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事業承継税制の要件とは?概要や詳細をわかりやすく解説

事業承継税制とは会社の事業を承継した際に発生する税金を猶予・免除してもらえる制度、事業承継税制はご存知でしょうか。です。事業承継税制は、2018年に大幅な改正が成されて以降、事業承継において多く活用されています。

今回の記事では、事業承継税制における基本的な概要の説明から特例措置一般措置の比較、事業承継税制を受けるときに重要となる認定の要件を解説します。

事業承継税制とは

事業承継税制とは、事業を継承した際に発生する税金(相続税・贈与税)を猶予もしくは免除してもらえる制度です。支払うべき税金を大きく抑えられ、納税者の負担を軽くします。

事業承継税制は2009年4月に創設されてから、何度かの改正を経て現在の形態になりました。特に、2018年の税制改正において、事業承継税制を大きく緩和させる「特例措置」が開始されると共に、制度を活用するための認定要件も利用しやすいように改定されました。

この事業承継税制ができた背景には、事業承継した際の納税負担が大きいことを理由に、後継者となる人が承継をあきらめてしまうことを防ぐためでもあるのです。

事業承継税制は、法人版事業承継制度個人版事業承継制度があります。法人だけでなく個人の方でも申請でき、双方ともに対象となるのは事業用資産です。

事業承継税制で猶予・免除されるのは贈与税相続税です。以下でこれらの基本的な概要を紹介しています。

相続税

相続税とは、親族が亡くなり、相続が発生した際に受け継いだ金額に伴い発生する税金です。相続税には基礎控除があり、これを超えた際に納税義務が発生します。相続税は、その金額が高くなるにつれて収める金額が上がっていく累進課税制度が採用されています。

贈与税

贈与税は資産を受け継いだ際に発生する税金です。贈与税には、年間基礎控除110万円があり、それを超えると発生します。税率は相続税と同様に累進課税制度です。

事業承継税制における一般措置と特例措置

事業承継税制の措置には、一般措置特例措置があります。通常、事業承継税制を受けるときは一般措置となります。

特例措置は平成30年度の税制改正において10年間の限定で創設されました。期限は令和6年の8月となっており、認定を受けるためにはそれまでに申請が必要です。

申請方法は、認定経営革新等支援機関の意見を記載した「特例承継計画」を作成して、これを都道府県知事へ提出することです。

後継者の要件における特例措置と一般措置の違い

以下の表は事業承継税制の一般措置・特例措置の相違点をまとめたものです。

比較内容一般措置特例措置
事前の申請認定要件の提出認定要件と特例承継計画の提出
対象株式の割合総株式数の2/3まで100%
納税猶予の割合贈与税80%、相続税100%100%
承継人数1人3人まで
雇用確保の要件承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
緩和
経営状態の変化による対応なし免除制度あり

事業承継税制における認定の要件とは

事業承継税制の適用を受けるためには、対象者が認定のための要件を達成した上で、都道府県知事に認定を受けます。

認定要件は「会社」、「先代経営者(贈与者又は被相続人)」、「後継者(受贈者又は相続人)」それぞれに定められており、対象社はこれを達成しなければなりません。

事業承継税制における会社の要件

事業承継税制における会社の認定要件は以下の6つです。

  • 上場していない中小企業であること
  • 風俗営業会社でないこと
  • 従業員が1名以上であること
  • 総収入がゼロでないこと
  • 資産管理会社でないこと
  • 後継者以外の者が黄金株を保有していないこと

上場していない中小企業であること

事業承継税制は非上場の中小企業が受けられる制度です。中小企業であるかどうかは中小企業庁が以下の通りに定めています。

  • 資本金3億円以下・従業員300人以下の製造業、建設業、運輸業、その他の業種
  • 資本金1億円以下・従業員100人以下の卸売業
  • 資本金5,000万円以下・従業員100人以下のサービス業
  • 資本金5,000万円以下・従業員50人以下の小売業

出典:FAQ「中小企業の定義について」|中小企業庁

風俗営業会社でないこと

風俗営業会社は、風俗関係の事業を営む企業を指します。贈与・相続を受けたときから継続して該当していないことが必要です。

従業員が1名以上であること

贈与・相続の際に常時使用従業員が1名以上在籍している必要があります。常時使用従業員は、社会保険の被保険者でなければなりません。したがって、正社員・契約社員・パートは該当しますが、アルバイトである従業員は対象外となります。

