「吸収合併で会社が消滅する」際に、どのような問題に直面するか知らない方もいるのではないでしょうか?
吸収合併は、企業が市場環境の変化に対応し、経営資源を再編する有効な手段です。しかし、吸収合併によって一部の会社は消滅するため、従業員の扱いや資産・負債の処遇、法務・会計手続きなど、解決しなければならない課題は山積みです。
本記事では、吸収合併により会社が消滅する理由とメリット・デメリットを詳しく解説します。
法務・会計手続きや資産・負債の処遇まで吸収合併が起きた際の手続きや流れも解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 1 なぜ吸収合併で会社が消滅する?
- 2 吸収合併の仕組み
- 3 会社が吸収合併で消滅する理由
- 4 吸収合併による消滅企業と存続企業の違い
- 5 吸収合併で生じる消滅企業側のメリット・デメリット
- 6 メリット①グループ企業を再編できる
- 7 メリット②経営資源が集中する
- 8 デメリット①会社が消滅する
- 9 デメリット②従業員に不安が残る
- 10 吸収合併における消滅会社の法務・会計手続き
- 11 吸収合併に必要な書類と条項
- 12 吸収合併される消滅会社側の手続き
- 13 債権者への影響と対応
- 14 消滅会社の会計処理
- 15 吸収合併消滅会社の資産・負債の処遇
- 16 消滅会社の資産・負債の承継
- 17 従業員の処遇・承継
- 18 組織文化の融合
- 19 吸収合併消滅会社における従業員の処遇例
- 20 ケース1:全従業員が存続会社へ転籍する
- 21 ケース2:一部従業員が退職となる
- 22 ケース3:転籍後の労働条件が変わる
- 23 ケース4:合併後にキャリアパスと育成が行われる
- 24 吸収合併消滅会社の株主総会の流れと注意点
- 25 株主総会の招集通知と議案
- 26 特別決議の要件と議決権の行使
- 27 株主からの質問への対応と説明責任
- 28 株主代表訴訟のリスクと対策
- 29 吸収合併で会社を消滅させる際のリスクと対策
- 30 法務デューデリジェンスの重要性
- 31 契約不適合責任のリスクと対策
- 32 訴訟リスクと紛争解決
- 33 従業員からの訴えと対応
- 34 吸収合併を成功させるために消滅会社の役割と責任を理解しよう!
なぜ吸収合併で会社が消滅する?

吸収合併は、企業の成長戦略や事業再編において重要な選択肢の一つです。
しかし、過程で「消滅会社」という存在が生じるのはなぜでしょうか。
吸収合併の仕組みから、会社が消滅する理由、消滅企業と存続企業の違いについて解説します。
吸収合併の仕組み
吸収合併とは、複数の会社が合併し、そのうちの一つの会社(存続会社)が他の会社(消滅会社)のすべての権利義務を承継するM&Aの手法です。
消滅会社の資産、負債、契約、組織、従業員などはすべて存続会社に移転し、消滅会社は法的に消滅します。
仕組みにより、事業の統合や効率化、経営資源の集中などが可能です。
具体的には、以下のステップで吸収合併は進行します。
- 合併契約の締結:存続会社と消滅会社が合併契約を結び、合併条件やスケジュールなどを決定します。
- 株主総会での承認:両社の株主総会で合併契約の承認を得ます。
- 債権者保護手続き:債権者に対して合併に関する情報を開示し、異議申し立ての機会を設けます。
- 合併の実行:合併期日をもって、消滅会社の権利義務が存続会社に移転します。
- 登記手続き:合併の事実を登記し、法的に合併を完了させます。
吸収合併の前に株主総会で承認を得て、債権者保護手続きをふんでから合併を実行しましょう。
会社が吸収合併で消滅する理由
会社が吸収合併で消滅する主な理由は、以下のとおりです。
- 経営効率の向上:重複する事業や管理部門を統合し、コスト削減や効率化を図るため。
- 事業規模の拡大:存続会社が消滅会社の事業を取り込むことで、市場シェアを拡大し、競争力を強化するため。
- 経営資源の集中:人材、技術、ノウハウなどの経営資源を集中させ、より効果的な事業運営を目指すため。
- グループ再編:グループ企業内の事業を整理・統合し、グループ全体の経営効率を高めるため。
