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持株会社のメリット・デメリットは?中小企業経営者のための持株会社設立ガイド

中小企業の経営者の方にとって、 会社の成長や事業承継、節税対策などの悩みは尽きないものです。これらの解決策の一つとして、「持株会社化」が活用できる場合があります。

持株会社は、グループ経営を効率化し、 企業の持続的な成長を支える強力な組織形態です。しかし、設立にはメリットだけでなく、 デメリットや注意点も存在します。

本記事では、中小企業経営者の方に向けて、 持株会社の設立を徹底的に解説します。持株会社の仕組みからメリット・デメリット、 設立の手順、費用、成功・失敗事例まで、わかりやすくまとめました。

持株会社化を検討する上で役立つ情報をまとめたので、 ぜひ最後までお読みください。

目次

持株会社とは

近年、持株会社は、中小企業においても注目を集めている組織形態です。本章では、持株会社の基本的な定義から中小企業が設立する目的、設立形態について解説します。

持株会社の定義と仕組み

持株会社とは、他の会社を支配する目的で、会社の株式を保有する会社を指します。自らは事業を行わず、子会社の経営戦略や事業計画の策定、グループ全体の経営資源の最適化などを主な役割とします。つまり、グループ全体の「司令塔」のような役割を担うのが持株会社です。

持株会社は、傘下に複数の子会社を持つピラミッド型の組織構造を形成します。親会社(持株会社)は、子会社の株式を保有して経営を支配し、グループ全体の方向性を決定します。子会社は、各々の事業領域において独立性を保ちながら、持株会社の指示のもとで事業活動を行います。

以下に、持株会社の主な機能をまとめました。

機能詳細
グループ戦略の策定グループ全体の経営戦略、事業計画を策定し、グループ全体の成長を牽引します。
経営資源の配分グループ全体の資金、人材、技術などの経営資源を最適に配分し、グループ全体の効率性を高めます。
リスク管理グループ全体のリスクを管理し、グループ全体の安定性を確保します。
経営指導・支援子会社に対して経営指導や経営支援を行い、子会社の成長を促進します。

中小企業が持株会社を設立する目的

中小企業が持株会社を設立する目的は、企業規模や業種によってさまざまです。主な目的としては、以下の点が挙げられます。

目的詳細
事業承継対策後継者へのスムーズな事業承継を実現する目的で、持株会社を活用するケースが増えています。株式を集中させると、安定的に経営権の承継が可能です。
グループ経営の効率化複数の事業を運営している場合、持株会社を設立すると、各事業会社の責任と権限を明確化し、経営の効率化が図れます。
節税効果持株会社を活用すると、グループ全体の税負担を軽減できる場合があります。
リスク分散事業ごとに会社を分割すると、特定事業のリスクがグループ全体に波及するのを防げます。

持株会社の設立形態:会社分割方式と株式移転方式

持株会社を設立する方法は、大きく分けて「会社分割方式」と「株式移転方式」の2つがあります。各々の特徴を理解し、自社の状況に合った方法を選択しましょう。

会社分割方式

会社分割方式は、既存の会社(分割会社)が事業の一部または全部を新たな会社(新設会社)に承継させる方法です。持株会社設立においては、既存の会社が事業部門を子会社として分割し、自身は持株会社となるケースが該当します。

以下に、会社分割方式のメリット・デメリットをまとめました。

項目詳細
メリット・事業ごとの独立性を高めやすい
・組織再編に伴う税制上の優遇措置を受けられる場合がある
デメリット・手続きが比較的複雑
・債権者保護手続きが必要となる場合がある

株式移転方式

株式移転方式は、新しく持株会社を設立し、既存の会社の株主が保有する株式を新設持株会社に移転する方法です。既存の会社は持株会社の子会社となる方法で、複数の会社を傘下に収める場合によく用いられます。

株式移転方式のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

項目詳細
メリット・手続きが比較的簡便
・株主の権利が守られやすい
デメリット・会社分割方式に比べて、税制上の優遇措置が少ない

どちらの方式を選択するかは、企業の規模、事業内容、株主構成、税務上の影響などを総合的に考慮して決定する必要があります。専門家への相談も視野に入れ、慎重に検討しましょう。

