事業提携は、複数の企業が提携し、協力関係を保ち利益の拡大を目指します。
複数の企業が協力することで、自社だけではできなかった企業活動ができる有力な経営手法と言えるでしょう。
今回の記事では、事業提携の詳細を解説し、契約締結までの流れを紹介します。
目次
- 1 事業提携とは
- 2 事業提携と業務提携の違い
- 3 事業提携とM&Aの違い
- 4 事業提携の3つのメリット
- 5 メリット1.販売機会の損失を防ぐ・工場稼働率向上(生産提携)
- 6 メリット2.販売能力や売上げの向上(販売提携)
- 7 メリット3.共同開発や技術力の向上(技術提携)
- 8 事業提携の3つのデメリット
- 9 デメリット1.自社ノウハウの流出
- 10 デメリット2.マーケティング方針やブランディングの不一致
- 11 デメリット3.利益独占の恐れ
- 12 事業提携の流れ
- 13 流れ1.事業提携の目的を明確化
- 14 流れ2.事業提携の提携先を検討
- 15 流れ3.事業提携の提携先へ打診・交渉
- 16 流れ4.事業提携の契約締結
- 17 事業提携の5つの注意点
- 18 注意点1.役割分担と責任を明確にする
- 19 注意点2.利益や費用負担の分配を明確にする
- 20 注意点3.外部への情報漏えいを防止する
- 21 注意点4.契約期間を事前に決定する
- 22 注意点5.契約解除について事前の確認する
- 23 事業提携について理解して最善の選択をしよう
事業提携とは
事業提携は複数の企業が、協力関係を築く提携です。
特定の分野や事業を限定して、各社の技術やノウハウを共有することで自社だけでは達成できない利益増大と、市場参入までの時間短縮を可能にします。
昨今のビシネスシーンでは消費者が求める価値が高く、流行の変化に対応していくことを求められます。
事業提携は数ある経営手法の中でもリスクが低く、他社の力で経営の安定化を計れるため、有効な選択肢と言えるでしょう。
資本提携で出資を受けることや、M&Aで買収されることのように、経営危機を援助してくれるというものではありません。
あくまで提携した企業は双方が協力関係にある提携です。
事業提携の種類には生産、技術、販売の提携があり、提携する企業通しが利益の出る種類や内容で契約を結びます。
事業提携と業務提携の違い
事業提携は複数の企業が特定の事業に関して提携を行います。
それに対し、業務提携はある事業の特定の業務で協力関係を結ぶことです。
業務提携は事業提携よりも狭い範囲の提携と捉えることができ、提携の結んだ企業通しの関係性が弱い傾向にあります。
事業提携とM&Aの違い
M&Aは、買い手企業が売り手企業の事業の一部や会社を買収し、吸収や合併を行います。
それに伴い、売り手企業の経営権は買い手企業に移り、契約によっては売り手企業がなくなることもあります。
M&Aは売り手企業が経営難・後継者問題に直面している場合に選択される経営手法です。
事業提携は、買収や合併は行われず、自社の経営状態を良くするために選択されます。
そのため、双方の会社の経営面は独立性が保たれます。
また、M&Aでは契約を解除するのは難しいですが、事業提携の場合は契約内容によっては契約を解消することも可能です。
よって、事業提携における双方の関係は、M&Aよりも不安定になります。
事業提携の3つのメリット
事業提携のメリットは3つあります。
- メリット1.販売機会の損失を防ぐ・工場稼働率向上(生産提携)
- メリット2.販売能力や売上げの向上(販売提携)
- メリット3.共同開発や技術力の向上(技術提携)
各メリットの詳細を解説します。
メリット1.販売機会の損失を防ぐ・工場稼働率向上(生産提携)
生産提携は、自社製品の生産を対応できる企業に委託する提携です。
売上げが良好で生産が追いつかずに販売の機会を逃してしまうのを防ぐメリットがあります。
また、工場設備を増設する費用と時間を節約して生産率を増やせる点も大きなメリットです。
受託した企業は自社で売上げを上げる努力をしなくても、自社設備や工場の稼働率を上げることができ、人件費も確保できます。
メリット2.販売能力や売上げの向上(販売提携)
