事業承継のための企業売却や新規開拓の手段としてM&Aが注目を集めています。
一方で経営に忙しい経営者がM&A取引を進めるのは大変なことです。
M&Aを進めるにあたって、複雑な手続のサポートやPMI対応もしてくれるのがM&A実行にあたって不可欠になるでしょう。
この記事では、M&A仲介について混同されやすいFAとの違いや、利用するメリット、また利用にあたっての留意するポイントについて解説します。
目次
- 1 M&A仲介の役割
- 2 M&A仲介とは?
- 3 M&A仲介とFAの違いとは?
- 4 M&A仲介会社を利用するメリット
- 5 最適な取引相手の選定
- 6 取引成立の可能性が高まる
- 7 専門的なアドバイスやサポートが受けられる
- 8 友好的なM&Aが成立する
- 9 M&A仲介会社を選ぶ際のポイント
- 10 手数料体系は業者によって異なる
- 11 同業種、同規模、同一地域での実績を確認する
- 12 情報管理が徹底している業者を利用する
- 13 サポート体制を確認する
- 14 PMIへの対応の有無を確認する
- 15 M&A仲介会社の利益相反問題について
- 16 利益相反とは
- 17 M&Aの仲介業務が利益相反になるとされる理由
- 18 河野氏の利益相反問題に対する指摘
- 19 M&A仲介にかかる費用
- 20 相談料
- 21 着手金
- 22 中間金
- 23 デューデリジェンス費用
- 24 成功報酬
- 25 M&A仲介の相談は専門家にしよう
M&A仲介の役割
M&A仲介とは文字通り、M&A取引の仲介です。
買い手と売り手の間に立って、両者を仲立ちしてくれる存在です。
M&A仲介を事業としているのがM&A仲介会社であり、日本には中小企業を対象とした仲介会社から、大企業までカバーする仲介会社まで幅広く存在します。
M&A仲介会社の役割は、買い手と売り手のバランスをうまく考えながら、全体の利益が最大化できるように案件を進めることです。
M&A仲介とは?
M&A仲介とは、同一のM&Aアドバイザーが売り手と買い手の間に立って、M&A交渉の仲介を行うことを指します。
つまり、M&Aの仲介会社は買い手と売り手の間に着任し、当事者双方に対して、原則として中立的かつ客観的な立場でM&A交渉の仲介・助言を行い、M&Aを成約に導くことを任務としています。
ポイントは同一の仲介会社が買い手と売り手の間に立っていることであり、どちら側の利益最大化を目指すわけではなく、双方の条件のバランスをとって、それぞれの利益のバランスを考えたM&Aを目指している点です。
買い手と売り手の経営者の同意を得て進める、友好的なM&A成立のためには、M&A仲介会社に仲介を依頼して、M&Aの交渉を進めることが一般的になっています。
仲介とは相手企業の紹介を行う段階から始まり、双方の要望を理解し、利益のバランスを調整しながら、条件の落とし所を探ります。
M&A仲介とFAの違いとは?
FAとはファイナンシャルアドバイザーの略です。
FAはM&Aを検討している企業に対して、仲介ではなく、助言業務を行います。
M&Aの仲介が買い手と売り手の双方の間に立つ一方で、FAは譲渡企業もしくは、譲受企業のどちらかとのみ契約をし、顧客の利益を最大化するように行動します。
FAをつけることによって自社の利益について妥協せずに理想通りの形での成約を目指すことができます。
ただし、利益を最大化しようと行動するあまり相手側に過度な要求を行ってしまうことで、交渉自体が決裂してしまうことや成約まで時間がかかることがあります。
また、M&Aの仲介会社が中小企業から大企業まで広く対象としているのに対して、FAは上場企業同士やクロスボーダーでのM&Aなど、規模の大きい取引で利用されるのが一般的となっています。
M&A仲介会社を利用するメリット
M&A取引に際して、自社単独で交渉に臨むのではなく、経験豊富なM&A仲介会社に依頼することのメリットはなんでしょうか?
