今回は、コンソールゲームとクラウドゲーミングの違いや、クラウドゲーミング市場に参入している企業の状況などを紹介していきます。
最後に、クラウドゲーム市場への参入を検討している人に向けて、ゲーム業界の市場規模やM&Aの事例も紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。
1. コンソールゲームとクラウドゲーミングの違いについて
コンソールゲームは、Nintendo 3DS、Nintendo Switch、プレイステーションなど、ゲームをプレイする際に機器(ハード)を必要とするゲームのことをいいます。
一方のクラウドゲーミング(クラウドゲーム)は、映像や音などをサーバーから受信して楽しむストリーミング配信のゲームで、コンソールゲームのように専用の端末やソフトなどを必要とせず、様々な端末で楽しむことができるゲームのことです。
これまでのコンソールゲームとは違い、クラウドゲームの場合は、ハードの端末を開発して普及させる手間やコストが必要ないため、新しく参入することを検討している企業が多いといわれています。
2. クラウドゲーミング市場に参入している企業の状況について
(1) Google
Stadia(ステイディア)は、Googleの開発するクラウドゲームです。Googleのデータセンターで処理された映像・音楽などのデータを、Chrome Cast、ブラウザ、スマホなどに配信し、より手軽に楽しめるようにしたサービスで、2019年の11月から欧米14カ国でスタートしました。利用料金は月9.99ドルの定額制で、YouTubeのプレイ動画からすぐに遊べるようにすることも後々可能になるといわれています。
ただ、2020年1月現在、リリースして間もないこともあり、ラインナップのゲームタイトルが少ないことや大きなラグが発生するなどの不満もあるようです。
(2) ソニーとマイクロソフト
2019年5月、ソニーとマイクロソフトは、GoogleのStadiaに対抗するために、クラウドゲームの分野での提携を発表しました。開発にあたり、マイクロソフトの「Microsoft Azure(マイクロソフトアジュール)」を活用することを検討中のようで、ソニーにとってはインフラとなるネットワーク分野の弱みを補えることがメリット、マイクロソフトにとっては、ソニーの画像センサーなどの先端技術を活用できることが提携のメリットになるといわれています。
(3) ソフトバンクとNVIDIA
2019年冬、ソフトバンクはクラウドゲーミングサービスの「GeForce NOW」を運営しているアメリカのNVIDIA(エヌヴィディア)と共同で、日本版「GeForce NOW Powered by SoftBank」というサービスを開始すると発表しました(2019年12月17日からクローズドベータテストを開始)。ちなみに北米と欧州で展開されているGeForce NOWのベータ版には、2019年時点で、約500タイトルのゲームが配信されているようです。
ソフトバンクによるプレスリリース
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2019/20190919_01/
GeForce NOW Powered by SoftBank
https://cloudgaming.mb.softbank.jp/
(4) 任天堂
2020年1月時点、任天堂はクラウドゲーム分野への参入は発表しておらず、動向を注視している状況とのこと。ちなみに現在「バイオハザード7 レジデント イービル」など、Nintendo Switch向けのクラウドゲームは存在しており、今後もさらにタイトルが増えていくと予想されています(クラウドゲームはゲームのプレイ環境や通信環境によって快適性が変わってくることが難点ですが、5Gが普及すればこうしたデメリットの解決も容易になります)。
(5) カプコン
カプコンは、先ほど紹介した「バイオハザード7 レジデント イービル」を、Nintendo Switch向けのクラウドゲームとしてリリースしています(今後も他のタイトルをリリースしていくかどうかは検討中とのこと)。クラウドゲーミングの普及に対しては、ゲーム人口が増加する可能性があり今後の推移を冷静に分析していきたいとしていますが、プラットフォームに依存しない魅力的なコンテンツの開発に注力することが最優先との考えです。
参照:
https://jp.ign.com/resident-evil-7/26167/news/switch
http://www.capcom.co.jp/ir/data/oar/2019/management/coo.html
(6) バンダイナムコエンターテインメント
バンダイナムコは、過去にPlay Station4とNintendo Switchでリリースした「ドラゴンボール ゼノバース2」のタイトルを、GoogleのStadiaに配信すると発表しています。5Gの普及によって、さらにクラウドゲームの裾野が広がっていくことを見越しての判断で、新しいユーザーに、より多くの時間ゲームを楽しんでもらうために、今後もさらに配信していきたい考えとのことです。
(7) スクウェアエニックス
スクウェアエニックスも「ファイナルファンタジーXV」をGoogleのStadiaに配信(Stadia版として、新たなコンテンツなどを追加しての配信)していて、価格は39.99$(USD/EUR)となっています。ちなみに今後も、アメリカのSFアクション映画「アベンジャーズ」の人気キャラクターが登場する新作ゲームを配信していく予定とのことです。
ファイナルファンタジーXV(Stadia版)
http://www.jp.square-enix.com/ff15/stadia/
(8) エレクトロニック・アーツ
エレクトロニック・アーツは「Project Atlas」というクラウドゲームサービス(ゲームの開発環境とプレイ環境をひとつに統合したプラットフォーム)を開発しています。こちらは、現在開発中のテストサービスを利用可能で、エレクトロニック・アーツのサービスサイトのアカウントを持っている18歳以上であれば参加できるようです。
