革新的な商品やサービスを提供するスタートアップと呼ばれる企業は日本のみならず海外でも人々の生活を大きく変えています。
スタートアップ企業の中でも「創業からまもなく、企業価値の高い企業」をユニコーン企業と言います。
経済産業省の「スタートアップについて」によれば、日本はアメリカや中国、インドと比較してユニコーン企業が少ないようです。
将来の雇用や経済成長を支えるスタートアップ企業が創出されないと日本と海外の差は開くばかりで、経済成長から取り残されるという懸念があります。
日本よりもアメリカや中国などの海外でスタートアップ企業がたくさん誕生している現状で海外の状況を知ることは日本で次に成功するビジネスを知る鍵になります。
この記事では、海外のスタートアップの動向を解説します。
目次
- 1 スタートアップとは?
- 2 ユニコーン企業とは
- 3 海外における国別のスタートアップ状況
- 4 アメリカ|世界最大のスタートアップ企業数
- 5 ヨーロッパ|スタートアップブームが勃興
- 6 アジア|中国とインドがけん引役
- 7 CIS諸国|スタートアップの環境は未整備
- 8 海外のスタートアップのトレンド
- 9 バイオテクノロジー分野でスタートアップ企業が増加
- 10 ノーコードプラットフォームを提供するスタートアップ
- 11 シェアリングエコノミーにスタートアップが続々参入
- 12 アグテック系のスタートアップ企業が誕生
- 13 ウェルステック系のスタートアップ企業の事例
- 14 アフリカのデジタルイノベーション関連にスタートアップ企業が参入
- 15 海外ではスタートアップブームが起きている
スタートアップとは?
スタートアップとはアメリカで誕生した言葉であり、「開始」「起動」という意味を持つ”startup”が語源となっています。
もともとの意味は「事業の新規立ち上げ」ですが、シリコンバレーで起業し、革新的なビジネスで急成長する企業を指すようになりました。
企業規模や創業年などの明確な定義はなく、急成長を続ける企業はスタートアップと呼ばれます。
以前スタートアップと呼ばれていたGoogleやAmazonなどの新興企業は世界を代表するグローバル企業に成長しています。
スタートアップの重要な要素はビジネスモデルやサービスの「革新性」であり、前例のない技術やサービスで新しい価値を創出します。
一方で既存のビジネスモデルを採用する企業はベンチャー企業と呼ばれています。
ユニコーン企業とは
ユニコーンとは「評価額が10億円を超えるスタートアップ企業」を指します。
ベンチャーキャピタル業界で使用される用語であり、アメリカのカウボーイ・ベンチャーズの創業者であるアイリーン・リー氏が開発した言葉です。
同氏によれば、ユニコーン企業の定義は以下の3つです。
- 設立から10年未満の企業であること。
- 評価額が10億ドル以上であること。
- 未公開企業であること(上場していないこと)
創業して10年未満と間もないながら企業価値の高いスタートアップ企業を伝説の動物ユニコーンに例えています。
ちなみに評価額が100億円を超えるスタートアップ企業は「デカコーン」や「スーパーユニコーン」と呼ばれています。
ユニコーン企業の定義からも、スタートアップ企業が企業規模を基準に定義されていないことがわかります。
海外における国別のスタートアップ状況
経済産業省の「スタートアップについて」によれば、日本は企業価値の高いスタートアップ企業の数と企業価値の両方において、アメリカや中国、インド、そしてヨーロッパに水を開けられています。
スタートアップ企業の誕生がさかんな海外の動向を知ることで、日本のスタートアップ業界の課題を理解するとともに海外からビジネスのヒントを得ましょう。
アメリカ|世界最大のスタートアップ企業数
アメリカのハイテク銀行であるSiliconValley Bankによれば、2019年時点で全世界のスタートアップ企業の59%がアメリカを拠点に活動しています。
アメリカのシリコンバレーは世界のスタートアップ企業の聖地であり、スタートアップ企業の数はアメリカで71,153社と2位の中国の13,125社を大きく離しています。
