新株予約権とストックオプションの違いを正しく理解していますか?
企業経営において重要な役割を果たす制度ですが、適切に活用するためには特性を把握することが不可欠です。
この記事では、新株予約権とストックオプションの基本から、それぞれのメリット、デメリット、両者の違いに至るまで、分かりやすく解説します。
目次
- 1 新株予約権とは
- 2 新株予約権の定義
- 3 新株予約権の発行と目的
- 4 新株予約権の種類
- 5 社内向け発行(ストックオプション)
- 6 社外向け発行
- 7 無償割当
- 8 有利発行
- 9 ストックオプションとは
- 10 ストックオプションの種類
- 11 無償ストックオプション
- 12 有償ストックオプション
- 13 ストックオプションの特徴
- 14 ストックオプションの目的
- 15 ストックオプションと新株予約権の違い
- 16 発行相手の違い
- 17 企業規模の違い
- 18 税務上の違い
- 19 新株予約権のメリット
- 20 安定的な資金調達が可能になる
- 21 敵対的買収への防衛
- 22 新株予約権のデメリット
- 23 株価下落の可能性
- 24 行使価格の設定問題とタイミングの課題
- 25 ストックオプションのメリット
- 26 従業員のモチベーション向上
- 27 優秀な人材の確保と定着
- 28 長期的な会社価値の向上
- 29 ストックオプションのデメリット
- 30 株価下落時のモチベーションへの影響
- 31 権利行使後の従業員の離職リスク
- 32 新株予約権とストックオプション導入のコツとポイント
- 33 適切なタイミングと条件での発行
- 34 内部での認識合わせとコミュニケーション
- 35 法的規制と遵守事項の理解
- 36 新株予約権とストックオプションの違いを理解して戦略的な資本政策を実行しよう
新株予約権とは
新株予約権は、将来に特定の条件下で株式を発行または売却する権利を持つことができる制度です。
新株予約権の定義
新株予約権とは、あらかじめ定められた価格に基づいて株式を取得する権利を事前に設定することができる制度であり、新株予約権利を持つ者は、権利行使期間内にその権利を利用して株式を取得することが可能です。
行使価格は通常、権利設定時の株価を基準にしますが、市場条件や企業の業績に応じて調整されることもあります。
新株予約権の発行と目的
新株予約権の発行は、主に資金調達や戦略的なパートナーシップの構築、従業員や経営陣へのインセンティブなど、多岐にわたる目的で利用されます。
たとえば、スタートアップ企業では、資金調達と同時に、優秀な人材を採用する手段として新株予約権を活用するケースがあります。
また、大企業では、企業の長期的な成長戦略や敵対的買収を防ぐ目的として、新株予約権を戦略的に発行することがあります。
新株予約権の種類
新株予約権にはそれぞれ異なる形態が存在します。ここでは、主に利用される4種類について解説します。
社内向け発行(ストックオプション)
- 会社の役員や従業員に対して付与される新株予約権。
- 従業員の働きがいや企業への忠誠心を高める。
- 権利行使価格は通常、市場価格よりも低く設定され、数年間の勤務後に行使可能。
社外向け発行
- 社外の投資家などに対して発行される新株予約権。
- 主に資金調達と新たな投資家の獲得が目的。
- 株主割当と第三者割当の二つの方法があり、第三者割当は敵対的買収の防衛策としても利用される。
無償割当
- 既存の株主に対して新株予約権を無料で割り当てる方法。
- 大規模な増資時に株価の希薄化を防ぐ目的として活用される。
- 株価の下落を防ぐために実施される。
有利発行
- 特定の対象者に市場価格より有利な条件で新株予約権を発行する方法。
- 株主総会での特別決議が必要。
- 既存株主の議決権や株価に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に実施する必要がある。
ストックオプションとは
ストックオプションは、新株予約権の1種類であり、従業員や経営者に対して、将来的に企業の株式をあらかじめ決められた価格で購入する権利を与える制度です。
この制度は、従業員のモチベーション向上や企業への忠誠心を促す効果があります。
ストックオプションの種類
ストックオプションは、課税の有無や方法、購入費用の有無によって分類されます。
無償ストックオプション
無償税制適格ストックオプション
- 権利行使時に所得税が発生しない。
- 要件を満たすと税制優遇が適用され、売却時の譲渡所得に対してのみ税金が課される。
- 厳格な条件が存在する。
無償税制非適格ストックオプション
- 権利行使時に給与所得としての課税が適用される。
- 最高税率は約45%。
- 売却時にも譲渡所得として税金が課される。
1円ストックオプション
- 権利行使価格が1円と設定され、株価上昇の利益が大きい。
- 退職所得としての課税が適用される場合、税率は最大約25%。
有償ストックオプション
一般的な有償ストックオプション
- 購入時に発行価格で株式を購入する権利が付与される。
- 権利行使時には課税されず、売却時のみ20%の譲渡所得税が課税される。
信託型ストックオプション
- 新株予約権が信託に預けられ、定められた期間後にポイントに応じてオプションが付与される。
- 従業員が将来どれだけ受け取るかを後で決められる柔軟性が特徴。
ストックオプションの特徴
ストックオプションは、権利を行使することで従業員が株主として企業の利益に直接関与する点に特徴があります。
これにより、従業員は自身の努力が会社の価値向上につながると感じ、働きがいを得ることができます。
また、従業員からすると、会社を離れる際の機会損失が増大するため、優秀な人材の流出を防ぐ効果もあります。
ストックオプションの目的
ストックオプションの主な目的は、従業員の長期的なモチベーションの維持と会社への忠誠心を高めることにあります。