吸収合併は、必ずしも経営不振の会社が消滅するとは限りません。
むしろ、成長戦略の一環として、優良企業が他の企業を吸収し、更なる成長を目指すケースも多く見られます。
吸収合併による消滅企業と存続企業の違い
吸収合併において、消滅企業と存続企業はそれぞれ異なる役割を担います。
その違いを以下の表にまとめました。
項目 | 消滅企業 | 存続企業 |
法的地位 | 合併により法人格が消滅 | 合併後も法人格を維持し、事業を継続 |
権利義務 | すべての権利義務が存続会社に承継される | 消滅会社の権利義務を包括的に承継する |
株主 | 消滅会社の株主は、合併比率に応じて存続会社の株式または金銭を受け取る | 存続会社の株主は、合併後も株主としての地位を維持する |
従業員 | 原則として、従業員は存続会社に転籍する | 消滅会社の従業員を受け入れ、雇用を継続する |
会計処理 | 合併に伴い、資産・負債を清算し、会計帳簿を閉鎖する | 消滅会社の資産・負債を引き継ぎ、会計処理を行う |
消滅会社は、合併を機に役割を終えますが、存続会社にとっては新たな成長の機会となります。
両社の協力と理解が、吸収合併の成功には不可欠です。
吸収合併で生じる消滅企業側のメリット・デメリット

吸収合併は、存続企業にとっては事業拡大のチャンスですが、消滅する企業にとっては複雑な感情が伴います。
吸収合併で生じる消滅企業側のメリット・デメリットは、次のとおりです。
メリット | 詳細 |
グループ企業を再編できる | 不採算部門や重複事業の整理、グループ全体の経営効率向上 |
経営資源が集中する | 技術・ノウハウ・人材の統合による、研究開発の加速や生産性向上 |
デメリット | 詳細 |
会社が消滅する | 会社名、ブランド、歴史、企業文化など有形無形の資産が失われる |
従業員に不安が残る | 雇用維持の不確実性、転籍・配置転換・労働条件の変更など将来への不安 |
ここでは、消滅企業側の視点から、吸収合併によって生じるメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット①グループ企業を再編できる
吸収合併は、グループ企業全体の再編を効率的に進める手段です。
不採算部門や重複する事業を整理し、グループ全体の経営効率を高められます。
吸収合併は、グループ内のリソースを最適化し、より競争力の高い組織へと変革するために効果的な手法です。
メリット②経営資源が集中する
消滅会社の持つ技術、ノウハウ、人材などの経営資源が存続会社に統合されることで、経営資源が集中します。
経営資源が集中すれば、研究開発の加速、生産性の向上、コスト削減などの効果が期待できるのです。
中小企業の場合、大企業の傘下に入れば、資金調達や販路拡大の面で有利になるメリットがあります。
デメリット①会社が消滅する
吸収合併により会社が消滅する大きなデメリットは、長年培ってきた会社そのものが消滅してしまうことです。
消滅会社側は、会社名やブランド、歴史、企業文化など、有形無形の資産が失われます。
経営者や従業員にとっては、アイデンティティの喪失にもつながりかねません。
デメリット②従業員に不安が残る
吸収合併後、従業員の雇用が維持されるとは限りません。
転籍、配置転換、労働条件の変更など、さまざまな変化が予想されます。
従業員は将来に対する不安を抱え、モチベーションの低下や離職につながる可能性もあるため、丁寧な説明とケアが必要です。
吸収合併における消滅会社の法務・会計手続き

吸収合併は、企業再編の重要な手段ですが、消滅会社にとっては多くの法務・会計手続きが伴います。
吸収合併前に、下記の法務・会計手続きに関するポイントを押さえておきましょう。
- 吸収合併に必要な書類と条項
- 吸収合併される消滅会社側の手続き
- 債権者への影響と対応
- 消滅会社の会計処理
ここでは、消滅会社が対応すべき主要な手続きについて解説します。
吸収合併に必要な書類と条項
吸収合併契約には、合併の条件や手続きを定める書類が必要です。合併契約に含まれる内容は、次のとおりです。
条項 | 詳細 |
