注目されている背景や実際の事例などを交えつつ、今回はデジタルトランスフォーメーション(DX)について紹介していきます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)というワードを最近よく見聞きするものの、具体的に何をすればいいのか分からないという方や、実際に取組みを進める際の注意点などについて知りたい方は、参考にしてみてください。
なお、社内のIT・WEB領域を、よりスピィーディーに強化していきたい方は、IT領域のM&Aに強みをもつ「パラダイムシフト」が実際に担当したM&Aの事例も紹介していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
1.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)は、デジタル技術を浸透させることによって、人々の生活をよりよいものに変革しようとすることです。
ちなみに経済産業省の資料では、以下のように定義されています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”
内容をもっと簡単に整理すると、
- マーケティングデータやデジタル技術を活用して、新製品やWEBサービスなどの新しいビジネスを開発すること。
- WEBサービスやテクノロジーを活用して、業務の効率化を進めること。
- リモートワークの導入など、業務内容そのものだけではなく、業務への取り組み方や進め方なども工夫して、大幅に生産性をUPさせること。
このように整理できます。
ちなみに英語圏では「Digital Transformation」の「Trans」を「X」と略すのが一般的で、デジタルトランスフォーメーションは「DT」ではなく「DX」と訳されます。
2.デジタルトランスフォーメーションが注目されている背景
デジタルトランスフォーメーションが注目されている背景として「2025年の崖」と「消費者行動の変化」の2つをまずは抑えておきましょう。
(1)「2025年の崖」について
2025年になったタイミングで、企業のITシステムの老朽化・複雑化・肥大化や、各種サポートの終了、そしてシステム担当者の退職などの問題が重なって、まさに崖から転落するような大変な事態に陥ってしまうという予測があり、これを「2025年の崖」と呼んでいます。
世界的に見た際、日本はデジタルトランスフォーメーション(DX)への取組みが遅れており、このままのペースで遅れをとっていると、そのまま世界との競争に負けてしまうと指摘されています。
ちなみにDXに関するレポートによれば、2025年には、全体の6割が21年以上稼働しているレガシーシステムになるという予測もあり、それまでにシステムを刷新しなければ、以降年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるともいわれています。
現状は、DXを推進しようという試みは見られるものの、実際は変革につながっていないケースが多いという声もあり、特に老朽化した既存の基幹システムが、その原因のひとつになっているといわれています。
というのも、老朽化した既存の基幹システムは歴史が古すぎるため維持・管理が難しくなっており、そのまま放置しておくと負担する費用もどんどん膨れ上がっていってしまって、DXを推進していく上での大きな障壁になる可能性が高いからです。
老朽化した既存の基幹システムは、なんとなく社内で利用されてはいるものの、実際のところは非効率なシステムで、本当はもっと便利で効率性の高いものに改善できる余地があったり、そもそもどういった仕組みで機能しているのか、ブラックボックス化していて把握できないものであることが多くなっています。
このような既存のレガシーなシステムを利用していては、当然、企業の成長に限界が見えてきてしまいますし、またこのようなシステムに多くのリソースを割いてしまうと、他の新しいデジタル技術への投資に、なかなか手が回らなくなってしまいます。
「新しいことをやっていこう!」とは言いつつも、現状維持でなぁなぁの会社が多いといわれており、本当にDXを推進したい場合は、抜本的な思い切った行動が必要になるといえるでしょう。
そうしなければ、現状を維持するための管理コストだけが膨れ上がり、新しいデジタル技術を導入できないまま時間だけが過ぎるという、悪循環に陥ってしまうので注意しましょう。
(2)消費者行動の変化
「カーシェアリング」という、新しい消費行動(わざわざ車を買うのではなく、車を短時間だけ一時的に利用する、今までにはない形態)の事例を含め、今はユーザーの消費行動が変化してきている時期なので、ジャンルによっては、一緒に企業のビジネスモデルも大きく変えていく必要がある。
また、5Gなど、最先端のデジタルテクノロジーもどんどん出てくるので、既存のレガシーシステムで苦戦している場合ではなく、出来るだけ早めに対策をしていくことも大切です。
3.デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた企業の現状と課題
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく際に、特に重要なポイントを簡潔に整理してみました。
まずは経営者がデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性をしっかりと理解することが大事。
明確なビジョンを持たないまま、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めても意味がない。まずは最初にしっかりとした計画・見通しをもった上で取り組むことが重要なので、DXを行う目的やゴールを、あらかじめしっかりと設定する必要がある。
最初に取り組むべきことは、会社のITシステム環境全体を可視化して現状をしっかりと把握すること。その上で解決すべき課題や、今後新しく必要となるものなどを整理していく必要がある。ちなみにシステム環境やデータ基盤などを整備することは、今後のデータ分析や活用を考えた際にもメリットが大きい。
進める際は、経営層と現場で働く社員との間に生じる温度感などにも注意。認識のすり合わせや、DXを推進する必要性を最初にしっかりと説明する必要がある。意識に差があると情報共有などが上手く行われず、色々とスムーズに進まない可能性が高く、途中で変革疲れが起こってしまって、挫折する可能性が高い。
企業である以上、業務の効率化や企業風土・文化の変革が、最終的には安定した収益を得ることにつながっていくように、意識する必要がある。
日本企業がDXを進めづらい問題点や必要な組織体制についてはこちらの記事で詳しく解説されています。
あわせてご確認ください。
参考:DX推進とは?日本企業が進めづらい問題点や必要な組織体制を紹介 | AI JIMY Labo.