しかし、従業員が75歳以上である場合、社会保険に加入できないので、2ヶ月位上の雇用契約があれば常時使用従業員として認められます。

総収入がゼロでないこと

事業を営んでいるため、売上が計上されなければなりません。最終的な損益は対象となっておらず、赤字であってもあくまで売上が計上されている必要があります。

また、総収入とは、主たる事業活動から得られる収入であり、営業外収益と特別利益は含まれないので注意が必要です。

資産管理会社でないこと

資産管理会社とは、株式や不動産などの資産を管理するための会社です。資産の所有と税金対策を目的として設立された会社で、その資産の合計額が帳簿価額総額の70%となる会社を指します。

事業を営んでいる一般的な法人とは異なり、資産管理以外の活動はしません。そのため、収入源は株式の配当や不動産の家賃収入が利益になります。

後継者以外の者が黄金株を保有していないこと

黄金株とは、株主総会や取締役会決議において拒否権を持つ株式です。本来、後継者が株主総会で暴走したときに先代の経営者が暴走の阻止として発動します。そのため、贈与のその時点で後継者が黄金株を所持していなければならないということになります。

事業承継税制における先代経営者の要件

先代の経営者における認定要件は以下の2つです。

  • 法人の代表者だったこと
  • 一族の中で筆頭株主であり、総議決権数において50%以上を保持していること

譲渡する企業の元代表であり、譲渡の際には役職から降りていることが条件となります。また、会社の株式について、親族などの中での筆頭株主であり、一族が保持する株式と合わせて、50%以上を保有していることが必要です。

事業承継税制における後継者の要件

次に、後継者における認定要件を見てみましょう。後継者の認定要件には、前の項で説明した特例措置を適用することも可能です。

この章では、事業承継税制で特例措置を適用させるために必要な、後継者の特例措置における要件についても解説します。

  • 贈与時に50%超の同族株主グループに属している
  • 最も多くの議決権を保有している
  • 贈与時に18歳以上である
  • 贈与時まで3年以上役員の地位を有している
  • 贈与時に代表権を有している
  • 相続開始から5ヵ月後に代表者である

贈与時に50%超の同族株主グループに属していること

この要件は、先代の代表の要件と同様、一族の株式保有率が過半数を占めているかということです。特例措置により後継者が1名以上の場合には、後継者ごとに総議決権数の50%以上を保有しているかどうか判定します。

後継者以外の株主が拒否権付きの株式を保有していると適用外となるため注意が必要です。

最も多くの議決権を保有していること

贈与時に、同族関係者の中で最も多くの株式、すなわち議決権を所有している必要があります。特例そちにより後継者が1名以上の場合にこれに加えて、さらに以下の要件を満たす必要があります。

  • 各後継者が株式の10%以上を保有
  • 各後継者が同族関係者個人が保持している株式を下回らない

そのため、後継者の株式保有比率だけでなく、同族関係者の株式保有率も把握しておく必要があると言えるでしょう。

贈与時に18歳以上である

贈与時に18際以上であることが認定の要件とまります。2022年4月以前は20歳以上であることが認定の要件とされていましたが、成人年齢の引き下げに伴い、18歳以上に改定されました。

贈与時まで引き続き3年以上役員の地位を有している

後継者は、贈与の時点で役員就任から3年以上経過していることが必要です。引き続き3年以上とされているため、合計3年間ということではなく、連続して3年以上の役員である期間が必要ということになります。

そのため事業承継制度で特例措置を受けたいと考えているのなら、なるべく早い時点で後継者を役員に迎え入れる必要があります。

贈与時に代表権を有している

後継者は、贈与時に代表権を有している必要があります。このことから、

  1. 後継者は会社の代表者に就任したあとで株式の贈与を受ける
  2. 先代の代表は代表を退任したあとに後継者に株式を贈与する

という順序が重要であることがわかります。

相続から5ヵ月後に代表者であること

相続の場合、後継者は相続から5ヶ月以内に代表へ就任することが必要です。後継者が代表になる前に、万が一、先代の代表が亡くなったとしても後継者が5ヶ月以内に代表になれば問題ありません。