M&A仲介会社を利用するメリットは主に以下の4点です。
- 最適な取引相手の選定
- 取引成立の可能性が高まる
- 専門的なアドバイスやサポートが受けられる
- 有効的なM&Aが成立する
それぞれのメリットについて具体的に見ていきましょう。
最適な取引相手の選定
M&Aの仲介会社は、企業の買い手及び売り手について幅広いネットワークを持っています。
M&Aの仲介を依頼した際に、自社の経営風土やシナジー効果を考慮して、客観的に最も条件に合う候補先を選定してくれます。
仮にM&Aの仲介会社を利用しない場合には、自社の取引先から相手を探すことになるので、情報が限られます。
その点、仲介会社は自社だけの目線だけでなく、間に立つ仲介者の立場から効率的に最良の候補先をピックアップしてくれるので、スタート時点から有利に立てます。
取引成立の可能性が高まる
M&A交渉では、売り手は「一円でも高く売りたい」と思う一方で、買い手は「一円でも安く買いたい」と考えるため、両者の利害は対立します。
例え、両者が取引上、旧知の仲であっても交渉が決裂することもあります。
したがって、仲介会社のように双方の利益のバランスを取ってくれる存在は不可欠です。
また、M&Aの仲介会社は売り手と買い手の経営者の間に入り、両者と密接にコミュニケーションを取りながら、思いを汲み取り、中立的な立場から条件の落とし所を探っていきます。
したがって、情報の整理が早く、M&Aの検討から成約までの時間が短くなり、成約の可能性が高まります。
専門的なアドバイスやサポートが受けられる
M&A交渉では、単に企業を買収するかどうかという判断だけではなく、広範囲わたる事項の取り決めが必要になります。
買収価格の決定及び一株当たりの価値、企業譲渡後の社員の処遇、経営権の引き継ぎなどです。
これらの事項を決定するためには、ファイナンスの知識だけではなく、会社法や税法などの法律、税務、会計など、専門的な知識が必要になります。
経験と実績が豊富なM&A仲介会社は、それぞのれ取り決めの意味やリスクを把握しながら、決定をおこない、後々のトラブルを回避することができます。
友好的なM&Aが成立する
M&A取引では、買い手と売り手の利益は基本的に相反します。
買い手はできるだけ安く譲渡企業を買収し、売り手はできるだけ高く譲渡して多くの譲渡利益を得ようとします。
したがって、お互いの利益を主張することで交渉が決裂したり、長引いたりする可能性があります。
M&Aの仲介会社は、両者の間に入って中立的かつ客観的な立場から交渉をサポートしてくれます。
双方の利益のバランスを考えて、条件の落とし所を探ってくれるので、双方の経営者が納得する友好的なM&Aが成立しやすくなります。
M&A仲介会社を選ぶ際のポイント
M&Aの仲介会社を活用することで、最適な取引相手の選定から友好的なM&Aの成立まで円滑にM&Aを進めることができます。
しかし、M&A仲介会社の選定を間違ってしまうと、費用だけがかかって期待していた効果が得られなかった、という事態になりかねません。
M&A仲介会社を利用する際には、以下のポイントに留意する必要があります。
- 手数料体系は業者によって異なる
- 同業種、同規模、同一地域での実績を確認する
- 情報管理が徹底している業者を利用する
- サポート体制を確認する
それぞれの留意点について具体的に見ていきましょう。
手数料体系は業者によって異なる
初めてM&A仲介会社を利用する方には、料金体系について驚く人もいます。
実は手数料体系は仲介会社によってバラバラであり、着手金や相談料の有無、成功報酬の計算方法が異なります。
料金体系についてはM&Aの仲介会社のホームページに掲載されていることが多いです。
また、契約の段階で説明を受けることがほとんどですが、交渉が進んだ段階でのトラブルを割けるためにも事前に確認しておきましょう。
特に譲渡企業の場合は、得られる金額の多寡に関わってくるので、確認は必須です。
同業種、同規模、同一地域での実績を確認する
M&Aの仲介会社によって得意分野は異なります。
製造業に強みのある仲介会社、大企業に強みのある仲介会社、関東地域に強みのある仲介会社など、「業種」「規模」「地域」によって得意分野が異なります。
したがって、「大手のM&A仲介会社であれば失敗しない」というわけではなく、自社の「業種」「規模」「地域」を得意とする仲介会社を選ぶ必要があります。
実績については、仲介会社のホームページで確認できる場合もありますが、掲載されていない場合には直接問い合わせをして確認しましょう。
情報管理が徹底している業者を利用する
M&Aは自社の社員や取引先、金融機関など、様々な利害関係者に影響を与える経営上の重要な決断です。
所属している会社が売却されると聞いた社員の中には、退職を検討する社員も出てくるかもしれません。
M&A交渉の事実は、適切なタイミングで適切な相手に公表する必要があります。
したがって、M&A仲介会社に依頼する場合には、秘密保持契約を締結して、M&Aの情報が漏洩するのを防ぐ必要があります。
したがって、依頼する前に秘密保持契約の内容を詳細に確認して、納得できる仲介会社を選定しましょう。
サポート体制を確認する
M&A交渉を進める上では、ファイナンスの知識や法務、税務の専門的な知識が必要になります。
したがって、弁護士や税理士など、M&Aの専門家が在籍している仲介会社を選ぶべきです。
実はM&A仲介業を始めるにあたって特に免許や資格は必要ないため、一貫したサポートを提供できない仲介会社も存在します。
その場合は仲介会社に加えて、個別で弁護士などに相談する必要があるため、成約までに余計な時間がかかります。
したがって、仲介会社を選定する上では、仲介の実績や在籍している専門家について確認しましょう。
中小企業のオーナーにとってM&Aは大きな経営判断であり、後悔しない選択をするためにも、万全のサポート体制が整っている仲介会社を選ぶことが重要です。
