M&Aを成功させるためのノウハウや事例を無料公開中 M&Aを成功させるためのノウハウや事例を無料公開中

TOB成立後に株価はどうなるのかについて解説

上場企業の買収は一般的にTOB(株式公開買い付け)で行われ、その際、株価が大きく変動することが多くあります。

またTOBには、友好的TOBと敵対的TOBがあり、それぞれどちらも株価に影響を与えます。

本記事では、企業・会社の買収で株価がどう変動するのか?友好的TOBと敵対的TOBで、株価の変動にどう影響の違いが出るのか

そもそも株価が上下する理由やTOBについてなど、具体的に解説していきます。

TOBとは

 

TOBとは「Take Over Bid」の略で株式公開買付と呼ばれています。

M&Aで企業を買収する方法には様々ありますが、上場企業の株を買い付けるには公告で買付申請し、不特定多数の株主から、大量の株式を購入しなければなりません。

これを「TOB=株式公開買い付け」と言います。

TOBとは株を買い集めて企業を買収すること

TOB(株式公開買い付け)とは、株式を公に買い集め、企業を買収するM&Aの一種です。

テレビのニュースなどでもTOBの文字を見かけることがあると思いますが、最近だと「オイシックス・ラ・大地による、シダックスへのTOB」が話題です。

株を買い集めて買収する具体的な方法として、持ち株比率が50%を超えることで会社の経営権を得ることができます。

そのため買収する側は、全株の51%の株式取得を目標に公開買い付けのための募集を行い、買い集めます

一般的には上場企業の買収に用いられる手法ですが、非上場企業でもTOBの対象となるケースもあります。

TOBは2タイプ

TOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2タイプあります。

それぞれどういったTOBなのか、解説します。

友好的TOBとは

友好的TOBは、買収する側、買収される側、双方の経営陣が株の買取を承諾した上で、TOBを行うことです。

例えばグループ企業の会社を完全子会社化する時には、友好的TOBとなります。

経営権は別会社に渡ることになりますが、役員や従業員はそのまま引き継がれることが多いです。

敵対的TOBとは

一方、敵対的TOBは、買収される側が同意していないのにも関わらず、強引に株を買い集め、過半数の株式を取得し強制的に買収するという手法です。

わかりやすくイメージするなら「乗っ取り」です。

敵対的TOBの場合は、買収される側も、買収されまいと対策を取ってくるため、失敗に終わるケースもあります。

敵対的TOBは友好的TOBとは異なり、買収成立後に役員や従業員が解雇させられたり、部署ごと消滅してたりする可能性もあります。

「オイシックス・ラ・大地による、シダックスへのTOB」は、敵対的TOBに該当します。

TOBで株価が上下する理由

「株価」とは、企業が発行している株式1株あたりの値段を指し、上場企業の株式はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場(※)などで日々、売買取引されています。

2022年4月4日、東証一部やマザースなどの市場区分が『プライム市場・スタンダード市場・グロース市場』の3種類に変更されました。

株価が上下する仕組みは、株式を買う人が多ければ株価は上昇し、売る人が多いほど株価が下がります

その1日の終わりの最後に約定した価格(=売買が成立した価格)が、その日の株価となります。

では買う人売る人が偏り、株価が上下する要因には何があるか見ていきましょう。

企業側の要因

株価に影響する要因の一つとして、企業側の要因があります。企業の業績・売上・利益などを元に企業の価値や将来性が判断され、市場で株式が売買されるといった流れです。

例えば業績が悪いと、将来性が感じられなくなり、企業の株式はどんどん売られて株価が下がります。

業績が伸びている・新規事業への参入で将来性があるなどと判断された場合には、企業の株式を買う人が増え、株価は上がることが多いでしょう。

また、株価が変動する企業側の要因の一つには、本記事の主題である「企業の買収」も大きく関わってきます。

企業買収と株価の変動については、後述する「買収する会社の株価について」以降を参考にしてください。

それ以外に、世界情勢や景気によって企業・株価に大きな影響を受ける場合もあります。

人の心理に関係した要因

株を売り買いするのは主に人の判断です。現代ではロボアドバイザーというAIの投資サービスがありますが、まだまだ自分の判断で運用したいと考える株主は多いことでしょう。

気になっている企業やすでに保有している企業の株を、買う(あるいは買い増す)か売るかは、企業からの開示情報や値動きに左右されます。

特に年4回の四半期決算発表の際には株主の注目が集まり、株価が大きく動くことも珍しくありません。

しかし、業績が良かったからといって株価があがるわけでもなく、株主からの期待値とのギャップで株価が上下することもあるので、人の心理に関係した要因を紐解くのはなかなか困難です。