アメリカの調査会社「CBインサイツ」によれば、世界のスタートアップ企業の企業価値ランキングで上位10社のうちアメリカ初の企業が4社を占めています。
ヨーロッパ|スタートアップブームが勃興
ドイツ、イギリス、フランスの先進国やスウェーデン、フィンランドなどの北欧を中心にスタートアップブームが起こっています。
ただし、米コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、2019年時点の世界のユニコーン企業の割合はアメリカ50%、ヨーロッパ14%となっています。
ヨーロッパ全体の人口やGDPと比較すると、スタートアップ企業の数は少なく、円滑な資金調達に成功している企業は多くはないようです。
アジア|中国とインドがけん引役
アジアでスタートアップのけん引役となっているのは中国とインドです。
経済産業省の「スタートアップについて」によれば、世界のユニコーン企業の企業価値では、アメリカの488社16,426億ドルに対して、中国は170社5,751億ドル、インドは116社3,810億ドルとなっています。
「CBインサイツ」によれば、世界のスタートアップ企業の企業価値ランキングで上位10社のうち中国企業が2社を占め、うち1社は企業価値で第1位です。
特にアジア屈指の経済大国である中国は北京・広東・上海などの大都市でスタートアップ企業が数多く誕生し、週ベースで100〜200社のスタートアップが資金調達に成功しています。
中国版FAMGAと呼ばれるBAT(バイドゥ、アリババ 、テンセント)といったスタートアップ初のIT大手は今やアメリカのGAFAと肩を並べる存在です。
中国政府のイノベーション振興策の影響もあり、AI、ロボット、コンピュータといった最先端分野で世界をリードしています。
世界経済フォーラムによれば、中国は「製造業からイノベーションへ」という政府の政策の下で税制優遇制度や外資の誘致に成功したことが要因です。
CIS諸国|スタートアップの環境は未整備
CISとはロシアを中心とする旧ソ連の構成国です。
CISは2億3,000万人という巨大市場を抱えており、先進的な技術を持つエンジニアもたくさんいます。
しかし、スタートアップは盛んではなく、ユニコーンと呼ばれるスタートアップもありません。
スタートアップの発展を妨げている要因は不安定な経済や権威主義的な政治体制、政府の振興策の乏しさにあります。
また、優秀なエンジニアやプログラマーがより良い待遇を求めて、アメリカや西ヨーロッパに流出しており、スタートアップ企業が成長するポテンシャルはあっても環境が整っていないのが現状です。
海外のスタートアップのトレンド
スタートアップがシリコンバレーで誕生したこともあり、海外ではアメリカが最もスタートアップ起業のさかんな国です。
アメリカ以外でもアジア、特に中国でスタートアップ起業が盛んであることを解説しました。
ここからはアメリカを含む海外におけるスタートアップのトレンドや動向について解説します。
バイオテクノロジー分野でスタートアップ企業が増加
スタートアップ起業が増えている分野がバイオテクノロジーです。
グローバル市場調査会社のGrand View Researchによれば、2020年時点のバイオテクノロジー産業の市場規模は7,528億ドルに上ります。
スタートアップ企業の中にはDNA分析をサービス化しようという動きがあります。
例えば、頬に綿棒をあててDNA検査を実施し、アプリで個人のDNAを分析した上で個々人に最適な栄養素を含む食事の提案をするサービスがはじまっています。
また、DNAを分析し、個人に合ったスキンケアやエクササイズを提案する診断サービスを提供するスタートアップ企業もあります。
ノーコードプラットフォームを提供するスタートアップ
ノーコードとは、プログラミングの知識がなくてもシステムを開発できるサービスです。
ノーコードに近いサービスとして、ソースコードをほとんど書かずに、システム開発を迅速に開発するツールであるローコードも登場しています。
こういった「ノーコード」または「ローコード」のカスタムアプリやウェブサイトを作成できるプラットフォームを提供するスタートアップ企業が増えています。
