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VMware買収騒動について企業体質や歴史をもとに徹底解説

2022年5月、アメリカにおいてBroadcom(ブロードコム)によるVMware(ヴイエムウェア)の買収が発表されました。この買収はイギリスやEUが懸念を表明するなどさまざまな反響があり大きな話題となりました。

今回の記事では、この買収の背景やBroadcomとVMwareの企業について、詳細やM&Aの歴史・考え方について詳しく解説します。

Broadcom(ブロードコム)によるVMware(ヴイエムウェア)買収

2022年5月、米国のBroadcomが同じく米国のVMwareを買収することを発表しました。約610億ドルでという巨額の買収金額で半導体業界では過去最大であったため、多くの注目を集めました。

Broadcomは、世界有数の半導体メーカーで、これまで積極的なM&Aで多くの企業を拡大して成長してきました。

一方のVMwareは、サーバーの仮想技術を開発・販売する情報通信業を手掛けています。こちらの売上げも世界有数で、且つ、これまで多くの企業をM&Aで買収して成長してきた企業です。

VMware(ヴイエムウェア)、Broadcom(ブロードコム)双方の目的

M&Aによって企業を成長させてきた両者が今回統合する形となり、世界最大のインフラ企業になります。

VMwareはBroadcomに買収されたあと、ソフトウェアグループ「VMware」としてブランディングされます。これによりBroadcomはソフトウェアの売上げを大きく伸ばすこととなり、その割合は総売上の約半分にも上ります。

対して、VMwareには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

VMwareは、元々、コンピューター関連の開発・販売を手掛けるDellと強く関係のある企業でした。そこから、2021年に会社分割(スピンオフ)を発表し独立起業になりました。しかし、株主への配当金の配布などが原因で2022年は赤字に転落しました。

VMwareがメインとする仮想ソフトの研究と開発は、膨大な資金がかかるだけでなく、他社に対抗する価格競争も必要です。そのため、資金力のある大企業の傘下に入ることは、VMwareにとっても大きなメリットになります。

英競争当局によるVMware(ヴイエムウェア)買収の調査

双方にとって大きなメリットになる買収でしたが、BroadcomがVMwareの買収を発表した2022年5月から半年後の11月、英競争当局がこの件に関して調査していると発表しました。調査している理由について、この買収がイギリス国内の市場で大幅な抑制に繋がる恐れがあるためということです。

Broadcomの買収が調査の対象になったのは今回が初めてではありません。2018年に大手半導体メーカーのQualcommを買収しようとした際には、国家安全保障上の理由で当時のトランプ政権に否決されてしまったのです。

今回の調査は英競争当局だけでなく、EUでもVMwareの顧客の不安を和らげるために調査をした上で、競争上の懸念を表明しました。しかし、現在のところ、Broadcomからは買収の取り止めなどは発表されていません。

VMware(ヴイエムウェア)の会社概要

VMwareの会社概要について見てみましょう。

本社アメリカカリフォルニア州パロアルト
業種情報・通信業
事業内容製品やサービスの開発、製造、販売、ならびに保守業務
代表者ラグー・ラグラム(CEO)
設立1998年
売上高117億ドル(2021年)
日本法人ヴイエムウェア株式会社(VMware K.K.)
従業員数31,000人(2020年)

VMwareは、世界有数のクラウドコンピューティングと仮想化のIT企業です。ソフトウェアベンダー全体としても売上げにおいて世界上位に位置しています。

VMwareの製品

VMwareは、「VMware vSphere」と呼ばれるサーバーの仮想化技術を自社開発・研究し、販売している企業です。

サーバーの仮想化とは、ソフトウェアで定義された仮想マシンを物理的なサーバー上に構築する技術です。1台のサーバーで複数の仮想マシンを稼働することが可能になります。主なメリットとしては以下のものが挙げられます。

  • 複数の仮想マシンを1台に集約することでのコスト削減
  • サーバーの仮想化による新システム構築時間の短縮

そして、仮想サーバーだけでなく、「VMware Fasion」と呼ばれる技術者や開発者のためのソフトウェアや「VMware Workstation」と呼ばれる、オペレーションシステムの開発・販売もしています。