また、市場の株価が上がり始めると「もっと上がるかもしれないから今のうちに買っておこう」となり、逆に暴落する動きを見せると「どこまで下がるかわからないから今のうちに売ろう」という人が増え、値動きによって人の心も動き、株価が上下する要因となります。

TOBする会社の株価について

企業買収は主にTOB(株式公開買い付け)という方法で行われ、株価に大きく影響してきます。

株価が上がるか下がるか、一概にどちらとも言えないのが買収側の株価の特徴です。

しかし、上がるも下がるも要因はあります。買収する会社の株価が上がる要因・下がる要因をそれぞれ解説していきます。

株価が上がる要因

企業側の要因・人の心理的要因で株価が上下すると言っても、やはり買収する会社のブランドや知名度、業績が大きく影響してきます。

「会社を買収する=将来性が見込める」と判断されることが多く、その将来性を見込まれて株式の需要が増え、株価が上がる可能性は高いでしょう。

特に新事業への参入・会社の規模拡大などはプラスのイメージが強いので、買収した企業の株を買おうという人は増える可能性が高くなります。

買収する資金力があるということも示されるので、プラス要素になる可能性が高いです。

株価が下がる要因

株価が上がるケースがほとんどという一方、企業を買収した結果、株価が下がることもあります。

無理に事業拡大を狙った買収に映ってしまったり、買収資金が借入によるものだったり、大規模の会社同士による買収だったりすると、ネガティブな印象を受けて、結果的に株価が下がる可能性もあります。

買収価額が想定より高すぎるのも、株価が下がる要因の一つです。

また、買収時には下がらなくとも、買収後の業績が思うように伸びなかった場合は、先行きが不安だと株主から判断され、大量に株を売られることで株価が下がったり、低迷したりする可能性も否定できません。

企業を買収したからといって、必ず株価が上がるわけではないことは覚えておきましょう。

TOBされる会社の株価について

一方、買収される側の会社の株価はどうなるのでしょうか。

結論から言うと、一般的に上がりやすい傾向があり、下がることはほぼありません

『買収プレミアム』による株価の上昇と、一般市場での買付による株価の上昇があり、それぞれ状況別で解説していきます。

株価が上がる要因

市場から買い集めて株価が上昇するケース

買収側がTOBを使わずに市場から株式を買い集めた場合、買い注文が殺到するため株価は上昇していくのが普通です。

一般の株式市場で買い集める方法は、株式の50%以上を取得して子会社化するケースに見られることがあり、株式を市場から買い集めることがそこまで困難ではない場合に使われます。

買収プレミアムで株価が上昇するケース

TOBでの買収にしても株価は上がることがほとんどで、『買収プレミアム』による要因があります。

例えば時価総額30億円の会社を買収しようとする際に、同額で買収はしません。およそ30%〜40%の金額を上乗せし、40億円前後で取引されます。

この上乗せした金額が買収プレミアムです。実際の株価よりも高い金額で買収されるため、市場の株価も同程度の株価に上昇するケースが多いです。

株価が下がる要因

買収される側の企業は、買収が発表されてから買収が終わるまでの期間に株価が下がることは、ほとんどありません。

株価が上がる要因であげたように、買収する側が大量に株式を買うためです。

しかし、買収が中断した・買収に失敗したなどの時には、買収期間終了後に株価が下がる可能性は十分にあり得ます。それについては、後述する「敵対的買収(TOB)が株価に与える影響」で解説します。

なお、買収された会社は上場廃止となりますので、買収成立後は株取引ができなくなります。

TOB(take-over bid)とは、株式公開買い付けといって「この企業を買収します」と世間に公開する買収方法です。

買付期間や買付価格、買付予定株数もあらかじめ公表し、不特定多数の株主から直接株式の買付をします。TOBは通常の株式取引市場を経由しません。

TOBには友好的買収と敵対的買収がありますが、それぞれ株価にどう影響を与えるのか。まずは、友好的買収の株価に与える影響にはどのようなものがあるか、見ていきましょう。