持株会社の種類と特徴

持株会社には、事業内容や機能によっていくつかの種類があります。本章では、代表的な3つの種類について、各々の特徴を解説します。

純粋持株会社

純粋持株会社とは、自らは事業活動を行わずに他の会社の株式を保有し、会社の支配・管理を主な目的とする会社です。グループ全体の経営戦略の策定や経営資源の最適配分など、グループ全体の統括的な役割を担います。

純粋持株会社は、事業会社からの配当金や、ブランド使用料などを主な収入源とします。主な特徴を以下にまとめました。

項目詳細
主な事業他の会社の株式保有と管理
収入源配当金、ブランド使用料など
役割グループ全体の経営戦略策定、経営資源の最適配分
メリットグループ全体の意思決定迅速化、経営の効率化
デメリット事業運営ノウハウの蓄積が難しい

事業持株会社

事業持株会社とは、自らも事業活動を行いながら他の会社の株式を保有し、会社を支配・管理する会社です。純粋持株会社と異なり、事業部門と管理部門を併せ持っている点が特徴です。

事業で得た収益を元に、グループ全体の経営資源を最適化したり、新規事業への投資を行ったりします。主な特徴を以下にまとめました。

項目詳細
主な事業自社事業、他の会社の株式保有と管理
収入源事業収益、配当金など
役割グループ全体の経営戦略策定、事業運営
メリット事業運営ノウハウの蓄積、現場ニーズを経営に反映しやすい
デメリット経営資源の分散、意思決定の遅延

中間持株会社

中間持株会社とは、親会社(持株会社)と事業会社の中間に位置し、特定地域や特定の事業分野におけるグループ会社の管理・運営を行う会社です。地域統括会社や事業統括会社などが該当します。

中間持株会社を設けると、親会社はより戦略的な意思決定に集中でき、各地域や事業分野の特性に合わせた柔軟な経営が実現します。主な特徴を以下にまとめました。

項目詳細
主な事業特定地域または事業分野におけるグループ会社の管理・運営
収入源管理手数料、配当金など
役割地域または事業分野における経営戦略策定、事業運営
メリット地域・事業特性に合わせた柔軟な経営、親会社の負担軽減
デメリット管理階層の増加、コミュニケーションコストの増大

持株会社化のメリット・デメリットを徹底比較

持株会社は、企業の成長戦略や事業承継において有効な手段となり得る一方で、設立や運営にはコストや複雑な手続きが伴います。本章では、持株会社化のメリットとデメリットを詳細に比較し、貴社にとって最適な選択肢であるかどうかの判断に役立つ情報を提供します。

持株会社化のメリット

持株会社化には、事業承継対策、節税効果、経営効率化など、多岐にわたるメリットがあります。こうしたメリットを理解しておくと、持株会社化が企業の成長に対していかに貢献するかを把握できます。

メリット1:事業承継対策としての活用

持株会社は、事業承継を円滑に進める上で有効な手段です。後継者に株式を集中させやすく、相続時の税負担を軽減する効果も期待できます。また、先代経営者の保有する株式の現金化も可能です。

事業承継対策として活用する際の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
後継者へのスムーズな承継株式の集中管理により、後継者への事業承継が円滑に進みます。
相続税対策株式評価額の調整により、相続税の負担を軽減できます。
経営者の引退後の生活安定先代経営者は、保有株式の現金化により、引退後の生活資金を確保できます。

メリット2:グループ全体の節税効果

持株会社体制では、グループ全体の税負担を軽減できる可能性があります。例えば、子会社間の損益通算や、グループ内での資金移動による節税などが考えられます。税務上の優遇措置を活用すると、さらなる節税効果も期待できます。

グループ全体の節税を考えた場合の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
損益通算グループ企業全体での損益を合算し、法人税を軽減できます。
税務上の優遇措置持株会社に適用される税制上の優遇措置を活用できます。
資金移動の効率化グループ内での資金移動を円滑に行い、資金効率を高められます。

メリット3:経営の効率化と意思決定の迅速化

持株会社体制では、事業会社が各々の事業に専念できるため、経営の効率化が期待できます。持株会社がグループ全体の戦略を決定し、各事業会社に指示を出せば、意思決定の迅速化にもつながります。

