非上場株式の譲渡の際に適正価格をどう算定したらいいのか、悩んでいませんか?
適正価格を誤ると、会社の価値を過小評価したり過大な税負担を招くリスクがあります。
適正価格の算定方法をわからないままにすると、M&Aの成功が危うくなり株主からの不満や取引の破綻にも繋がりかねません。
この記事では、非上場株式の適正価格を算定する具体的な方法や時価の算定手順などを詳しく解説します。
この記事を読むことで、適正価格の算定方法や注意点を理解し、スムーズに株式譲渡を進めるための知識が得られます。
より良い取引条件でM&Aを成功させるための手助けとなるでしょう。
目次
- 1 非上場株式を譲渡する際の適正価格の算定方法
- 2 DCF方式
- 3 純資産方式
- 4 類似業種比準方式
- 5 配当還元方式
- 6 取引事例方式
- 7 非上場株式の譲渡における時価の算定方法
- 8 個人から個人
- 9 個人から法人
- 10 法人から法人
- 11 非上場株式を譲渡するメリット
- 12 大きな資金が手に入る
- 13 税金負担が軽減される
- 14 事業継承の手段として活用できる
- 15 非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと起きる問題
- 16 M&Aの目的が達成できない
- 17 みなし配当の課税リスク
- 18 株主から理解を得られない
- 19 適正価格でM&Aが実現できない
- 20 非上場株式の譲渡時の適正価格を決める注意点
- 21 予期しない市場の変化が起きる
- 22 企業価値を見誤る恐れがある
- 23 譲渡価格と時価が同じとは限らない
- 24 非上場株式を譲渡する際の流れ
- 25 譲渡する候補先を探す
- 26 候補先と交渉・合意する
- 27 株式譲渡の承認・決議をする
- 28 株式譲渡契約を締結する
- 29 売買代金の決済をする
- 30 株主名簿の書き換えをする
- 31 株式譲渡する際の価格を高めるポイント
- 32 高く買ってくれる買い手に譲渡する
- 33 買い手に正確で具体的な情報を開示する
- 34 買い手同士を競争させる
- 35 非上場株式の譲渡適正価格を理解してM&Aを成功に導こう!
非上場株式を譲渡する際の適正価格の算定方法
非上場株式を譲渡する際には、適正な価格を算定することが重要です。
とくに非上場企業は市場での取引がなく株価が公開されていないため、適正な評価方法を用いることで公正な取引が行えるようにします。
ここからは、非上場株主の適正な価格を算定する代表的な方法を詳しく解説します。
DCF方式
DCF方式(割引キャッシュフロー法)は、企業が将来生み出す価値をフリーキャッシュフローをもとに算定して資本コストで割引いて現在価値に換算する方法です。
DCF方法は会社の将来性やのれんを評価に反映できるため、大企業のM&Aで多く用いられています。
しかし、将来の予測に恣意性が介入しやすいため、客観性に欠ける点がデメリットです。
純資産方式
純資産方式は、企業の純資産の時価評価額をもとに非上場株式の価格を算定する方法です。
純資産方式を用いると、計算が簡単で根拠も示しやすいです。
しかし、解散時に全資産を売却した場合の価値をもとに評価するため、将来性を考慮しにくく成長を期待する企業には不向きというデメリットもあります。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、上場企業の株価をもとに非上場企業の株式を評価する方法です。
類似業種比準方式は、評価対象の企業と同様の業界や事業規模を持つ複数の上場企業を選定し、株価や収益性などを比較して株式価値を算出します。
類似する企業のデータを使用することで信頼性が増しますが、類似する企業を見つけることが難しいです。
類似業種比準方式の適用には、慎重な検討が求められるでしょう。
配当還元方式
配当還元方式は、非上場株式を所有することで受け取る配当金を基に評価額を決定する方法です。
具体的な算出方法として、予測される年間配当額を一定の利率(一般的には10%)で割り引いて株式の価額を算出します。
配当還元方式は配当が継続的に行われている企業の評価には有効ですが、配当が不定期な企業や将来性を考慮しにくいのがデメリットです。
取引事例方式
取引事例方式は、過去の実際の取引価格を参考に非上場株式の評価を行う方法です。同様の条件で成立した取引がある場合に役立ちます。
