M&A

セブン&アイが実施した国内M&Aと今後の展望を紹介します

セブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)は日本屈指の総合小売企業です。コンビニエンスストア国内最大手のセブンイレブンジャパンを軸に、百貨店、専門店、そして通信販売まで手掛けています。セブン&アイがここまで成長できた背景には同社がМ&Aを積極的に行ってきたことがあるのです。

一方でセブン&アイが行ってきたМ&Aの全てが成功したとはいえません。それには業績が低迷している企業をМ&Aしたため、経営再建に苦戦しているからです。

ではなぜセブン&アイがМ&Aを進めていったのでしょうか。そしてこれらМ&Aによる事業拡大は順調に進んでいくのでしょうか。

今回の記事では、セブン&アイが国内で行ってきたМ&A戦略とその理由や背景について解説します。そして近年セブン&アイが実施したМ&Aの事例を紹介し、その成否や今後の展望を解説します。

最後までお読みいただければ、セブン&アイの現状と今後について理解することができます。ぜひ最後までご覧ください。

1.セブン&アイは様々な業種・業態の小売業を持つ連合企業

はじめにセブン&アイについておさらいしましょう。セブン&アイは東京都千代田区に本社を置く純粋持ち株会社です。グループ企業にはコンビニエンスストア「セブンイレブン」、スーパーマーケットの「イトーヨーカ堂」、そして金融機関である「セブン銀行」など50社以上あります。

セブン&アイの成り立ちは1920年に創業した洋品店です。その後イトーヨーカ堂を設立し、1973年からコンビニエンスストア事業を開始しました。そしてコンビニエンスストア事業の拡大と後で解説する各社とのМ&Aを経て2005年に現在の持ち株会社となったのです。

2.セブン&アイのМ&A戦略

セブン&アイの成長はコンビニエンスストア事業だけでなく、М&Aを積極的に行うことで実現しました。日本で知名度の高い百貨店や専門店を中心に次々と買収していったのです。セブン&アイがこのようなМ&Aを実施していることには何か理由があったのでしょうか。実はセブン&アイの日本における経営戦略に基づいているものです。それは成熟した市場で総合小売大手が進むべき道でもあります。

(1)日本では「成熟市場の囲い込み」

ここからは日本におけるセブン&アイのМ&A戦略と事例について解説します。セブン&アイはコンビニエンスストア業界で国内トップの地位を獲得しています。しかしコンビニエンスストア業界は飽和状態になっており、日本の人口動態から見ても市場の拡大は望めません。そしてライバルもファミリーマート、ローソンとの大手3社を含めた寡占に近い状態になっているのです。

この状況でセブン&アイが同業他社のМ&Aで得られるメリットは多くありません。しかし他の業種や業態の小売業を取り込むことはメリットがあります。なぜならお客様にグループ企業で買物を促すことで様々なメリットを提供することができ、常にセブン&アイへ収益が入るようにできるからです。

このような考えのもと、セブン&アイは「オムニチャネル」と呼ばれる戦略を立てています。これは人が生まれた時からお年寄りになるまでにある、様々な買い物をセブン&アイグループで完結できるような仕組みを構築することです。

(2)高級業態を取り込む「西武・そごう」

セブン&アイのオムニチャネル戦略で実施した初めての大型М&Aは2006年の百貨店の買収です。百貨店業界は当時から業界再編が活発になっていました。その中でセブン&アイは「ミレニアムリテイリンググループ」を完全子会社化しました。ミレニアムリテイリンググループとは西武百貨店とそごうが2003年に合併して誕生した会社です。

このМ&Aにはセブン&アイが持たない「高級商品の顧客層」を取り込む狙いがあります。しかしМ&Aを実施したあとも、百貨店業界の衰退は顕著で思うように業績が伸びなかったのです。そして今は店舗の整理や譲渡など経営再建が必要になっています。

(3)若年層の消費を促す「ロフト」

次に2007年、セブン&アイは総合雑貨販売大手のロフトをミレニアムリテーリングが買収するという形で完全子会社化しました。ロフトは創業時、西武百貨店系列の小売店でしたが、西武百貨店が経営不振となり他社に株式を売却していたのです。

(4)赤ちゃんへの消費を狙った「アカチャンホンポ」

さらに2007年、セブン&アイはベビー・マタニティ小売業「株式会社赤ちゃん本舗」をイトーヨーカ堂の子会社にすることを決定しました。赤ちゃん本舗はアカチャンホンポという屋号で定評のあるマタニティ・ベビーグッズ専門店でした。しかし当時は少子化と業界内の競争で業績が悪化し、経営再建を目指していました。そしてオムニチャネル戦略を実行していたセブン&アイと利害が一致し、М&Aが実現したのです。

(5)ぴあの株式を取得しチケット販売で連携を目指す

そして2009年には当時経営不振におちいっていたチケット販売最大手の「ぴあ」に対して資本提携を結びました。ぴあが持つ各種イベントのチケット販売網をセブンイレブンなどで販売することで相乗効果を生み出す狙いがあったのです。

(6)CD/DVD専門店を買収し集客力を図る

セブン&アイは2010年になって「タワーレコード」に資本参加することを決めました。(翌年2011年には出資比率を高めて筆頭株主になっています)タワーレコードはアメリカ発祥の音楽・映像ソフト専門店です。これを機にセブン&アイは自社店舗にタワーレコードの店舗をオープンさせ、前年にМ&Aを行ったぴあとの連携を図るようになりました。

