レピュテーションリスクとは、端的にいえば評判リスクのこと。
近年、レピュテーションリスクの影響が強まっており、会社の存続を脅かすケースも見られます。
本記事では、レピュテーションリスクの事例をもとに、会社に与える損失と対策について解説します。
目次
- 1 レピュテーションリスクとは?
- 2 レピュテーションリスクが問題視され始めた背景
- 3 レピュテーションリスクが顕在化する3つの原因
- 4 レピュテーションリスクの事例
- 5 事例1.2013年:飲食店でのアルバイトによる不祥事
- 6 事例2.2011年:大手電機メーカーで大規模な情報漏洩
- 7 事例3.2016年:大手広告代理店での過労死問題
- 8 レピュテーションリスクによる3つの損失
- 9 損失1.企業評価・売上の低下
- 10 損失2.信用回復にかかる巨額のコスト
- 11 損失3.行政処分・損害賠償による損失
- 12 レピュテーションリスクの測定方法とは?
- 13 レピュテーションリスクを防ぐ3つの対策
- 14 対策1.積極的に広報活動をおこなう
- 15 対策2.社内教育の徹底
- 16 対策3.インターネット情報の管理
- 17 【注意】レピュテーションと経営実態のバランスが重要
- 18 バランスを意識したレピュテーションリスク対策を心がけよう
レピュテーションリスクとは?
レピュテーションリスクとは、企業の悪評が広がることで、経営に支障をきたすリスクのこと。
かつて、レピュテーションリスクによって経営が左右されるケースはほとんどありませんでした。
しかし近年では、レピュテーションリスクにより経営難に陥るなど、会社経営において無視できない問題となっています。
この章では、レピュテーションリスクが問題視され始めた背景と、顕在化する原因を詳しく解説します。
レピュテーションリスクが問題視され始めた背景
レピュテーションリスクが問題視され始めた背景には、2つの要因があります。
- 企業の評価基準が多様化
- インターネットの普及
1つ目の要因は、企業を評価する基準が多様化したこと。
かつては、会社の売上規模や利益額などの財務面が企業を評価する際に重視されていました。
しかし、バブル崩壊・リーマンショックによって、それまで高く評価されていた企業の倒産・買収が生じます。
上記をきっかけに、企業を評価する基準が多様化。
企業ブランドや人材など、目には見えない無形価値も企業評価を左右する材料になりました。
この変化に伴い、企業は顧客からのレピュテーション(評判)を無視できなくなったのです。
なお、レピュテーションリスクが注目され始めた1990年代後半では、あくまでも大企業や上場企業の問題と認識されていました。
しかし、レピュテーションリスクは、2つ目の要因であるインターネットの普及により、中小企業にっても無視できない重要要素となったのです。
インターネット・SNSの普及は、情報の流動性を格段に向上させました。
企業のよい評判のみならず、不祥事などネガティブな評価も瞬時に拡散されるため、大企業の問題とされていたレピュテーションリスクは、中小企業にとっても無視できない存在になったのです。
レピュテーションリスクが顕在化する3つの原因
レピュテーションリスクが顕在化する要素は、社員の不祥事やクレームの拡散など、数多くのケースが考えられます。
しかし、レピュテーションリスクが顕在化する根本的な原因は、下記の2つに集約されます。
- 企業評価を過剰に高めている
- 企業の実態が評価を大きく下回る
1つ目の原因は、自社への評価を過剰に高めていること。
評判を高めることは非常に重要ですが、実態と評価のギャップがあまりにも大きい場合、レピュテーションリスクの顕在化に繋がります。
たとえば、産地の偽装や製品性能の誇大広告などです。
上記のケースでは、景品表示法、不正競争防止法などの法令違反にあたるケースもあるため、企業への損害は大きなものとなるでしょう。