従業員が株式を持つことで、株式の価値向上に利益を見いだし、会社の目標達成に向けて自発的に貢献するようになります。
また、スタートアップ企業においては、資金調達の一環としてストックオプションを活用することがあります。
ストックオプションと新株予約権の違い
発行相手の違い
ストックオプションは主に従業員や経営者に対して発行されます。
一方で、新株予約権は投資家を含む広い範囲の関係者に発行されることがあります。
企業規模の違い
ストックオプションは、成長性の高い中小企業やスタートアップ企業において有効な手段とされています。
これは、限られたリソースの中で優秀な人材を確保するのに役立つためです。
新株予約権は大企業や成熟した市場の企業で見られることが多く、大規模な資金調達や企業戦略に利用されることがあります。
税務上の違い
ストックオプションの場合、権利行使による利益は従業員の所得として課税されることが一般的です。
これに対し、新株予約権は、その行使や譲渡から生じる利益に対して異なる税率が適用されることがあります。
課税対象や税率については、制度の種類や利益によって異なるため、不明な点がある場合は専門家に相談することをお勧めします。
・国税庁:No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について
・国税庁:譲渡制限のない新株予約権を株主等へ一律に付与する場合の所得税法上の取扱いについて
新株予約権のメリット
安定的な資金調達が可能になる
新株予約権を利用することで、市場変動や経済情勢に左右されることなく、必要な時に迅速に資金を調達できます。
新規プロジェクトや研究開発、事業拡張など、大きな資本が必要とされる場面でその価値を発揮します。
敵対的買収への防衛
新株予約権は、企業が不意の敵対的買収から自身を守る防衛策としても利用されます。
条件を満たした場合にのみ新株を発行することで、潜在的な買収者による株式の大量取得を困難にします。
新株予約権のデメリット
株価下落の可能性
新株予約権の行使により市場に新しい株式が供給されると、結果として株価が下落する可能性があります。
株価の下落は、企業の市場評価にも影響を与える可能性があり、株価の下落は企業の他の資金調達活動にも悪影響を及ぼすことがあります。
行使価格の設定問題とタイミングの課題
新株予約権の行使価格が市場価格から大きく乖離(かいり)している場合、期待する資金を調達できない可能性があります。
行使価格の設定には、市場の動向を正確に予測し、適切なタイミングで行使権を提供する必要があります。
ここで誤算があると、資金調達の機会を逃すリスクに直面します。
ストックオプションのメリット
従業員のモチベーション向上
ストックオプションが従業員に与える最大の利点の一つは、モチベーションの向上です。
会社の成果と連動する株式を手に入れることができるため、仕事への熱意や自主性が増します。
優秀な人材の確保と定着
会社の長期的な成功に関与するインセンティブを提供することで、優秀な人材をあつめることが期待できます。
また、権利行使期間を設けることで、従業員が企業に長く留まる動機付けにもなります。
長期的な会社価値の向上
従業員に会社の株を持たせることで、従業員は株価を高めるための行動を取るようになります。
また、短期的な利益追求よりも長期的な成長と安定を優先する傾向が強まります。
ストックオプションのデメリット
株価下落時のモチベーションへの影響
ストックオプションは株価が上昇することを前提としているため、市場の低迷や株価の下落が起こった場合、従業員のモチベーションに悪影響を与えることがあります。
従業員が業務に対して消極的になる可能性があり、企業全体の生産性が低下するリスクが生じます。
権利行使後の従業員の離職リスク
株式が売却可能になると、報酬を得た従業員が他の機会を求めて企業を去るケースも少なくありません。
企業にとって優秀な人材を失う結果となり、組織全体の業績に悪影響を及ぼすことがあります。
新株予約権とストックオプション導入のコツとポイント
適切なタイミングと条件での発行
新株予約権やストックオプションを導入する際には、市場環境、財務状況、戦略的目標を総合的に考慮する必要があります。
具体的には、市場が好調で企業の将来性に対する信頼が高まっている時期に導入することで、最大の効果を期待できます。
また、行使条件や価格設定は、現在および将来の市場評価を反映する形で慎重に決定しなければいけません。
内部での認識合わせとコミュニケーション
経営層から従業員に至るまで、企業内のすべてのステークホルダー間での認識合わせとコミュニケーションが不可欠です。
目的、利点、可能性あるリスクについて透明性を持って情報を共有することで、従業員の理解と参加を促すことができます。
法的規制と遵守事項の理解
制度を運用する際には多くの法的要件を満たす必要があります。
たとえば、公開企業は証券取引委員会の規制に従う必要があり、非公開企業でも特定の税法や雇用法の規定に注意を払う必要があります。
そのため、専門家と協力し、すべての規制要件を遵守する体制を整えることが重要です。
これらのポイントに注意を払い、適切に管理することで、長期的な価値を創出し、従業員をはじめとするステークホルダーとの関係を強化することができるでしょう。
新株予約権とストックオプションの違いを理解して戦略的な資本政策を実行しよう
新株予約権とストックオプションは、どちらも企業の戦略的資本政策において重要な役割を果たしますが、機能や目的には違いがあります。
本記事では、それぞれの制度の基本的な特徴から利点、デメリットに至るまで詳しく解説しました。
- 新株予約権は資金調達と防衛策に有効
- ストックオプションは従業員のモチベーション向上に寄与する
- 運用には市場環境と内部認識の調和が必須
- 法的規制への準拠が成功を左右する
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