アイ・アールジャパンは、2015年1月に上場廃止しました。上場廃止に至った背景には何があるのでしょうか。
この記事では、現アイ・アールジャパンが上場廃止になった理由と、その親会社であるアイ・アールジャパンホールディングスのこれまでの歴史について解説します。
目次
アイ・アールジャパンが上場廃止
アイ・アールジャパンは、2015年1月28日に東証(日本取引所グループ東京証券取引所)の上場を廃止しました。その後、アイ・アールジャパンホールディングスの子会社となり、アイ・アールジャパンホールディングスは東証JASDAQスタンダードに新規上場しています。
ここにはどのような背景があったのでしょうか?
理由は親会社設立のため
アイ・アールジャパンが上場廃止となった理由は、親会社としてアイ・アールジャパンポールディングスを設立したためです。株式移転により、アイ・アールジャパンは同社の完全子会社になりました。
上場している企業の親会社がその企業の株式を100%取得して完全子会社化することは、経営戦略としての手段の一つと言えます。その場合、上場を廃止して親会社の傘下となります。
手法は単独株式移転
株式移転には、単独株式移転と共同株式移転があります。アイ・アールジャパンの株式移転は単独株式移転となります。
単独株式移転とは?
単独株式移転とは、一つの法人が単独で株式移転をする方法です。親会社となる持株会社を設立して、その会社に発行済み株式の全てを取得させます。
複数の事業を手掛ける企業が、持株会社を大株主として傘下の企業を管理するホールディング体制へ移行する際に採用されます。これにより、グループ企業間のつながりを強くするメリットがあります。
アイ・アールジャパンの近状
ホールディング体制へ移行したため上場廃止となったアイ・アールジャパン。近年の経営状況はどうなのでしょうか。
アイ・アールジャパン近年の決算情報
以下は、近年の決算情報と営業成績を表に現したものです。
- 営業成績(通算)
2023年3月期 | 2022年3月期 | 2021年3月期 | 2020年3月期 | |
売上高 | 6,012 | 8,402 | 8,284 | 7,682 |
営業利益 | 1,115 | 3,489 | 4,080 | 3,626 |
経常利益 | 1,239 | 3,477 | 2,434 | 3,611 |
純利益 | 671 | 2,434 | 2,802 | 2,445 |
1株益 | 37.83 | 137.07 | 157.81 | 137.32 |
財政状況は以下の通りです。
- 財政状況
2023年3月期 | 2022年3月期 | 2021年3月期 | 2020年3月期 | |
一株純資産 | 340.75 | 415.64 | 372.59 | 292.15 |
総資産 | 7,362 | 9,027 | 8,410 | 7,712 |
純資産 | 6,079 | 7,415 | 6,647 | 5,212 |
自己資本率 | 82.60 | 82.10 | 79.00 | 67.60 |
元副社長のインサイダー疑惑
2022年6月、アイ・アールジャパンの元副社長に対してインサイダー取引の疑いがあるとして証券取引等監視委員会の強制調査が入りました。その後、捜査を経て2023年10月に東京地検より有罪判決を言い渡されました。
元副社長は、会社が業績の下方修正を発表する前に、知人に会社の株式を売却するよう伝えたとされていました。元副社長は容疑を認めて辞任しました。
インサイダー取引とは
インサイダー取引とは、金融商品に関して信頼性を損なう不正な取引をすることです。例えば、会社の内部情報に接する立場にある役員がその立場を利用して、重要な情報を知り、公開される前にこの会社の有価証券を売買するなどが挙げられます。
株価の上昇と下落
近年、アイ・アールジャパンの株価は上昇と下降を繰り返しています。
2019年は1000円台だった株価は、2020年11月に日本取引所グループが主導となり開発されたJPX日経インデックス400に選出され、一気に1万9000円台まで高騰、時価総額は300億円となる急成長を見せました。
しかし、2022年は思うように売上が振るわず、前の項で触れた通り、元副社長のインサイダー疑惑も重なったため、株価は1000円台に戻ってしまったのです。
アイ・アールジャパンの会社情報
最後に、アイ・アールジャパンと現在はその親会社であるアイ・アールジャパンホールディングスの会社情報と上場までの歴史について紹介します。
アイ・アールジャパンの企業概要
設立 | 2007年10月 |
代表取締役社長 | 北村 雄一郎 |
本社 | 東京都千代田区 |
事業内容 | コンサルティング・M&Aアドバイザリー |
旧アイ・アールジャパンは1984年12月に創業し、2007年にアイ・アールジャパンホールディングスの完全子会社となりました。
現アイ・アールジャパンは2007年に創業したコンサルティング会社です。上場企業を顧客とし、企業と株主が良好な関係を築くためのコンサルティングを提供している企業です。
アイ・アールジャパンホールディングスの企業概要
設立 | 2015年2月 |
代表取締役 | 寺下 史郎 |
本社 | 東京都千代田区 |
資本金 | 8.6億円 |
事業内容 | 証券、商品先物取引業 |
株式会社アイ・アールジャパンホールディングスは、アイ・アールジャパンが親会社として設立した企業です。
企業向けコンサルティングを主軸として、株主総会の運営や助言、実質株主判明調査、日本政府からの委託で国外の投資ファンドにおける動向調査なども手掛けています。
アイ・アールジャパンとアイ・アールジャパンホールディングスの歴史
次にアイ・アールジャパンとアイ・アールジャパンホールディングスについて、アイ・アールジャパンホールディングスが設立され、上場するまでの歴史について紹介します。
1984年12月 | IR専門会社として(株)アイ・アール ジャパンを設立 |
1997年10月 | 日本で初めてとなる国内機関株主判明調査の開始 |
1998年5月 | SR(議決権行使支援)のコンサルティング業務開始 |
2005年9月 | 敵対的買収監視レーダー「StockWatch」を構築 |
2006年3月 | 「株式ひろば」という個人株主向けサイトの開設 |
2007年10月 | 寺下史郎により(株)アイ・アール ジャパンホールディングスが設立される |
2008年2月 | 機関投資家向けIR・SR活動総合管理システム「IR-Pro」を構築 |
2008年4月 | アイ・アール ジャパンホールディングスが旧アイ・アール ジャパンと吸収合併。 アイ・アール ジャパンホールディングスがアイ・アール ジャパンに商号変更するとともに旧アイ・アール ジャパンの権利義務全部を承継 |
2008年6月 | アイ・アールジャパンホールディングスに吸収合併され解散 |
2011年3月 | IR・SR専門のコンサルティング会社として初めて東京証券取引所JASDAQスタンダード上場 |
2015年1月 | 東京証券取引所JASDAQスタンダード上場廃止 |
2015年2月 | アイ・アール ジャパンが単独株式移転でアイ・アール ジャパンホールディングスを設立 アイ・アール ジャパンホールディングスが東京証券取引所JASDAQスタンダード上場 |
アイ・アールジャパンは上場廃止を経て復活なるのか
今回の記事では、アイ・アールジャパンが上場廃止した理由や背景、これまでの歴史について紹介しました。アイ・アールジャパンは、アイ・アール ジャパンホールディングスの設立に伴い、完全子会社となり上場を廃止しました。
この上場廃止は、ネガティブなものではなく、企業の経営戦略の一環と言えるでしょう。
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