「会計ソフトと言えばfreee」と言われるほどフリーは知名度を誇ります。
フリーはfreee会計やfreee人事労務などネット環境があれば利用できるSaaS型クラウドサービスを提供するフィンテック企業です。
フリーランスから中小企業まで幅広い顧客を抱えるフィンテック企業であるフリーの最新決算は気になりませんか?
上場企業であるフリーの決算は一般公開されており、誰でも読むことができます。
本記事では、フリーの最新決算や決算から分かる財務体質や会社の特徴、今後の業績予想などフリーの決算を深堀します。
この記事を読むことで、フリーの最新決算が把握でき、将来的なM&Aの相手先として適しているか判断できるでしょう。
目次
フリーの最新決算
2023年9月28日に公表されたフリーの有価証券報告書によれば、2023年6月期の決算概要は以下のとおりです。
2022年6月期 | 2023年6月期 | 前期比 | |
売上高 | 14,380百万円 | 19,219百万円 | +33.6% |
粗利 | 11,539百万円 | 16,066百万円 | +39.2% |
営業損失 | 3,042百万円 | 7,919百万円 | +60.3% |
当期損失 | 11,609百万円 | 12,328百万円 | +6.1% |
総資産 | 47,413百万円 | 42,786百万円 | ▲9.8% |
有利子負債 (社債+借入金) | 586,000百万円 | 10,000百万円 | ▲98.3% |
純資産 | 36,428百万円 | 27,059百万円 | ▲25.8% |
自己資本比率 | 78.3% | 63.2% | ▲15.1% |
増収の要因は?
2023年6月期は前期比33.6%と大幅増収となりました。
今期増収の要因は、2023年10月1日に開始したインボイス制度が大きく関係しています。
制度導入により、制度に対応した帳簿の作成や保存が必要となりました。
これにより、freee会計やfreee人事労務の有料課金ユーザーが増加したのです。
過去5期を見てもフリーの売上高は増収を続けており、業績が順調に拡大していると言えるでしょう。
2019年6月期 | 2020年6月期 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | |
売上高 (百万円) | 4,579 | 6,928 | 10,300 | 13,527 | 18,209 |
フリーはクラウド会計市場で市場シェア1位を誇ります。
また、売上高の90%をサブスクリプション型のサービスが占めており、安定的な営業基盤を活かして順調に成長を遂げてきたのです。
慢性的な当期赤字
急成長を続けるフリーですが、営業損失は7.9億円、当期利益は12.3億円と赤字を記録しました。
実はフリーは創業以来慢性的に赤字が続いています。
なぜ成長を続ける一方で赤字が慢性化しているのでしょうか。
その答えは決算に見ることができます。
2023年6月期の売上高は192億円ですが、現金を364億円保有しています。
負債は100億円ありますが、資本金256億円、資本余剰金416億円の合計672億円を株式で集めているのです。
販管費に240億円と売上高を超える金額を使っていますが、販管費の多くを研究開発費(68億円)、広告宣伝費(133億円)に使っています。
つまり、フリーは慢性的な赤字にも関わらず、「フリーが今後も成長する」と信じる株主から集めたお金を投資に回し、売上を伸ばしている、と読み取ることができます。
そして、株主が「フリーが今後も成長する」と信じるとおり、フリーはサブスクリプション型のサービスで安定的かつ高い成長を続けているのです。
盤石な財務体質
BSを見ると、自己資本比率は63.2%と前期と比べ減少したとは言え、高い自己資本比率を誇ります。
192億円の売上高の約2倍の364億円の現金を蓄えています。
現金の内100億円は借金で賄っていますが、多くを返済が必要ない株主資本が占めており、財務体質は盤石と言えるでしょう。
また、売上高に占めるサブスクリプション型のサービスは90%を超え、安定的かつ継続的な収益構造を構築しました。
決算から読み取るフリーという会社
2023年6月期の有価証券報告書を基にフリーという会社の全体像を見ていきましょう。
会社概要
フリーの会社概要は以下の通りです。
会社名 | フリー株式会社 |
設立年 | 2012年7月 |
本社所在地 | 東京都品川区大崎一丁目2番2号 |
事業内容 | プラットフォーム事業、金融事業 |
主な商品・サービス | freee会計、freee人事労務 |
代表取締役CEO | 佐々木大輔 |
資本金 | 25,640百万円 |
従業員数 | 1,299名 |
連結子会社数 | 9社 |
発行済株式数 | 59万株 |
フリーは創業して10年程度と業歴が浅いにもかかわらず、利用事業者数は100万社超、クラウド会計ソフト導入の市場シェア1位と圧倒的地位を確立しています。
事業内容
フリーは「スモールビジネスを、世界の主役に」をミッションに掲げており、個人事業主や中小企業のバックオフィスの生産性向上を企図した商品やサービスを開発しています。
圧倒的ともいえるプロダクト開発力を活かして次々とサービスを開発しました。
2013年:freee会計
2014年:freee人事労務
2015年:freee会社設立
2016年:freee開業、freee申告
2020年:freee工数管理、freee受発注
2021年:freee勤怠管理Plus、freee経費精算