結果として、市場の変化に迅速に対応し、競争優位性を確立できます。経営の効率化や意思決定の迅速化などの面から見た持株会社の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
事業の専門性向上各事業会社が専門分野に特化すれば、事業の効率化と専門性が向上します。
迅速な意思決定持株会社がグループ全体の戦略を決定すると、迅速な意思決定が可能です。
リスク分散事業を複数の会社に分散すれば、リスクを軽減できます。

持株会社化のデメリット

持株会社化には多くのメリットがある一方で、設立・運営コスト、組織再編の手続き、株主構成の変化など、いくつかのデメリットも存在します。こうしたデメリットを事前に把握し、適切な対策を講じましょう。

デメリット1:設立・運営にかかるコスト

持株会社を設立・運営するには、専門家への依頼費用、登記費用、税金などさまざまなコストが発生します。コストは企業の規模や組織構造によって大きく異なるため、事前に詳細な費用対効果分析を行いましょう。

以下に、持株会社の設立・運営にかかるコストの種類をまとめました。

コストの種類詳細
専門家への依頼費用弁護士、税理士、コンサルタントなどへの相談・依頼費用
登記費用会社設立登記、組織変更登記などにかかる費用
税金設立時の登録免許税、事業税、法人税など
運営費用持株会社としての管理部門の維持費、税務申告費用など

デメリット2:組織再編に伴う複雑な手続き

持株会社を設立する際、会社分割や株式移転などの組織再編が必要となる場合があります。こうした手続きには法務、税務、会計など専門的な知識が必要となるので、専門家のサポートが不可欠です。

また、株主総会の特別決議が必要となる場合もあり、手続きが煩雑になる可能性があります。株主の3分の2以上の同意を得るための臨時株主総会を開催しなければならない場合もあります。

以下に、組織再編に伴い必要となる代表的な手続きをまとめました。

手続きの種類詳細
会社分割既存の会社を分割し、新会社を設立する手続き
株式移転既存の会社の株式を新設する持株会社に移転する手続き
株主総会決議組織再編に関する株主総会の特別決議
債権者保護手続き債権者の権利を保護するための手続き

デメリット3:株主構成の変化による影響

持株会社化によって、株主構成が変化する可能性があります。結果として経営方針の変更や、少数株主からの反対などが生じるリスクがあります。

特に非公開会社の場合、株主間の合意形成が難しくなる可能性もゼロではありません。株主にとっては、所有する株式に変更がないのでメリットを感じにくい場合があります。

以下に、株主構成の変化によるリスクの種類をまとめました。

リスクの種類詳細
経営方針の変更株主構成の変化により、経営方針が変更される可能性
少数株主からの反対少数株主が、組織再編や経営方針に反対する可能性
株主間の対立株主間の意見対立により、経営が停滞する可能性

関係者から見た持株会社化のメリット・デメリット

持株会社化は、企業グループ全体だけでなく、個々の関係者にもさまざまな影響を与えます。本章では、社員、株主、取引先、銀行といった関係者ごとに、持株会社化によるメリットとデメリットを詳しく解説します。

社員にとってのメリット・デメリット

社員にとっての持株会社化の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
専門性の向上とキャリアアップグループ内での役割分担が明確になり、各事業会社が専門性を高めると、社員は特定の分野でスキルアップしやすくなる。グループ全体での人事交流が活発化すれば、新たなキャリアパスが開ける可能性もある。
福利厚生の充実グループ全体で福利厚生制度を統一・拡充すれば、社員の満足度向上につながる場合がある。
経営への参画意識の向上持株会社体制下では、各事業会社の社員がより主体的に経営に関わる機会が増える可能性がある。

続いて、社員から見た持株会社化の主なデメリットをまとめました。

デメリット詳細
組織再編への不安持株会社化に伴い、組織再編や配置転換が行われる場合がある。社員は自身のキャリアや待遇に対する不安を感じる可能性がある。
企業文化の変化持株会社化によって、企業文化や社風が変わる場合がある。培ってきた企業文化に愛着を持っている社員にとっては、変化の受容が難しい可能性がある。
縦割り組織による連携不足事業会社間の連携が不十分な場合、縦割り組織の弊害が生じ、情報共有や意思疎通が円滑に進まない可能性がある。

