今回は、オートテック領域のスタートアップやプロダクトを全部で8つ紹介していきます。
オートテック領域での事業を検討されている方などは、ぜひ参考にしてみてください。
※ オートテックとは、自動運転技術の安全性や走行性能の向上を目的にしたシステムのことです。
1. Quanergy Systems 社の「Lidar」というセンサーデバイス
・Quanergy Systems は、自動運転車両向けのセンサーデバイス「Lidar」を開発している企業です。
・LiDARは「Light Detection and Ranging」の略で「ライダー」と読みます。
・このセンサーを自動車へ導入すると、半径300メートル以内の物体の位置や形状を捉えて、3Dマッピングができるようになる(ちなみに通常ヒトが自動車を運転する際の視野は半径200メートル程と言われている)とのことです。
・センサーは、継続的に反射されるビーム自体を分析して、物体の形状や物体との距離を計測する仕組み(競合他社のように、レーザーの反射から測量を行っているわけではない)です。断続的にビームを発射できるため、回転式のモデルよりもはるかに多くのデータが集められて、より正確な測量ができるとされています。
一方、Googleなどの競合他社は回転式のデバイスを開発していて、そのモデルはデバイスそのものを回転させて広範囲にレーザー光線を発射し、内部の鏡を利用して周囲の測量を行う仕組みになっています。
・日本やインドなどのように、人口密度の高い地域でも利用可能で、このLidarセンサーを利用することにより、年間3万人にものぼるといわれている交通事故の死傷者を大幅に減らすことができるとされています。
・ビジネスモデルは、ソフトウェア・ハードウェア・フルサービスモデルの3つです。日産やメルセデスベンツなどの大手自動車会社も顧客で、開発する自動車にこのセンサーを実装しています(+日本でもオフィスを開設済み)。
・他社との違いや強みは開発費用の低さで、この点については、Googleが開発している製品よりも優れているとされています。
参照:
AIとディープラーニングを駆使したシステムで、自動運転車の安全を守る「DeepScale」
Quanergy Systems
https://www.jepico.co.jp/products/search/product04/item_100
2. Deep Scale
・Deep Scaleは、自動運転車向けの認識技術(パーセプション)システムを開発するスタートアップです。
AIとディープラーニングを駆使して、自動運転車の安全を守るためのシステムを開発していて、全レベルの自動運転車と多様なデバイスに対応可能な汎用性の高いシステムを目指しています。
・システムは、LiDARセンサーやレーダー、カメラなどの車載デバイスから情報を取得し、ディープニューラルネットワークを用いて、道路や周辺状況をリアルタイムに認識する仕組みです。
※ 今まではカメラのデータしか扱っていませんでしたが、Deep Scaleの場合は、ディープニューラルネットワークとマシーンラーニングを使って、レーダーやLiDARにも対応できるようになったとのことです。
・ちなみに他の自動運転車向けシステムとの違いは、リアルタイムで作動する認識技術を重点的に扱っている点や、自動化レベル2〜5の車まで幅広く対応可能なことです。加えてカメラだけでなく、上述したようにレーダーやLiDAR対応も特徴です。
参照:
https://techblitz.com/deepscale/
Deep Scale
http://deepscale.ai/
3. Zendrive
・Zendriveはスマートフォンのデータを活用して、ドライバーの運転状況をチェックするための開発者プラットフォームです。
・ドライバーの挙動(急ブレーキ、スピードの出し過ぎ、急なターンなど)を検出できるようになること、ドライバーの安全性を評価することが最初の柱です。
また、コーチングやドライバーの挙動を改善するためのものという側面もあり、1日の終わりや走行した後に、ドライバーや車両管理マネージャーに安全性のフィードバックを行ったり、運転挙動の安全性向上に役立つコーチング・ツールを車両管理マネージャーに提供します。
ちなみに、2万人以上の職業ドライバーに対して、250日間にわたってこれを提供し、衝突事故の発生率を50パーセント減少させた例もあるようです。
・機能を利用するにあたり、改めて特別な装置を車に設置する必要はなく、スマートフォンのデータで、運転者が集中して車を運転しているのかを把握するかたちになっており、モニターするかスマートフォンのセンサーデータにアクセスすることによって、ドライバーの挙動を把握できる仕組みです。
なおシステムは、インターネットにつながっていないオフラインの状態でも利用できて、個人情報には触れず、GPS、ジャイロスコープ、振動測定計、スマートフォンが備えるセンサーなどを数種類利用して、データを解析する仕組みとのことです。
参照:
https://techblitz.com/zendrive/
4. Auto X
・Auto X は、アプリで注文した食材や料理を、自動運転車が配達してくれるサービスです。自動運転車を利用することで、ユーザーが時間とお金を節約できるようになることを目指しており、すでにシリコンバレーで、テクノロジーが実際に利用できるかどうかのテストを実行しています。
・サービスの利用方法は、Auto X Food Deliveryアプリをダウンロードし、お店を選んで注文するだけ。
レストランの料理はできるだけ早く、スーパーの食料品に関しては、1日以内に自動運転車で配達してくれるとのことです。
参照:
https://techblitz.com/autox/