合併の目的 | 合併によって何を実現したいのかを明記します。 |
合併当事会社 | 合併する会社(存続会社と消滅会社)の名称、所在地、法人番号を記載します。 |
合併期日 | 合併の効力が発生する日を特定します。 |
対価 | 消滅会社の株主に対して交付する金銭や株式などの対価を明記します。 |
その他 | 合併後の経営方針、従業員の処遇、秘密保持など、必要に応じて追加条項を設けます。 |
上記の条項を契約書で明確化することで、後々のトラブルを避けられます。
吸収合併される消滅会社側の手続き
消滅会社は、吸収合併に向けて以下の手続きを行う必要があります。
手続き | 詳細 |
取締役会決議 | 合併契約の承認を取締役会で決議します。 |
株主総会特別決議 | 株主総会を開催し、特別決議によって合併契約の承認を得ます。 |
債権者保護手続き | 官報公告や個別催告により、債権者に対して合併に関する情報を通知し、異議申し立ての機会を付与します。 |
反対株主への株式買取請求 | 合併に反対する株主からの株式買取請求に対応します。 |
登記申請 | 合併の効力発生後、法務局に合併登記を申請します。 |
上記の手続きは、会社法に定められた厳格な要件にしたがって行わなければなりません。
手続きに不備があると、合併が無効になる可能性もあるため、注意が必要です。
債権者への影響と対応
吸収合併は、消滅会社の債権者にも影響を与える可能性があります。
債権者は、合併によって債権の回収が困難になることを懸念するため、会社法で債権者保護手続きが定められています。
具体的には、会社は官報に合併公告を掲載し、知れている債権者には個別に通知する必要があるのです。
債権者は、公告または通知から一定期間内に異議を申し立てる権利があります。
異議申し立てがあった場合、会社は債権者に対して弁済するか、相当の担保を提供するか、弁済を困難にする恐れがない旨を証明しましょう。
消滅会社の会計処理
吸収合併に伴い、消滅会社は以下の会計処理を行う必要があります。
会計処理 | 詳細 |
合併仕訳 | 合併契約に基づき、資産、負債、資本を洗い出し、適切な評価を行います。 |
最終損益計算 | 合併期日までの損益を確定させます。 |
解散処理 | 合併により会社が消滅するため、解散に関する会計処理を行います。 |
税務申告 | 合併に伴う税務上の手続き(法人税申告など)を行います。 |
これらの会計処理は、税法や会計基準にしたがって正確に行う必要があります。
会計処理は、税理士や会計士などの専門家からサポートを受けながら進めましょう。
吸収合併消滅会社の資産・負債の処遇

吸収合併において、消滅会社となる企業の資産や負債がどのように扱われるのか知っておく必要があります。
また、従業員の雇用や組織文化がどのように引き継がれるのか知らなければ、組織内に不安が残ります。
吸収合併消滅会社の不安を軽減するために、下記の資産・負債に関する処遇を確認しておきましょう。
- 消滅会社の資産・負債の承継
- 従業員の処遇・承継
- 組織文化の融合
消滅会社の資産・負債の承継
吸収合併後は、消滅会社の資産、負債、その他の権利義務が、包括的に存続会社へ承継されます。
個々の資産や負債、契約関係を個別に移転するのではなく、法律関係全体がまとめて移転するため、すべての資産・負債が存続会社に承継されるのです。
吸収合併後に承継される資産・負債は、以下のようなものが含まれます。
- 有形固定資産: 土地、建物、機械設備など
- 無形固定資産: 特許権、商標権、ソフトウェアなど
- 流動資産: 現金預金、売掛金、在庫など
- 負債: 買掛金、借入金、未払金など
- 契約関係: 取引先との契約、従業員との雇用契約など
消滅会社の資産と負債は、合併期日に存続会社へ引き継がれ、財産として一体的に管理されます。
承継される資産には、消滅会社名義の銀行口座も含まれるため、銀行に口座名義の変更を依頼するか、口座を解約して残高を存続会社へ送金する手続きが必要です。
従業員の処遇・承継
原則として、消滅会社に所属していた従業員は、存続会社に雇用が承継されます。
つまり、吸収合併の効力発生日以降は、存続会社の社員として働けるのです。
