1,000億円以上の企業価値を持ちながら未上場のスタートアップを指すこの言葉は、いまや世界経済を語る上で欠かせません。
しかし、日本ではユニコーン企業の数が驚くほど少ないのが現状です。もしこの状況が続けば、国際競争力を失い、経済成長も鈍化してしまうかもしれません。
この記事では、ユニコーン企業の定義や世界のユニコーン企業例、日本に増えない理由を掘り下げるとともに、どのようにして日本でもユニコーン企業を増やすことができるのかを解説します。
この記事を読むことで、ユニコーン企業についての理解が深まり、自社の成長やM&Aを視野に入れる際のヒントを得られるでしょう。
目次
- 1 ユニコーン企業とは
- 2 ユニコーン企業の定義
- 3 ユニコーン企業の条件
- 4 デカコーン企業・ヘクトコーン企業との違い
- 5 日本を代表するユニコーン企業一覧
- 6 【国別】世界で注目されているユニコーン企業一覧
- 7 アメリカ
- 8 ヨーロッパ
- 9 南米
- 10 日本にユニコーン企業が増えない・少ない理由3つ
- 11 起業する人が少ない
- 12 労働力が不足している
- 13 スタートアップ企業に投資する額が少ない
- 14 世界でユニコーン企業が増えている理由3つ
- 15 IT技術が進んでいる
- 16 資金調達がしやすい
- 17 起業に関するコストが少ない
- 18 ユニコーン企業が日本で躍進するポイント4つ
- 19 日本社会の課題を解決する商材を提供する
- 20 他にないユニークな価値を作る人材を育成する
- 21 投資家から理解と協力を得る
- 22 グローバルな事業展開を考える
- 23 ユニコーン企業を増やす取り組み
- 24 J-Startup
- 25 グロービス経営大学院
- 26 スタートアップ躍進ビジョン
- 27 まとめ:日本経済を牽引するにはユニコーン企業の増加が必須
ユニコーン企業とは
ユニコーン企業とは、稀少性や特異性を象徴する「ユニコーン」から由来する言葉です。
主にITやテクノロジー分野の企業が多いのが特徴で、経済や産業の未来を左右する存在として注目されています。
ここでは、ユニコーン企業の定義や条件、デカコーン企業・ヘクトコーン企業との違いを詳しく解説します。
ユニコーン企業の定義
ユニコーン企業の定義は、評価額が10億ドル以上の未上場スタートアップ企業のことです。
2013年にベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏が、当時そのような企業が非常に稀であったことから、伝説の生物である「ユニコーン」に例えて提唱しました。
例えば、アメリカだとSpaceX、中国だとByteDanceなどが代表的なユニコーン企業として知られています。
ユニコーン企業は、短期間で急成長を遂げて業界に大きな影響を与えているでしょう。
ユニコーン企業の条件
ユニコーン企業には以下の4つの条件が含まれます。
- 設立10年以内:企業の設立から10年以内
- 評価額10億ドル以上:企業の評価額が10億ドル(約1,000億円)以上
- 未上場:株式公開(上場)していない
- テクノロジー関連:主にテクノロジー分野で事業を展開している
これらの条件を満たす企業は、革新的な技術やビジネスモデルを持ち、急速な成長を遂げる傾向があります。
例えば、日本のメルカリは、設立から10年以内に評価額が10億ドルを超えた未上場企業として注目されていました。
しかし、2018年に上場したため、現在はユニコーン企業の定義から外れています。
デカコーン企業・ヘクトコーン企業との違い
ユニコーン企業、デカコーン企業、ヘクトコーン企業は、いずれも未上場のスタートアップ企業を評価額に応じて分類したものです。
具体的な違いは企業の評価額です。
- ユニコーン企業:10億ドル以上
- デカコーン企業:100億ドル以上
- ヘクトコーン企業:1,000億ドル以上
評価額は、企業の成長段階や市場での影響力を示す指標として用いられます。
