2012年4月9日にFacebookがInstagramを買収したことは、世界中に衝撃を与えました。
Facebookが10億ドルで買収したInstagramは当時ユーザー数3,000万人の小さなサービスだったからです。
FacebookによるInstagramの買収は、M&Aの歴史の中でも最も有名な案件の一つであり、10年以上経過した今でも度々話題になります。
話題の中心はFacebookに対する批判であり、アメリカを中心に政府や業界関係者から強い反発を招いています。
この記事では、なぜFacebookがInstagramを買収したのかについて真相を解説。I買収案件の特徴や影響、そして買収の問題点について説明します。
目次
- 1 FacebookによるInstagramの買収
- 2 Facebookとは?
- 3 Instagramとは?
- 4 FacebookはなぜInstagram買収したのか?目的を解説!
- 5 競合他社の排除
- 6 Instagramの成長性
- 7 広告収入の拡大
- 8 FacebookによるInstagramの買収の影響
- 9 Facebookの広告収入の増加
- 10 Instgramの利用者増加
- 11 FacebookによるInstagramの買収の問題点
- 12 Instagramの買収に類似したFacebookのM&A事例
- 13 WhatsApp
- 14 Oculus
- 15 Instagram買収でFacebookは大きな成長の機会を掴んだ
FacebookによるInstagramの買収
Facebookは、2012年にInstagramの買収を発表しました。
2012年4月にFacebookの創設者兼CEOであるマーク・ザッカーバーグが発表したところによれば、買収額は現金と自社株の組み合わせで10億ドルとなっています。
当時、従業員が13人しかおらず、大きな収益をあげていないInstagramに対して10億ドルという衝撃的な金額を支払ったことは世の中を驚かせました。
現在、Instagramのユーザーは10億人を超え、Facebookの年間収益に200億ドル以上貢献しています。
一部のアナリストからは、Instagramが1000億ドル以上、つまりFacebookの時価総額の約5分の1と評価されているようです。
Facebookとは?
Facebookは無料で利用することができるSNSサービスです。
家族や友人、職場の同僚、あるいは見知らぬ人々とオンラインでつながります。
ユーザーは、写真、音楽、ビデオ、記事、そして考えや意見を、好きなだけ多くの人と共有することができます。
2004年2月4日、ハーバード大学2年のマーク・ザッカーバーグが、在学中にハーバードの学生同士をつなぐために作ったソーシャルメディアサイト「The Facebook」を立ち上げたのが始まりです。
2006年には、13歳以上で電子メールアドレスを持っている人ならFacebookに参加できるようになりました。
現在、Facebookは、世界中で最も人気のあるソーシャルメディア企業に成長しました。
Facebookの月間アクティブユーザー数は20億人を超えています。
Instagramとは?
Instagramは、ユーザーが写真や短い動画を編集して、家族や友人に共有できるSNSサービスです。
他のSNSと同様に、ユーザーは、他の人の投稿に「いいね」、コメント、ブックマークを付けることができます。
ダイレクト機能で友人にプライベートメッセージを送信することも可能です。
Instagramは、個人向けだけでなく、企業向けのツールでもあります。
多くの企業が自社のブランドや製品を宣伝するために、ビジネスアカウントを開設しています。
2010年10月6日にアプリが公開され、わずか2年でアクティブユーザー数が4,000万人を突破しました。
これがFacebookの目に留まり、2012年にInstagramを10億ドルで正式に買収したのです。
FacebookはなぜInstagram買収したのか?目的を解説!