販売提携は、すでに販売・営業の能力やルートを持っている企業に販売の業務を委託します。
販売代理店制度やフランチャイズ契約が代表的な手法です。
販売ルートを持たない市場への新規参入や、技術力があるのに販売能力のない企業が提携を行うと効果的です。
販売や営業の能力を持つ企業に委託することで、新規参入のスピードを早めるメリットがあります。
受託した企業は、商材が増えることで提案する範囲が広がり、顧客単価の向上や新規顧客の獲得につなげることが可能です。
メリット3.共同開発や技術力の向上(技術提携)
技術提携の種類は、以下2つです。
- 共同開発により、新たな技術を開発する
- 片方の企業が提携先の企業に技術を共有する
具体的なものとして、特殊な生産方法や特許、人材などがあります。
技術提携では、お互いの企業が技術や人材を共有し、特定の技術を開発します。
複数の企業の力を合わせることで、1社だけではできない開発を実現し、競合他社よりも良いものを開発するためです。
費用やリスクも提携した企業で分散するため、一社で開発するよりも低リスクで特殊な開発ができるのがメリットでしょう。
開発の時間を早められる点もメリットで、より短時間で開発の費用を回収し、利益につなげられます。
事業提携の3つのデメリット
事業提携のデメリット3つを紹介します。
- デメリット1.自社ノウハウの流出
- デメリット2.マーケティング方針やブランディングの不一致
- デメリット3.利益独占の恐れ
各デメリットを一つずつ見ていきましょう。
デメリット1.自社ノウハウの流出
複数社で情報をシェアする事業提携では、どの種類の提携でも自社技術やノウハウが流出します。
提携した企業以外に自社の技術や情報が流出してしまわないよう、事業提携の締結の際には機密保持契約を結ぶようにしましょう。
デメリット2.マーケティング方針やブランディングの不一致
複数社で情報を共有する事業提携は、正しく意思疎通ができていない場合、マーケティング方針やブランディングの方向性が曖昧になる恐れがあります。
たとえば、生産提携をしても、受託企業が自社の品質を保てないと、品質の低いものが市場に出回ってしまいます。
これにより、自社のブランディングが壊れてしまうのがデメリットです。
販売提携でも、マーケティング方針が正しく伝達できていないと、委託先の企業により意図としない顧客選定や市場の開拓が進んでしまう恐れがあります。
- クレーム処理
- 販売後のアフターフォロー
- メンテナンスサービス
これらのシステムをきちんと構築し、販売先へ委託することで、企業イメージを低下させることなく、提携先に委託できるようになります。
デメリット3.利益独占の恐れ
共同開発を行った際のデメリットとして、一社だけが利益を独占してしまう点があります。
利益独占を防止するためには、事前に話し合い、どのように利益を分配するのか決めておくことが重要です。
事業提携の流れ
事業提携のメリット・デメリットを把握できたところで、次は提携するまでの流れを見ていきましょう。
事業提携の締結までの流れは以下の通りです。
- 流れ1.事業提携の目的を明確化
- 流れ2.事業提携の提携先を検討
- 流れ3.事業提携の提携先へ打診・交渉
- 流れ4.事業提携の契約締結
項目ごとに詳しく解説していきます。
流れ1.事業提携の目的を明確化
事業提携の提携先を検討するにあたり、重要なことは自社を分析して、何を目的に事業提携をしたいのか明確化することです。
そして自社と事業提携することで提携先にどのようなメリットが生まれるか、自社の分析を通して相手の企業に伝えられるようにしましょう。
事業提携は提携した双方の企業が協力して事業に取り組みます。
言い換えると、提携したことでお互いにメリットが生まれる関係にならなくてはいけません。
交渉の際には自社にメリットがあり、尚且メリットを提供できると、想定できる必要があります。
流れ2.事業提携の提携先を検討
事業提携を行うメリットを明確にした後、相手先企業の検討を行います。
提携先の企業を探す方法を以下のような方法があります。
- 公的な機関から紹介、またはマッチングサイトを使用する