取引事例方式は、類似する規模や事業内容を持つ企業間の取引価格を比較して適用しますが、市場での取引事例が少ないとデータが十分に得られないことがあるため、適用には限界があります。
取引事例方式は他の方式と組み合わせて活用しましょう。
非上場株式の譲渡における時価の算定方法
非上場株式の譲渡において、時価の算定方法は取引の当事者によって異なる場合があります。
個人間の譲渡、個人から法人への譲渡、法人間の譲渡、それぞれで適用される算定方法や注意点が異なるため、適正な評価を行うことが重要です。
ここからは、非上場株式の譲渡における時価の算定方法について詳しく解説します。
個人から個人
個人間での非上場株式の譲渡における時価の算定は、税務上の課題が生じることが多いです。
取引価額が税務上の時価より低い場合、贈与税や譲渡所得税の課税対象となる「みなし贈与」や「みなし譲渡」が適用されることがあるため、取引価額が評価通達による時価と一致しているかどうかが重要です。
非上場株式は市場での自由取引が難しく、第三者間での客観的交換価値を評価するのが困難な場合が多いので注意しましょう。
個人から法人
個人から法人への非上場株式の譲渡は、税務上の時価と実際の取引価額に差がある場合、「みなし贈与」や「みなし譲渡」が適用されて贈与税や所得税の課税が生じる可能性があります。
とくに取引価額が税務上の時価よりも低い場合、贈与とみなされるリスクが高くなります。
評価通達に基づく時価評価を行い、取引価額が適正であることを証明することが重要です。
法人から法人
法人から法人への非上場株式の譲渡は、税務上の時価と実際の取引価額に差がある場合は贈与税や所得税の課税リスクが発生します。
取引価額が税務上の時価を下回ると「みなし贈与」として課税されることがあるため、時価の算定には財産評価基本通達を用います。
財産評価基本通達を適用することで合理的な時価を算定できるため、課税上の問題を回避することが可能です。
非上場株式を譲渡するメリット
非上場株式の譲渡には、多くのメリットがあります。
株式を譲渡することで大きな資金を手に入れられるだけでなく、適切な税務対策を講じることで税金負担の軽減が可能です。
ここからは、非上場株式を譲渡するメリットを3つ挙げて詳しく解説します。
大きな資金が手に入る
非上場株式を譲渡することで、大きな資金を手に入れることが可能です。
とくに経営が好調で成長が期待されている非上場企業の場合は、株式が高く評価されるため譲渡によって多額の資金を獲得できます。
創業者が成功裏に育てた企業があるなら、株式を売却することで創業時の投資に対して大きなリターンが得られるでしょう。
税金負担が軽減される
非上場株式を譲渡することで、税金負担が軽減されるケースがあります。
相続での株式取得と比較すると、譲渡による税金が相対的に低い場合が多いからです。相続税は累進課税で最大55%ですが、株式譲渡では所得税など約20〜40%程度の税率で済みます。
非上場株式の評価額が高い場合、相続よりも株式譲渡のほうが税制上有利な選択肢と考えられるでしょう。
事業継承の手段として活用できる
非上場株式の譲渡は、事業継承の手段として有効です。
とくに後継者がいない中小企業では、株式譲渡を通じて外部から後継者を迎え入れて経営権を引き継ぐことで、企業の存続を確保することが可能です。
株式譲渡での経営権の引き継ぎは、比較的手続きが容易で事業をそのままの形で引き継げるため、従業員や取引先にも大きな影響を与えずにスムーズに事業継承が行えます。
非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと起きる問題
非上場株式を譲渡する際に適正価格を知らないと、さまざまな問題が発生します。
適正価格を知らないことで発生する問題は、企業の経営に大きな影響を及ぼすため、適切な評価と価格の設定が不可欠です。
ここからは、非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと起きる問題を具体的に取り上げて詳しく解説します。
M&Aの目的が達成できない
非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと、M&Aの目的を達成できない可能性が高くなります。
適正価格を誤ると売り手側が適正な対価を得られずに、M&Aを通じて計画していた資金調達や事業拡大などの目的が果たせなくなるからです。
