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アドテク(アドテクノロジー)業界のプレイヤーについて

インターネット広告は広告主と広告を配信するメディアが存在しています。
国内におけるインターネット広告は技術の進化と共に、広告主やメディアの他にも効果的なサービスを提案するプレイヤーも増えてきました。

今回は、今なお進化をし続けているアドテク(アドテクノロジー)業界におけるプレイヤーについて解説します。

1. アドテク(アドテクノロジー)業界

1996年にYahoo!JAPANがインターネット広告を配信した当初、アドテクという言葉は存在すらしていませんでした。
当時は今ほどインターネットは普及していませんでしたので、広告と言えばテレビやラジオなどのメディアや街中の看板、その他には新聞やチラシなどの紙媒体が一般的でした。

インターネットの普及とともにインターネットが広告媒体として急速に注目されて、より効果的な広告を表現するために次々と新しい技術や手法が開発されていきました。 その技術こそ今日のアドテクと言われるものです。

アドテクとは、直訳するとAdvertising(広告の)Technology(技術)という意味ですが、詳しく解説するならば「インターネット広告をより効果的に実践するためのITテクノロジー」という意味です。

2. インターネット広告に必要不可欠になったアドテク

インターネット広告が国内で登場した当時は、広告主とメディアの2者間の取引による簡素なものでした。 インターネット広告の市場が活気を帯び始めると、より効果的で利用しやすく質の高い広告が求められるようになります。

例えば、資産運用に興味のある既婚男性がいたとします。彼の閲覧するWEBサイトは株式投資や政治経済の情報やコラムがほとんど。 しかし、そのユーザーに対して女性の美容や結婚情報サービスなど的外れな広告が表示されると、その広告の価値はゼロに等しくなります。

アドテクではこのような問題を解決しました。 この男性の場合、資産運用に興味がある・既婚者・男性というデータがもし判っているとするならば、興味があると思われる広告が表示されるべきです。他にも、過去に検索したことのあるキーワード、クリックしたことのある広告、購入履歴のあるECサイトなどのデータが備わっていれば、さらにユーザビリティの高い広告を表示させることができます。

現在はトラッキングcookieなどのツールを利用して、広告をターゲティングしたり、より戦略的なパーソナライズをすることができるので、このような質の高い広告を表示することができるようになりました。

アドテクノロジーの進歩によって、インターネット広告の質は向上し続けており、今なお進化しています。
現代のインターネット広告にアドテクは必要不可欠になっているのです。

3. アドテクの代表的なサービス

前述の例はただの一例ですが、それでは、アドテクにはどのようなIT技術があるのでしょうか。まずは、インターネット広告に革新的な技術を導入したアドテクのプラットフォームやサービスをいくつか紹介します。

(1) アドネットワーク

広告を配信するネットワークシステム。広告主から依頼される広告を、管理している複数のWEBやアプリなどの中から関連性・親和性の高い媒体で広告を配信することができます。
広告主は効率よく広告を掲載することができ、広告掲載するメディアは高い広告単価が期待できるようになります。

(2) アドエクスチェンジ

複数のアドネットワークが管理している広告をさらに大きく管理して売買(入札)できる仕組みです。
広告主の需要とメディアの供給によって広告単価を決定し、imp課金型で広告を配信します。アドネットワークの上位互換と考えて良いかもしれません。

(3) DSP(Demand-Side Platform)

直訳すると「需要サイドのプラットフォーム」。つまりは広告主側のためのプラットフォームです。広告そのものの費用対効果を最大限に発揮させるためのサービスです。

(4) DMP(Data Management Platform)

インターネット上に存在するサーバーに蓄積されたデータと自社で管理するWEBサイトのログデータを管理し、管理されたデータを基に最適化されたプランを実行するサービスです。

(5) SSP(Supply Side Platform)

直訳すると「供給サイドのプラットフォーム」。つまりは広告を掲載するメディア側のためのプラットフォームです。広告収益を最大限に発揮させるためのサービスです。

これらの他にも広告効果を測定するツールや広告配信技術など、近年のアドテク業界は多くのサービスが開発されています。 アドテクの進歩により収益性がある程度確保され、広告主にもメディアにも使いやすいサービスは充実しており、さらにこれから益々発展していくと思われています。