2つ目の原因は、企業の実態が自社への評価を著しく下回ること。
企業の信頼を損なう不祥事を起こした場合も、レピュテーションリスクの顕在化に繋がります。
例を挙げると、顧客データの情報漏洩や俗にいうバイトテロなどです。
近年では、世間の個人情報に対する重要度が高まっているため、情報管理能力の欠如によって客離れ・取引の見送りなどにつながるケースが少なくありません。
レピュテーションリスクの事例
レピュテーションリスクによって、経営難に陥った事例は下記の3つがあります。
- 2013年:飲食店でのアルバイトによる不祥事
- 2011年:大手電機メーカーで大規模な情報漏洩
- 2017年:大手広告代理店での過労死問題
上記の事例は、店舗の閉店や、損害賠償請求・刑事罰に発展するほど、企業経営に大きな影響を及ぼしたものです。
実際に発生した事例を把握し、レピュテーションリスクによる損失の理解・対策の検討に活かしましょう。
事例1.2013年:飲食店でのアルバイトによる不祥事
1つ目の事例は、2013年に発生した某飲食店チェーンのアルバイト店員による不祥事です。
アルバイト店員が冷蔵庫に入る姿をTwitterに投稿し、瞬く間に拡散されました。
その後、店舗の衛生管理・人材育成が問題視され、非難が殺到。
運営会社は、アルバイト店員の解雇・店舗の消毒・謝罪文を発表したものの信用が回復せず、閉店を余儀なくされました。
事例2.2011年:大手電機メーカーで大規模な情報漏洩
2つ目の事例は、2011年に発生した、ゲーム機などを扱う大手電機メーカーでの大規模な情報漏洩です。
外部からの不正アクセスにより、世界で7700万人分以上の顧客データが漏洩しました。
過去最大規模の情報漏洩と呼ばれ、この会社はセキュリティー管理の脆弱性が問題視されました。
会社の損失は、被害者への補填コストやセキュリティーへの投資コストなど、巨額なものに。
また、騒動中のサービス配信の停止・延期などにより、損害額は140億円以上に上ったとされています。
事例3.2016年:大手広告代理店での過労死問題
3つ目の事例は、2016年に発覚した、大手広告代理店での過労死問題です。
女性新入社員が、法外な過重労働が原因で自殺した事件。
連日のように報道で取り上げられ、最終的にこの会社へは罰金50万円の有罪判決が言い渡されました。
レピュテーションリスクによる3つの損失
事例からも分かる通り、レピュテーションリスクの顕在化は、下記3つの多大な損失をもたらします。
- 企業評価・売上の低下
- 信用回復にかかる巨額のコスト
- 行政処分・損害賠償による損失
この章では、先の事例と照らし合わせながら、レピュテーションリスクによる損失を詳しく解説します。
損失1.企業評価・売上の低下
1つ目の損失は、企業評価・売上の低下です。
レピュテーションリスクが顕在化することで、慢性的な客離れが起こり、売上の低下に繋がります。
また、アルバイト店員が起こした不祥事の事例からもわかるように、低下した企業評価の回復は非常に困難なため、閉店・倒産に追い込まれるケースが多いのです。
レピュテーションリスクが重視される昨今においては、顧客・取引先からの評判次第で企業の売上・存続さえも危ぶまれるのです。
損失2.信用回復にかかる巨額のコスト
2つ目の損失は、信用回復にかかる巨額のコストです。
情報漏洩の事例では、ユーザーへの被害補填として1人あたり最大100万ドルの補償制度を発表しました。
しかし、これはあくまでも補填コストであり、その後には、問題解決に向けたセキュリティー投資・信用回復に向けた宣伝広告などのコストが生じました。
損失3.行政処分・損害賠償による損失
3つ目の損失は、行政処分・損害賠償による損失です。
大手広告代理店の事例で生じた罰金がこれに当たります。
消費者は、刑事罰・行政処分に敏感なため、罰則による負担よりも、失った信用回復の方が大きな負担になるでしょう。
レピュテーションリスクの測定方法とは?
