2017年、ベインキャピタルが広告代理店ADK (アサツーディ・ケイ)を買収したニュースは、広告業界に大きな衝撃を与えると共に、有名企業でも買収されるという事実を突きつけられました。
この買収は友好的なTOBで、ADKも買収に同意の元、実行されていることがわかります。ADKは、この買収に対してどのような考えを持っているのでしょうか?
今回の記事では、ベインキャピタルとADKの背景や、ADKが買収を承諾した意図について解説していきます。
目次
ベインキャピタルに買収された広告代理店ADK(アサツー ディ・ケイ)
2017年10月、大手広告会社のADK(アサツー ディ・ケイ)が、米投資ファンドのベインキャピタルに約1500億円で買収されることが発表されました。
ADKは、約20年間、世界最大の広告代理店であるWPPグループと提携していました。しかし、欧米と日本の商習慣の違いなどから、シナジー効果が発揮されず、両者の利益を作れずにいました。
そこで、米投資ファンドのベインキャピタルを新たなパートナーとして選びました。
ベインキャピタルとは?
ベインキャピタルは、ボストンに本社のある世界有数の投資ファンドです。運用額は全世界で750億ドル(約8兆4,000億円)に達します。
2006年に日本法人が設立され、三菱商事のOBの方が代表をしています。すかいらーくや大江戸温泉など、外食産業や消費者向けサービスでの企業再生や支援してきました。最近では、東芝の半導体事業売却のまとめたことで評判を高めました。
プライベート・エクイティ・ファンド
投資ファンドには、さまざまな形態があります。ベインキャピタルは、その中のプライベート・エクイティ・ファンドという形態です。
投資家からお金を集めて、会社や事業を買収します。その後、買収した企業内外から優秀な人材を集め、企業価値を大きく高めてから売却して利益を得ます。
大手広告代理店ADK(アサツー ディ・ケイ)
ADK(アサツー ディ・ケイ)の企業概要についても見てみましょう。ADKは、電通、博報堂につぐ大手の広告代理店です。
WPPグループと20年間、資本・業務提携を結んでいましたが、今回のTOBにより関係を解消。他にも、中国の新華通信社などとも業務提携関係にあり、欧米やアジアにも現地法人や合弁会社を置き、海外市場へも広く展開しています。
ベインキャピタルがADKを買収した手法TOB
TOB(株式公開買付)とは、上場している企業の株式をあらかじめ、「いくらで」、「何株」、「いつまでに」購入することを公言し、株主の同意の元、市場外で公開買い付けをすることです。企業の経営権を取得して子会社化することを目的とします。
今回のTOBでもADKはベインキャピタルの完全子会社になりました。
TOBには、友好的なTOBと敵対的なTOBがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。
友好的なTOB
買収される側の企業の同意を得た上で実行されます。買収された後も買収された側の経営陣に残り、経営に関わっていくのが一般的です。同意のもと株式を買い取るため株式の価格は比較的低めに設定されます。
敵対的なTOB
買収される側の企業の同意を得ず、一方的にTOBを仕掛ける行為です。株式の価格も高額になる可能性が高く、仕掛けられた側は、買収防衛策を取りこれを阻止しようとします。そのため、敵対的なTOBを仕掛けたとしても成功する可能性は低いでしょう。
ADKが買収されることを選んだ意味
今回の買収でADKは、ベインキャピタルの完全子会社になりました。子会社になると言う事はこれまでの上場が廃止されることを意味します。しかし、それと同時にWPPグループとの資本・業務提携契約も解消になりました。
ADKはWPPグループと提携している間、他社との提携も制限されて、M&Aを繰り返してきた電通や博報堂との間に大きな差が生まれてしまいました。
WPPグループとのシナジー効果も提携当初は生み出したものの、時代の変化とともに提携効果も薄くなっていたため、関係を見直す狙いがありました。
新たにベインキャピタルの完全子会社となることで、上場を廃止し、時代の変化にも対応できる体制を整えたのちの再上場を目指します。
AKDが買収されたのは新体制へ舵を切るため
今回は、ベインキャピタルとADKの背景や、ADKが買収を承諾した意図について解説しました。
ADKは、これまでのWPPグループとの関係を解消するためにベインキャピタルの子会社になることを選びました。今後、ベインキャピタルとの協力体制の元、体制の立て直しを図っています。
買収と聞くと経営状況が良くないため、買収されてしまったと思いがちですが、他社の協力を得てさらなる高みを目指すために買収される事例も多くあります。
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