ただし、合併契約において従業員の処遇が別途定められている場合や、合併に同意しない従業員は、解雇されるケースもあります。
従業員の転籍に際しては、役職、給与、勤務地、福利厚生などの労働条件が、存続会社の規定に沿って決定されるのが一般的です。
そのため、吸収合併前に従業員へ丁寧な説明と合意形成を行いましょう。
合併の目的や背景、将来のビジョン、労働条件などを明確に伝え、従業員の不安を解消することが、スムーズな組織統合に必要不可欠です。
組織文化の融合
異なる組織文化を持つ企業が統合される場合、組織文化の融合は重要な課題です。
消滅会社の組織文化を尊重しつつ、存続会社の文化との調和を図る必要があります。
そのためには、両社の価値観や行動規範を理解し、共有できる共通の目標を設定することが大切です。
組織文化の融合を促進するためには、以下のような施策が効果的です。
- コミュニケーションの促進: 交流会や研修などを実施し、従業員同士の相互理解を深めます。
- 共通プロジェクトの実施: 両社の従業員が協力してプロジェクトに取り組むことで、一体感を醸成します。
- リーダーシップの発揮: 経営層が積極的にメッセージを発信し、組織文化の融合を推進します。
組織文化の融合は、短期間で達成できるものではありません。
しかし、従業員の意見を尊重し、対話を重ねれば、徐々に新しい組織文化を形成していけます。
吸収合併消滅会社における従業員の処遇例

吸収合併において、消滅会社の従業員の処遇は、合併後の企業の安定と成長に大きく影響する重要な要素です。
吸収合併消滅会社の従業員が受ける処遇は、主に次のとおりです。
- 全従業員が存続会社へ転籍する
- 一部従業員が退職となる
- 転籍後の労働条件が変わる
- 合併後にキャリアパスと育成が行われる
具体的なケースを想定し、従業員の処遇について解説します。
ケース1:全従業員が存続会社へ転籍する
もっともスムーズなケースとして、消滅会社の全従業員が存続会社へ転籍するパターンがあります。全従業員が存続会社に移籍する場合は、雇用は継続され、組織の一体感を保ちやすいです。
項目 | 詳細 |
メリット | 従業員の雇用が維持されるため、従業員の不安を軽減できる。組織文化の融合が比較的スムーズに進む可能性がある。 |
デメリット | 存続会社の規模が大きくなり、組織運営が複雑になる可能性がある。人事制度や評価制度の統合に時間がかかる。 |
注意点 | 転籍に際しては、従業員への丁寧な説明と同意を得ることが重要。労働条件や福利厚生など、転籍後の待遇について明確に提示する必要がある。 |
ケース2:一部従業員が退職となる
経営効率化のため、一部の従業員が退職となるケースもあります。この場合、退職となる従業員への適切な対応が重要です。
項目 | 詳細 |
メリット | 人員削減により、経営のスリム化を図れる。組織の重複を解消し、効率的な運営が可能。 |
デメリット | 従業員のモチベーション低下や、組織への不信感を生む可能性がある。退職者の再就職支援など、企業としての責任が問われる。 |
注意点 | 退職となる従業員への説明は丁寧に行い、理解を得ることが重要。退職金や再就職支援など、法的に定められた以上の配慮を行うことが望ましい。 |
ケース3:転籍後の労働条件が変わる
転籍後、給与、役職、勤務地などの労働条件が変わるケースがあります。労働条件の変更は、従業員の生活に直接影響するため、慎重な対応が必要です。
特に賃金や手当、退職金などの雇用条件や、配置転換・転籍の変更は、不満が生じやすいため、従業員と話し合ったうえで決定しましょう。
項目 | 詳細 |
メリット | 存続会社の制度に統一することで、公平性を保てます。経営戦略に基づいた最適な人員配置が可能。 |
デメリット | 従業員の不満やモチベーション低下を招く可能性がある。労働条件の変更内容によっては、法的紛争に発展するリスクもある。 |
注意点 | 労働条件の変更は、労働契約法や労働基準法などの法令を遵守して行う必要がある。従業員への十分な説明と合意が必要。 |
ケース4:合併後にキャリアパスと育成が行われる