レピュテーションリスクへの対策をおこなうには、自社の評判を客観的な視点から把握することが重要。
レピュテーションリスクの測定方法には、下記の2種類があります。
- 報道調査
- アンケート調査
1つ目の測定方法は、テレビの報道やインターネット上を調査し、自社への印象・評判を調査する方法です。
テレビ報道の調査は、知名度の高い中堅〜大企業向けの調査方法です。
しかし、Twitter・FacebookなどのSNSや、転職サイトのクチコミ評価であれば、中小企業でも評価測定が可能でしょう。
ただ、インターネット上は、事実とは異なる噂・誹謗中傷を匿名で記載しているケースもあるため、注意が必要です。
2つ目の測定方法は、取引先や顧客などへアンケート調査をおこない、自社の評価や印象を調査する方法です。
相手との関係によっては、今後の取引に支障をきたすとしてアンケートを断られるケースもあります。
そのため、相手が分からぬよう、アンケートを匿名制にすると良いでしょう。
レピュテーションリスクを防ぐ3つの対策
レピュテーションリスクの顕在化を防ぐには、下記3つの対策が有効です。
- 積極的に広報活動をおこなう
- 社内教育の徹底
- インターネット情報の管理
この章では、上記対策の具体的な内容と、期待できる効果について詳しく解説します。
対策1.積極的に広報活動をおこなう
1つ目の対策は、積極的に自社の広報活動をおこなうこと。
企業が積極的に情報開示や自社の考えを明らかにしていれば、誤解によるレピュテーションリスクの回避につながります。
SNSの普及により、誰もが手軽に情報の取得・発信ができるようになりました。
誰もが手軽に情報発信できる一方で、中には事実と異なった情報も見られます。
仮に、企業が情報発信をしなければ、こうした誤った情報を信じ、拡散されるケースもあるでしょう。
一度広まった情報・評判は取り消しが難しく、正しい情報を流したとしても簡単には誤解が解けません。
したがって、企業側が積極的に情報を開示し、誤った情報が広まるリスクを軽減することが大切です。
対策2.社内教育の徹底
2つ目の対策は、社内教育を徹底すること。
社員による不祥事は、組織人としての意識の低さやネットリテラシーの低さが原因です。
近年では、バイトテロという言葉が認知されるなど、非正規雇用のアルバイトスタッフが不祥事を起こすケースが目立ちます。
したがって、正社員のみならず契約社員・アルバイトスタッフなど非正規雇用の従業員への教育が重要です。
たった1人の不祥事によって閉店・倒産する恐れもあるため、社内教育を徹底し、不祥事の防止に努めましょう。
対策3.インターネット情報の管理
3つ目の対策は、インターネット情報の監視・管理です。
レピュテーションリスクが注目され始めてから、ネット監視と呼ばれるサービスの利用が増加しました。
このサービスは、ネット上の情報を監視し、誹謗中傷・悪評が投稿された際に、拡散を防ぎ被害を最小限に抑えるためのサービス。
ネット上で広まった情報は、全てを削除することが非常に困難なため、ネット監視などを利用し、レピュテーションリスクの芽を早期で摘むことが大切です。
【注意】レピュテーションと経営実態のバランスが重要
会社の評判を高めることはもちろん重要ですが、企業実態とのバランスが最も重要です。
万が一、評判のみが先行した場合には、返ってレピュテーションリスクが高まるため注意が必要です。
仮に、評判が極めてよいお店で、可もなく不可もない料理・接客を受けた場合には、期待外れに感じるはず。
一方、評判が良くも悪くもないお店で同様のサービスを受けた場合には、もとより期待していないため、不満が少ないでしょう。
したがって、レピュテーションを高める際には、実態にあった評判を目指すことが、リスク回避に効果的なのです。
バランスを意識したレピュテーションリスク対策を心がけよう
本記事では、レピュテーションリスクの事例をもとに、会社に与える損失と対策を解説しました。
レピュテーションリスクとは、企業の悪評が広がることで、経営に支障をきたすリスクのことです。
リスクの顕在化によって、売上の低下・倒産にもつながるため、企業実態とのバランスを意識した対策が求められます。
レピュテーションリスクに関するマネジメントとブランディング戦略に関しては、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:レピュテーションとは?リスク事例から学ぶマネジメントとブランディング戦略 | ジョーカツキャンパス