事業承継税制開始後の要件

事業承継税制は、それぞれの対象者の要件だけでなく、認定されてから事業承継税制の開始後5年間の間と5年経過したあとに対しても要件があります。

開始後5年間の要件

事業承継税制の開始後5年間のおける要件には以下の3つがあります。

  • 後継者が会社の代表であり続ける
  • 先代者より引き継いだ株式を保有し続ける
  • 相続・贈与の際の雇用人数の8割を維持する

3つ目の雇用人数においては例外もあります。近年の日本は深刻な働き手不足に陥っています。そのため、最近になりこの条件が大きく緩和されました。

元々は、相続・贈与の際の雇用人数が8割を下回った時点で猶予はなくなり、納税しなければなりませんでした。しかし、現在では、税制改正により5年間の平均が8割を満たせば要件を満たしたとされることになっています。(2024年3月時点)

さらに、すでに解説した事業承継税制の特例措置に関しては、正当性を証明できる資料などを提出することで、8割に満たずとも猶予が継続されます。

上記3つの要件を満たしているか確認するために毎年の報告と届け出が必要です。

5年間経過後の要件

事業承継税制開始後5年間が経過したあとの要件は以上の2点です。

  • 事業の継続
  • 株式の保有

開始後の5年間と比べて比較的緩やかになります。要件を満たしているかどうかの報告と届け出は、毎年から3年に1度となります。

事業承継税制のメリット

この章では事業承継税制のメリットについて紹介します。

  • 税金が猶予・免除される
  • 個人事業の承継も対象になる

税金が猶予・免除される

一番のメリットはこれまで紹介した通り、事業承継にかかる税金が大幅に猶予・減免される点です。後継者は税金のための資金を工面する必要がなくなるので事業反映の活動に専念できるでしょう。

個人事業の承継も対象になる

事業承継税制は法人だけでなく個人事業の承継も対象となります。

これまでは法人のみの対象でしたが、令和元年8月の税制改正以降、個人事業の承継も対象になりました。個人事業の事業承継税制手続きは法人の手続きよりも簡易的な点も魅力です。

事業承継税制の特例措置を受けるメリット

事業承継税制の特例措置を受ける主なメリットは3つあります。

  • 納税猶予の割合が100%になる
  • 雇用確保の要件緩和
  • 雇用確保の要件緩和

納税猶予の割合が100%になる

事業承継税制の納税猶予は一般措置の場合、贈与税が80%で、相続税が100%です。しかし、特例措置を受けた場合、贈与税と相続税がともに100%猶予されます。

これは特例措置を受ける最大のメリットと言っても良いでしょう。

雇用確保の要件緩和

事業承継税制の一般措置では、5年間の雇用率を開始時の80%維持しなければならない雇用確保の封建があり、これを下回ってしまうと猶予が打ち切られます。

しかし、特例措置を受けることで、正当な理由があればこの雇用確保の要件は緩和され、猶予は継続されます。そのためには、正当な理由が記載され、認定経営革新等支援機関の意見が記載された書類の提出が必要になります。

納税猶予額の減免(事業継続が困難な場合)

特例措置には適用中に、環境の変化が原因で事業の継続が困難になると納税猶予額が減免されるメリットもあります。

事業の継続が困難な場合の理由としては以下のものが挙げられます。

  • 2年以上の赤字・売上減が続いた場合
  • 売上の6ヶ月分に相当する有利子負債があった場合
  • 上場企業である類似業種の株価が前年の株価を下回った場合
  • 後継者の心身不調のため事業の継続が困難になった場合

事業承継税制の手続きは専門家に依頼することが重要

今回の記事では、事業承継税制について基本的な概要について説明し、事業承継税制を受けるために定められた要件について詳しく解説しました。

事業承継税制には複雑な要件があり、専門知識を持つ人の協力が不可欠です。しかし、税制面でかなり優遇される制度であることに間違いはありません。事業の贈与や相続を検討しているのなら、早い段階から準備をして社内を整えておく必要があるでしょう。

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