5. HAAS ALERT
・HAAS ALERTは、事故を防止するためのドライバー向け緊急車両接近通知システムで、緊急車両の接近や工事現場情報など、道路状況の変化をいち早くドライバーに通知してくれます。
・携帯無線通信を使って緊急車両の接近を通知する形で、具体的には緊急車両の赤色灯にトランスポンダー(中継装置)を取り付け、そこからアプリケーションを掲載した車両のドライバーに無線を使って接近を通知する仕組みになっています。
1マイル~最大50マイル先からでも送信できる仕組みになっているようで、これによってドライバーがサイレンやライトに気づいてから対応するよりも、事故の危険性を60~90%削減できるとされています。
・ビジネスモデルは、消防署や警察署、そして市にライセンスを供与して車にシステムを搭載してもらう形と、車のメーカーやナビゲーションプロパイダーに、受信用アプリケーションのライセンスを供与する形の2つです。
参照:
https://techblitz.com/haas-alert/
6. Swift Navigation
・Swift Navigationは、自動運転車やIoT向けに、誤差を1センチ単位に縮めた高い精度のGPSを提供するスタートアップです。
・通常のGPSの場合は、3~5メートルほどの誤差が生じてしまいますが、Swift NavigationのGPSモジュールは、位置情報を受け取るレシーバーにエラーの情報を集めて誤差を計算し、そこからセンチレベルの正確性を実現できるようになっているとのことです。
・GPS製品の販売とネットワークの利用料によって収益を得ているようで、データを集めてトラッキングすることも可能とのことです。
また、すでに沢山の顧客がいて、自動車以外にも、建設機械、農業機械、ドローンなどのメーカーにもサービスを提供しています。
精度の高いGPSは、自動運転車が高速道路を走行したり、トラクターがまっすぐ農地を走る際に役立つもので、特に車の場合、自分の居場所が急に大きくジャンプしてしまうのは大事故につながり命にも関わるので、とても重要なサービスと言えます 。
・なお、他のセンサーや自動運転の管理システムに手を出すつもりはなく、現在手がけているGPSに集中して事業を拡大していきたいとのことです。
参照:
https://techblitz.com/swiftnavigation/
7. Parknav
・Parknavは、空いている駐車場を教えてくれるサービスです。
・様々なデータから駐車場が見つからないといった悩みを解決し、目的地まで歩きやすくて駐車できる可能性が高い場所を提示してくれる仕組みで、具体的には、それぞれの通りに応じて、どこに駐車すると違法なのか、有料の場合はいくらかといった情報を集めて、走行する通りが空いているかどうかという情報を提供する形になっています。(ちなみにアプリそのものを作っているわけではなく、企業にデータを販売して、そこから顧客に情報を提供する形のサービスです)。
・なおデータは、車、通信記録、カーシェアリング会社、保険会社など、様々な所から集められていて、収集されたデータはその後、そのデータのもつ意味や繋がりなどを理解して、駐車場が空いているかどうかの判断に使われているとのことです。
参照:
https://techblitz.com/parknav/
8. KDDIとナビタイムジャパンのMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)領域での連携
・両社の連携は、都市部の慢性的な交通混雑の解消、高齢者の移動手段の確保、過疎地域での生活路線の確保、訪日外国人の増加に伴うオーバーツーリズムなど、都市や自治体の社会課題の解決などを目的にしたものです(飛行機、鉄道、バス、タクシー、自転車、船など、幅広い交通事業者の課題解決につながる可能性も)。
・検索、予約、配車、決済、アプリ開発などを共同で行い、交通事業者や自治体によるMaaS領域の事業の立ち上げを支援していきたいとのことで、大都市はもちろん、地方の観光地や過疎地など、地域の様々な課題も解決していく予定になっています。
参照:
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2019/06/05/3844.html
9. まとめ
今回紹介したように、オートテック領域のスタートアップは、日本よりもアメリカなどの海外企業の方が多いのが現状です。
ただ、最後に紹介したKDDIとナビタイムジャパンの連携のように、交通ビッグデータ、検索エンジン、AIなどを活用した大都市や地方の課題解決・事業の立ち上げに関しては、日本でも様々なアプローチができる可能性があります。
オートテック領域のサービスやプロダクトなどを参考に事業を検討している方には、特にヒントになる事例かもしれません。
パラダイムシフトは、IT領域のM&Aに強みをもった会社です。これまで、メディア運営企業やweb制作会社、web開発会社などをはじめとしたIT領域のM&Aはもちろん、出版会社・人材会社・レジャーサービス企業など、様々な会社のM&Aを担当しています。
こちらのページで、M&Aにいたる背景、過程、交渉する際の難点などをそれぞれの事例ごとに整理して紹介していますので、新規事業を検討中の方やM&Aを検討中の方は参考にしてみてください。
https://paradigm-shift.co.jp/case/
なお、M&Aだけでなく、合わせて事業開発のサポートも担当していますので、興味がある方はこちらも参考にしてみてください。
https://paradigm-shift.co.jp/services/bd/
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