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任天堂は買収に消極的?M&Aに対する姿勢や歴史を解説

新型コロナウイルスの影響による経済の落ち込みから回復しつつある中で、国内外で買収が活発に実施されています。

なかでもゲーム業界は買収が活発な業界です。

近年では、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス向けのゲーム市場の拡大に伴って、モバイルゲーム会社の買収が増加しています。

ゲーム業界の盟主と言えば、任天堂です。この記事では、任天堂の買収に対する姿勢や歴史を解説します。

買収に消極的?任天堂の歴史

2021年3月期有価証券報告書によると、任天堂は当期純利益4803億円と過去最高を更新しました。

海外売上高比率は77.4%と日本だけでなく世界中で愛されるゲームメーカーです。

ゲーム業界は買収が活発です。

それは、ゲーム業界がヒット作品に業績が左右されるという特徴があり、安定的な収益を求め、サブスクリプションサービスや買収による異業界進出を行うからです。

この点、任天堂は違います。

ヒット作品に恵まれず、衰退するメーカーも多い中で、任天堂はファミコン、Nintendo 64、ゲームボーイ、Wii、Nintendo Switchなど、数々のヒット作を生み出すことに成功しました。

直近の2022年3月期有価証券報告書によると、純資産は2兆693億円でゲーム事業で得た利益が積み上がっています。

銀行融資や社債による調達もないキャッシュリッチです。積み上がったキャッシュを買収に回すことなく、社内に蓄積しています。

任天堂が買収に消極的と言われる理由

任天堂は過去に多くの買収を実施していないので、買収に消極的と言われています。
なぜ任天堂は買収に消極的なのでしょうか。

その要因は「自社開発の強み」と「事業の安定性」の2点です。

任天堂は、ゲーム業界で長年の実績があり、自社開発に注力することで独自の強みを築いてきました。

そのため、外部からの技術や人材の導入に必要性を感じておらず、買収を通じた成長を追求する必要性がないのです。

また、多くのヒット作を生み出すことで、ゲーム業界において非常に安定した事業基盤を築いています。

そのため、買収を通じた成長に必要なリスクを負うことなく、自社事業の拡大を図ることができるのです。

以上のような理由から、任天堂は買収に消極的であるとされています。

買収積極姿勢へ転換?

買収に消極的な任天堂ですが、その姿勢に変化の兆しがあります。

Bloombergによると、同社の決算説明で任天堂の古川社長は、買収自体に反対しない考えを示しました。

ただし、この発言は「技術革新への対応に迫られれば」という条件付きでした。

自社開発に強みを持つ任天堂の独自性を踏まえ、「任天堂DNAを持たない方が社内に増えてもプラスにならない」と付け加えていることから大きな方針転換ではありません。

しかし、近年はスマホゲーム市場の拡大などにより、新たな事業領域への進出が求められるようになってきており、今後も慎重に検討しながら成長を図っていくことが予想されます。

任天堂の公式見解

買収に関する任天堂の公式見解はどうなのでしょうか。

直近の2022年3月期有価証券報告書では、「買収」や「M&A」に関する直接的な言及はありません。

任天堂ほど大きな企業であれば、買収に対する公式見解が示されていてもおかしくないですが、言及はありませんでした。

一方で研究開発活動に関する記載が多く、同社の自社開発へのこだわりが読み取れます。

しかし、任天堂が買収について全く考えていないわけではありません。

例えば、2014年1月30日に実施された「経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会」の質疑応答では、社内に蓄積された自社株について、当時の岩田社長が「M&Aに活用する可能性を選択肢として持たせていただきたいと思っています」とM&Aの可能性を示唆しています。

任天堂が実施した買収

任天堂は買収やM&Aに関する公式的な方針を発表していません。

しかし、買収に全く無縁というわけではありません。

これまで、主に技術や知的財産、そしてゲーム開発会社などの分野で、いくつかの買収を実施してきました。

2007年:モノリスソフト

モノリスソフトは、「ゼルダの伝説」など任天堂作品の部分委託を受けたゲームソフト制作会社です。

買収当時、同社はバンダイナムコ傘下でしたが、任天堂が同社のRPGのクオリティーの高さに注目し、買収を決定したのです。

この買収により、任天堂は同社の開発チームを傘下に加え、強みである研究開発部門をさらに強化しました。

同社は買収後も独立した開発スタジオとして活動していますが、任天堂のハードウェアであるWiiやWii U、Nintendo Switch向けのゲーム開発を手がけるようになりました。

同社が開発するゲームは、任天堂ゲームのラインナップにおいて重要な位置を占めており、任天堂のゲーム開発力の向上に貢献しています。

2016年:ジェスネット

ジェスネットは、主にビデオゲームや関連製品の販売に特化した国内最大のゲーム卸です。

日本全国の小売店と契約しており、国内でのビデオゲーム市場において重要な役割を果たしています。

同社は任天堂と長年の取引があり、2007年には既に業務提携を結んでいました。

任天堂は、この買収によって、小売店向けの販売網を拡大することができると同時に、ゲームソフトや周辺機器の販売において、自社のビジネスを強化することができると期待し、完全子会社化を実施しました。