株主にとってのメリット・デメリット

株主にとっての持株会社化の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
株式価値の向上グループ全体の経営効率が向上し、収益性が高まれば、株式価値が向上する可能性がある。
リスク分散複数の事業会社を傘下に持つと、特定の事業の不振による影響を軽減し、リスクを分散できる。
事業承継の円滑化持株会社を活用すると、後継者への株式移転や経営権の承継がスムーズに進む場合がある。

続いて、株主から見た持株会社化の主なデメリットをまとめました。

デメリット詳細
配当政策の変更持株会社の方針によって、配当政策が変更される場合がある。株主の期待する配当が得られなくなる可能性がある。
経営の不透明性持株会社体制下では、グループ全体の経営状況が把握しにくくなる場合がある。特に少数株主にとっては、経営の透明性が低下する可能性がある。
株主構成の変化組織再編に伴い、株主構成が変化する場合がある。結果として、少数株主の権利が弱まる可能性がある。

取引先にとってのメリット・デメリット

取引先にとっての持株会社化の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
経営基盤の安定持株会社化によって、グループ全体の経営基盤が強化され、取引先にとっても安定した取引関係を維持できる可能性がある。
新たなビジネスチャンスグループ内の他の事業会社との取引機会が生まれ、新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。
コンプライアンス体制の強化持株会社主導でコンプライアンス体制が強化されると、取引におけるリスクが低減する可能性がある。

続いて、取引先から見た持株会社化の主なデメリットをまとめました。

デメリット詳細
取引条件の変更持株会社の方針によって、取引条件や契約内容が変更される場合がある。結果的に、取引先は不利な条件を強いられる可能性がある。
系列取引の増加グループ内の取引が優先されるようになり、既存の取引先との取引が減少する可能性がある。
意思決定の遅延持株会社による承認が必要となる場合、意思決定に時間がかかり、迅速な対応が難しくなる可能性がある。

銀行にとってのメリット・デメリット

融資を行う銀行にとっての持株会社化の主なメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
融資先の信用力向上持株会社化によって、グループ全体の財務基盤が強化され、融資先の信用力が向上する可能性がある。
新たな融資機会の創出グループ全体の事業拡大や再編に伴い、新たな融資機会が生まれる可能性があります。
ガバナンス強化持株会社体制下では、グループ全体のガバナンスが強化され、リスク管理体制が向上する可能性がある。

続いて、銀行から見た持株会社化の主なデメリットをまとめました。

デメリット詳細
グループ全体の審査個々の事業会社だけでなく、グループ全体の財務状況や経営戦略を考慮した審査が必要となり、審査が複雑化する可能性がある。
事業再編リスクグループ全体の事業再編によって、融資先の事業が縮小・撤退するリスクがある。
情報開示の不透明性グループ全体の情報開示が不十分な場合、個々の事業会社の状況把握が難しくなる可能性がある。

中小企業が持株会社化を成功させるための5つのステップ

持株会社化は、中小企業にとって大きな変革です。成功のためには、計画的なステップを踏むことが不可欠です。本章では、持株会社化を成功させるための5つのステップを解説します。

ステップ1:現状分析と目的の明確化

まず、自社の現状を詳細に分析し、持株会社化によって何を達成したいのか、目的を明確に定義しましょう。現状分析では、以下の項目を洗い出します。

  • 企業の財務状況
  • 事業の強みと弱み
  • 経営資源の状況
  • 事業承継の課題
  • グループ経営の必要性

目的の明確化では、以下のような点を具体的に定めましょう。

  • 事業承継の円滑化
  • グループ全体の節税
  • 経営の効率化
  • 新規事業への進出
  • リスク分散

現状分析と目的の明確化は、持株会社化の方向性を決定する上で非常に重要なステップです。時間をかけて、慎重に行いましょう。

ステップ2:専門家への相談と計画策定

持株会社化は、法務、税務、会計など専門的な知識が不可欠です。税理士、弁護士、中小企業診断士などの専門家に相談し、自社の状況に合わせた最適な計画を策定しましょう。計画策定では、以下の点を検討します。

  • 持株会社の設立形態(会社分割方式、株式移転方式)
  • グループ会社の組織構成
  • 税務上のメリット・デメリット
  • 資金調達の方法
  • スケジュール

