Web制作会社が経営を続ける中で、「このまま事業を拡大すべきか」「売却という選択肢もあるのではないか」と悩む経営者は少なくありません。
近年はデジタル需要の拡大と同時に競争も激化しており、人材不足や価格競争、後継者問題などを背景に、M&Aを検討する制作会社が増えています。
本記事では、Web制作会社におけるM&Aの基本知識や具体的な進め方、成功させるためのポイントや注意点を解説します。
目次
- 1 Web制作会社のM&Aとは
- 2 株式譲渡
- 3 事業譲渡
- 4 なぜWeb制作会社のM&Aが増えているのか
- 5 後継者不在に悩む中小制作会社の増加
- 6 人材確保や競争環境の変化による将来不安
- 7 売却益を活用して次の事業に進みたい経営者の増加
- 8 Web制作会社を売却するメリット
- 9 従業員の雇用を維持しやすくなる
- 10 経営者が個人保証や経営リスクから解放される
- 11 大手企業の支援による事業成長の可能性がある
- 12 会社売却により資金が確保できる
- 13 Web制作会社におけるM&Aの進め方
- 14 売却目的・方針の整理
- 15 仲介会社・マッチングサービスへの相談
- 16 買い手候補の選定とトップ面談
- 17 基本合意・デューデリジェンスの実施
- 18 最終契約・クロージング・引継ぎ対応
- 19 Web制作会社をより高く売却するためのポイント
- 20 強みや専門領域を明確に打ち出す
- 21 安定した顧客基盤や継続収益を整える
- 22 売却に適したタイミングを見極める
- 23 M&Aの専門家に相談する
- 24 Web制作会社がM&Aにおいて注意すべき点
- 25 価格条件だけで判断する
- 26 従業員や取引先への説明不足により混乱する
- 27 専門家の選定を誤る
- 28 Web制作会社のM&Aを相談できる主な窓口
- 29 M&A仲介会社・アドバイザー
- 30 金融機関
- 31 公的支援機関
- 32 Web制作会社のM&Aは正しい知識と準備が不可欠
Web制作会社のM&Aとは
Web制作会社のM&Aとは、Webサイト制作やシステム開発、デザイン、マーケティング支援などを行う制作会社の経営権や事業を、第三者に譲渡・統合することです。
Web制作会社のM&Aにおける代表的な手法である株式譲渡と事業譲渡について解説します。
株式譲渡
株式譲渡とは、制作会社の発行済み株式を買い手企業に売却したり、会社の経営権を移転させたりするM&A手法です。
法人格は存続し、契約関係や従業員の雇用、取引先との関係も原則として維持されます。
既存の顧客との継続契約や保守案件、長期プロジェクトが多いため、事業の連続性を保ちやすい株式譲渡が選ばれる傾向があります。
また、買い手にとっても企業ブランドや実績、エンジニアチームを一括して引き継げる点が大きな魅力です。
一方で、簿外債務や未払い残業代、過去の契約トラブルなども同時に引き継ぐ可能性があるため、事前のデューデリジェンスが大切です。
事業譲渡
事業譲渡は、会社全体ではなく、特定の事業や部門のみを切り出して売却するM&A手法です。
受託開発部門のみを売却する、または映像制作チームだけを譲渡するといった形で実行されます。
事業譲渡の特徴は、売却対象を限定できる点です。
売り手企業は不採算事業を切り離し、収益性の高い分野に経営資源を集中できる一方、買い手は自社に必要な技術や人材のみを選択的に取得できます。
ただし、株式譲渡と異なり、契約の再締結や従業員の再雇用手続き、資産の移転手続きが個別に必要になるため、手続きは複雑になりやすい傾向です。
顧客との契約承継には同意が必要な場合も多く、スムーズに進まないケースも存在します。
なぜWeb制作会社のM&Aが増えているのか
近年、Web制作会社のM&A件数は増加傾向です。
背景には、経営者の高齢化や人材市場の変化、デジタル競争の激化など複数の要因が重なっています。
Web制作会社のM&Aが増えている原因を解説します。
後継者不在に悩む中小制作会社の増加
Web制作会社のM&Aが増加する理由の一つが、後継者問題です。