また、ある米スタートアップ企業は一切のコードなしで機能するアプリを構築できるサービス提供を開始しました。
同社は世界最大のオンラインサロンも運営しています。
シェアリングエコノミーにスタートアップが続々参入
ワシントンに拠点を置く非営利団体The Brookings Institutionによれば、シェアリングエコノミーの市場規模は3,350億ドル(約42兆円)という巨大市場です。
シェアリングエコノミーは、過去10年間の最大のスタートアップのトレンドの1つになっています。
スタートアップ企業が続々と参入している市場でもあり、例えば家主が留守中に家を貸し出し、副収入を得られる民泊サービスや配達専用のレストラン向けに作られた共有キッチンスペースを提供するサービスなど新しいサービスが続々と誕生しています。
アグテック系のスタートアップ企業が誕生
アグテックとは、英語の農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせた用語です。
AIなどのIT技術を農業に応用することを指します。
SDGsで持続可能な農業が目標に掲げられたこともあり、アメリカを中心にアグテック系のスタートアップ企業が誕生しています。
例えば、ドローンを駆使して広大な農場に農薬散布をしたり、情報収集をする技術が生まれています。
また、雑草駆除ロボットが画像認識で雑草を見つけ出し、駆除するサービスがシリコンバレー初のスタートアップ企業で実現しました。
ほかにも通気や呼吸を測定するIoT土壌センサーを設置して、農家がより簡単に牛を追跡し、監視することを可能にするサービスもあります。
ウェルステック系のスタートアップ企業の事例
Wealthtech(ウェルステック)は、テクノロジーを駆使して資産を管理するサービスです。
株式市場が過去10年間に飛躍的な成長を遂げたことやインターネットの普及で投資が身近なものになったことを背景として、注目を集めている分野です。
このようなWealthtech系のスタートアップ企業には以下のような例があります。
- 事例や意見を交換することができるトレーダーのネットワーク
- 規制遵守に関連する活動を自動化または促進するソフトウェア
- 銘柄選定や投資管理をAIが代行してくれるロボアドバイザー
- 老後の貯蓄を管理するために設計されたロボ・リタイアメント
- 事前に定義された一連の命令に基づいて、高速で注文を実行したり、取引を行うアルゴリズム取引
例えば、インターネット上で取引が完結するネット証券もスタートアップ企業として認識されています。
アフリカのデジタルイノベーション関連にスタートアップ企業が参入
デジタルイノベーションとは、デジタル技術を活用し、製品やサービスを革新することです。
この分野のスタートアップ企業やベンチャーキャピタルの資金がアフリカに向かい始めています。
シリコンバレー初のアフリカ系のベンチャーキャピタルであるPartechによれば、2020年だけで20億ドルのVCマネーがアフリカに流入しています。
例えばあるスタートアップ企業はアフリカで深刻な飢餓に対処するために食品ロスをなくすためのサービスをはじめました。
これは貿易や在庫追跡のためのモバイルアプリなどの技術やケニアの1万7000の農家と3万5000のベンダーをつなぐ食品流通ネットワークを活用して、収穫後のロスを平均30%から4%まで削減することに成功しました。
海外ではスタートアップブームが起きている
この記事では、海外の各国におけるスタートアップの状況やスタートアップ界の動向やトレンドを解説しました。
海外のスタートアップの動向を見ていくと、日本が海外から取り残されていることがわかります。
経済産業省が危惧しているように将来的な雇用や経済成長の消滅という事態になりかねません。
しかし、海外のスタートアップの事例を見ることで、新しいビジネスのアイデアを得ることもできます。
海外のスタートアップに関してさらなる情報がほしい方は専門家に相談しましょう。
株式会社パラダイムシフトはM&Aサポートに定評のあるM&A仲介会社です。
海外のスタートアップ企業の革新的なサービスに関心のある方は株式会社パラダイムシフトに相談してみましょう。