PMIへの対応の有無を確認する
PMIとは、M&A後の経営方針や業務フロー、従業員の意識などを統一し、M&Aの目的をスムーズに達成するためのプロセスを指します。
M&Aは契約の締結だけでなく、合併後の統合プロセスも重要です。
しかし、一部のM&A仲介会社が提供するサービスは契約までのサポートに留まり、統合プロセスはサポートに含まれないことがあります。その場合、統合プロセスを別の仲介会社や専門家に依頼したり、自社で対応したりすることが必要です。
多くの場合は専門家の支援が必要で、費用と手間がかかることがあります。
M&Aの統合プロセスを円滑に進めるためには、契約までのサポートだけではなく、PMIにも対応可能な会社を選ぶようにしましょう。
M&A仲介会社の利益相反問題について
M&A仲介会社は、「利益相反を起こしやすい」と関係省庁などに問題視されています。
そこで下記では、M&A仲介会社の利益相反問題について、以下の点を解説していきます。
- 利益相反とは
- M&Aの仲介業務が利益相反になるとされる理由
- 河野氏の利益相反問題に対する指摘
利益相反とは
利益相反とは、ある行動が一部の人にとっては利益をもたらすが、同時に他の人には不利益をもたらす状況を指します。
例えば、大手企業の買収提案を検討する場合に、株主と経営陣の利益相反が起きます。
株主として買収提案が受け入れられれば、株価は急騰し投資家として大きな利益を得ることができる一方で、経営陣は買収が実現した場合、経営権やポジションが危うくなり、一部解雇されるかもしれません。
M&Aなど経営陣の利益相反が起こる取引をする場合は、株主総会や取締役会の承認を受けてから行動する必要があります。
M&Aの仲介業務が利益相反になるとされる理由
M&A仲介は、買い手と売り手の双方と契約して、どちらにもM&Aに関する助言を行います。
買い手はなるべく安く買収したいと考えますが、売り手はなるべく高く売却したいと考えるはずです。
そのため、M&A仲介の助言が両者に都合よくなることは難しいので、M&A仲介業務自体が利益相反になると言われることが多いのです。
河野氏の利益相反問題に対する指摘
行政改革担当大臣であった河野氏も、M&Aの利益相反について問題視しています。
河野太郎公式サイトでM&Aについて提唱していることを、以下にまとめました。
- 中小企業の経営者高齢化と後継者不足により、M&Aが年間約3万〜4万件の取引が行われている
- 中小企業向けM&A仲介業者も増加し、約300社が活動している
- 一部の仲介者は売り手と買い手から手数料を取り、利益相反の疑念が浮上している
- 中小企業庁は、利益相反に対して「中小M&Aガイドライン」策定で対策を講じようとしている
「中小M&Aガイドライン」は策定されており、こちらから確認できます。
M&A仲介にかかる費用
M&Aの仲介を依頼するためには、仲介費用がかかります。
総額や内訳は仲介会社によって異なりますが、一般的な内訳は以下のとおりです。
- 相談料
- 着手金
- 中間金
- デューデリジェンス費用
- 成功報酬
それぞれの費用の概略について見ていきましょう。
相談料
相談料とは、M&A仲介の依頼をする前の段階で相談をした場合にかかる費用です。
無料で相談を実施している仲介会社もありますが、1万円程度の相談料がかかる場合もあります。
無料のほうがお得感がありますが、有料の場合はより専門的な相談に乗ってくれることもあります。
着手金
着手金とは、M&A仲介会社へ正式に依頼をした場合に支払う手付金です。
無料の場合と有料の場合がありますが、相場は概ね100~300万円と言われています。
着手金はM&A成約の有無に関係なく返金されないことが一般的です。
手元資金がほとんどない場合には、着手金のかからない仲介会社を選ぶことも検討の余地があります。
しかし、着手金を支払うことで仲介会社が真剣に候補先の選定を行ってくれるというメリットもあります。
中間金
中間金とは、M&A交渉が進展した際に途中で支払う費用です。
中間金が存在しない仲介会社も存在しますが、費用がかかる場合は成功報酬の10~20%程度に設定されていることが多いようです。
着手金と同様にM&Aの成否に関わりなく返金はされないのが一般的です。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンスとは、M&Aを実施する際に買収後に事業継続に支障をきたすような譲渡企業の財務・法務・労務等に関するリスクについて判断をする調査のことです。
一般的にデューデリジェンスは、外部の弁護士や税理士などの専門家に調査依頼をしますので、M&Aの仲介会社に支払うものではありません。
デューデリジェンス費用の相場は100~200万円程度であると言われています。
成功報酬
成功報酬とは、M&A取引の最終契約締結のあとに仲介会社に支払う費用です。
一般的にはレーマン方式と呼ばれる計算式で成功報酬を計算します。
取引金額に一定の料率を掛けて算出されます。
5億円以下:5%
5億円超10億円以下:4%
10億円超50億円以下:3%
50億円超100億円以下:2%
100億円以上:1%
M&A仲介の相談は専門家にしよう
ここまでM&A仲介の概要やFAとの違い、メリット、留意点を解説してきました。
M&A仲介会社を選定する際には、実績や料金体系、サポート体制について確認することが必要です。
しかし、仲介会社に依頼する前に気軽に相談できる相手がいれば安心できます。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
- 「納得感」と「満足感」の高いサービス
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