VMware歴史と買収の考え方

今回買収されたVMwareですが、VMware自体もまた、現在までに多くの企業を買収しています。これまでのM&Aについて近年の歴史を見てみましょう。

月日企業名事業内容
2021年3月Mesh7アプリケーションのセキュリティ
2020年9月SaltStack自動化ソフトウェアの開発
2020年7月DatriumDRaasのサービス提供
2019年12月Pivotalサイバーセキュリティ
2019年12月Carbon Bkackクラウドプラットフォーム
2019年6月Avi Networksマルチクラウド
2019年5月Bitnamiアプリケーションの配信
2018年8月HeptioKubernetesのサポート
2017年11月CloudHealth Technologiesクラウドの運営管理

以上の通り、ソフトウェア通信系の企業をM&Aにより多く買収しています。M&Aにより企業を成長させていこうと言う概念があるのです。

Broadcomの会社概要

Broadcomの会社概要についても見てみましょう。Broadcomはヘンリー・ニコラス3世とヘンリー・サミュエリのヘンリー博士によって創業しました。

現在は、アメリカとシンガポールに本社を置く半導体メーカーです。

本社アメリカ
業種半導体・エレクトロニクス製造
事業内容集積回路、無線アクセス、ケーブルモデム、携帯電話、スイッチングハブ、サーバファーム、マイクロプロセッサ、Bluetooth、近距離無線通信、GPSなど
代表者Hock E. Tan(CEO兼社長)
設立1961年
売上高73億9000万ドル(2011年)
日本法人なし、代理店は多数
従業員数15,700人(2017年)

Broadcom買収の歴史

冒頭でも紹介した通り、BroadcomもM&Aを積極的に実施して拡大した企業です。この項ではBroadcomのこれまでのM&Aについて紹介します。

月日企業名事業内容
2022年5月VMware Inc.仮想環境の開発と構築
2011年9月NetLogic Microsystemsインターネット向けネットワーク製品
2011年5月SC Square Ltd.セキュリティソフトウェア企業
2011年4月Provigent Ltd.マイクロバックホールの開発
2010年11月Gigle Networks家庭向けメディアネットワーク
2010年10月Beceem Communications4G LTE/WiMaxの開発
2010年6月nnovision Research近距離無線通信の開発・運用
2010年2月Teknovusチップ、ソフトウェアの開発
2009年12月Dune Networks高速ネットワークの研究・開発
2008年8月AMD DTVプロセッサ部門ソフトウェアとTVチューナー
2008年3月Sunext Design, Inc.光ディスクのドライブ開発
2007年6月Global Locate, Inc.GPSチップやソフトウェアの開発
2007年5月Octalica, Inc.ケーブルのホームネットワーク
2006年11月LVL7 Systems, Inc.ネットワーク・ソフトウェア
2006年1月Sandburst Corporationイーサネット交換用SOCのチップ開発
2005年10月Athena Semiconductors, Inc.デジタルTVチューナーとWifiの開発・販売
2005年7月Siliquent Technologies, Inc.イーサネットのコントローラ
2005年3月Zeevo, Inc.Bluetoothのヘッドセット開発・販売
2005年2月Alliant Networks, Inc.携帯電話網に関するゲートウェイ

Broadcomもまた、VMware同様コンピューターソフトウェア関連の企業を多く買収して、企業規模を拡大していっているのがわかります。

BroadcomによるVMwareの買収で双方の発展が望まれる

今回の記事では、BroadcomがVMwareを買収した件について、双方のメリットや周囲での反応を紹介しました。合わせて、両者の企業について詳細やこれまでのM&Aの歴史について記載しました。

VMwareとBroadcomは、ともに多くの企業をM&Aで買収して成長してきた企業です。その2社が今回、統合することになり世界有数のインフラ企業になりました。

BroadcomがVMwareを買収した件についてイギリスやEUでは調査対象となるほど懸念の声も多く上がりました。しかし、当事者のBroadcomとVMwareにはお互いに大きなメリットと相乗効果の期待できるM&Aと言えるでしょう。

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