多くの制作会社は創業者が中心となって運営しており、デザイン力や営業力、顧客との関係構築を経営者自身が担っているケースが少なくありません。
経営者の高齢化が進む一方で、社内に事業を引き継ぐ人材が育っていない企業が多く存在することが実情です。
親族に後継者がいない、従業員に継承意欲がない状況では、廃業という選択肢が現実味を帯びてきます。
人材確保や競争環境の変化による将来不安
Web制作業界では、慢性的な人材不足が続いており、経験豊富な人材の確保は年々難しくなっています。
フリーランスの増加や大手IT企業による人材囲い込みが進み、特に中小制作会社の安定的な人材確保は容易ではありません。
その結果、受注はあるものの制作体制が整わず、機会損失が生じるケースも増えています。
売却益を活用して次の事業に進みたい経営者の増加
近年は、経営者自身が積極的にM&Aを活用し、次の挑戦へ進むケースも増えています。
会社を売却して得られる資金は、新規事業への投資や別業界への進出、あるいは個人の資産形成に活用が可能です。
従来は会社を売ることは撤退というイメージが強くありました。
しかし、現在では次のステージに進むための戦略的売却という考え方が広がっています。
Web制作会社は設備投資が比較的少なく、人的資産や顧客基盤が評価されやすいため、タイミングによっては高値での売却が期待できます。
Web制作会社を売却するメリット
Web制作会社をM&Aによって売却することは、企業や経営者、従業員にとって新たな選択肢を広げる戦略的な判断でもあります。
Web制作会社を売却するメリットを解説します。
従業員の雇用を維持しやすくなる
Web制作会社を売却するメリットの一つは、従業員の雇用を維持しやすくなる点です。
廃業を選択した場合、従業員は職を失う可能性が高く、長年培ってきたスキルやチーム体制が一度に崩れてしまいます。
一方でM&Aによる売却であれば、買い手企業が従業員を引き継ぐケースが多く、雇用継続の可能性が高いです。
また、従業員の雇用維持や待遇改善が条件として交渉されることも少なくありません。
従業員はキャリアの継続だけでなく、より大きなプロジェクトに関わる機会が生まれたり、教育制度、福利厚生の充実したりといったメリットが生まれる可能性もあります。
経営者が個人保証や経営リスクから解放される
経営者が金融機関からの借入に対して個人保証をしているケースが多く、会社の業績悪化が個人の財務リスクにつながる状況が珍しくありません。
M&Aによって会社を売却すると、個人保証が解除される可能性があり、経営者は長年背負ってきた負担から解放されます。
売却により経営責任から離れることで、新たな事業への挑戦やコンサルタントとしての関与、引退など多様な選択肢を得られます。
大手企業の支援による事業成長の可能性がある
売却先が大手IT企業や広告代理店、コンサルティングファームの場合、Web制作会社は大きな成長機会を得られる可能性があります。
大手企業の傘下に入ることで、営業力やブランド力、資金力、開発インフラなどを活用でき、単独では受注できなかった大型案件にも参入しやすいからです。
グループ内での連携により、マーケティング支援やシステム開発、DXコンサルティングなどサービス領域を拡張できる点も大きなメリットです。
従業員にとってはキャリアの幅が広がり、専門分野を深めるだけでなくマネジメントや企画領域への挑戦もできます。
会社売却により資金が確保できる
Web制作会社をM&Aで売却すると、経営者はまとまった資金を確保できます。
資金は個人の資産形成だけでなく、新規事業への投資や別会社の立ち上げ、スタートアップ支援など多様な用途に活用可能です。
制作会社は設備投資が少ない一方で、顧客基盤や継続契約、技術力といった無形資産が評価されやすく、業績が安定している場合は想定以上の評価額が付きます。
事業が順調なうちに売却すると、将来的な市場縮小や競争激化のリスクを回避しながら利益を最大化できます。
Web制作会社におけるM&Aの進め方
Web制作会社のM&Aは複数の段階を経て進行すると、売却後のトラブルを防ぎ、納得度の高いM&Aを実現しやすいです。
