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メーカーのデジタルトランスフォーメーション(DX)事例 M&Aもひとつの解決策

経済産業省と東京証券取引所が共同で選定したデジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組む企業(DX銘柄2020・DX注目企業2020)の中から、今回はメーカーを中心に7社ピックアップして紹介していきます。

参考:DX銘柄2020・DX注目企業2020について
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/report2020.pdf

1. デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組むメーカー7社

(1)アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス株式会社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)をグループ共通の成長エンジンとして位置付けており、ADX戦略モデル(Asahi Digital Transformation)という形で体系化も行っています。

今回DX銘柄2020に選定されたのは、ADX戦略モデルが計画的に実行されていることや、AI / VR技術を連動させた商品パッケージデザインの作成など様々なDXの取り組みを行っていることが理由です。

ア AI / VR技術を連動させた商品パッケージデザインの作成について

消費者のトレンド情報などを機械学習させると同時に、客観性のある商品パッケージデザイン案を生成する「AIクリエーターシステム」と、架空の商品棚を再現するための「VR商品パッケージ開発支援システム」の2つを開発しました。これら2つを連動させることで、トレンドの把握から商品開発までを高速化・高度化することを目指すとしています。

イ グループ顧客データ分析基盤最適化プロジェクトについて

AI・VR技術を連動させた商品パッケージデザインの作成とあわせ、酒類・飲料・食品事業各社の顧客データをグループ横断で活用し、それらを元にした消費者行動の分析・蓄積を行っていくプロジェクトも進められています。各社の会員属性データ、キャンペーン応募状況、店頭の購買情報などを分析し、マーケティング活動に活用していくことを目指しているとのことです。

参考:
https://www.asahigroup-holdings.com/news/2020/0825.html

(2)日清食品ホールディングス株式会社

日清食品ホールディングス株式会社は、以下3つのポイントが特に評価され、今回DX銘柄2020に選定されました。

ア 安定性と生産性を追求した「次世代型スマートファクトリー」

2018年10月に稼働を開始した年間最大10億食の生産能力をもつ関西工場は、徹底した省人化・自動化が行われています。具体的には工場内に700以上の品質管理カメラが配置されており、全製造工程がモニタリングされることによって、不良品発生率を100万食に1つ以下にすることが目指されています。

イ 「レガシーシステムの終了プロジェクト」によるバリューアップシフト

多数のシステムが複雑に絡み合い運用保守の費用や工数が増大していたITシステムを、徹底的にスリム化(業務システムを8割超削減)しました。

ウ コロナ禍におけるIT施策を使った「新たな働き方」のバックアップ

感染防止策として、国内グループ3,000名を原則在宅勤務に移行させ、在宅勤務率は70%以上となりました(緊急事態宣言解除後も、出社率が25%以下となるようにKPIを設定しているとのこと)。ちなみにこのような働き方は、重要な会議をオンラインで開催することや、社内の各種問合せに対して高い精度で回答するチャットボットを運用することなどによって実現されています。

参考:
https://www.nissin.com/jp/news/8819

(3)ユニ・チャーム株式会社

ユニ・チャーム株式会社は「消費者インサイトシステムの稼働」や「九州工場のスマートファクトリー化」が評価され、DX銘柄2020に選定されました。

ア 消費者インサイトシステムの稼働

中国デジタルイノベーションセンターでは、SNSやeコマースの口コミなどを収集、蓄積、統合するデジタル基盤を活用することにより消費者の理解促進につなげており、商品戦略の成功確率を高めることや、新しい市場機会を発見するスピード向上を目指しています。

イ 九州工場のスマートファクトリー化

九州工場は、ユニ・チャーム初のスマート工場で、2019年3月に操業を開始しました。設備の監視・制御システム、無人走行車、ロボットなどを導入して、材料の運搬や箱詰め工程などを自働化し、単純作業や繰り返し作業など、体に負担のかかる業務を削減しています。

参考:
http://www.unicharm.co.jp/company/news/2020/1214560_13534.html

(4)花王株式会社

DX注目企業2020に選出された花王株式会社は、DXを推進するために、2018年4月に先端技術戦略室を設置。これまでの実績や具体的な取り組みは以下のような形になっています。

ア 研究員向けの統合検索システムの構築

複数のシステムで管理されていたデータを横断的に検索できるようにし、開発する際に必要な情報を網羅的に一括で取得できるようになったことで、情報収集にかかる時間やルーティーン業務を大幅に削減することができました。

イ 事業や販売分野

Preferred Networksと連携したプロジェクトを推進中でして、花王の皮脂RNAモニタリング技術とPreferred Networks社の機械学習、深層学習技術を融合させた肌状態を予測する高度なアルゴリズムを開発しています。これにより、これまでの技術では把握できなかった肌内部の状態を知る事や、将来の肌ダメージのリスク評価などが可能になります。さらに遺伝情報をもとに個人に最適化された美容アドバイスやスキンケアを提供することなども可能になります。