それでは、インターネット広告の流通の裏側ではハイテク化が進んでいることが分かりましたが、普段私たちが目にするような広告の種類はアドテクの進化によりどのようなものがあるのでしょうか。

4. アドテクの進歩で多様化するインターネット広告の種類

(1) アドネットワーク広告

アフィリエイト広告のように、広告媒体となるメディアを集めて広告配信のネットワークを構築してWEBサイト上に広告を配信するサービスです。

(2) リスティング広告

前述のgoogleやYahoo!の検索エンジンを利用した際にキーワードに関連して表示される広告です。

(3) ディスプレイネットワーク広告

googleディスプレイネットワーク(GDN)、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)など。

(4) SNS広告

Twitterやfacebookなどのタイムラインに掲載される広告です。

(5) 動画広告

Youtubeやニコニコ動画、AbemaTVなどで配信される広告です。

世間に流通するようになった広告の種類を時系列的に表記しました。 これらを見てわかる通り、アドテク業界では世の中のニーズや流行に則し必要とされる広告が開発されています。 アドテクノロジーに関連する技術や製品を開発・企画・提案・販売する企業は「アドテク業界のプレイヤー」と呼ばれるようになりました。

5. アドテク業界の主なプレイヤー

これまで解説したように、かつてのインターネット広告というのは広告主とメディア(広告媒体)の2者間の取引だったものが、アドテクが介入したことにより効果的で収益性の高い広告に進化してきました。 アドテクは広告主のためのサービスだったりメディアのためのサービスだったり、とても多くの技術が開発されています。 それでは、今日のインターネット広告を支えるアドテク業界の主なプレイヤーを紹介します。

(1) 株式会社オプト

東証一部に上場している業界2位のインターネット広告専業代理店。広告効果計測ツールやCRMツールなどのアドテクも充実しており、不動産や金融分野などの広告を得意としています。

(2) 株式会社サイバーエージェント

アメブロやAbema TVなどのサービスで知名度の高いサイバーエージェント。もともとはインターネット広告営業の会社で、現在はインターネット広告の国内最大手と言われています。スマートフォン特化の成果報酬課金型DSP「Smalgo(スマルゴ)」などあまりヒットせずに終了したサービスもありますが、先駆的に多様なアドテクの開発を開始しており、アドテクプレイヤーとして米国進出も果たしています。

(3) Supership株式会社

KDDIの連結子会社で、2015年にFacebookの世界初SSPパートナーになったことで注目された会社です。2016年には電通と資本業務提携したことも話題となりました。主なサービスには動画アドネットワークの「アップベイダー」、媒体社向けの広告配信プラットフォーム「アドジェネレーション」などがあります。

(4) SMN株式会社

ソネット・メディア・ネットワークス株式会社から2019年10月にSMN株式会社に社名変更。もともとは消費者金融の株式会社ニッシンの完全子会社でしたが、2002年にライブドアを子会社化したあたりからIT企業に転身し始めます。現在はソニーネットワークコミュニケーションズの子会社です。主なサービスは、DSPサービスと広告配信最適化エンジンの提供事業である「Logicad」や、米国のPubMatic社と共同で行うSSPサービス「PubMatic」など。

(5) 株式会社プラットフォーム・ワン

DSPでは、国内最大級の広告枠・在庫に対して、広告主の要望に応じた配信を行う「Market ONE」を、SSPではメディア側の広告収益を最大化する配信機能を持った「YIELDONE」など多くのサービスを展開しています。アドテクを専門とする開発会社で、2019年2月には博報堂DYメディアパートナーズなどと動画広告サービスを提供開始したことでも話題となりました。

(6) 株式会社フリークアウト

ヤフー株式会社の広告事業開発部長だった本田謙氏が2010年に創業した会社。2011年に広告枠を1回表示ごとに自動的に買い付け判断するDSPをリリースし、2014年にフリークアウトホールディングスはマザーズに上場。開発力は非常に優れていて、DSP、DMPの国内外での開発・販売やDSPシステムのOEM提供、広告配信コンサルテーションの提供も行っています。

(7) マイクロアド株式会社

広告主とメディアの双方に付加価値を最大化させるアドプラットフォーム「BLADE」、「COMPASS」などのサービスを提供しています。サイバーエージェントやソフトバンクが株主になっていて、中国やアジア各国に拠点を構える大手アドテク企業です。

