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富士ソフトの買収提案とは?経緯と今後の予想を徹底解説

独立系のソフトウェア開発企業である富士ソフトは、アメリカの投資ファンドから買収提案を受けました。

アメリカの投資ファンドであるKKRとベインキャピタルが、富士ソフトに買収提案をしており、各社の争奪戦が繰り広げられています。

「富士ソフトの買収提案とは何か」詳しく知らない方は、買収提案に至った経緯と今後の展開予想を確認しておきましょう。

本記事では、富士ソフトの買収提案について、経緯と今後の予想をふまえて解説します。
買収提案から学ぶM&Aの専門用語をあわせて解説するため、株式の変動を予測したい方はぜひ最後までご覧ください。

富士ソフトの買収提案とは

富士ソフトの買収提案とは、2023年から始まったアメリカの投資ファンド「KKR」と「ベインキャピタル」の2社による、富士ソフトの株式公開買い付け争奪戦を指します。

2024年9月5日にKKRは、富士ソフトの株式を買収するためにTOB(株式公開買い付け)を実施しました。

提案価格は1株あたり8,800円で、予定買収価格は約5,600億円にも達したことにより、当日の富士ソフト株は前日比1500円高の8,890円まで急騰しました。

対して、アメリカ投資ファンドのベインキャピタルは、10月11日に富士ソフト株を1株9,450円でTOBする意思を公表したのです。

ベインキャピタルがTOB意思を表明したことにより、富士ソフト株は9,710円まで急騰しました。
11月5日に終了した1回目のTOBで、KKRは富士ソフトの新株予約権を含む株式の約35%を取得しています。

さらにKKRは、KKRが2回目のTOBを実施する直前の11月15日に、買い付け価格を1株9,451円に引き上げると発表しました。

KKRが、ベインキャピタルを1円上回る買い付け価格を提示したことで、富士ソフトは正式にベインキャピタルのTOBへ反対意思を示しています。

対してベインキャピタルは、12月11日に富士ソフト株を1株あたり9,600円で買い取ることを公表。
富士ソフトの賛同があれば、2025年1月下旬から2月上旬を目安にTOBを開始する意思を示しています。

2024年12月現在、アメリカの投資ファンド2社が富士ソフトに対して買い付け価格を引き上げており、1円単位で価格を提示し合う株式争奪戦が繰り広げられています

富士ソフトの買収提案によって、株価が大きく変動していくため、TOBが実施される今後の動向に目が離せません。

富士ソフトの現状

富士ソフトは、横浜市に本社を設ける独立系のソフトウェア開発企業で、2023年末の売上高は単体で2,069億8,400万円、連結で2,988億5,500万円を記録しています。

東京証券取引所のプライム市場に上場する大手企業であり、自動車部品メーカーやDX対応関連業務によって、名高い実績を築いてきました。

しかし、富士ソフトは2024年8月8日にプライム市場での株式非公開化を発表し、今回の買収提案が起きました。

富士ソフトは1970年に創業して以降、製造業向けの商品や制御システムを強みに成長してきたソフトウェア開発企業です。

1992年に東京証券取引所市場の第二部に株式を上場し、1998年には東京証券取引所市場の第一部に株式を上場しました。

2022年には東京証券取引所プライム市場へ株式を移行しましたが、同年からシンガポールの投資会社3Dインベストメント・パートナーズが富士ソフト株を買収し始めました。

