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デジタル銀行の特徴と種類と将来性、ネット銀行と何が違うのか

日本でもデジタル銀行が動き出そうとしています。 メガバンクの1つである、みずほフィナンシャルグループとLINEは共同で、2019年5月にデジタル銀行をつくるための準備会社を設立しました。 デジタル銀行は、スマホだけで金融機関のほとんどのサービスを完結させる利便性を提供します。そしてデジタルならではの新しい金融サービスを生み出します。 さらに、非金融サービスも、デジタル銀行の重要業務になるかもしれません。

この記事では、デジタル銀行の概要を紹介したうえで、ネット銀行との違いやデジタルトランスフォーメーション(DX)との関係について解説します。

1 デジタル銀行がしていること、できること

デジタル銀行は、スマホのアプリを使って通常の銀行が行っている預金や送金などの金融サービスを提供する金融機関、と定義されます。 デジタル銀行の世界市場は、2018年には33億ドル(約3,500億円)でしたが、2023年には72%増の57億ドル(約6,045億円)になる見通しです(*1)。 三菱UFJフィナンシャル・グループの2019年の連結業務粗利益が3兆9,863億円なので、デジタル銀行の世界市場は決して大きいとはいえませんが、その増加率には目を見張るものがあります。

*1:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48453530Z00C19A8EA2000

(1) デジタル化すればいろいろなことができる

中国はデジタル銀行の開発が進んでいる国の1つです。デジタル銀行の1つは、Eコマース(ネット通販)の購買履歴やスマホ決済の履歴をAI(人工知能)で分析して、個人の信用力を算定するサービスを行っています。個人の信用力を正確に把握できれば、融資が焦げつくリスクが減るので、ネットを使った簡易的な手続きで融資することができるようになります(*1)。

また、ネットやデジタルは、使えば使うほど人の手が必要なくなるので、デジタル銀行は経営コストが安くなります。それでデジタル銀行は、各種手数料を安くできます。 イギリスのデジタル銀行「レボリュート」は、外貨両替手数料を大幅に値引きしたり、外国送金手数料を無料にしたりして顧客を増やしています。 また、イギリスの別のデジタル銀行「モンゾ」は、買い物履歴を自動で整理するサービスを提供したことで、週2万件のペースで顧客を増やしたことがあります(*2)。

*2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37795400V11C18A1EE9000?unlock=1

2 日本のデジタル銀行の現状

多くの日本人はまだ、デジタルな銀行を使うことや、金融サービスをネット経由で受けることに慣れていません。銀行が提供するアプリを利用する頻度は、世界平均が週7回なのに対し、日本は週2回にとどまります(*1)。 日本のデジタル銀行は、ようやく芽が出始めた段階といえるでしょう。その芽を2つ紹介します。

(1)みずほとLINEの取り組み

みずほフィナンシャルグループとLINEは2019年5月に、共同でLINEバンク設立準備株式会社という会社をつくりました(*3)。 この会社は、金融当局から銀行業の許認可を受けることと、デジタル銀行をつくることの2つを目的にしています。LINEは、デジタル銀行を2020年度中につくるとしています。

みずほとLINEが目指すのは、LINEの8,000万人の利用者に、親しみやすいデジタル銀行サービスを提供することです。具体的には、モバイル送金、モバイル決済、モバイル投資、モバイル保険と金融サービスを連係させます。 LINEは「スマホ世代を中心とするお客のニーズに適した金融サービスを提供する」としています。このコメントからは、既存の銀行が提供できていない、若者が求める金融サービスを提供していく狙いであることがわかります。

(2)東京きらぼしFGの取り組み

きらぼし銀行を傘下に置く東京きらぼしフィナンシャルグループも、デジタル銀行を2022年1月に開業するために、準備会社を設立します(*3)。 スマホだけで口座の開設から預金まで一元管理できるようにして、そこに証券サービスやコンサルティング・サービスを組み込んでいきます。 東京きらぼしFGは、韓国の銀行などが提供するクラウド型のシステムを使うことで、低コストでの運用を目指します。またAIを使って各種手続きを自動化します。これによっても人件費は相当抑制できるはずです。コンサルティング・サービスはZOOMのようなネット会議システムを使って提供します。

きらぼしのデジタル銀行は、一般個人客だけでなく、法人向けにもサービスを提供する予定です。アプリ開発を容易にするための機能であるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を企業などに提供します。

*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65628010Z21C20A0EE9000?unlock=1

