ZHD(Zホールディングス)は、「ソフトバンク」を親会社とする企業で、Yahoo!やLINEなどの多くの子会社を有しています。
今回の決算発表会¥において、その子会社であるYahoo!とLINEと合併することが発表され話題になりました。この2社は2019年に既に経営統合を果たしています。そこから、さらに3社が合併するのにはどのような意図があるのでしょうか。
今回の記事では、この3社合併とZHDの詳細、これまでの歴史について詳しく説明します。
目次
ZHDの今期決算状況
2023年2月、ZHD(Zホールディングス)の決算説明会が開催されました。今期のZHDの売り上げ利益に関して、「アスクル」や「ZOZOTOWN」、トラベル関係などのコマース事業が全体の51.2%を占めています。続いて、メディア事業が全体の38.2%、その他、戦略事業として定められている「PayPay」や「PayPayカード」、「PayPay銀行」などの金融関連の事業が全体の10.4%となりました。
今回の決算状況説明会では、売り上げ利益の報告だけでなくZHDの子会社である「ヤフー株式会社」と「LINE株式会社」との3社合併して、新体制を整えることが公表され大きな話題となりました。
LINE・Yahoo!との合併、決算説明会で発表
ZHDは、ソフトバンクグループの傘下で、Yahoo!やLINEを完全子会社としています。他にも「PayPay」や「ZOZOTOWN」を運営する「株式会社ZOZO」など私たちの知っている多くの企業を傘下としています。
今回の合併では、Yahoo!とLINEのみがZホールディングスと合併し、その他の企業は合併の対象になりません。
現在のZHDは、Yahoo!出身の川邊健太郎氏と、LINE出身の出澤剛氏が共同CEOを務める形態です。今後、川邊健太郎氏は会長職へ就任し、NAVER出身の慎ジュンホ氏が新代表取締役GCPOに就任して新たな体制を整えていきます。
社名の変更や新体制の詳細については、4月以降に開催される通期決算の報告に合せて公表するとされています。
ZHDは、子会社の数が多いことから、企業形態が複雑になり、意思決定に遅れが生じていたり、経営方針の刷新が進まなかったりする一面がありました。しかし、今回の合併により意思決定の迅速化や組織形態の最適化、重複事業の整理によるコストの削減を図ります。
経営統合と合併の違い
しかし、すでに経営統合しているYahoo!・LINEと親会社であるZHDが合併するのにはどのような意図があるのでしょうか?M&Aの視点から見てみましょう。
経営統合は、それぞれ(または子会社)の法人格が維持されて、協力体制の元、事業をすすめていく手法です。
今回の場合、親会社が同じ子会社同士の経営統合であるため、各子会社の法人格が維持され、基本的には親会社からの支配を受けません。企業体制や人事体制もそれぞれの子会社ごとに管理・運営されます。
対して合併は、経営統合と同様にM&Aの手法の1つですが、子会社のように各法人格と企業体制が維持されることは少なくなります。人事体制や企業体制を見直したり、重複する部門の削減や統一を図ったりすることが一般的です。そのため、経営統合よりもさらに強固な協力体制を敷くと言えるでしょう。
合併後になくなるサービスとは?
この3社合併では、コスト削減や最適化を図るため、今後、10個程度のサービスをクローズ・縮小することが公表されています。それらをまとめたのが以下の図です。
合併 | 合併後 | |
クローズ・集約 | GYAO!・LINE LIVE | LINE VOOM |
Yahoo!占い | LINE占い | |
Yahoo!チケット | ✕ | |
Yahoo!副業 | ✕ | |
統合・リニューアル | PayPayモール | Yahoo!ショッピング |
事業売却 | livedoor |
これらの事業整理により、合併後は約302億円のコスト削減が見込まれるとされています。
出典: Zホールディングス株式会社決算説明会2022年度第三四半期
ZHD、現在のサービスや子会社を紹介
今回の合併で注目を集めているZHDとは、どのような会社なのでしょうか?企業について事業内容や子会社などを紹介します。
ZHDは「ソフトバンクグループ」の連結子会社です。筆頭株主は「Aホールディングス」で、「ソフトバンク」と「株式会社ネイバー」の合弁会社となっています。
ZHDは、多くのグループ会社を有し、これらの経営機能を担っています。子会社の一覧は以下の通りです。
アスクル株式会社 | オフィス関連の商品販売とその配送事業 |
株式会社一休 | 高級ホテル、旅館、レストランなどの予約サイト運営 |
株式会社GYAO | インターネット映像コンテンツの制作・配信と広告事業 |
CRITEO株式会社 | インターネットにおける広告事業 |
株式会社スタンバイ | 求人検索サイトの運営 |