Web制作会社におけるM&Aの進め方を解説します。
売却目的・方針の整理
最初に、なぜM&Aを行うのか目的を明確にしましょう。
目的が曖昧なまま進めると、価格交渉や契約条件で迷いが生じやすく、交渉が長期化したり、希望に合わない相手と合意してしまったりするリスクが高いです。
従業員の雇用維持を最優先にするのか、売却価格を重視するのかといった優先順位も整理しておく必要があります。
仲介会社・マッチングサービスへの相談
目的と方針が定まったら、M&A仲介会社やマッチングプラットフォームへの相談を検討します。
仲介会社は売却戦略の立案から買い手探し、交渉、契約締結まで一貫して支援してくれるため、初めてM&Aに取り組む経営者にとって心強い存在です。
Web制作会社の場合、業界理解のある仲介会社を選ぶことで、顧客基盤や技術力、継続契約の価値を正しく評価してもらいやすいです。
複数の相談先に話を聞き、手数料体系やサポート範囲、実績を比較検討しましょう。
買い手候補の選定とトップ面談
仲介会社やサービスを通じて買い手候補が見つかったら、書類ベースの検討を経てトップ面談へ進みます。
トップ面談は条件確認ではなく、経営理念や展望、従業員への考え方など、数字だけでは測れない価値観のすり合わせの場です。
機密情報の取り扱いにも注意が必要で、秘密保持契約を締結したうえで情報開示を進めます。
基本合意・デューデリジェンスの実施
トップ面談で双方の方向性が一致すると、基本合意書を締結し、デューデリジェンスに進みます。
基本合意は法的拘束力が弱いものの、価格帯やスケジュール、独占交渉権など重要事項を確認する段階です。
デューデリジェンスでは、財務や法務、税務、契約関係、顧客情報、従業員の雇用状況などを詳細に調査します。
Web制作会社の場合、継続案件の契約条件や知的財産権、外注契約の内容、セキュリティ体制なども重要なポイントです。
調査で想定外のリスクが見つかると、価格の見直しや条件変更が行われることもあります。
最終契約・クロージング・引継ぎ対応
デューデリジェンスが完了し、条件が確定すると最終契約の締結とクロージングに進みます。
株式譲渡契約書や事業譲渡契約書を取り交わし、支払い条件や引継ぎ内容、保証条項などを明確にしましょう。
契約締結後も、実務上は顧客や従業員への説明、取引先との再契約、システムや業務フローの引継ぎなど多くの作業が残ります。
Web制作会社をより高く売却するためのポイント
Web制作会社のM&Aは市場環境や業界動向を見極めながら、自社の魅力を整理し、専門家の力を借りることで、価格交渉の主導権を握りやすくなります。
より高くWeb制作会社を売却するためのポイントを確認しましょう。
強みや専門領域を明確に打ち出す
ECサイト構築に強い、BtoBマーケティングに特化しているなど専門領域が明確な会社は買い手から見ても魅力的に映ります。
反対に、何でも対応できるが突出した実績がない会社は差別化が難しく、評価額が伸びにくい傾向です。
過去の制作実績や受賞歴、特定業界との取引実績などを資料として整理し、自社の得意分野を言語化しましょう。
安定した顧客基盤や継続収益を整える
制作会社の価値は単発案件の売上よりも、継続的な収益構造を持っているかどうかで大きく変わります。
保守契約や運用支援、サブスクリプション型のサービスなど毎月安定した収入がある会社は買収後のリスクが低く評価されやすいです。
また特定の大口顧客に売上が偏っている場合、顧客が離れた瞬間に企業価値が大きく下がる可能性があります。
契約書の整備や更新率の把握、顧客満足度の向上といった取り組みは、売却前から意識しておくべきポイントです。
売却に適したタイミングを見極める
M&Aはいつでも同じ条件で成立するわけではなく、業界動向や市場環境によって評価が大きく変わります。
DX需要が高まっている時期やWebマーケティング市場が拡大している局面では、制作会社の価値も上がりやすいです。
自社の業績が右肩上がりの時期に売却を検討すると、将来性を含めた評価を受けやすくなります。
M&Aの専門家に相談する
高値売却を目指す場合、専門家の存在は不可欠です。
