後継者不足の対処法｜事業継承問題の原因と現状を徹底解説

「後継者不足により事業継承が難しい」と、悩んでいる経営者は少なくありません。
日本の経済を支える中小企業や地方企業において、後継者不足は深刻な問題です。

後継者不足の原因を追究して、適切な対処法を実施しましょう。

この記事では、後継者不足が企業や地域に及ぼす影響や原因を詳しく解説します。

事業継承マッチングサービスの仕組みや、M&Aを活用するメリット・デメリットもあわせて解説するため、ぜひ最後までご覧ください。

後継者不足の現状

後継者不足は、日本経済の根幹を支える中小企業や地方企業にとって、深刻な課題です。

事業承継が課題の企業は、後継者不足の現状を確認しておきましょう。

• 後継者が不足している企業の割合
• 中小企業・地方における後継者不足の実態
• 後継者不足がもたらす企業と地域への影響

上記の現状について、具体的なデータや事例を交えながら解説します。

後継者が不足している企業の割合

帝国データバンクの調査によると、2024年の全国「後継者不在率」は52.1％と、調査を始めた11年以降で最低値を記録しました。

引用元：全国「後継者不在率」動向調査（2024年）｜株式会社帝国データバンク

つまり、2社に1社以上の企業で後継者が決まっていない状態です。
調査開始以降で最低値ではあるものの、改善ペースは鈍化傾向にあり、依然として危機的な状況が続いています。

中小企業庁の2024年版「中小企業白書」によると、後継者が決定している企業においても、事業承継の際に問題が起きそうだと考えている経営者が多い傾向にありました。

引用元：2024年版「中小企業白書」 第6節　事業承継 | 中小企業庁

後継者不足は、単に後継者がいないだけでなく、事業承継全体の課題として捉える必要があります。

中小企業・地方における後継者不足の実態

後継者不足は、特に中小企業や地方企業において深刻です。

中小企業の場合、経営者の高齢化が進む一方で、後継者が決まっている企業はわずか10.5%にとどまっています。

引用元：中小企業の事業承継に関するインターネット調査（2023年調査）｜日本政策金融公庫

地方においては、人口減少や若者の都市部への流出などが影響し、後継者を見つけることがさらに困難な状況に陥っています。

東京のような大都市圏でも、企業の倒産・休廃業・解散数は増加傾向にあり、事業承継が円滑に進んでいません。

このような状況に対し、各地域では事業承継支援の取り組みが行われていますが、後継者不足の解消にはいたっていません。

後継者不足がもたらす企業と地域への影響

後継者不足は、企業だけでなく地域経済にも深刻な影響を及ぼします。
企業が廃業してしまうと、雇用が失われ、地域経済の活力低下につながります。

また、長年培ってきた技術やノウハウが失われることも、大きな損失です。

後継者不足が深刻化すると、地域全体の産業構造が変化し、地域経済の衰退を加速させる可能性があります。
そのため、後継者不足は単なる企業の問題ではなく、地域全体の課題として捉え、早急な対策を講じる必要があります。

後継者不足の深刻性

後継者不足は、単なる経営者の個人的な問題ではなく、企業経営、地域経済に深刻な影響を与える社会問題です。

現在の日本における後継者不足の深刻性を理解するために、次のポイントを押さえておきましょう。

• 後継者不足による倒産・廃業件数の推移
• 業種別に見る後継者不足の深刻度
• 地域別に見る後継者不足の傾向

後継者不足がもたらす具体的な影響について、上記の側面から見ていきましょう。

後継者不足による倒産・廃業件数の推移

近年、後継者不足を理由とした倒産・廃業件数は増加傾向にあります。
東京商工リサーチの調査によると、2024年上半期（1月～6月）の「後継者難」倒産（負債1,000万円以上）は254件に達し、調査を開始した2013年度以降で過去最多を更新しました。