たとえば、TikTokを運営するByteDance社や、イーロン・マスク氏が率いるSpaceX社はヘクトコーン企業です。
評価額の違いにより、企業の規模や市場での存在感が明確に区別されます。
日本を代表するユニコーン企業一覧
日本を代表するユニコーン企業は以下の3社が挙げられます。
企業名 | 概要 |
Preferred Networks(プリファード・ネットワークス) | 人工知能(AI)やディープラーニングの研究開発を行い、トヨタ自動車やファナックなどと提携している |
スマートニュース株式会社 | ニュースアプリ「SmartNews」を提供し、ユーザーにパーソナライズされたニュース配信を行っている |
SmartHR株式会社 | 人事労務管理のクラウドサービスを提供し、企業の労務手続きを効率化する |
これらの企業は、評価額が10億ドルを超え、日本のスタートアップ業界を牽引する存在として注目されています。
【国別】世界で注目されているユニコーン企業一覧
世界には、それぞれの地域で経済や産業をリードするユニコーン企業が数多く存在します。
とくにアメリカやヨーロッパ、南米では、革新的な技術や独自のビジネスモデルを活用することで、急成長を遂げる企業が注目されています。
ここでは、アメリカやヨーロッパ、南米それぞれの地域のユニコーン企業を紹介します。
アメリカ
アメリカは、世界で最も多くのユニコーン企業を抱えている国で、その数は703社に上ります。
アメリカの代表的なユニコーン企業は以下の3社です。
企業例 | 概要 |
SpaceX(スペースエックス) | 再利用可能なロケット技術を開発し、宇宙開発のコスト削減と持続可能性を実現している |
Stripe(ストライプ) | 簡便で安全なオンライン決済システムを提供し、グローバルなeコマースの成長を支えている |
OpenAI(オープンエーアイ) | 人工知能技術をリードする企業で、自然言語処理モデルの開発において業界を牽引している |
アメリカでのユニコーン企業の成功の背景には、シリコンバレーを中心とした強力なスタートアップエコシステムが存在します。
スタートアップエコシステムで革新的なアイデアと優秀な人材の供給が可能となったアメリカは、ユニコーン企業の成長を支えているでしょう。
ヨーロッパ
ヨーロッパでは、イギリスが53社、ドイツが36社のユニコーン企業を有しています。
ヨーロッパの代表的なユニコーン企業は以下のとおりです。
企業例 | 概要 |
Revolut | デジタルバンキングサービスを提供し、国際送金や暗号資産取引などの革新的な機能で注目を集めている |
N26 | モバイルバンキングを中心としたサービスで、ヨーロッパ全域で急速にユーザー数を拡大している |
Klarna | 後払い決済サービス「Buy Now, Pay Later」を提供し、オンラインショッピングの分野で大きな影響力を持っている |
これらの企業は、金融サービスのデジタル化やユーザー体験の向上に貢献しています。
南米
南米ではユニコーン企業の数が増加しており、主に金融技術(フィンテック)やeコマース分野で成長を遂げています。
南米で代表的なユニコーン企業は次のとおりです。
企業名 | 概要 |
Nubank | デジタルバンクとしてクレジットカードや個人向けローンを提供している |
Mercado Libre | 南米最大級のオンラインマーケットプレイスを展開し、eコマース市場を牽引している |
Wildlife Studios | モバイルゲームの開発企業として国際的に高い評価を受けている |
これらの企業は、南米市場における革新と成長を象徴しており、地域経済に大きく貢献しています。
日本にユニコーン企業が増えない・少ない理由3つ
日本では、ユニコーン企業の数が他国に比べて少ない現状があります。
少ない理由として以下の要因が考えられます。
- 起業する人の少ない
- 労働力が不足している
- スタートアップ企業への投資額が少ない
ここでは、上記に挙げた理由を詳しく解説します。
起業する人が少ない