M&A仲介会社やアドバイザーは、適切な企業価値の算定だけでなく、買い手候補の紹介、交渉支援、契約書の確認まで幅広くサポートしてくれます。
Web制作会社は無形資産の比重が高いため、業界理解のある専門家に依頼すると、自社の強みを正しく評価してもらいやすくなります。
Web制作会社がM&Aにおいて注意すべき点
Web制作会社のM&Aは、売却価格や条件面だけに目が向きがちですが、実際にはそれ以外の要素が成否を大きく左右します。
Web制作会社がM&Aで注意したいことを解説します。
価格条件だけで判断する
M&A交渉において提示金額は大切な要素ですが、価格のみで売却先を決めるのはリスクがあります。
制作会社の価値は、買収後の運営体制や経営方針によっても左右されるため、「どこに売るか」が重要です。
提示額が高くても従業員の処遇や事業方針が不透明な企業に売却した場合、キーパーソンの離職や既存顧客の流出につながる可能性があります。
従業員や取引先への説明不足により混乱する
Web制作会社のM&Aでは、人材と顧客の信頼関係が事業継続の要です。
売却情報の共有が遅れたり、説明が不十分だったりすると従業員の不安や顧客の不信感を招き、想定外の離職や契約解消につながる恐れがあります。
取引先が「担当者が変わるのではないか」「サービス品質が落ちるのではないか」と懸念を抱くと、更新契約を見送られる可能性があります。
情報開示のタイミングを慎重に見極め、誠実かつ具体的な説明を行うとともに、将来像を共有することが不可欠です。
専門家の選定を誤る
M&Aは法律や税務、会計、交渉戦略など多岐にわたる専門知識を必要とするため、専門家の質が結果を大きく左右します。
制作会社特有の無形資産や人材価値を正しく理解していない仲介会社やアドバイザーに依頼すると、企業価値が過小評価される可能性が高いです。
業界理解の深さや実績、担当者の相性、サポート範囲などを見極めたうえで選定しましょう。
Web制作会社のM&Aを相談できる主な窓口
Web制作会社のM&Aを検討する際、最初にどこに相談すべきかで悩む方は少なくありません。
代表的な相談窓口とそれぞれの特徴を整理します。
M&A仲介会社・アドバイザー
一般的な相談先が、M&A仲介会社や専門アドバイザーです。
企業価値の算定や買い手探し、交渉支援、契約書作成のサポートなどM&A全体のプロセスを一貫して支援します。
売却価格を高めるだけでなく、従業員の処遇やブランドの扱いなど条件面まで含めて交渉してくれる点がメリットです。
金融機関
取引のある銀行や信用金庫も、有力な相談先の一つです。
金融機関は日頃から企業の財務状況を把握しているため、経営課題や資金繰りの観点から現実的なアドバイスを受けやすい特徴があります。
ただし、金融機関はM&A専門ではないため、具体的な交渉や契約実務の支援は仲介会社や弁護士と連携する形になるのが一般的です。
公的支援機関
商工会議所や事業承継、引継ぎ支援センターなどの公的支援機関も費用を抑えて相談できる窓口として有効です。
公的機関は営利目的ではないため、売却ありきではなく、事業継続や承継といった選択肢も含めて中立的な立場で助言してくれます。
ただし、マッチングのスピードや専門性は民間仲介会社に比べると限定的な場合もある点は注意しましょう。
Web制作会社のM&Aは正しい知識と準備が不可欠
Web制作会社のM&Aは、経営者の将来設計や従業員の雇用、取引先との関係性、ブランド価値の継続など多くの要素が絡み合います。
価格だけを基準に判断してしまうと、想定外の条件変更や人材流出、事業縮小といったリスクを招く可能性が高いです。
一方で市場動向や自社の強み、売却手法の違いを理解し、専門家と連携しながら準備を進めることで、より有利な条件での譲渡やスムーズな事業承継につながります。
正しい知識を持ち、段階的に準備を進めて、後悔のないM&Aを実現しましょう。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
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