同社も任天堂の傘下に入ることで、任天堂の製品を卸し、卸売ビジネスを拡大することができたのです。

2021年:ネクストレベルゲームズ

2021年1月、任天堂はカナダのソフトウェア開発会社ネクストレベルゲームズの買収を発表しました。

同社は主にNintendo Switch向けにゲームを開発しており、その中にはヒット作品として知られる「ルイージマンション3」や「アニマル・クロッシング ポケットキャンプ」などがあります。

同社はオーナーや社員がすべての株式を保有する会社ですが、今回の買収のきっかけは一部オーナーが株式を売却する意向を示したことです。

任天堂は、同社の開発チームを取り込み、開発ノウハウや技術力を活用することで、より高品質なゲームを提供することを期待し、買収に踏み切りました。

買収に消極的な任天堂が海外の開発スタジオを買収するというニュースはゲーム業界に衝撃を与えたのです。

2022年:SRD

2022年2月、任天堂は人工知能技術を開発する日本のベンチャー企業である人工知能技術を開発す

日本のベンチャー企業SRDを完全子会社化することを発表しました。

同社は、人工知能を活用して、個人に合った商品や情報を提供するサービスを開発しています。

買収発表のプレスリリースでは、「SRDとは、Smart Recommendation Deviceという人工知能技術を開発する日本のベンチャー企業です」と紹介されている通り、任天堂と関係が深いです。

これまで、「ゼルダの伝説」「あつまれ どうぶつの森」「Wii Fit」「スーパーマリオ64」など任天堂のヒット作品の開発に深く関わっています。

同社は人工知能を活用して、個人に合った商品や情報を提供するサービスを開発しているのです。

今回の買収によって任天堂は、SRDの技術を活用して、より個人に合わせたサービスを提供することを目指しています。

2022年:ダイナモピクチャーズ

2022年7月、任天堂はCGアニメーションを含む映像コンテンツの製作を手掛けるダイナモピクチャーズを完全子会社化することを発表しました。

同社はアニメーション制作会社で、多数の人気アニメ作品を手がけてきました。

ジブリ作品や攻殻機動隊 SAC_2045、バイオハザードのVRコンテンツなどを担当した実績があるのです。

今回の買収によって、任天堂は、同社のアニメーション制作技術を活用して、Nintendo Switch向けのゲーム開発に役立てることを期待しています。

また、同社が制作したアニメ作品を、Nintendo Switchなどのデバイスに配信することができるようになります。

近年、任天堂はスーパーマリオなどアニメ映画の製作に力を入れており、この買収によって任天堂のアニメ作品事業の拡大に注目が集まっているでしょう。

外資による任天堂買収の噂

国内最大手のゲーム会社である任天堂は意外にも被買収企業として買収が噂されたことが何度かありました。

1999年には、アメリカのマイクロソフトが任天堂を買収することを検討したと報じられました。
しかし、任天堂側は買収交渉を拒否したため、発展がなかったようです。

2006年には、フランスのメディア企業であるVivendi Universalが任天堂を買収する可能性について報道されましたが、最終的には実現しませんでした。

報道によれば、買収金額は1000億円程度が想定されていたようです。この報道により、任天堂株は急騰し、一時は30%以上の上昇を見せました。

しかし、その後も任天堂は独自の道を歩み続け、WiiやNintendo Switchといったヒット商品を生み出し、業績を伸ばしています。

任天堂側は当時の報道についてコメントしておらず、公式的な発表はありません。

任天堂の買収防衛に対する姿勢

任天堂は自社を巡る買収報道について公式にコメントを残していませんが、過去に買収防衛について言及したことがあります。

第79期定時株主総会の質疑応答で、敵対的買収に対する防衛について、「当社ではいわゆる買収防衛策は導入していませんが、企業価値や株主共同の利益を害するような悪質な買収行為に対しては、買収防衛策を事前に導入していなくとも合法的かつ適切に対抗措置を講ずるべく、社内体制や社外専門家との連携を含めた体制を整備しています。」と一定の方針があることを回答しています。

任天堂の買収方針が変わる可能性

現時点では、任天堂が将来的に買収に積極的になるかどうかは不透明です。

しかし、以下の3つの理由から将来的に買収に積極的になる可能性もあると考えられます。

1つ目は新領域への進出です。

近年は、ゲーム市場の拡大やスマートフォン市場の成長など、従来の事業領域にとどまらず、新たな市場への進出が求められるようになってきています。

任天堂も、こうした市場の拡大に対応するため、新たな事業領域の開拓や事業強化が必要となっていることから、買収を通じて成長を図ることが検討される可能性があります。

2つ目は海外市場への拡大です。任天堂は、日本国内だけでなく、海外市場でも高い評価を得ています。

しかし、海外市場においても新たなビジネスチャンスを追求する必要があることから、海外企業との

提携や買収などを通じて、グローバルな視野を持った成長戦略を展開する可能性があります。

3つ目は競争力向上です。

ゲーム業界においては、競争が激しく、他社との差別化が重要となっています。

任天堂は、独自の開発力やブランド力によって差別化を図ってきましたが、他社の技術や人材を取り入れることで、更なる競争力の向上を目指す可能性があります。

ただし、任天堂は一貫して自社の独立性を重視しており、当面は買収には慎重な姿勢を示すことが予想されます。

M&Aに慎重な姿勢を示す任天堂

任天堂は、M&Aに慎重な姿勢を示しています。

これは、任天堂が、自社の独自性を重視し、自社のブランド・キャラクター・技術力などを活かし、独自のコンテンツを生み出していくことが、事業成長のために必要だと考えているためです。

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