日本でユニコーン企業が増えない主な理由の一つは、起業する人が少ないことです。
起業する人が少ない背景には、社会的な安定志向が強く、リスクを伴う起業よりも大企業への就職が好まれる傾向があるからです。起業に対する支援体制や、教育が十分でないこともあるでしょう。
アメリカでは、大学や政府が積極的に起業支援を行っていますが、日本ではそのような取り組みが限定的です。
環境の違いが、起業家の数に影響を与えることで、ユニコーン企業の少なさにつながっているのです。
労働力が不足している
日本でユニコーン企業が増えない理由には、労働力の不足が挙げられます。
少子高齢化の進行により、生産年齢人口が減少し、スタートアップ企業が必要とする若くて優秀な人材の確保が難しくなっています。
とくに、ITやテクノロジー分野では高度な専門知識を持つ人材が求められますが、国内での人材供給が追いついていません。
結果、スタートアップ企業は人材不足に直面し、事業の拡大や革新的なプロジェクトの推進が困難となるため、ユニコーン企業の誕生や成長を阻害しているでしょう。
スタートアップ企業に投資する額が少ない
日本でユニコーン企業が増えない理由の一つとして、スタートアップ企業への投資額の少なさが挙げられます。
投資額が少ない背景には、投資家のリスク回避志向が強く、安定した投資先を好む傾向があるからです。
結果、革新的なビジネスモデルを持つスタートアップへの資金提供が限定的となり、企業の成長を妨げています。
逆に、アメリカではベンチャーキャピタルが積極的にスタートアップに投資し、多くのユニコーン企業が誕生しているのが現状です。
投資環境の違いが、ユニコーン企業の数に影響を与えています。
世界でユニコーン企業が増えている理由3つ
日本とは違い、世界各地ではユニコーン企業が急増しています。
世界でユニコーン企業が増えている理由は以下が考えられます。
- IT技術が進んでいる
- 資金調達がしやすい
- 起業に関するコストが少ない
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。
IT技術が進んでいる
ユニコーン企業が世界的に増加している大きな理由の一つは、IT技術の進展です。
近年、クラウドコンピューティングや人工知能(AI)、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの技術が急速に発展し、これらの技術を活用した新しいビジネスモデルが次々と生まれています。
たとえば、AIを活用したサービスやビッグデータを基にしたマーケティング手法などが挙げられます。
IT技術の革新により、スタートアップ企業は低コストで市場に参入し、短期間で大きな成長を遂げられるのです。
資金調達がしやすい
ユニコーン企業が世界的に増加している理由は、資金調達のしやすさです。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、クラウドファンディングなど、多様な資金調達手段が発展したことで、スタートアップ企業が必要な資金を得やすくなっています。
たとえば、アメリカではベンチャーキャピタルが積極的にスタートアップに投資し、多くのユニコーン企業が誕生しています。
資金調達の環境の充実が、革新的なビジネスモデルや技術を持つ企業の急成長を促しているでしょう。
起業に関するコストが少ない
ユニコーン企業が世界的に増加している理由は、起業や事業立ち上げにかかるコストが低下しているからです。
IT技術の進化でインターネットやクラウドサービスが普及したことにより、初期投資を抑えて事業を開始しやすくなりました。
たとえば、クラウドベースのソフトウェアやインフラを活用することで、高価なサーバー設備を購入する必要がなくなります。
環境の変化で起業のハードルが下がり、多くの新興企業が短期間で急成長を遂げ、ユニコーン企業として台頭しています。
ユニコーン企業が日本で躍進するポイント4つ
日本でユニコーン企業が成功を収めるためには、どうすればいいのでしょうか?