引用元：2024年上半期の「後継者難」倒産 過去最多の254件 労働集約型の産業では、人手だけでなく、後継者不足も顕著｜東京商工リサーチ

2024年全体における後継者難倒産は462件に達し、5年連続で過去最多を更新しています。

引用元：2024年の「後継者難」倒産 過去最多の462件　建設業、サービス業他など労働集約型が上位に｜東京商工リサーチ

中小企業倒産の理由として、後継者不足は無視できない要因の一つです。後継者不足は、企業が長年培ってきた技術やノウハウ、雇用を失うだけでなく、地域経済の衰退にもつながる深刻な問題です。

業種別に見る後継者不足の深刻度

労働集約型の産業では、人手不足に加えて後継者不足も大きな問題として挙げられています。
特に、下記のように中小企業が多い業種では、後継者不足が目立っています。

引用元：全国「後継者不在率」動向調査（2024年）｜株式会社帝国データバンク

上記の業種は、長年の経験や技術が重要な資産となることが多く、後継者がいない場合、技術やノウハウが失われてしまう可能性が高いです。

また、上記の業種は地域経済を支える役割も担っているため、後継者不足は地域経済全体に悪影響を及ぼします。

具体的な業種別の後継者不足の状況については、以下の表をご覧ください。

地域別に見る後継者不足の傾向

後継者不足は、地域によっても深刻度が異なります。
特に、地方の中小企業では、都市部に比べて後継者不足が深刻な傾向にあります。

引用元：全国「後継者不在率」動向調査（2024年）｜株式会社帝国データバンク

上記のように都市部以外で後継者不足が深刻化している背景には、地方の人口減少や若者の都市部への流出、地域経済の衰退などが影響しています。

後継者不足が深刻な地域では、地域経済の担い手である中小企業が廃業し、地域経済がさらに衰退する悪循環が生じるのです。

地域によっては、後継者不足対策として、事業承継支援センターの設置や事業承継マッチングイベントの開催など、さまざまな取り組みが行われています。

後継者が不足する6つの原因

後継者不足は、単一の原因で発生するものではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じます。
後継者が不足する要因は、主に次の6つです。

1. 少子高齢化と人口減少
2. 後継者育成の遅れ
3. 親族への承継意識の低下
4. 経営者の高齢化と事業承継への不安
5. 事業の将来性への不安
6. 事業承継の準備不足

なぜ後継者不足が起きるのか、要因を確認しておきましょう。

原因1：少子高齢化と人口減少

日本における少子高齢化と人口減少は、後継者不足の根本的な原因の一つです。

特に地方においては、若年層の都市部への流出が進み、地域経済を支える中小企業の後継者候補が著しく減少しています。

従来、親族内承継が一般的でしたが、少子化により承継できる親族が不足しています。

少子高齢化は、日本の社会構造全体に影響を及ぼし、後継者不足を加速させている大きな要因です。

原因2：後継者育成の遅れ

後継者を見つけても育成が遅れていると、事業承継が難航します。

経営者が事業承継を意識し始めたときには、すでに適切な後継者を育成する時間が不足しているケースも多いです。
後継者の育成には、経営に関する知識やスキルだけでなく、業界の動向や企業文化の理解も必要です。

労働人口が減少している現代において、各企業が人手不足に悩まされており、人材育成にかける時間を確保できないケースが多いです。

計画的な育成を行わないと、十分な能力を持った後継者を育てられず、後継者不足に陥ります。

原因3：親族への承継意識の低下

かつては一般的だった親族への事業承継ですが、近年、その意識が低下しています。

なぜなら、子供が必ずしも親の事業を継ぎたいと思っているとは限らないからです。
別の道に進みたい、あるいは親の事業に魅力を感じないなどの理由から、親族内承継を希望しないケースが増えています。

