子会社とすることを発表しました。
コデアルは、フリーランスやパラレルワークを希望するエンジニアに高単価案件を紹介しています。
登録者はエンジニアを中心に1万5,000人を超えているようです。
M&Aの背景
クラウドワークスは、プレスリリースの中で「個人やフリーランスの報酬を得る機会の拡大」を同社の使命としています。
同社が展開するオンライン人材マッチング事業では、発注者である企業から受け取る手数料が収益です。
コデアルのM&Aによって顧客層をフリーランスエンジニアまで広げることを目的としていると予想されます。
日本全体でエンジニア不足が深刻化する中でエンジニア関連の事業の成長性を期待したものと推測できます。
M&Aの経過
詳しい交渉の内容は公表されていませんが、クラウドワークスはコデアルの株式を全部取得することでM&Aを達成したようです。
取得価額や両社の出会いの契機などは不明です。
コデアルの資本金は1,410万円ということですので、クラウドワークスは大きな負担なく株式を全部取得することができたと予想されます。
コデアルの創業社長及び全従業員は引き続き、コデアルに残留し、新体制で事業拡大に取り組むようです。
M&Aによって期待される効果
クラウドワークスがコデアルの保有するエンジニアを中心としたフリーランスの顧客層を獲得することが期待されます。
コデアルのサービスに月額課金型のサービスモデルを拡大することで、マッチング事業を拡大し、長期的な視野にたった収益性の拡大や企業価値向上が見込めるとしています。
一方で、コデアルの創業社長及び従業員はコデアルに留まるため、クラウドワークスの下で事業拡大を目指すことになるでしょう。
クラウドワークスとサイタのM&A
クラウドワークスは、2018年1月に料理レシピサイト運営で知られるクックパッドの子会社であるコーチ・ユナイテッド株式会社から習い事マッチングサービス「サイタ」を取得しました。
サイタは音楽教室やスポーツ、プログラミングといったスキルを持つフリーランスと生徒をマッチングさせるサービスです。
買収価額等の詳細は公表されていません。
M&Aの背景
本件の詳細は公表されていませんが、両社の事業の類似性を鑑みたシナジー効果が評価されてM&A成立につながったと予想されます。
クラウドワークスは、企業と個人をオンラインで直接つなげる日本最大級のクラウドソーシングサイトを運営しているのです。
一方で、サイタは様々な分野の教師と生徒をマッチングさせるスキルシェアのサイトであり、マッチング事業という点で類似性があります。
クラウドワークスは、本件以外のM&Aのプレスリリースで「マッチング事業の拡大」をミッションに掲げていますので、その一環としてサイタを買収したと予想されます。
M&Aの経過
本件M&Aの詳しい内容は公表されていません。
サイタは、クックパッドの子会社であるコーチ・ユナイテッド株式会社が保有する事業であり、事業譲渡という形を取ったことから、株式の全部取得ではないかと予想されます。
プレスリリースによれば、買収時点でサイタは、売上高2億3,400万円、営業利益5,400万円を出していますので、クラウドワークスの買収案件の中でも比較的大型ではないかと予想されます。
クラウドワークスとクックパッド、その子会社であるコーチ・ユナイテッド株式会社とのつながりも不明です。
M&Aによって期待される効果
クラウドワークスは国内最大のマッチング事業を運営しており、ユーザーマッチングのノウハウが豊富にあります。
サイタの事業を買収し、ノウハウや技術を投入することで、クラウドソーシング市場の拡大やスキルシェアサービスの利用者の増加が期待されます。
事業譲渡に際しては、コーチ・ユナイテッドからの社員移籍がなく、クラウドワークスが完全に運営しているため、一から新しい事業領域を開拓する意図があるでしょう。
クラウドワークスはM&Aで事業拡大に成功した
この記事では、クラウドワークスが実施したM&A案件を紹介しました。
その上で、クラウドワークスの戦略やM&Aによって得られる効果を分析しました。
クラウドワークスが実施したM&A案件を見ると、同社がマッチング事業を利用する企業だけではなく、フリーランスを顧客層として開拓する意思が見えます。
短期間の交渉でM&A合意に至った案件もあることから、同社はスピード重視で迅速なM&Aを加速させていることが分かります。
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株式会社パラダイムシフトは、国内最大のIT領域のM&Aアドバイザーです。