M&A

M&Aに関する法改正ついて解説

M&Aについては、2005年の会社法制定以降、2014年改正、2019年改正という大きな2回の法改正がなされています。その概要について説明します。

1. 2014(平成26)年改正

(1) 概要

2014年改正では、2005年の改正で決着がつかなかった問題や、その後の実務で生じた問題を解決すべく、さまざまな改正がなされました。
改正は、M&Aのみならず、コーポレート・ガバナンス、コーポレート・ファイナンス、といった会社に関する事項の全般にわたっていますが、M&Aに特に関係の強いものでは、

  • 略式組織再編以外の組織再編における差止請求制度
  • 詐害的会社分割における債権者保護制度
  • 子会社株式譲渡の株主総会決議事項化
  • 特別支配株主による株式売渡制度の新設
  • 支配株主の移動を伴う募集株式の発行の株主総会決議事項化

が挙げられます。

(2) 略式組織再編以外の組織再編における差止請求制度

2014年改正前、差止請求制度は、株主総会決議が省略される略式組織再編についてのみ設けられていました。株主総会決議を経る場合には、その株主総会決議の手続・内容の瑕疵を争えばよく、また、事前に組織再編自体を差し止める必要はないと考えられたからです。
しかし、組織再編は原状回復が困難であり、ひとたび実施された後から無効とされた場合には大きな混乱がもたらされるため、むしろ事前に争う機会を与えたほうがよいと考えられます。

そこで、2014年改正では、組織再編が法令違反・定款違反であり、かつ、株主が不利益を受ける恐れがある場合には、事前の差止めが認められることとなりました。法令違反は、株主総会決議の瑕疵など、手続の違反を含みます。また、略式組織再編におけるのと異なり、合併対価が不当であることは、法令違反には当たらないとされています(不満である場合、株式買取請求をすることとなります)。
差止めは、組織再編の効力発生までになされなければならないため、訴訟ではなく仮処分によって行われます。

(3) 詐害的会社分割における債権者保護制度

会社分割にあたり、収益性の高い事業のみを承継会社に承継させた場合、既存債権者は引当てとなる財産が減少し、債権が回収できなくなることがあります。
このような場合について、2014年改正前の会社法は債権者保護手続の他には、特に保護制度を設けていませんでした。裁判所は、詐害行為取消しという、民法上に規定され、典型的には債務超過の債務者が財産隠匿のために贈与するなどの場面で使われる制度を応用して対応していました。しかし、詐害行為取り消しは一般的な制度であるため、要件が抽象的であり、また、承継会社への直接請求はできませんでした。

2014年改正では、このような問題を解決するため、より要件を具体化した制度を設けました。これにより、承継会社に債務が承継されない債権者は、新会社が詐害性を認識していた場合には、承継財産を限度として、承継会社に直接に債務の履行を請求することができることとなりました。

(4) 子会社株式譲渡の株主総会決議事項化

ある会社(A社とします)が他の会社(B社とします)の株式を保有しており、B社の株式がA社の財産の重要な部分を構成している場合において、このような株式をA社が譲渡しようとする場合、2014年改正前においては、重要な業務執行の決定として取締役会決議事項となるにすぎませんでした。
しかし、現代の企業においては、特定の事業部門を独立の会社とし、親会社は株主としての地位に基づいて役員を派遣し、その企業を経営するということが少なくなく(グループ経営)、そのような子会社株式を譲渡することは、実質的には事業の一部譲渡と変わりません。

そこで、2014年改正では、B社株式がA社の資産総額の20%を超え、かつ、譲渡によってA社がB社の議決権比率が50%を下回ることとなるときは、事業の全部譲渡・事業の重要な一部の譲渡と同様に、株主総会の特別決議を経なければならないこととされました。

(5) 特別支配株主による株式売渡制度の新設

支配株主が、少数株主から、金銭を対価としていわば強制的に株式を買い取りたいと考える場面があります(キャッシュアウト)。そうすることで、支配株主は、単独株主として、柔軟で迅速な意思決定をすることができるようになり、また、株主総会や金融商品取引法上の開示などのコストを節約することができます。
キャッシュアウトの方法として、2014年改正までは、主に金銭を対価とする組織再編や、全部取得条項付種類株式が設けられていました。しかし、いずれも株主総会の特別決議を経る必要があり、手続が複雑でした。