他にもネット販売などにAIを活用したり、商品情報の伝達だけではなく、商品が生み出されるまでの研究内容や技術開発の詳細などについても情報発信していく予定です。また商品を新しいバーチャル伝達手法で宣伝していくことも検討中となっています。

ウ 人材関連やコロナ禍における取り組み

社員約1万5000人を対象に2月28日から原則在宅勤務に移行しました。全社員がMicrosoft Teamsを徹底活用するなど働き方を大きく変更しています。

他にも勤怠管理データを学習したAIが、休職するリスクが高い社員を事前に察知して、ケアできるシステムを構築中です。

参考:
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/sus-db-2020-06.pdf

(5)富士フイルム ホールディングス株式会社

富士フイルム ホールディングス株式会社は、特に以下のような取り組みなどが評価され、DX銘柄2020に選定されました。

ア 医師の画像診断や、医療現場のワークフローを支援するAIプラットフォームを医療機関に提供

画像AIに加えて自然言語処理やアナリティクス技術を組み合わせた統合的なAI技術の「REiLI」、画像診断ワークフローを半自動化するためなどに活用される画像管理システムの「SYNAPSE」や、画像診断プラットフォームの「SYNAPSE SAI Viewer」などを医療機関に提供しています。

イ データサイエンティストの育成。

全社員が最新のICTツールを利用することや、グループ全体の様々な業務データを集約して分析できるシステムを構築しました。

なお、富士フイルムグループは、2014年に「ICT戦略推進プロジェクト」、2017年に「デジタル変革委員会」を立ち上げるなど、積極的にDXに取り組んできた企業となっています。各部門が提供する全てのサービス・業務を対象に、デジタル化によって変革するべき課題を網羅的に洗い出し、それらの課題を最新のICTを活用して解決するなど、全社横断的にDXを推進しています。

ちなみに具体的には、以下の3つが特に重要度の高いテーマとして掲げられています。

  • 既存製品やサービスの機能強化、そして社内業務の効率化にAIを活用する
  • IoTを活用した機器のリモート保守
  • 様々なマーケティングデータを収集・分析し、よりきめ細やかな提案を行っていくこと

参考:
https://holdings.fujifilm.com/ja/news/list/872

(6)AGC株式会社

AGC株式会社は、データサイエンティスト育成プログラム「Data Science Plus」を確立したことや、DXに関する様々な取り組みが評価されDX銘柄2020に選定されました。

ア 「Data Science Plus」などの教育機会について

AGC株式会社は、データサイエンティスト育成プログラムの「Data Science Plus」を、これまで約1000人以上の社員に提供してきました。今後はDXによる事業戦略立案力を高める教育機会を提供すると同時に、製造業の要となる工場の主任層にまで、教育のすそ野を広げていく予定となっています。

イ AI Q&Aシステム「匠KIBIT」の開発

「匠KIBIT」は、熟練者の持つガラス製造の知見を、AIを活用することによって、より多くのグループ内の技術者に共有できるようにしたQ&Aシステムです。自動回答できなかった質問に関しては、別途質問に該当する熟練技術者を推定して回答依頼を自動通知する仕組みになっており、回答はデータベースに蓄積されていくような形になっています。ちなみに2017年から国内のガラス製造拠点でトライアルを開始しており、月間300件以上利用されています。

ウ Coating on Demand

Coating on Demandは、ガラスの耐熱性能や色などのシュミレーションを建築デザイナーと共にデジタル上で行い、その日のうちに試作品を完成させて提案を行うビジネスモデルのことです。これにより、従来日単位で行われていたものを時間単位に短縮することに成功したとされています。

参考:
https://www.agc.com/news/detail/1201253_2148.html
https://www.agc.com/news/detail/1201006_2148.html

(7)コニカミノルタ

コニカミノルタは、中小企業へのDX支援サービス(複合機からDXサプライヤーへの大きなビジネスモデルの転換)や、独自の画像IoT技術を使った介護業界での取り組みなどが評価され、DX銘柄2020に選定されました。

ア 独自の画像IoT技術を使った介護業界での取り組みについて

ノウハウが属人化してしまっている介護業界で、画像IoTによるデータに基づいたオペレーションを浸透させる取り組みを行っています。IoTシステムの提供だけではなく、オペレーションの定着までがサービス化されていること(ケアディレクターという新しい職種を提案し、育成プロセスを提供したり、データによる遠隔支援を継続することなど)が特徴です。

参考:
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2020/0825-02-01.html

2. さいごに

パラダイムシフトは、IT領域のM&Aに強みがあり、国内最大級の案件実績を持つ企業です。DXを推進していきたいが、思うように進んでいないという場合は、M&Aによって他社の力を借りるのも、ひとつの解決策になるかもしれません。これまでに担当してきたM&Aを対談形式で紹介していますので、興味のある方はこちらも参考にしてみてください。


DXの成功事例や推進のポイントはこちらの記事で詳しく解説されています。併せてご確認ください。

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