株式の21.45%を保有する筆頭株主となり、富士ソフトの統治体制を変更したり、保有不動産の効率化などに向け圧力をかけたりと経営戦略に大きく干渉したのです。

3Dが富士ソフト株を買い増したことによって、社外取締役や監査役の選任などを巡って株主総会で対立が起き、非上場化が検討されました。

富士ソフトは、株式の非上場化を決断し、3Dとの対立に時間を取られず経営に集中できる体制を整えました

現状の富士ソフトは業績が好調で、2024年12月期も増収増益の見通しです。

買収提案をしているアメリカ投資ファンド

富士ソフトに買収提案をしているアメリカの投資ファンドは、次の2社です。

  • Kohlberg Kravis Roberts&Co.(KKR)
  • ベインキャピタル

KKRはアメリカのニューヨークに本社を置く投資ファンドで、日本では東京都千代田区に下記の法人を設立しています。

  • 株式会社KKRジャパン
  • 株式会社KKRキャピタル・マーケッツ

ベインキャピタルは、アメリカのボストンに本社を置く投資ファンドで、日本ではKKRと同様に東京都千代田区を拠点に東京オフィスを構えています。

富士ソフトに買収提案が来た経緯

富士ソフトに買収提案が来た経緯を把握するために、次のポイントを確認しておきましょう。

  • 富士ソフトの上場廃止
  • KKRとベインキャピタルの争奪戦
  • 公開買付の仕組み
  • 非公開化の意図

富士ソフトの上場廃止

富士ソフトは2024年8月8日に、上場廃止をする意向を示しました。

上場廃止の背景には、ネガティブな理由ではなく富士ソフトが発展するためのポジティブな理由が関係しています。

2024年に発表されたTOBのうち、上場廃止を狙ったものは37件ありましたが、株価純資産倍率(PBR)の単純平均は1.73倍、中央値は1.13倍でした。

基本的にPBRが低い企業が非上場化の対象となりますが、8月7日時点で富士ソフトのPBRは3.52倍と、他のTBO事例より高い数値を記録しました。

富士ソフトは、2022年の中期経営計画で将来的に「1兆円企業」を目指すと明記しています。
今回の高PBRでの非上場化は、1兆円企業へ成長するための経営戦略として行われたものです。

今回のKKRとベインキャピタルの売買提案を受けて、どちらにTBOが成立しても富士ソフトは、上場を廃止する見通しです。

TBO後には一度上場を廃止するものの、1兆円企業を目指して再上場する狙いが富士ソフトにはあります。

富士ソフトの坂下社長は、今回の買収提案を1兆円企業に向けた経営戦略として捉えている旨を述べました。

「(資本効率改善のための)非公開化はその前提。(買収ファンドに)足りないピースを埋めるのを手伝ってもらう期待感はある」

引用元:富士ソフト、「独立系」継続 米投資ファンド2社から買収提案 社長は再上場を明言(カナロコ by 神奈川新聞) – Yahoo!ニュース

KKRとベインキャピタルの争奪戦

KKRとベインキャピタルの争奪戦は、2023年9月5日でKKRは1株あたり8,800円でTBOを開始し、11月5日には富士ソフト株の35%を取得しました。

対してベインキャピタルは、10月11日に富士ソフト株を1株9,450円でTOBする意思を公表しました。

KKRは、2回目のTOBを実施する直前の11月15日に、ベインキャピタルより1円高い1株9,451円まで買い付け価格へと引き上げています

ベインキャピタルは、2023年11月上旬に法的拘束力のある提案を行う意向を示しており、創業者の野沢宏氏の支持を得ました。

2社の投資ファンドが富士ソフトの魅力に注目し、自らの陣営に加えようと熾烈な争奪戦を繰り広げています。

今後、どちらのファンドが富士ソフト株を買収しても、株価が変動し投資市場に大きな影響を与える見込みです。

公開買付の仕組み

そもそも公開買い付けとは、対象企業の経営権取得を目的に、株式の買い付け価格や期間、株式数など告知し取引所外で多くの株主から大量に買付ける手法を指します。

TBOの主な目的は、対象企業の経営権取得や子会社化であり、次の手順に沿って実施します。

  1. 公開買付者が「公開買付公告」を行う
  2. 対象企業が「公開買付けに対する意見(意見表明報告書)」を提出する
  3. 株主が買付期間中に売却を検討・実行する
  4. TOBの結果が出る

公開買い付け期間中であれば、いつでも応募・撤回が可能です。

より良い条件の公開買い付けが実施された場合、株主は自身の判断で先行する公開買い付けを撤回したうえで、より良い条件で応募できます。

非公開化の意図

今回の富士ソフト株の争奪戦が繰り広げられている背景には、株式非公開化の意図が関係しています。

富士ソフトは、意思決定の迅速化や経営戦略の自由化などを狙って、株式を非公開化しました。

ベインキャピタルは、創業者の指示を得て長期的な成長戦略を描こうと模索しています。

富士ソフトからすると、経営権を株主から取り戻すために株式を非公開化したため、ベインキャピタルからの提案にも注目しています。

富士ソフトは、株主の圧力から解放され、革新技術の開発や新規市場の開拓に集中できる環境を整えるために株式を非公開化しました。

富士ソフトの買収提案から学ぶ専門用語

富士ソフトの買収提案を調べているうちに、素人目には「どのような意味かわからない専門用語」が多く登場するでしょう。

買収提案について調べる際に、よく登場する専門用語は次のとおりです。

  • TOB
  • MBO
  • 投資ファンド

上記の専門用語を確認して、買収提案について理解を深めましょう。

TOB

TOBとは、「Takeover Bid(株式公開買い付け)」の略称で、対象企業の経営権を取得するために株式の買い取りを告知し、取引所外で多くの株主から株式を買い付ける手法です。