合併を機に、従業員のキャリアパスを再構築し、育成プログラムを導入すれば、組織全体のスキルアップを図れます。
項目 | 詳細 |
メリット | 従業員のモチベーション向上や、定着率の向上につながる。組織全体の能力が向上し、競争力強化に貢献する。 |
デメリット | 育成プログラムの設計や実施にコストがかかる。従業員の希望とキャリアパスが合致しない場合、不満が生じやすい。 |
注意点 | 従業員の個性や能力を考慮した、多様なキャリアパスを用意することが重要。育成プログラムの内容や効果について、定期的に見直しを行う必要がある。 |
吸収合併消滅会社の株主総会の流れと注意点

吸収合併において、消滅会社の株主総会は重要な局面です。
合併の承認を得るためには、適切な手続きと株主への丁寧な説明が必要不可欠です。下記の流れと注意点を確認して、吸収合併に備えましょう。
- 株主総会の招集通知と議案
- 特別決議の要件と議決権の行使
- 株主からの質問への対応と説明責任
- 株主代表訴訟のリスクと対策
株主総会の招集通知と議案
株主総会を開催するためには、まず株主に対して招集通知を送付する必要があります。招集通知に記載する情報は、以下のとおりです。
- 開催日時と場所
- 議案の内容(吸収合併契約の承認など)
- 株主総会参考書類
- 議決権行使の方法(書面投票、電子投票など)
吸収合併契約の内容は、株主にとって重要な判断材料となり、わかりやすく詳細を記載することが大切です。
合併契約の内容、合併比率、存続会社の情報などを明記しましょう。
特別決議の要件と議決権の行使
吸収合併契約の承認は、株主総会の特別決議事項に該当します。特別決議を行うには、以下の要件を満たしましょう。
- 議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席
- 出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成
株主が議決権を行使する方法としては、主に以下のとおりです。
- 株主総会への出席
- 書面による投票
- 電磁的方法(インターネットなど)による投票
株主が円滑に議決権を行使できるよう、十分な情報提供とサポート体制を整えることが大切です。
株主からの質問への対応と説明責任
株主総会では、株主から合併に関する質問が寄せられるため、適切な対応と説明ができるよう準備しましょう。
経営陣は、株主からの質問に対して誠実かつ丁寧に回答する義務があります。想定される質問として、以下のようなものが挙げられます。
- 合併の目的と期待される効果
- 合併比率の算定根拠
- 従業員の処遇
- 合併後の経営戦略
上記の質問に対して、客観的なデータや根拠に基づいて説明して、株主の理解と納得を得ましょう。
株主代表訴訟のリスクと対策
株主総会で合併が承認された場合でも、株主は合併の差し止めや損害賠償を求めて株主代表訴訟を提起する可能性があります。
株主代表訴訟のリスクを軽減するためには、以下の対策が有効です。
- 法務デューデリジェンスの徹底
- 合併契約の内容の適正性確保
- 株主への十分な情報開示と説明
- 弁護士など専門家への相談
特に、合併比率の算定根拠や取締役の責任に関する事項は、訴訟のリスクが高いため、慎重に対応してください。
項目 | 内容 | 注意点 |
招集通知 | 開催日時、場所、議案内容などを記載 | 合併契約内容の詳細な説明 |
特別決議 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成 | 議決権行使のサポート体制 |
株主からの質問 | 合併の目的、合併比率、従業員の処遇など | 誠実かつ丁寧な回答 |
株主代表訴訟 | 合併の差し止めや損害賠償請求 | 法務デューデリジェンスの徹底 |
株主総会は、吸収合併の成否を左右する重要なプロセスなので、株主への丁寧な説明と適切な対応を通じて、スムーズに合併手続きを進めましょう。
吸収合併で会社を消滅させる際のリスクと対策

吸収合併は、企業再編の有効な手段である一方、消滅会社にさまざまなリスクが伴います。