ここでは、ユニコーン企業が日本で躍進するポイント4つを詳しく解説します。
- 日本社会の課題を解決する商材を提供する
- 他にないユニークな価値を作る人材を育成する
- 投資家から理解と協力を得る
- グローバルな事業展開を考える
日本社会の課題を解決する商材を提供する
日本でユニコーン企業が躍進するためには、日本社会が直面する課題を解決する製品やサービスを提供することが重要です。
日本の社会的ニーズに応えることで、市場からの支持を得やすくなり、企業の成長を促進できるからです。
たとえば、高齢化社会に対応した医療・介護の支援技術や、労働力不足を補う自動化・効率化ソリューションなどが挙げられます。
実際、社会課題の解決を目指すスタートアップは、投資家からの注目も集めやすく、資金調達の面でも有利に働くことが多いです。
他にないユニークな価値を作る人材を育成する
日本でユニコーン企業が躍進するためには、他にないユニークな価値を創造できる人材の育成が必要です。
革新的なアイデアやビジネスモデルを生み出すためには、高い技術力と創造性を持つ人材が不可欠だからです。
たとえば、AIやIoTなど先進的な技術を活用した新しいサービスの開発には、専門的な知識と柔軟な発想が求められます。
企業は、創造性を育む教育プログラムや研修を導入することで、独自の価値を提供できる人材の育成に努めるべきです。
投資家から理解と協力を得る
日本でユニコーン企業が躍進するためには、投資家からの理解と協力を得ることが重要です。
現在、日本のベンチャーキャピタルの投資額はアメリカや中国と比較して少なく、スタートアップ企業の資金調達が難しい状況です。
投資家がスタートアップの成長性やリスクを正しく評価し、長期的な視点で支援することで、企業は事業拡大や技術開発に注力できます。
成功事例として、SmartHRは海外の投資家から事業の成長性を認められ、大規模な資金調達をしています。
投資家との信頼関係を築き、積極的な支援を受けることが、ユニコーン企業としての成長を促進するでしょう。
グローバルな事業展開を考える
日本のユニコーン企業が躍進するためには、グローバルな事業展開を視野に入れることが大切です。
国内市場は少子高齢化により縮小傾向にあるため、海外市場への進出が成長の鍵となるからです。
たとえば、フィンテック企業のOpnは、日本や東南アジア、米国に拠点を構えることで、グローバルな市場でサービスを提供し成功を収めています。
初期段階からグローバル展開を計画することで、各国のニーズや規制に対応した戦略が構築しましょう。
ユニコーン企業を増やす取り組み
日本では、ユニコーン企業を増やし、経済成長を促進するためにさまざまな取り組みが進められています。
ここでは、日本政府や一般で進められている、ユニコーン起業を増やす取り組みを3つ紹介します。
- J-Startup
- グロービス経営大学院
- スタートアップ躍進ビジョン
世界に追いつくために、日本でもグローバル競争力を高めましょう。
J-Startup
日本でユニコーン企業を増やす取り組みの一つに、経済産業省が推進する「J-Startup」プログラムがあります。
J-Startupは、革新的な技術やビジネスモデルを持つスタートアップ企業を選定し、官民一体となって支援することが目的のプログラムです。
具体的には、海外・国内の大規模イベントへの出展支援や、海外展開のためのサポート、研究開発支援、民間企業との連携支援など、多岐にわたる支援をしています。
J-Startupで選定されたスタートアップ企業は、成長の加速やグローバル市場への進出がしやすくなるため、ユニコーン企業への成長が期待されます。
グロービス経営大学院
グロービス経営大学院は、ユニコーン企業の輩出を目指すため、アクセラレータープログラム「G-STARTUP」を通じて将来有望なスタートアップ企業を支援するプログラムです。
具体的には、成功した起業家やベンチャーキャピタリストによる講義やメンタリング、事業開発や資金調達のサポートなどを行っています。
採択されたスタートアップ企業には、実際に500万円以上の投資で後押ししています。
スタートアップ躍進ビジョン
日本でユニコーン企業を増やす取り組みの一つに、経団連が策定した「スタートアップ躍進ビジョン」があります。
スタートアップ躍進ビジョンは、スタートアップ企業の成長を促進し、イノベーションを加速させることが目的です。
規制改革や税制優遇措置の提言、資金調達環境の整備、人材育成の強化など、多岐にわたる支援策が盛り込まれています。
まとめ:日本経済を牽引するにはユニコーン企業の増加が必須
ユニコーン企業は、革新的な技術やビジネスモデルを持ち、短期間で急成長を遂げる企業として、経済の活性化や国際競争力の強化に欠かせない存在です。
日本では、少子高齢化や労働力不足といった課題があるものの、J-Startupやスタートアップ躍進ビジョンといった取り組みにより、環境整備が進んでいます。
環境整備が進むなかで成功させるには、日本独自の社会課題を解決する商材を提供することや、グローバル市場への進出を視野に入れた戦略が必要です。
ユニコーン企業の増加は、新しい雇用の創出や産業全体の成長につながり、日本経済を牽引する原動力となるでしょう。
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