企業の株式を一定数保有することで、以下のような権利を取得できます。

持ち株比率保有権利
100%完全子会社化、すべて自分の意思で決定できる
66.7%以上(全株式の2/3以上)株主総会の特別決議を単独で成立させられる(会社の合併、事業譲渡の承認など)
50.1%超(全株式の1/2超)株主総会の普通決議を単独で成立させられる

(取締役の選任や解任、配当など)

33.4%以上(全株式の1/3以上)株主総会の特別決議を単独で阻止できる
3%以上株主総会の招集、会社の帳簿など、経営資料の閲覧ができる
1%株主総会における議案提出権

TOBでは、買い付け価格や株数・期間をあらかじめ決めて買収するため、市場変動の影響を受けません

通常の取引市場を通じて買い付ける場合は、株価の変動によって想定外のコストと時間がかかる可能性があるため、TOBは予算とスケジュール内で株式を買収できるメリットがあります。

ただし、TOBでは市場価格にプレミアム分を上乗せした価格が設定されるため、取引市場より買収コストがかかる点がデメリットです。

MBO

MBOとは、「Management Buyout(マネジメント・バイアウト)」の略称でM&Aの一種です。

具体的には、企業の経営層が投資ファンドや金融機関を通じて資金調達を行い、株主から自社の株式を買い取ることで、経営権を取得することを指します。

MBOによって上場株式を取得する場合、TBOを実施するケースが一般的です。
MBOは、経営層が対象企業を買収することを指し、TBOは対象企業を公開買い付けによって買収する方法を指します。

投資ファンド

投資ファンドとは、数多くの投資家から資金を集めて、株式や債権などへ投資して運用することです。

運用によって得られた利益を投資家たちに還元することで、投資資金を収集します。

日本語では投資信託とも訳され、富士ソフトの買収提案に参加したKKRやベインキャピタルは、投資ファンドを実施する投資企業です。

富士ソフトの買収提案が与える影響

富士ソフトの買収提案が注目されている理由は、市場と経済への影響が予想されているからです。
KKRとベインキャピタルどちらのTBOが成立しても、市場と経済への影響は避けられません

富士ソフトの株式を保有している方は、買収提案で生じる影響と、今後の展開予想を確認しておきましょう。

市場と経済への影響

富士ソフトの買収提案によって、株価が大きく変動します。
KKRがTBOを発表した後、急騰していた富士ソフトの株価は一時的に高止まりしました。

これはKKRが提示した買い付け価格をベインキャピタルが上回る価格でTBOを提案すると、投資家たちがさらなる上昇を期待していたためです。

また、KKRとベインキャピタルという二大投資ファンドが富士ソフト株を争奪することによって、他の投資家や企業が日本市場の潜在力を再評価しています

特に、富士ソフトのように独立系ソフトウェア開発企業が、今後のM&Aのターゲットになる可能性があります。

富士ソフトの買収提案によって、株価の上昇だけでなくM&A市場での日本企業が再評価され、企業側はM&Aに備えた対策が求められる見込みです。

予想される今後の展開

富士ソフトの買収提案は、第1回のTBOが2024年9月5日〜11月5日、第2回が2024年11月20日〜12月19日の期間に実施されます。

1円単位の買い付け価格をめぐる争奪戦ですが、株主の意向や市場動向、最終的には株主総会でどちらの投資ファンドが評価されるかによって展開が変わります

富士ソフトは、目標である1兆円企業を目指すためにも、長期的な視点での経営安定化と価値創造を実現する経営戦略を実行しなければなりません。

KKRとベインキャピタルどちらが富士ソフト株を買収しても、持続可能な成長を実現するためのパートナーシップの構築が必要です。

富士ソフトの株式を保有している方は買収提案の動向をチェックしよう

富士ソフトの買収提案によって、株価とM&A市場に大きな影響を与えています。

KKRとベインキャピタルどちらが富士ソフト株を買収しても、株主や世界中の投資家たちに与える影響は大きいです。

富士ソフトの株式を保有している方は、買収提案の動向をチェックしておきましょう。

また今後は、富士ソフトのように独立系ソフトウェア開発企業がM&Aの対象になる可能性があるため、M&A市場の動向もチェックしておくことが大切です。

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