吸収合併前に想定されるリスクを事前に把握し、適切な対策を講じましょう。
法務デューデリジェンスの重要性
法務デューデリジェンスは、吸収合併を行う上で非常に重要なプロセスです。
法務デューデリジェンスは、消滅会社の法的なリスクを事前に洗い出すための調査であり、契約の有効性、訴訟の有無、知的財産権の状況などを詳細に確認できます。
合併後の予期せぬ法的問題が発生するリスクを軽減するために、法務デューデリジェンスを徹底しましょう。
具体的には、以下のような項目を重点的に調査してください。
調査項目 | 内容 | リスク |
契約関係 | 重要な契約の内容、契約解除条項の有無 | 不利な契約条件、契約解除による損害賠償請求 |
訴訟・紛争 | 係争中の訴訟、過去の紛争の有無 | 訴訟費用の負担、損害賠償責任 |
知的財産権 | 特許、商標、著作権の権利状況 | 権利侵害による損害賠償請求、事業の制限 |
契約不適合責任のリスクと対策
吸収合併契約において、消滅会社の資産や負債に関する情報が正確でない場合、契約不適合責任が発生する可能性があります。
例えば、簿外債務や隠れた瑕疵などが発覚した場合、存続会社は消滅会社に対して損害賠償を請求できます。
このようなリスクを回避するためには、合併契約において、表明保証条項を設け、契約不適合責任の範囲や期間を明確にしておくことが重要です。
具体的な対策としては、以下のようなものが効果的です。
- 詳細な資産査定の実施:不動産、有価証券、知的財産などの価値を正確に評価する。
- 負債の洗い出し:隠れた債務や偶発債務がないか、徹底的に調査する。
- 表明保証保険の活用:契約不適合責任が発生した場合に備え、保険に加入する。
訴訟リスクと紛争解決
吸収合併後、消滅会社の事業に関連する訴訟リスクがあります。
具体的には、製品の欠陥、顧客とのトラブル、従業員との紛争などが訴訟に発展するケースです。
このような訴訟リスクに備えるためには、事前に起こりえるリスクを分析し、訴訟が発生した場合の対応策を準備しておくことが大切です。
また、紛争解決のために、ADR(裁判外紛争解決手続き)の活用も検討しましょう。
訴訟リスクを軽減するための対策としては、以下のようなものが効果的です。
- 過去の訴訟事例の分析:類似の訴訟事例を分析し、リスクを予測する。
- 和解交渉の推進:訴訟に発展する前に、当事者間で和解交渉を行う。
- 弁護士との連携:訴訟が発生した場合に備え、弁護士との連携体制を構築する。
従業員からの訴えと対応
吸収合併に伴い、従業員の雇用条件や労働環境が変更される場合、従業員からの不満や訴えが生じる可能性があります。
特に、給与の減額、配置転換、解雇などは、従業員の権利を侵害するとして訴訟に発展するケースもあります。
このようなリスクを回避するためには、従業員との十分なコミュニケーションを図り、雇用条件の変更について丁寧に説明することが大切です。
また、労働組合との協議を通じて、従業員の理解と協力を得ましょう。
従業員からの訴えに対応するためのポイントは、以下のとおりです。
- 丁寧な説明と対話:合併の目的や従業員への影響について、丁寧に説明する。
- 個別の相談窓口の設置:従業員が不安や疑問を相談できる窓口を設ける。
- 労働条件の維持・改善:可能な範囲で、労働条件を維持・改善するよう努める。
吸収合併は、企業にとって大きな転換期であり、さまざまなリスクが伴います。
しかし、事前の準備と適切な対策を講じれば、リスクを最小限に抑え、合併を成功に導けるのです。
吸収合併を成功させるために消滅会社の役割と責任を理解しよう!

吸収合併は、企業再編の重要な戦略の一つですが、消滅会社となる側にも大きな役割と責任があります。合併を成功に導くためには、消滅会社がどのような点に注意し、どのような行動をとるべきかを理解することが大切です。
吸収合併は、消滅会社にとって組織がなくなる大きな変化をもたらしますが、新たな成長の機会を創出する機会でもあります。
吸収合併に関して不安や疑問がある場合は、M&Aの専門家へ相談しましょう。
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