スポーツナビ株式会社 | スポーツ情報のコンテンツ作成 |
Z Entertainment株式会社 | ゲームや占いなど国内エンターテイメントサービスを統括 |
Zコーポレーション株式会社 | 新規事業開発 |
Zデータ株式会社 | Zホールディングス全体のデータを管理 |
Zフィナンシャル株式会社 | グループかいしゃの管理 |
Z Venture Capital株式会社 | ベンチャーキャピタル事業 |
株式会社ZOZO | ファッション通販サイトの運営 |
株式会社出前館 | フードデリバリーサービスなど |
dely株式会社 | レシピ動画の配信 |
バリューコマース株式会社 | マーケティングソリューション事業 |
PayPay株式会社 | 電子決済サービス |
PayPayアセットマネジメント株式会社 | 金融商品取り扱い業 |
PayPayカード株式会社 | クレジットカード、カードローン |
PayPay銀行株式会社 | 銀行業 |
PayPay保険サービス株式会社 | 生命保険、損害保険業 |
株式会社マイベスト | 選択サポートサービス「mybest」の運営 |
ヤフー株式会社 | Eコマース、広告事業 |
LINE株式会社 | モバイルメッセンジャーアプリの運営 |
LINE Xenesis株式会社 | 暗号資産販売所の運営 |
LINE NEXT Corporation | NFTプラットフォーム事業の業務開発 |
LINE Financial株式会社 | 金融サービス |
LINE Fukuoka株式会社 | LINEサービス関連事業 |
LINE Pay株式会社 | 電子決済サービスの運営 |
LINEヘルスケア株式会社 | オンライン医療事業 |
LINE MUSIC株式会社 | LINE MUSICの運営 |
ZHDのこれまでの歴史
次に、ZHDが現在規模の大企業になるまでの歴史を見てみましょう。
1996年1月 | ソフトバンクとアメリカ法人のYahoo!の合弁によってヤフー株式会社が設立 |
2003年10月 | 東京証券取引所第一部市場に上場 |
2007年2月 | ジャスダック証券取引所上場 |
2017年 | 米Yahoo!がベライゾン・コミュニケーションズに買収される |
2018年2月 | ジャパンネット銀行を連結子会社化 |
2018年7月 | 「クラシル」などを運営するdely株式会社を連結子会社化 |
2018年7月 | ソフトバンクとヤフー株式会社の合弁会社がPayPayを提供開始 |
2019年5月 | ヤフー株式会社がソフトバンクの連結子会社となる |
紀尾井町分割準備株式会社の設立 | |
2019年9月 | 株式会社ZOZOを買収 |
2019年10月 | 金融部門をZファイナンシャル株式会社へ事業譲渡 |
ヤフー株式会社がZホールディングスに社名を変更 | |
紀尾井町分割準備株式会社がヤフー株式会社(二代目)に改名 | |
2023年 | Zホールディングスヤフー株式会社(二代目)とLINE3社合併 |
ZHDは元々、ヤフー株式会社の社名を使用していました。1996年に「ソフトバンク」と、アメリカ法人「Ziff Davis」の傘下である米Yahoo!が合弁によって設立した企業です。
2017年、米Yahoo!は中核となるインターネット事業を「ベライゾン・コミュニケーションズ」というアメリカ法人に買収されました。その際に日本の「Yahoo!株式会社」はその影響を受けることなく、ソフトバンクに買収されて米Yahoo!との資本関係は消滅したのです。
2019年、この初代ヤフー株式会社の再編に伴い、二代目Yahoo!株式会社が設立されるとともに、情報通信事業を事業継承し、金融統括部門を会社分割によりZファイナンシャル株式会社へ移行。これにより経営管理事業のみが残りました。
2020年に現社名であるZホールディングス株式会社(ZHD)に変更して、この時よりグループ会社全体の経営管理事業を担っています。
その後、2023年に、今回話題となっているZHD、Yahoo!・LINEとの合併が決定したのです。
3社合併で今後さらに進化するZHDに期待
今回の記事ではZHDとYahoo!・LINEの3社合併について、各企業の事業内容やこれまでの経緯を説明しました。
Yahoo!とLINEはZHDの中核を担う子会社となっており、2社は2019年に経営統合していました。今回、ZHDがこの2社と合併することで、ZHDの企業体制を全体的に整理してコスト削減する目的があります。そして、3社のさらなる相乗効果を発揮させるための合併と言うことになります。
日本を代表する企業と言っても過言ではないZHDは、この3社合併で今後さらに事業拡大進めて国内で影響力のある企業となるでしょう。
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