友好的TOBとは

友好的TOBとは、買収される側の経営陣からの承認を得ているTOBで、グループ企業の完全子会社化や吸収合併などのケースが代表的な例です。

日本の企業買収のほとんどは友好的TOBで取引されています。

友好的TOBにおける株価の変化

TOBでの株式買付は、あらかじめ買付価格が公表されており、その価格はその時の株価よりおよそ30〜40%のプレミアムを上乗せして取引されます。

その影響により、TOBを発表した段階で買い注文が増え、取引き価格付近まで上昇することも珍しくありません。

しかし、一時的に株価が上昇しても、その後の業績や見通しが悪い場合は、期待薄とみなされ株価が大きく下落することもあります。

友好的TOBだからといって、良い側面ばかりというわけではありません。

敵対的買収(TOB)が株価に与える影響

友好的買収と逆で、敵対的買収があります。

敵対的買収もまた、株価に大きく影響を与えます。どのような影響をもたらすか、理由や状況などを交えて解説していきます。

敵対的TOBとは

敵対的TOBとは、買収される企業の経営陣が、買収に合意していないのに買収を仕掛けるTOBです。

合意を取らずに50%超の株式を買い集めなくてはいけないので、資金力が大きくないとハードルは高く、実質乗っ取りになります。

敵対的TOBにおける株価の変化

敵対的TOBの場合は、無理やり株式を買い集めることになりますので、基本的には株価は上昇していきます。

しかし、敵対的TOBに対して買収側が何かしらの買収防衛策を取った場合、株価が高止まりしたり、乱高下したりするケースもあります。

関連記事:買収防衛策とは?状況に応じた防衛策や問題点を解説

買収防衛策を取られ、買収が失敗に終わった場合は、TOB期間終了後に株価が下がる可能性は十分にあります。

最悪の場合、TOB発表の時点より下がってしまうケースもあるでしょう。

なお、50%超の株式を取得され買収が成功した場合は、買収された側の株式は上場廃止になり、取引ができなくなります。

株価1円で企業を買収する「1円買収」について

企業を買収する際は少なからず価額が算定され、ほとんどが数百万円〜数千万円、またはそれ以上で売買取引されます。

しかし、状況によっては「企業を1円で買収する」というケースもあります。

1円買収についてや、メリット・デメリットを解説していきます。

1円買収とは

1円買収は、極度の赤字のために1円という価額がつけられる、赤字企業の買収の時に使われる方法です。

M&Aにおける買収価格は、時価純資産や簿価純資産をもとにして、あるいは買収対象の会社や事業に将来期待される利益を加味して算出されます。

買収対象が多額の負債を抱えていたり、極度の業績不振であったりする場合は、資産から負債が差し引かれ、最終的な「企業の値段」が決まります。

ただし、すべての赤字会社が負債まみれというわけではありません。

手元に現金が無いために赤字に陥っているケースもあれば、借入金や減価償却費等の合計が売上額よりも多いために赤字となっているケースもあります。

たとえ資金力に乏しくても、キャッシュフローが不足していても、優秀な人材や技術、広い販路を持っている魅力的な赤字会社であれば、1円買収によって経営を立て直し、売り上げを増加させることもできます

1円買収のメリット

1円買収のメリットは、株価1円という投資額で優秀な人材や技術、参入予定の業界の取引先(顧客)を獲得できます。

もちろん、1円買収によって自社の事業と大きなシナジー効果が期待できる場合は、相手が赤字企業であっても「買い」であると言えるでしょう。

なお、買い手側にとっての利益は、引き継いだ借入金や負債が何年で完済できるかが判断のポイントとなります。

1円買収のデメリット

1円買収にはデメリットもあります。安く会社を買えるからといって、手放しで喜べるわけではありません。

  • 買収する際のデューデリジェンスやM&Aに関わる相談料や業者への費用
  • 赤字立て直しのための多額の資金投入の必要性
  • 節税効果はほぼ期待できない

などのデメリットがあります。

買収したら終わりではなく、買収したらそこから新たに経営が始まります。

買収後にどうマネタイズして黒字化していくのか、追加資金や支援が必要かどうか、帳簿で確認できる以外の債務(簿外債務など)や経営上のリスクはないかなど、確認すべき点は多くあります。

また、節税については、繰越欠損金を引き継げるM&Aスキームは合併のみであり、さらに一定の要件を満たした「適格合併」に限られます。

1円買収を検討する際は、買収費用や買収目的をしっかり考慮した上で、メリットのほうが上回る場合に実行に移すと良いでしょう。

買収される企業の株価は上がりやすい

企業・会社の買収が株価に与える影響はとても大きく、時には激しく値動きします。

一般的に買収される側は上がりやすい傾向はありますが、敵対的買収を仕掛けられた場合は買収防衛策を取らざるを得ないシーンも出てくるでしょう。

上場企業で売上が伸び悩んでいたり、赤字で経営の継続が困難だったりする場合は、他企業からの望まない敵対的買収を仕掛けられる前に、友好的買収で会社を買収してくれる企業を探すことも視野にいれると良いかもしれません

パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。

パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴

  • IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
  • IT業界の豊富な情報力
  • 「納得感」と「満足感」の高いサービス
  • プロフェッショナルチームによる適切な案件組成

M&Aで自社を売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

またM&Aを成功させるためのコツについて全14ページに渡って説明した資料を無料でご提供しますので、下記よりダウンロードしてください。