また、経営者の側も、子供に無理に事業を継がせるのではなく、本人の意思を尊重したいと考える傾向が強まっています。

原因4：経営者の高齢化と事業承継への不安

経営者の高齢化も、後継者不足の深刻化に拍車をかける要因です。

経営者が高齢になるほど、事業承継の準備や実行が困難になり、後継者不足が増加します。

また、高齢の経営者は、体力的な問題や新しい知識や技術を学ぶ意欲の低下などから、事業の将来性に不安を感じやすいです。
そのため、事業承継を先延ばしにしたり、廃業を選択したりするケースも少なくありません。

原因5：事業の将来性への不安

事業の将来性に対する不安も、後継者不足の原因です。

将来性のある事業を承継したいと後継者候補が多く、市場の変化や競争の激化などにより事業の将来性に不安がある場合、事業承継をためらってしまいます。

特に中小企業や地方企業においては、経営環境の変化に対応できず、事業の将来性が不透明になっているケースが多いです。

原因6：事業承継の準備不足

事業承継には、数年単位での準備が必要ですが、多くの企業は十分に準備ができていません。

事業承継計画の策定、後継者の選定と育成、株式の承継、経営体制の移行など、事業承継にはさまざまな課題があります。

準備が不足していると、スムーズな事業承継が難しくなり、後継者不足を招いてしまうのです。

後継者不足を解決する7つの対策

後継者不足を解消するためには、多角的なアプローチが求められます。
具体的な対策は、次の7つです。

後継者不足で悩んでいる企業は、自社の状況に適した対策を実施しましょう。

対策1：親族内承継の促進と支援

親族内に後継者候補がいる場合、親族内承継はもっともスムーズに事業承継できます。

しかし、近年では親族の意向やライフスタイルの変化により、親族内承継が難しくなっている現状もあります。
親族内承継を促進するためには、後継者となる親族への早期からの経営教育や、事業に対する理解を深める機会の提供が必要です。

また、税制面での優遇措置や事業承継に関する専門家からのアドバイスなど、外部からの支援も積極的に活用しましょう。

対策2：従業員承継の検討

長年会社に貢献してきた従業員の中から後継者を選ぶ従業員承継は、企業文化や従業員のモチベーションを維持する上で有効な手段です。

従業員承継では、経営能力だけでなく、リーダーシップや人柄を選びましょう。

後継者候補となる従業員に対しては、経営に関する知識やスキルを習得するための研修や、OJT（On-the-Job Training）などを実施し、計画的に育成していくことが大切です。