(8) ユナイテッド株式会社

コンテンツ事業とアドテク事業を展開しているマザーズ上場企業。アドテク事業では大きく2つのサービスを持っており、Bypassは広告主向け広告配信プラットフォームで広告の最大化とオペレーション業務の効率化を目指します。もうひとつのAdStirはメディア向けの広告管理プラットフォームで、広告収益最大化を目指すサービスです。「日本を代表するIT企業になる」ことを目標にしていて今後も注目のアドテクプレイヤー。

(9) ログリー株式会社

2019年のアジア太平洋地域のテクノロジー企業成長率ランキング500でランクインした成長著しいアドテク企業。日本初のネイティブ広告プラットフォームである「LOGLY lift」や、見込み客を可視化するユーザー分析DMP「juicer」を提供しています。

以上は比較的大手の企業を列挙してみました。 もちろん、国内だけでなく海外にも多くのアドテクプレイヤーが日々開発を続けています。インターネット上で「アドテク業界のカオスマップ」で検索していただければ、この業界が如何に混沌として複雑になっていることが分かります。それだけ多くの技術が開発されて、アドテクが進化しているということです。

これらの企業の他にも数え切れないほどの多くの企業がアドテク業界にプレイヤーとして参入してきています。 また、近年ではインターネット広告業界だけでなく、コンシューマーのニーズを理解しているネット通販などの異業種からの参入も見られます。

6. アドテク業界におけるプレイヤーの今後

2016年に制定されたGDPR(EU一般データ保護規制)などの個人情報保護の規制、そして流動性の高い市場を考えると、どのような技術の変化があるのかについては予測が難しいです。 ただ、アドテクは2023年まで技術的な成長が期待されていると言われています。 近年では人工知能やマシンラーニングなどのテクノロジーの発展は著しいのですが、アドテクは近代のITに見合った技術は確立していません。それでも、データの収集が日々蓄積されてくる中、まずはアドエクスチェンジで採用される入札の自動化や広告の自動取引などは開発が進んでいくでしょう。

アドテクが進化を続けるとなると、もちろんアドテク業界も成長します。ここ数年は新規プレイヤーも次々と参入するかと考えられますが、まずはたくさんのデータを管理している既存のプレイヤーの技術力や規模は拡大するはずです。

7. 破産する大手プレイヤーも

アドテク業界が盛り上がりを見せる一方、一部では陰りを見せる企業も出てきます。 2019年3月に大手アドテク業界のプレイヤーであるサイズミックが破産申告したことは大きなニュースになりました。 サイズミックはもともとはアドテク業界の中でもgoogleに対抗できる勢いのあった会社で、自社で開発をせずに技術力のあるアドテク企業を買収しながら規模を拡大し続けていました。アメリカ国内に14、その他の国にも40以上のオフィスを抱え、社員数は1000人以上の大企業です。

しかし、同社としてはDMPやDSP、広告サーバーを統合した組織を構築する戦略でしたが、googleのようには上手くいかなくなった格好となってしまいました。ただ、サイズミックは破産申告はしたものの倒産はしていません。 その後は、2019年6月にアマゾンがサイズミックの広告サーバーと動的コンテンツの最適化ビジネスを買収したことを発表。こちらもアドテク業界では大きな話題となっています。

アドテク業界は規模の大小を問わず新規プレイヤーも増えているのですが、規制の変化や流動的な市場への対応に遅れをとってしまわないよう、資金力やエンジニアリングはプレイヤーにとって必要不可欠なのです。

以上、今回はアドテク業界のプレイヤーについて解説しました。 国内においてインターネット広告は1996年に誕生した広告ですが、今やテレビ広告に次ぐ2番目に大きな市場となっており、その市場規模は他の広告と比較して著しく成長し続けています。 世界の広告市場を見ると、既にインターネット広告がテレビ広告を上回っており、日本でも近いうちにインターネット広告が首位になると言われています。その重要な市場を支えているのがアドテクのプレイヤーなのです。 今後も市場の成長とともに新たなプレイヤーによる新しいサービスが開発され、さらに大きな市場となっていくことでしょう。

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