2022年:freeeカードUnlimited、freee販売
これらのサービスはいわゆるサブスクリプション型のサービスであり、フリーのARR(年間経常収益)は順調に推移しています。
単位:百万円 | 2018年6月期 | 2019年6月期 | 2020年6月期 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 |
個人事業主 | 1,018 | 1,475 | 2,371 | 3,448 | 4,404 | 5,567 |
法人 | 1,968 | 3,797 | 5,527 | 7.819 | 10,652 | 15,011 |
合計 | 2,986 | 5,273 | 7.898 | 11,268 | 15,057 | 20,579 |
方針や企業文化
フリーは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」をコンセプトとし、様々な商品、サービスを提供しているのです。
自社を「マジ価値を届けきる集団」と定義し、全従業員がユーザーに本質的な価値を届けることを大切にしています。
「個々人が高い自律性を持ちながらも強い一体感、カルチャーを持つ組織」を実現しました。
企業課題
フリーは企業課題として、主に3つを挙げています。
クラウドERP市場の拡大
フリーはスモールビジネス向けの会計ソフトや人事労務ソフトを1.2兆円程度と推定しています。
しかし、中小企業の会計ソフト普及率は34%程度に留まっているようです。
これはアメリカの約60%、イギリスの約58%、オーストラリアの約82%と比較して、低い水準にあるのです。
今後、普及率を上昇させることが課題となります。
キャッシュ創出
フリーはサービス開発や広告宣伝費に売上高を上回る金額を投入しています。
この結果、継続的にサブスクリプション型のサービスを開発し、ARRが堅調に推移しているのです。
たとえ一時的に赤字を計上しても積極的な投資が長期的なキャッシュ創出に寄与する、という考えに基づいています。
しかし、投資が順調に進まない場合にはキャッシュ創出に問題が生じる可能性があるでしょう。
継続的な新規事業創出
フリーはプロダクト開発力を活かし、毎年新商品をリリースしています。
これにより、継続的な課金ユーザー獲得が可能です。
しかし、新規事業が生まれない場合や市場の競争が激化した場合に収益源が減少する可能性があります。
常に新しい商品を開発し、市場に投入することが求められるのです。
決算から予想するフリーの将来
フリーは2023年6月期を初年度とする中長期経営戦略を策定しています。
中長期経営戦略と業績予想を基にフリーの今後を見ていきましょう。
2024年3月期業績予想
2023年8月14日に公表された2023年6月期決算短信によれば、2024年6月期業績予想は以下のとおりです。
売上高 | 25,400百万円 |
営業利益 | ▲8,650百万円 |
安定的な収益を生み出すサブスクリプション型のサービスの拡大によって、前期比約40%の売上増を見込みます。
開発投資や広告宣伝費によって、営業利益は赤字推移ですが、営業基盤拡大への一時的な赤字であると説明しています。
インボイス制度への対応
2023年10月1日に開始したインボイス制度導入により、個人事業主を中心に会計ソフトや精算ソフトの需要は高まるでしょう。
フリーは早速freee会計のアップデート版やfreee経理、freee請求書をリリースしています。
短期的にはインボイス制度への対応により、業績は安定的に推移するでしょう。
金融サービスの拡大
フィンテック企業と定義されることもあるフリーは2018年10月にフリーファイナンスラボ株式会社を設立しています。
また、freeeカードUnlimitedをリリースするなど金融領域に本格的に参入しました。
資金繰りに苦難する個人事業主や中小企業も多いと言われています。
フリーの顧客層はこれらスモールビジネスであり、顧客基盤を活用して、ニーズに合致した商品をリリースすることで継続的な業績拡大が可能でしょう。
オープンプラットフォームの充実
オープンプラットフォームとは、非公開の技術を無償で公開し、さまざまな開発者やプロバイダーが自由に修正、開発に参加できる仕組みを指します。
フリーは2018年5月にAPIエコノミー形成を目指す新戦略「freee オープンプラットフォーム」を発表、2019年1月にfreeeアプリストアをリリースするなど、オープンプラットフォームの充実に注力しています。
「freee オープンプラットフォーム」では、8社とパートナーシップを組み、より高品質のサービスが開発されると同時にフリーの技術力向上、市場でリーダー的な地位を確保することが期待されるでしょう。
革新的ビジネスを創出し続けるフリー
フリーの今後を見る上で注目したいのは新規の革新的ビジネスです。
新規事業はフリーのキャッシュ創出の源であり、激化するSaaS型クラウドサービス市場で勝ち残る手段です。
安定的な収益を生み出すサブスクリプション型のサービスを主軸とするフリーですが、解約率は2023年6月期の12ヶ月平均解約率は1.2%と低い水準でとどまっています。
解約率を低く抑えるため、カスタマーサポート機能拡充や既存機能強化などを実施しているようです。
継続的な投資と革新的ビジネスの創出が続けば、さらなる成長が期待できるでしょう。
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