また、従業員が安心して事業を承継できるよう、資金面での支援や経営に関するアドバイスなども提供しましょう。

対策3：M&A（事業譲渡）の活用

親族内承継や従業員承継が難しい場合、M&A（事業譲渡）は有力な対策法です。

M&Aによって、第三者に事業を譲渡すれば、後継者不足を解消し事業の継続を図れます。

M&Aでは、自社の強みや弱みを客観的に分析し、適切な譲渡先を見つけることが大切です。

M&A仲介会社などの専門家を活用して、スムーズなM&Aを実現しましょう。

対策4：後継者バンク・マッチングサービスの利用

近年、後継者不足に悩む企業と、起業を希望する個人や企業を結びつける後継者バンクやマッチングサービスが登場しています。

これらのサービスを利用すれば、自社のニーズに合った後継者候補を効率的に見つけられます。

マッチングサービスを選ぶ際には、登録されている後継者候補の質や、サービスのサポート体制などを比較検討することが大切です。

対策5：外部人材の招へい

経営経験豊富な外部人材を招へいし、後継者として育成する方法も一つの手です。

外部人材は、既存の従業員にはない知識や経験を持っているため、企業の成長に貢献してくれる可能性があります。

外部人材を招へいする際には、企業の理念や文化に共感し、従業員との良好な関係を築ける人材を選びましょう。

対策6：事業再構築・事業転換

後継者が見つからず、M&Aや外部人材の招へいに抵抗がある場合、事業の再構築や事業転換を検討しましょう。

不採算部門を整理したり、新たな事業分野に進出したりすれば、企業の収益性を高め後継者にとって魅力的な企業へと変革できます。

事業再構築や事業転換を行う際には、市場ニーズや競合状況などを分析し、綿密な計画を立てることが大切です。

対策7：廃業・清算

あらゆる対策を講じても後継者が見つからない場合、最終的な選択肢として廃業・清算が挙げられます。

廃業・清算は、企業にとって苦渋の決断ですが、事業の継続が難しい状況であれば、早めに決断して損失を抑えることが大切です。

廃業・清算を行う際には、従業員の雇用や取引先への影響などを考慮し、慎重に進める必要があります。

事業継承マッチングサービスの仕組みと選び方

事業継承マッチングサービスを活用する際は、自社に適したサービスを選ぶために、次のポイントを確認しておきましょう。

• 事業継承マッチングサービスの仕組み
• 事業継承マッチングサービスのメリット
• マッチングサービスを選ぶ際のポイント

それぞれのポイントを確認して、事業継承マッチングサービスを利用するべきか検討してください。

事業継承マッチングサービスの仕組み

事業継承マッチングサービスは、後継者不足に悩む企業と、事業を承継したい個人や企業を結びつける仕組みです。

事業を譲りたい企業は、サービスに自社の情報を登録し、承継希望者はその情報を閲覧して興味のある企業にアプローチします。

マッチングが成立すれば、両者間で事業譲渡に向けた交渉が開始される流れです。

マッチングサービスは、大きく分けて以下の2種類があります。

• Webサイト型：インターネット上のプラットフォームで、企業情報や希望条件を検索・閲覧できます。
• 仲介型：専門のアドバイザーが、企業のニーズをヒアリングし、最適なマッチングをサポートします。

近年では、日本政策金融公庫などの公的機関も事業承継マッチング支援を行っており、中小企業の事業承継を後押ししています。

事業継承マッチングサービスのメリット

事業継承マッチングサービスを利用するメリットは、主に以下の3点です。

特に、従業員9名以下の小規模事業者にとっては、後継者を見つけるための手段として有効的です。

マッチングサービスを選ぶ際のポイント

数多くの事業継承マッチングサービスが存在するため、自社に合ったサービスを選ぶことが重要です。

以下のポイントを参考に、最適なサービスを選びましょう。

事業承継マッチングは、あくまで事業承継の入り口に過ぎません。マッチング後の引き継ぎや後継者育成も重要なプロセスであることを理解しておきましょう。

事業承継を成功させるためには、マッチングサービスの選定だけでなく、その後のプロセスも視野に入れた上で計画的に進めていくことが大切です。

後継者不足をM&Aで解消するメリット・デメリット

後継者不足の解決策の一つとして、M&A（Mergers and Acquisitions：合併と買収）が注目されています。

M&Aは、単に会社を売却するだけでなく、事業の継続や従業員の雇用維持にもつながる有効な手段です。

しかし、M&Aにはメリットだけでなくデメリットも存在するため、双方を確認した上で実施するべきか検討しましょう。

メリット

後継者不足をM&Aで解消するメリットは、次のとおりです。

デメリット

後継者不足をM&Aで解消するデメリットは、次のとおりです。

M&Aは、後継者不足を解消する有効な手段の一つですが、成功させるためには、メリットとデメリットを十分に理解し、慎重に進める必要があります。

専門家のアドバイスを受けながら、自社にとって最適な選択肢を検討しましょう。

まとめ：後継者不足は早めに対策しよう

後継者不足は、中小企業や地方経済にとって深刻な問題であり、企業倒産や地域経済の衰退を招く可能性があります。

少子高齢化、後継者育成の遅れ、親族への承継意識の低下など、さまざまな要因が複雑に絡み合って後継者不足を引き起こしています。

後継者不足に直面している企業は、早めの対策を講じることが重要です。

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