買い手側にとっても過大評価された価格での取得は資金負担が大きく、経営に悪影響を及ぼすことがあります。
みなし配当の課税リスク
非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと、みなし配当課税のリスクが生じます。
株主が会社に株式を売却する場合、譲渡益課税ではなく「みなし配当」として所得税が課せられます。
適切な価格設定を行わないと、譲渡代金の大半が税金として消えるリスクがあるため注意が必要です。
税率を下げたいなら、法人を介するなどの税務戦略を考えないと大きな損失を招くことになります。
株主から理解を得られない
非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと、株主からの理解を得られません。
適正な価格が不透明であればあるほど、少数株主から「公正な取引が行われていない」と見なされて不満が生まれるからです。
株主間で不満があると信頼関係が損なわれるため、将来的な資金調達や株主構成の安定性に悪影響を及ぼす可能性があります。
適正価格でM&Aが実現できない
非上場株式の譲渡で適正価格を知らないと、適正価格でM&Aを実現できない可能性が高いです。
適正価格の評価が不十分だと、買い手と売り手双方の合意が得られずに価格交渉が難航することがあります。
また、価格が正しく設定されていない場合は、買い手側の資金負担や経営リスクの認識が一致しないことから交渉自体が破綻することもあります。
適正価格で設定しないと、M&Aの取引が成立せずに経営権のスムーズな移転が実現できないので注意しましょう。
非上場株式の譲渡時の適正価格を決める注意点
非上場株式の譲渡時に適正価格を決めるには、いくつかの注意点があります。
市場の変化が予測と異なる場合や企業価値を誤って評価するリスクなどがあるため、譲渡価格と時価が一致するとは限りません。
ここからは、非上場株式の適正価格を決める際に注意すべき点について詳しく解説します。
予期しない市場の変化が起きる
非上場株式の譲渡における適正価格の決めるときには、予期しない市場の変化が起こる可能性があります。
市場金利や経済状況、業界のトレンドなど、企業価値を評価するための前提が変化すると、適正価格に大きな影響を与えるからです。
市場に変化が起こると、企業の将来の収益性やリスク評価に影響して譲渡価格に対する理解の一致が難しくなります。
非上場株式の適正価格を設定する際には、市場の変化を含めた柔軟な評価をする必要があるでしょう。
企業価値を見誤る恐れがある
非上場株式の譲渡時の適正価格を決める際は、企業価値を見誤る恐れがあるので注意しましょう。
見誤る原因は、将来のキャッシュフローや企業の成長性を適切に評価できないからです。
DCF方式などの適正価格を算定する方法は将来の収益予測に基づいて価格を算定しますが、予測の不確実性が介入しやすいため、客観性に欠ける可能性があります。
非上場株式の譲渡時の適正価格を決める際には、これまでのデータでは見えない部分を企業価値として反映させる意識を持ちましょう。
譲渡価格と時価が同じとは限らない
非上場株式の譲渡時には、譲渡価格と時価が同じとは限らないことを念頭におきましょう。
非上場株式の時価は評価方法や市場の状況によって変動しやすく、買い手と売り手の交渉力や立場によって譲渡価格が決まるのが多いからです。
非上場株式の譲渡時には適正な価格評価を行うことで、双方が納得できる条件を整えることが重要です。
非上場株式を譲渡する際の流れ
非上場株式を譲渡するには、段階的な流れを理解して進めることが重要です。
非上場株式を譲渡する際の流れを段階的に詳しく解説します。
譲渡する候補先を探す
非上場株式を譲渡する際は、まず譲渡する候補先を探しましょう。
候補先を探す際は、自社にとってどのような相手が適切かを明確にすることが重要です。
譲渡先には同業種だけでなく、異業種も含め幅広く検討することで新たな市場や技術へのアクセスが得られます。
譲渡先としては事業会社やファンド、個人経営者など、それぞれの特徴を踏まえた選択肢を持つといいでしょう。
候補先と交渉・合意する
譲渡する候補先を探したら、候補先と交渉・合意する段階に入ります。
交渉・合意する際は「基本合意書(LOI)」を締結します。基本合意書は、株価や取引のスケジュール、独占交渉権や秘密保持義務などを定める書面で、双方の理解を深め交渉をスムーズに進めるのに重要です。