4.デジタルトランスフォーメーションの事例
(1)小松製作所(コマツ) の事例
製造/ 建設機械で有名な小松製作所(コマツ)は、スマートコンストラクション(建築現場における生産過程の効率化を行うこと)などに積極的に取り組んでいます。
具体的には、建築現場の全工程を可視化する「SMART CONSTRUCTION CLOUD」といったサービスなどをリリースしており、こちらで測量・設計・施工などの各工程の情報を3Dデータでつなぎ、現場の安全性や生産性などの改善をサポートできるようになっています。
ちなみに2019年の3月までに、7500件の建設現場で採用されているとのことで、他にもダンプトラックの位置の確認や運行状況の管理などができるシステムなども開発されています。
加えて、こういったデジタルシステムの開発だけではなく、サービスや建設現場の情報に精通したスマートコンストラクションコンサルタントの育成も同時に進めていて、今後コマツは建設現場における全工程のデジタルトラスフォーメーション化を目指していくとしています。
建設現場のDX化を縦横奥でカテゴリー分け、コマツのスマートコンストラクション
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1906/04/news022.html
(2)IDOMの事例
IDOM(中古車買取などで有名)は、車を所有しない時代に備え、月額制の自動車乗り換え放題サービス「NOREL(ノレル)」や、個人間カーシェアリングサービスの「GO2GO(ゴーツーゴー)」など、従来の枠組みにとらわれない新しいサービスをスタートしています。
・NOREL(ノレル)
車を購入する際に心配となる維持費が必要なく、駐車場代やガソリン代、メンテナンス代金などのみで、クルマを利用できる。ちなみに登録されている車は約150種以上あり、料金は最安のプランで月額29,800円(税別)からとなっている。
・GO2GO(ゴーツーゴー)
GO2GO(ゴーツーゴー) を利用すれば、個人間で車をシェアすることが可能になります。日中の時間帯など、車を利用していない時間が多くあってもったいないと感じている人や、出先などでちょっとの時間だけ車を利用したいといった人などに特に便利なサービスとなっています。ちなみに利用時間は3時間からとなっており、中には500円以下の車種もあります。
他にも、営業力向上の目的で自社サイトにWebチャットを導入し、月間営業利益を約10%ほどUPさせることに成功したり、店頭ではなくアプリから中古車を査定できる「ガリバーオート」などもリリースしています。
もともとIDOM(イドム)は、ガリバーという社名の会社でしたが、自動車業界は大変革期のため、より迅速にデジタルトランスフォーメーション化を進めていく必要があると判断し、社名を大きく変更して、上で紹介したような様々な施策に取り組んでいるようです。
(3)三越伊勢丹ホールディングスの事例
三越伊勢丹ホールディングスは、IT、店舗、人の力を生かした新時代のプラットフォーマーを目指す方針を掲げており、オンライン・オフラインの両方から上質な顧客体験を提供していきたいとしています。
なお、具体的には、以下のような取組み・サービスを計画しているようです。
ECでも基幹店の品揃えを実現するために撮影スタジオを新設
基幹店の全ての商品を、地域店・ECサイトのどちらからでも買えるようにしたいとのこと。地域店は売り場面積が小さいが、こういった仕組みを整備すれば、タブレットでの接客を通じて品揃えを補完できるようになります。チャットを活用したパーソナルスタイリングサービスの本格ローンチ
チャットで得た消費者の好みをもとに、それらの洋服を自宅に届けて、気に入った商品だけを手元に残してもらい、そうでないものは返品してもらうサービスなどを計画中で、実際に100人のお客さんにテストマーケを実施したところ、合計200点以上の販売につながったそうです。大型のコスメ通販サイトの開設など
百貨店で販売するブランドからドラッグストアで扱うコスメまで、幅広い商品を扱う予定で、イメージ検索やメークシミュレーションなどの機能も実装する予定とのこと。
デジタル化を進める三越伊勢丹ホールディングスの新たな成長戦略とは
https://netshop.impress.co.jp/node/5998
なおその他のDXの事例については、こちらのページに一覧でまとまっています。
http://www.dxbm.jp/c/dx.html
5.まとめ
最後に、IT領域のM&Aに強みをもつ「パラダイムシフト」が、これまで実際に担当してきた数々のM&Aの事例のリンクも紹介しておきます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を、よりスピーディーに進めていきたい方は、選択肢のひとつとして検討してみてください。
それぞれの事例を、M&Aにいたるまでの背景、交渉の過程、苦労した点など、様々なポイントに沿って整理してまとめています。
パラダイムシフトが担当してきたM&Aのレポート一覧
https://paradigm-shift.co.jp/news/category/2
DXの事例や推進のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:DXの事例を業界別に6つ紹介!失敗した事例も踏まえて推進のポイントを解説 - WEBCAMP MEDIA
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