専門家は、客観的な視点からアドバイスを提供し、リスクを回避するためのサポートをしてくれます。複数の専門家から意見を聞き、比較検討するのもおすすめです。

ステップ3:株主との合意形成

持株会社化は、株主の権利に影響を与える可能性があります。なので、株主に対して持株会社化の目的、メリット・デメリットを丁寧に説明し、理解と合意を得ましょう。

株主総会を開催し、特別決議(3分の2以上の賛成)を得る必要がある場合もあります。手続きを円滑に進めるには、株主とのコミュニケーションを密に行い、不安や疑問を解消するのが重要なポイントです。

ステップ4:設立手続きと組織再編

計画に基づき、持株会社の設立手続きを行います。設立手続きは、専門家(司法書士、行政書士など)に依頼するのが一般的です。

設立手続きと並行して、グループ会社の組織再編を行います。組織再編には、会社分割、事業譲渡、合併などの手法があります。

組織再編は、事業の効率化、経営資源の集中、シナジー効果の創出などを目的として行われます。組織再編の手続きも複雑なので、専門家のサポートを受けながら進めましょう。

ステップ5:設立後の運営と管理

持株会社設立後も、適切な運営と管理が重要です。持株会社は、グループ全体の経営戦略を策定し、グループ会社の事業活動を監督する役割を担います。

定期的な取締役会の開催、グループ会社間の情報共有、内部統制システムの構築など、適切な運営体制を構築する必要があります。また、税務申告や会計処理も適切に行う必要があります。

設立後の運営と管理を疎かにすると、持株会社化の効果が十分に発揮されないだけでなく、法的リスクを招く可能性もあります。

持株会社化にかかる費用と税金

持株会社を設立し、運営していくには、さまざまな費用と税金が発生します。コストの事前把握と計画的な準備は、持株会社化を成功させる上で重要な要素です。本章では、持株会社化にかかる費用と税金について具体的に解説します。

持株会社設立にかかる費用

持株会社を設立する際には、主に以下の費用が発生します。

費用項目費用の目安補足
専門家への依頼費用300万円~600万円以上会社分割、株式移転など、組織再編の手法によって費用が変動する
その他諸費用数万円~印鑑作成費用、定款認証費用などが含まれる

最も大きな割合を占めるのは、専門家への依頼費用です。持株会社化は、法務、税務、会計など、専門的な知識が必要となるので、弁護士、税理士、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

専門家への依頼費用は、持株会社化の手法や、会社の規模、依頼する専門家によって大きく変動します。事前に複数の専門家から見積もりを取り、費用を比較検討するのがおすすめです。

持株会社運営にかかる費用

持株会社を設立した後も、運営を維持するためにさまざまな費用が発生します。主な費用項目は以下のとおりです。

費用項目費用の目安補足
役員報酬役員の人数、役職によって異なる持株会社の役員に支払う報酬
税理士・会計士への顧問料月額数万円~税務申告、会計処理などを依頼する場合に発生
登記費用最低費用は株式会社で15万円役員の変更、本店移転など、登記内容に変更があった場合に発生
その他管理費用会社の規模によるオフィス賃料、光熱費、通信費など

持株会社は、子会社の経営管理が主な業務となるので、事業会社と比較して売上高は小さくなる傾向があります。なので、運営費用をできるだけ抑えましょう。

税理士や会計士への顧問料、その他管理費用など、見直し可能な費用項目を定期的にチェックし、コスト削減に努めるのが大切です。

持株会社設立・運営に関する税金

持株会社には、設立時と運営時にさまざまな税金が課税されます。主な税金の種類は以下のとおりです。

税金の種類概要課税対象
法人税会社の所得に対して課税される税金持株会社の所得
法人住民税会社の所在地を管轄する地方自治体に納める税金持株会社の所得
法人事業税会社の事業活動に対して課税される税金持株会社の所得
消費税商品やサービスの販売に対して課税される税金持株会社の課税売上
固定資産税土地や建物などの固定資産に対して課税される税金持株会社が所有する固定資産
登録免許税会社設立時や登記変更時に課税される税金資本金の額や登記内容による
印紙税契約書や領収書などに課税される税金印紙税法で定められた文書

持株会社は、事業会社と同様に、法人税、法人住民税、法人事業税などの税金が課税されます。また、消費税や固定資産税など、事業内容や資産状況に応じてさまざまな税金が課税される可能性があります。