FacebookがInstagramを買収したのは2012年の時です。
当時、Instagramの利用者は3,000万人程度であった一方でFacebookには10億人のユーザーがいました。
Instagramの社員はわずか13人しかおらず、広告を掲載していなかったので売上もありませんでした。
それでは、なぜFacebookはinstagramの買収に踏み切ったのでしょうか。
競合他社の排除
2020年にアメリカ下院の反トラスト小委員会の調査で、FacebookがInstagramとの競争を回避するために買収に踏み切ったことが明らかにされました。
Instagramは以下のような驚異的なスピードでユーザーを獲得していました。
- 2010年10月…リリース
- 2010年12月…100万人
- 2011年6月…500万人
- 2011年9月…800万人
- 2012年1月…4,000万人
- 2012年4月…6,000万人
- 2012年4月…Facebookによる買収
ユーザーを獲得するスピードはFacebookを遥かに上回るものでした。
当時のInstagramは広告収入がなかったので、売上はゼロでした。
しかし、将来的にInstagram上に広告を掲載できるようになることは想像に難くなく、Facebookは潜在的な競争相手を排除するために買収に踏み切ったと考えられます。
Instagramの成長性
Instagramは他のSNSを遥かに上回るスピードでユーザー数を増やしています。
諸説ありますが、平均的なユーザー増加率は毎月1.5〜2.5%と言われているのです。
Facebookの決算報告によれば、主な収入のうち広告収入が97%を占めています。
FacebookはInstagramの成長率とそれによる広告収入の増加に期待したことが買収の一因です。
Facebookの時価総額は約5,000億ドルですが、様々なアナリストがInstagramの企業価値を1,000億円以上と見積もっています。
広告収入の拡大
Facebookはストーリーズなどに表示される広告主からの広告収入を収益源としています。
広告収入はFacebookの柱であり、SNSを広告によってマネタイズする技術やノウハウがFacebookには豊富にあるのです。
写真や動画を共有するというビジュアル重視のSNSであるInstagramは広告との親和性が高いです。
SNS上に広告を掲載して収益化してきたFacebookはInstagramの特徴に目を付けて、広告収入のさらなる拡大を目的に買収を実施しました。
FacebookによるInstagramの買収の影響
FacebookがInstagramを買収したことで、どのような影響があったのでしょうか。
FacebookとInstagramに分けて、それぞれの影響を解説します。
Facebookの広告収入の増加
Instagramの買収前と後のFacebookの収益の推移を以下のとおりです。
- 2009年…7億7,700万ドル
- 2010年…19億7,400万ドル
- 2011年…37億1,100万ドル
- 2012年…50億8,900万ドル
- 2013年…78億7,200万ドル
- 2014年…124億6,600万ドル
- 2015年…179億2,800万ドル
Instagramの買収が実施された2012年以降、成長スピードが加速度的に増加していることが分かります。
2021年にはInstagramはFacebookの収益の44%を占めており、2024年にはFacebookを抜くと考えられています。
Instgramの利用者増加
Instagramの買収前後のInstagramの利用者の推移は以下のとおりです。
- 2010年…100万人
- 2011年…500万人
- 2012年…9,000万人
- 2013年…1.7億人
- 2014年…3億人
- 2015年…4.2億人
2012年のInstagramの買収を契機として、毎年の増加数が大幅に増えています。
SNSを運営してきたFacebookのノウハウの活用やFacebookとの連携によって、利用者数が増えたと考えられます。
FacebookによるInstagramの買収の問題点
2020年12月、米連邦取引委員会(FTC)は、反トラスト法の疑いで、Facebookに対して、訴訟を提起しました。
訴状では、Facebookが競合他社の排除を目的にInstagramを買収し、自由な競争を意図的に阻害したと主張しています。
不公正の是正を目的にFacebookとInstagramの分離を訴えています。
Facebookの共同創業者のクリス・ヒューズや民主党の大統領候補エリザベス・ウォーレンも同様の主張を展開しました。
このようにFacebookが買収を通じて、不当に巨額の広告収入を獲得したという批判が展開されています。
Instagramの買収に類似したFacebookのM&A事例
FacebookによるInstagramの買収はSNSやIT業界に大きな衝撃を与えました。
Facebookはこれまでも大型のM&Aを通じて、自社を成長させてきました。
Instagramの買収に類似したFacebookのM&A事例を紹介します。
2014年にFacebookはWhatsAppを220億ドルで買収しました。
WhatsAppは、日本におけるLINEのような存在で、ヨーロッパを中心に人気のメッセージングアプリです。
全世界で4億5000万人以上のユーザーを持つ話題のメッセージング・サービスの買収は、その高額な価格設定に多くのシリコンバレー関係者を驚かせました。
買収金額はFacebookのInstagram買収の20倍以上の規模です。
WhatsAppの買収についてもInstagramと同様に競合他社の排除という目的があると言われています。
Facebookが提供するMessangerアプリの脅威としてWhatsappを認識しており、メッセージング市場を勝ち取ろうとするFacebookの決意が見えます。
Oculus
Oculusは、独立型のVRヘッドセットを開発しているメーカーです。
2012年に設立されたスタートアップ企業ですが、VRという新しい分野に進出している革新的な企業です。
2014年に総額約20億ドルで買収することを発表し、プロジェクトの達成度合いに応じて、さらに3億ドルの現金および株式の交付が規定されています。
この買収により、Facebookは、SNSサービスだけではなく、ゲームやVRなどの新しい体験にプラットフォームを拡大することを期待しています。
しかし、Facebookが昨年販売したOculus Riftは40万台未満で、競合するHTCViveやソニーPlayStationVRよりも人気がなく、成功に疑いがあるのです。
Instagram買収でFacebookは大きな成長の機会を掴んだ
この記事では、Facebookによるnstagram買収の特徴や影響、そして買収の問題点について解説しました。
Instagramの飛躍的な成長によって、本件買収は大成功と言われています。
その一方で、買収による競合他社の意図的な排除と市場の独占というM&Aの問題点も指摘されています。
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