2014年改正では、特別支配株主(議決権の90%以上を有する株主)が、少数株主に対して、株主総会決議を経ることなしに売渡しを請求することができることとされました。このような場合には、仮に株主総会を開催したとしても、承認されることが確実であるため、株主総会決議を省略できるとしたものです。

(6) 支配株主の移動を伴う募集株式の発行の株主総会決議事項化

募集株式の発行は、公開会社では、取締役会決議事項とされています。非公開会社では株主総会の特別決議事項ですが、公開会社では所有と経営が分離する建前であるため、株主は株主構成にはそれほど関心を持たず、むしろ円滑な資金調達を優先すべきだと考えられたことによります。
しかし、支配株主の移動を伴うような場合には、いくら募集株式の発行であるといっても、既存株主の利益に大きな影響を与えます。そこで、2014年改正では、引受人が株主となった場合に、総株主の2分の1を超えるような募集株式の発行を行う場合には、株主総会の決議を経なければならないこととされました。
なお、ここでの決議は、普通決議です。既存株主は、持株比率は低下するものの、必ずしも株価が低下するわけではなく、3分の1による拒否権を与える必要まではないと考えられたためです。

2. 2019(令和元)年改正

(1) 概要

2019年改正は、2014年改正と比較すると小規模な改正です。

  • 株主総会資料の電子提供制度の新設
  • 株主提案権の議案数制限
  • 取締役の報酬に関する規律の見直し
  • 株主代表訴訟における会社補償・D&O保険に関する規制の新設
  • 有価証券報告書提出会社の社外取締役設置義務化・業務執行の委任の一部容認
  • 社債管理補助者制度の新設
  • 株式交付制度の新設

などがなされました。このうちM&Aに関わるのは、7つめの「株式交付制度」です。

(2) 株式交換、株式移転

株式交付制度について見る前に、1999年商法改正時から存在している、株式交換・株式移転について確認しておきます。
株式交換・株式移転は、組織再編行為の一つで、2つの会社がある場合に、完全親会社・完全子会社関係を作り出すために使われます。

違いは次の点にあります。株式交換は、当事会社の一方を完全親会社、他方を完全子会社とします。これに対して、株式移転は、当事会社に共通の完全親会社を新設します。
完全子会社となる会社の株主は、完全親会社となる会社の株式を対価として取得します。ただし、株式交換の場合には金銭を対価とすることも可能であり、買収のスキームとして株式交換を利用する場合などに金銭が対価とされます。

(3) 株式交付制度

2019年改正で新設された株式交付の制度は、株式会社(「株式交付親会社」)が他の株式会社(「株式交付子会社」)を子会社化しようとする場合に、対価として自社の株式を株式交付子会社の株主に交付する制度です。
子会社化しようとするが、完全子会社化まではするつもりがないという場合、株式交換は使えません。また、デット・エクイティ・スワップ(DES)の場合と同様に、子会社としようとする会社の株式を現物出資財産として、親会社となろうとする会社が新株発行・自己株式の処分をすることが考えられます。
しかし、現物出資の場合には、既存株主の一株当たり純資産を毀損することがないよう、検査役による検査を受けなければならないのが原則であり、時間と費用がかかること、株式交付親会社の価格がシナジーを期待して値上がりすることを見込んで、プレミアムを上乗せする場合、有利発行となり、株主総会事項となる可能性があること、という問題がありました。

このような問題を解決するものとして新設されたのが株式交付制度です。
手続は株式交換・募集株式の発行(新株発行)と類似しており、株式交付親会社は、

  • 株式交付計画の作成、
  • 株式交付計画の株主総会決議による承認、
  • 株主による譲渡しの申込み、
  • 株式交付親会社が譲り受ける子会社の株式の割当て(誰から譲り受けるか=誰に株式を交付するかの決定)、
  • 株式交付の効力の発生=株式交付子会社の株式の譲渡し・株式交付親会社の株式の交付がなされます。

なお、既存株主・債権者の保護制度として、株式交付計画等の書面の備置、差止請求・株式買取請求、債権者異議手続がなされる点は、他の組織再編行為と同様です。

3. まとめ

2014年改正では、略式組織再編以外の組織再編における差止請求制度、詐害的会社分割における債権者保護制度、子会社株式譲渡の株主総会決議事項化、特別支配株主による株式売渡制度の新設、支配株主の移動を伴う募集株式の発行の株主総会決議事項化がなされました。

また、2019年改正では、株式交付制度が新設されました。これらの改正により、現金を調達する必要のない、株式を対価とするM&Aがより浸透していくものと考えられます。

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