- 民間の専門企業から紹介、またはマッチングサイトを使用する
- 金融機関から紹介してもらう
- 展示会に参加する
などです。
この段階で専門機関に相談することをおすすめします。
費用が発生しますが、自社にとってより良い提携先を探すためにはおすすめの方法と言えるでしょう。
流れ3.事業提携の提携先へ打診・交渉
事業提携の先を検討できたら、相手の企業に打診し、交渉に入ります。
お互いがどのようなメリットを希望するか、何をどのくらい提供できるのか話し合い、着地点を探ります。
当初想定した内容とかけ離れた契約にならないよう、想定できるリスクや事業計画を確認し、妥協できる範囲を定めていくことが重要です。
双方の視点を統一化し、正式な合意につなげていきましょう。
お互いに前向きに交渉を進めていくことが合意できた時点で基本合意契約と秘密保持契約を結ぶのが一般的です。
それにより、双方の企業情報が外部に漏れることを防ぎます。
流れ4.事業提携の契約締結
事業提携の内容が決定し、交渉が成立したら事業提携契約を締結します。
契約書は必要事項や双方が合意した内容を盛り込み作成しましょう。
第三者の専門機関に作成を依頼する方法もおすすめです。
正式な契約の場には双方のトップや責任者が面談し、内容を確認した後に締結します。
事業提携の5つの注意点
この項では、事業提携の注意点について解説します。
- 役割分担と責任を明確にする
- 利益や費用負担の分配を明確にする
- 外部への情報漏えいを防止する
- 契約期間を事前に決定する
- 契約解除について事前の確認する
これらの注意点は事業提携の締結までに事前に双方で協議し、決定しておくべき事項です。
そして締結の際には契約書に記載して、双方の合意のもとで締結させましょう。
注意点1.役割分担と責任を明確にする
事業提携で責任の所在と役割分担を決めておくことは最大の注意点と言えるでしょう。
具体的には
- どの範囲内において提携の内容が反映されるのか
- どの企業がどの業務を実行するのか
- 問題発生による責任の所在
これらを具体化することで、問題発生による対立のリスクを未然に防ぎます。
注意点2.利益や費用負担の分配を明確にする
事業提携により、協力して事業を行うことで発生した利益と費用をどのように分配するのか決めておく必要があります。
あらかじめ決定ておくことで片方が利益や成果物を独占してしまうことや、費用を負担することになることを未然に防ぐ効果があります。
注意点3.外部への情報漏えいを防止する
事業提携を行うと提携した事業の機密情報や企業秘密が提携先に開示ことになります。
これらの機密情報の外部漏えいを防ぐため、機密保持契約を結ぶのが一般的です。
機密の範囲や期間を明記し、事業提携契約書に明記しましょう。
注意点4.契約期間を事前に決定する
契約を結ぶときには期間を決めて締結します。
決定した期間は契約書にも明記することがおすすめです。
そして期間が終了する前に双方の合意に基づいて契約を延長していくことが望ましいでしょう。
注意点5.契約解除について事前の確認する
提携した後、どちらかの企業が提携を解消したいと考えたときにトラブルにならないよう、契約解除できる条件を予め決めてきましょう。
たとえば、
- 契約内容の違反が発覚し場合
- 倒産や買収や合併で相手の企業がなくなった場合
- 暴力団などの反社会勢力との関係が発覚した場合
提携先企業でこれらが発覚した場合、相手の企業は契約を解除できると契約書に明記する形が望ましいでしょう。
事業提携について理解して最善の選択をしよう
事業提携について解説しました。
事業提携は、業務提携よりも広い範囲で、企業同士がある事業に限定して協力関係を築く提携です。
提携した双方の企業は、強みを活かしながらお互いのメリットを提供しあい、強い結び付きを持ちます。
そこに、専門知識を持つ第三者の力が加われば、より効果的な結果をもたらします。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れM&Aのサポートを実施しています。
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