3 ネット銀行とはここが違う

ソニー銀行や楽天銀行などはネット銀行と呼ばれています。 ネット銀行とデジタル銀行は似たような名称ですが、何が違うのでしょうか。

ソニー銀行のサービス内容は、通常の預金、外貨預金、住宅ローン、投資信託、FX、カードローン、投資型クラウドファンディング、デビットカード、外貨送金、スマホ決済、ATMなどとなっています。 ソニー銀行の口座開設は、ネット経由で2日ほどで完了します(*4)。

楽天銀行のサービス内容は、通常の銀行サービスに加えて、振込手数料の無料化の拡大、スマホによる残高照会、スマホによる振り込みや送金、楽天証券との連係などがあります(*5)。

ネット銀行ではすでに、インターネット経由で住宅ローンを借りたり、投資信託を買ったりすることができ、スマホの活用も進んでいます。 デジタル銀行とネット銀行の定義の区別はあいまいです。したがって、これらのネット銀行が徐々にデジタル・サービスを拡大させれば、そのまま「デジタル銀行の体(てい)」を整えていくかもしれません。

*4:https://moneykit.net/visitor/account/?intcmp=wplac121001001&keiroH=gog_byname_sbk
*5:https://www.rakuten-bank.co.jp/merit/

4 DXとデジタル銀行の関係と将来像

少し前まで「フィンテック」という言葉が金融業界のなかで流行していました。ファイナンス(金融)をテクノロジーで革新していこうという取り組みです。 最近は金融業界でも、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉のほうが使われるようになりました。ただ、フィンテックもDXも、ITやインターネット、AIを使って新しい金融サービス・ニーズに応えていこう、という点では同じです。 そういった意味では、デジタル銀行は、金融機関がフィンテック化またはDX化した姿と考えることができます。

デジタル銀行の将来像については、IT企業もしっかりした青写真を描いています。IBMは、デジタル銀行は「デジタル推進→新金融サービス→非金融サービス」の3ステップで進化するとみています(*6、7)。

*6:https://www.ibm.com/think/jp-ja/business/bank-dx-01/
*7:https://www.ibm.com/think/jp-ja/business/bank-dx-02/

(1) 銀行は3ステップで進化する

IBMが考える銀行のデジタル化の第1ステップは、デジタルの推進です。従来型の銀行の最大のコストは、本店や支店の維持と人件費です。ネットとITを活用すれば、支店が要らなくなり、AIを使えば人手を減らすことができます。デジタル化することでデジタルに慣れ、コストダウンすることでさらなるDX化の原資を確保できるようになります。そのため第1ステップは、日本の金融界にとって貴重な第1歩であるといえます。

第2ステップは、新しい金融サービスの展開です。例えば、銀行の重要ミッションの1つに個人顧客に投資を促す事業がありますが、苦戦しているのが実情です。銀行員が個人顧客に投資を促すには、これまでのルーティン業務に加えて、市場の動向をウォッチして、顧客のポートフォリオを常に最適化しなければなりません。それは重労働になります。 そこで営業支援AIを導入すれば、銀行員の業務が軽減され、投資商品の営業に力を割くことができます。

第3ステップは、非金融サービスへの参入です。アジアの先進的な銀行は、すでに不動産、自動車販売、教育、医療の分野に進出しています。 日本の銀行も、生き残るには他業種の企業と提携してビジネスの幅を広げていく必要があります。 しかし、銀行員が単に他業種に進出しても、他業種のベテラン・ビジネスパーソンに太刀打ちできません。そこでDXを活用するわけです。

個人の金融ニーズは生活ニーズでもあるので、銀行は、顧客の生活ニーズをつかみやすい立場にあります。例えば、銀行に住宅ローンの相談に来た顧客は、当然ですが家を必要としています。そのため、ここに、戸建て住宅ビジネスやマンション・ビジネスが関与する余地が生まれます。 新しい家を買うことになれば、家具や自動車も新しくしたくなります。都心部から郊外に移るかもしれません。子供が大きくなっているから広い家が必要になっていれば、良質な教育を探しているかもしれません。 デジタルの力を使って銀行員が顧客のニーズを探れば、つまり金融サービスと非金融サービスの両方に関与できるようになれば、さまざまなビジネスのハブになることができます。 そしてデジタル銀行が生活ニーズのワンストップ・サービスを提供してくれれば、顧客の利便性は高まります。

5 まとめ~デジタル化は進むだけ(後退しない)

日本でも近く、デジタル銀行が誕生しそうです。デジタル銀行の前段階であるネット銀行がすでに高い利便性を持ち、海外のデジタル銀行は優れた新サービスを提供しています。こうした流れから推すと、金融サービスがデジタル化することは「よいこと」といえそうです。 政府もDXを重要政策に位置づけています(*8)。銀行のデジタル化は、進むことはあっても後退することはないでしょう。

*8:https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201124002/20201124002.html

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