税金に関する知識を十分に理解し、適切な税務申告を行ってください。税務に関する専門家である税理士に相談し、税務リスクを回避するのがおすすめです。

税金面でのメリットを享受するには専門家と連携し、自社の状況に合わせた最適なスキームを構築しましょう。

持株会社化の成功事例と失敗事例

持株会社化は、企業の成長戦略や事業承継において有効な手段となり得ますが、必ずしもすべての企業にとって成功するとは限りません。本章では、持株会社化によって成功を収めた事例と、残念ながら期待どおりの成果を得られなかった事例を紹介します。

成功事例

まずは、成功事例を3つ紹介します。

事例1:地方銀行グループの持株会社化による経営効率化

複数の地方銀行が経営統合し、持株会社を設立した事例です。各銀行の独立性を維持しつつグループ全体の経営戦略を統一し、重複していた業務の効率化、システム統合によるコスト削減、新たな金融商品の開発などを実現しました。

結果として、グループ全体の収益力が向上し、地域経済への貢献度も高まりました。

事例2:老舗製造業の持株会社化による事業承継の円滑化

長年の歴史を持つ製造業が、後継者不足を解消するために持株会社を設立した事例です。経営者一族が持株会社の株式を保有し、事業部門ごとに子会社を設立しています。

各子会社の経営は、専門知識を持つ幹部社員に委譲し、事業承継を円滑に進めました。また、持株会社体制への移行を通じて、各事業の責任と権限が明確化され、社員のモチベーション向上にもつながりました。

事例3:まちのわHDの設立による地域活性化

2024年12月に、SBIホールディングス、九州電力、筑邦銀行の3社が共同で、まちのわHDを設立した事例です。地域活性化を目的とした本件取り組みは、各社の強みを生かし、新たな事業機会の創出や地域経済の発展への貢献などが期待されています。

参考記事:「株式会社まちのわホールディングス」設立に関するお知らせ~持株会社体制へ移行し、全国規模で事業を展開~|SBIホールディングス株式会社

失敗事例

続いて、失敗事例を3つ紹介します。

事例1:設立準備不足による組織の混乱

持株会社制度を導入したものの、十分な準備期間を設けずに移行したため、組織内部の混乱を招いた事例です。各部門の役割分担や権限委譲が曖昧なままスタートしたので、社員のモチベーションが低下し、業務効率も悪化しました。

また、持株会社と子会社間の連携がうまくいかず、グループとしてのシナジー効果を発揮できませんでした。

事例2:コスト増による経営圧迫

節税効果を期待して持株会社を設立したものの、設立・運営コストが想定以上に高く、経営を圧迫した事例です。持株会社と子会社の会計処理、税務申告などが複雑になり、専門家への依頼費用が増加。

また、グループ全体の管理部門を強化したので、人件費も増加しました。結果として、節税効果を上回るコストが発生し、経営状況が悪化しました。

事例3:親族間での対立による経営の停滞

事業承継対策として持株会社を設立したものの、親族間での意見対立が表面化し、経営が停滞した事例です。後継者選びや各親族への株式配分などを巡って紛争が発生したほか、経営陣の意思決定が遅れ、新規事業への投資や事業拡大の機会を逃してしまいました。最悪の場合、訴訟に発展し、企業価値を大きく損なうリスクも抱えています。

こうした事例からわかるように、持株会社化は、綿密な計画と準備、関係者間の合意形成が不可欠です。成功事例を参考に、自社の状況に合わせた最適な戦略の策定が、持株会社化を成功させる鍵と言えます。

まとめ:持株会社制は企業の成長や持続性を支える組織形態

持株会社制は、適切な計画と実行によって、企業の成長戦略や持続可能性を大きく向上させる可能性を秘めた組織形態です。

持株会社化は、事業承継対策、グループ全体の節税、経営効率化など、多くのメリットをもたらす一方で、設立・運営コストや複雑な手続き、株主構成の変化など、考慮すべきデメリットも存在します。社員、株主、取引先、銀行といった関係者への影響も理解しておく必要があります。

持株会社化を成功させるには、現状分析と目的の明確化から始まり、専門家への相談、株主との合意形成、設立手続き、設立後の適切な運営と管理が不可欠です。費用や税金についても事前にしっかりと把握し、計画的に進めましょう。

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