交渉する際には秘密保持と独占交渉権を明確にすることで、安心してデューデリジェンスを行う環境を整えましょう。
株式譲渡の承認・決議をする
譲渡先との交渉・合意が取れれば、取締役会または株主総会による承認・決議が必要です。
多くの非上場株式には譲渡制限が設定されているため、株主が自由に譲渡することはできません。
譲渡先が決定した後には、取締役会または株主総会で譲渡の承認を得ることが求められます。
承認が得られない場合は、譲渡は実行できず手続きを進められないので注意しましょう。
株式譲渡契約を締結する
株式譲渡の承認・決議がされると、買い手と売り手が譲渡条件を正式に取り決める契約を結びます。
契約には、譲渡する株式の数や譲渡価格、クロージングまでの条件などが含まれます。
譲渡価格は、契約時に合意する「Locked Box方式」と、クロージング時までの財務状況の変動を反映して価格を調整する「Closing Adjustment方式」の2種類で譲渡価格の公平性を確保します。
売買代金の決済をする
株式譲渡の契約を結ぶと、ついに売買代金を決済します。
非上場株式の譲渡における売買代金の決済は、クロージングと呼ばれる最終的な取引完了プロセスです。
決済は譲渡契約に基づいて売買代金の支払いが行われることで、株式の所有権が買い手に移転します。
売買代金の決済方法には、Locked Box方式とClosing Adjustment方式があり、財務状況の変動に応じて価格が調整されることもあります。
株主名簿の書き換えをする
株式譲渡の決済が完了したら、株主名簿の書き換え手続きをしなければなりません。
株主名簿は会社の株主を正式に記録するもので、株式譲渡が完了すると新たな株主として名簿の変更が行われます。
書き換えの手続きが完了することで法的に新しい株主が認められるため、会社法に基づく株主の権利が与えられます。
ただし、譲渡制限株式の場合は株主名簿の変更には会社の承認が必要なことが多いので注意しましょう。
株式譲渡する際の価格を高めるポイント
株式を譲渡する際には、価格をできるだけ高く設定するほうことが望ましいです。
ここでは、非上場株式を譲渡する際の価値を最大化させる具体的なポイントを詳しく解説します。
高く買ってくれる買い手に譲渡する
非上場株式の譲渡価格を高めるためには、高く買ってくれる買い手に譲渡することです。
譲渡価格は交渉次第で変動するため、買い手側の興味や将来性の期待性を感じさせることが大切です。
より高い価格で買い取ってくれる可能性がある複数の買い手と交渉することで、最も好条件を提示する相手に株式を譲渡できるでしょう。
買い手に正確で具体的な情報を開示する
非上場株式を譲渡する際に価値を高めるには、買い手に正確で具体的な情報を開示しましょう。
譲渡に関する正確な情報を提供することで、買い手はリスクを正確に把握して適正な評価を行えます。
買い手は譲渡される株式の価値を評価する段階で、財務情報や業績、株主の状況などを偽りなく開示することが、より高い価格で取引を成立させられるでしょう。
買い手同士を競争させる
株式譲渡時に価格を高めるためには、買い手同士を競争させることが効果的です。
競争環境を作ることで、買い手は他の候補に対抗してより高い価格を提示しやすいからです。
とくに非上場企業の株式は譲渡制限がある場合が多いため、譲渡価格の引き上げに繋がりやすいです。
買い手候補を慎重に選んで交渉を戦略的に進めると、より有利な条件での取引を実現できるでしょう。
非上場株式の譲渡適正価格を理解してM&Aを成功に導こう!
非上場株式を譲渡するときの適正な価格を理解し設定することは、M&Aを成功させるために不可欠な条件です。
適正価格を設定することで企業の価値を正しく評価できるため、売り手と買い手の双方にとって公正で満足のいく取引が実現できます。
DCF方式や純資産方式、類似業種比準方式、配当還元方式など、さまざまな価格の算定方法を知っておくことで、企業の本当の価値を見極めて公正な取引が可能です。
適正価格の算定方法をしっかりと理解し状況に応じて最適な方法を選ぶことが、M&A成功の一歩目になるでしょう。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
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