(9) Amazon
Amazonも、2020年から、ゲームストリーミングサービスへの参入を計画していると噂されており、実際にクラウドゲームに関連した求人も募集されているようです。Amazonというと、ECサイトやAmazon Primeなどの印象が強いですが、同社が運営する開発者向けのAWS(Amazon Web Service)を利用しているゲーム会社も多く、またゲーム配信サイトの「Twitch」というサービスも運営しています。
(10) Apple
2019年の秋、Appleは「Apple Arcade」というゲームのサブスクリプションサービスをリリースしました。こちらはクラウドゲームサービスではありませんが、月額600円で様々なタイトルのゲームを自由に遊ぶことができるようになっており、スマホだけでなく、PCやAPPLE TVなどの端末でも楽しむことができます(一部のゲームはダウンロードしてオフラインで楽しむことも可能)。
APPLE Arcade
https://www.apple.com/jp/apple-arcade/
(11) ファーウェイ
2019年11月、中国の通信機器メーカーのファーウェイも、ゲーム開発の「游族網絡(Youzu Interactive)」と提携し、クラウドゲーム市場への参入を発表しています。ちなみにファーウェイは、他にも中国の4大ポータルサイトのひとつを運営する網易(ネットイース)という会社と提携して、クラウドゲームの「逆水寒」をリリースしているとのこと。
3. ゲーム業界の市場規模やM&Aの事例を紹介
(1) ゲーム業界の市場規模と内訳
ファミ通ゲーム白書2019の国内・家庭用ゲーム市場規模推移(予測)のデータを、一部抜粋して紹介します。
【 世界の地域別ゲームコンテンツ市場(2018年)の内訳:】
- アジア( 44.2 % / 5兆8234億円 )
- 北米( 28.9 % / 3兆8125億円 )
- 欧州( 21.4 % / 2兆8203億円 )
- その他 ( 5.5 % / 7211億円 )
【 2020年〜2022年までの国内のクラウドゲーム市場の規模の推移(予測):】
- 2020年( 28.6億円 )
- 2021年( 87.2億円 )
- 2022年( 125.9億円 )
※ なお2018年のオンラインゲーム(モバイル・PC向けのゲーム)の、国内の市場規模は1兆2361億円。
参照:
https://www.famitsu.com/news/201906/07177561.html
4. ゲーム業界におけるM&Aの事例
最後にゲーム業界のM&Aの事例を3つ紹介します。
上のデータでも紹介したように、まだまだオンラインゲームの市場規模は大きく、急にクラウドゲームの市場にとってかわられる可能性は低いと考えますが、技術力や開発力の高い企業を買収、もしくは資金力などが豊富な企業と提携できれば、クラウドゲーム市場への参入も検討できる可能性があります。
(1) ブロッコリーが、ゲーム制作会社のLANTERN ROOMSを子会社化( 2019年 )
LANTERN ROOMSは、家庭用ゲームソフトやスマホ向けゲームの企画・制作など、豊富な制作実績をもつ会社。ブロッコリーは、特にLANTERN ROOMSの企画力・開発力を評価しており、同社のコンテンツ開発体制を強化していくことが狙い、一方のLANTERN ROOMSは、財政基盤の安定や人材拡充などが見込めるということで、子会社化の合意にいたったとされている。なお取得価額は18,618,000円。
株式会社ブロッコリーによるお知らせ:
https://www.broccoli.co.jp/company/inc/data/pdf/pr/190830_pr_1.pdf
(2) ユナイテッドが、スマートフォン向けアプリ開発会社のトライフォートを子会社化( 2018年 )
トライフォートはスマートフォン向けアプリやWEBサービスの開発に注力しており、様々なヒットタイトルを持っている会社。今後ユナイテッドは、スマホ向けゲームの開発に注力することや、事業ポートフォリオの拡充を計画しており、優秀な人材に参画してもらうことなどが買収の狙いとのこと。なお取得価額は3,622,703,000円。
ユナイテッド株式会社によるお知らせ:
https://united.jp/cms/wp-content/uploads/2018/09/20180927united_tf.pdf
(3) フリュー株式会社が、オンラインゲーム会社のコアエッジを子会社化( 2018年 )
コアエッジは、もともと、子会社化される前から、フリューの持分法適用関連会社で協力をしてきた会社。フリューは今後、さらにコアエッジとの連携強化を図ることで、男性向けスマートフォン向けゲームのジャンルにさらに注力していきたい意向で子会社化を決定したとのこと。なお取得価額はコアエッジの普通株式3億円。
フリュー株式会社によるお知らせ:
https://production-mkdd-news.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/urn%3Anewsml%3Atdnet.info%3A20180921409430/140120180921409430.pdf
5. パラダイムシフトが担当してきたM&Aの事例について
パラダイムシフトは、IT領域のM&Aに強みをもった会社で、これまでに様々な案件を担当してきた実績があります。中には、ゲーム開発会社を当事会社とするM&Aも複数件、取り扱いがございます。
M&Aの背景や交渉時の難点など、案件ごとに整理して紹介していますので、M&Aを検討中の方は、ぜひこちらのページも参考にしてみてください。
https://paradigm-shift.co.jp/services/case_list/
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