(7)通販事業の強化も目指す「ニッセンホールディングス」

他にもセブン&アイは、通販事業の拡充にも力を注いでいます。2013年に総合通販大手の「ニッセンホールディングス」と資本業務提携を結びました。そして2016年にはニッセンホールディングスを完全子会社化にしたのです。

ところがこのМ&Aも順調には行きませんでした。資本提携後、ニッセンホールディングスの業績は悪化し続けたのです。そのためセブン&アイによる完全子会社化はニッセンホールディングスが経営再建の手助けを求める形によるものになりました。現在もセブン&アイによるニッセンホールディングスの構造改革が進められているのです。

3.「全世代むけのラインナップ」は達したが利益貢献は不十分

これらМ&Aでセブン&アイはオムニチャネル戦略に向けて大きな軸を確立したと言えます。生まれる前から高齢者になるまで、どの世代においてもセブン&アイグループが関わることができるようになったからです。

ところがこれらМ&Aは成功したとはいえません。なぜならこれらМ&Aで得た事業はいずれも利益貢献ができていないからです。2019年期末の業績によると、営業収益ではコンビニエンスストア9554億円、百貨店・専門店合計9475億円と肩を並べました。その一方で営業利益ではコンビニエンスストアが2467億円に対して、百貨店・専門店合計は103億円なのです。

その理由はМ&Aを実施した企業の多くは当時、業績が低迷していたため今なお再建に苦慮していることと、いずれの業界も競争が激しいことが挙げられます。そのためセブン&アイは百貨店事業を中心に店舗の戦略転換を行い、収益性の改善に取り組んでいますが今後も厳しい経営が続くと思われます。

4.各地の「ブランド小売店」と協業を目指す

一方でセブン&アイはスーパーマーケットと百貨店のシェアが低い地域への進出も手掛けています。コンビニエンスストアでは全国的なネットワークができたのに対して、スーパーや百貨店事業では地域による隔たりが残っているのです。

しかしセブン&アイがシェアの低い地域のスーパーや百貨店をМ&Aで子会社化することは容易ではありません。なぜならスーパーや百貨店は地域性が強いビジネスで、日本各地で強い地盤を持つ企業が安定した経営を行っているからです。そのためセブン&アイは子会社化ではなく、資本提携や業務提携という形で進めています。

(1)弱い地域を補完する①「ダイイチ」

セブン&アイは2013年、北海道で展開するスーパー「ダイイチ」と資本業務提携を結び、ダイイチの株式30%を取得しました。セブン&アイは北海道ではスーパーマーケットが少なかったことと、ダイイチは経営順調であったが今後の事業戦略に必要だという思いが合致したМ&Aでした。

(2)弱い地域を補完する②「天満屋」

さらに同年、セブン&アイは中国地方で展開する「天満屋」と業務提携を結び、天満屋の子会社である「天満屋ストア」と資本提携を行いました。セブン&アイは元来関東から東日本に地盤があったため、中国地方も手薄な地域でした。一方で天満屋は地盤のある岡山にイオンが大型店舗を出店することが分かっていたため、危機感を強めていたのです。

(3)弱い地域を補完する③「H2Oリテーリング」

そして2015年にはセブン&アイは関西の百貨店大手「阪急百貨店」を有する「H2Oリテーリング」と資本業務提携を結びました。これによってセブン&アイが有していた関西地域の百貨店をH2Oに譲ることになったのです。そしてお買い物ポイントの共通化などで、相乗効果を図るとしています。

5.業務提携で補完するケースもある

また、セブン&アイは地域の有力店に対してМ&Aだけでなく業務提携という形で相乗効果を目指す取り組みも行っています。

2015年、セブン&アイは関西地域の食品スーパーである「万代」と業務提携を結びました。関西地方もセブン&アイが手薄な地域でした。一方で万代は競争の激しいスーパー業界において増収増益を続ける優良企業です。しかし万代は店舗のデジタル化などで他社の遅れをとっている点に課題があったのです。

それ以後もセブン&アイは小田急電鉄や中国地方のスーパーイズミとの業務提携を結び両社の経営地盤強化に協業することになりました。

6.地域の優良店との緩やかな連携は長期的に期待できる

このようにセブン&アイは自社の弱点を補う提携も進めいています。この形では子会社化と比べて提携先への支配力は弱まります。しかし日本の小売業の特徴と長期的な相乗効果を狙うには緩やかな連携で協業する方が効果的です。

なぜならスーパーや百貨店は地域に対するブランド力が大きく影響されるからです。また子会社化できる小売業はすでに業績が傾いていることが多く、経営再建に手間がかかっているという理由も挙げられます。

7.セブン&アイの総合小売業としての発展に期待

今回はセブン&アイの日本におけるМ&Aの推移と展望について解説しましたがいかがでしたでしょうか。今回の記事のポイントは以下の通りです。

  • セブン&アイはコンビニエンスストア事業を軸にして成長した日本屈指の小売業
  • 成熟した日本市場で幅広い客層を取り込めるМ&Aを選択
  • 高級商品を求める客層を狙って百貨店を傘下に治める
  • 乳幼児や若年層に定評のある専門店をラインナップに治める
  • これらМ&Aは売上に貢献するも利益貢献は薄い
  • スーパーマーケット事業は未開拓の地域を業務提携で広げる戦略
  • 地域の優良小売業との連携が進んでいる
  • 緩やかな連携を図りながら長期的な成長が期待できる

今セブン&アイにとってこれまで利益の源泉であったコンビニエンスストア事業にて様々な問題が生じておりビジネスとしての岐路に立たされています。その一方で近年積極的に行ってきたМ&Aがコンビニエンスストア事業に代わるビジネスの柱に成長することが期待されます。

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