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FinTechが中国・アフリカで発達しているのはなぜか? 想像を絶する?5つの理由

1. はじめに FinTechとは?

FinTech(フィンテック)とは、金融サービスとテクノロジーの造語です。

既存の金融サービスにテクノロジーで改変・改良を加えることにより、新しいサービスが生まれます。これらのサービスをFinTechと呼び、またサービスを提供する会社FinTech Companyも増えています。

既存の金融サービス会社は銀行が代表格で、巨大な資金をバックにしているのに対し、FinTech Companyはテクノロジーを主体とした小規模な会社も多く含まれています。

2. FinTech で利用される技術と提供されるサービス

FinTechで利用されている技術には、例えば仮想通貨に使われるブロックチェーン技術・決済のためのQRコード技術や、携帯電話による通信技術が含まれており、これらの技術を使った決済・預金・送金・融資ないし資金調達・投資などのサービスが提供されています。
広い意味では金融サービスとAPI連携でデータのやり取りが可能な経理ソフトの提供なども含まれます。

3. FinTech普及率1位の国は?

FinTechの普及率を統計資料で見ると、普及率の1位は中国で、84%を超える普及率を誇っています。経済特区の深セン等では、現金決済がほとんど使えないといった事象も生じています。

決済手段も、例えばAlipayやWeChatPayなどのQRコード決済が日本よりもはるかに高い率で普及しています。

(1) QRコード決済が中国で発達した背景事情

中国は、紙幣に対する信用度も伝統的に高くない文化圏にあります。そのため、金が信用される文化であり、どちらかというと紙幣を見るよりも、プリペイドであらかじめ支払われ、資金の裏付けがあるものに信用をおく傾向があります。

そこに、携帯電話による通信の発達・サービスの発達と、経済発展・人の移動の増加・規制緩和が手伝い、QRコード決済が爆発的に伸びた、という経緯があります。複合的な要因がそこにあったといえるでしょう。
どこか一つの要因にQRコード決済の爆発的普及の理由を求めることはできないようです。

なお、現在では、中国も制度の変更や、かつてよりも銀行口座が普及したこと等の事情により、QRコード決済はプリペイド方式ではなく、銀行口座から引き落とし方式を原則とするようになっています。

しかし、後で説明しますように、まだ口座を持たない人も多いことや、旅行客の需要があり、QRコード・プリペイド決済を使う必要性はしばらく続くものと見られます。

(2) そして、FinTech熱はアフリカに

中国でFinTechが発達しているのは統計資料からもよくわかりますが、さらにアフリカでもFinTechは普及が進んでおり、今後も経済成長を支えることが見込まれています。

KPMGのフィンテックカンパニーのセレクションに、南アフリカの開発会社が2社入選していますが、これもアフリカでのFinTech熱を物語るものといえるでしょう。

4. 日本人は想像できない?FinTechが中国・アフリカで発達している理由

ここで、中国・アフリカでFinTechが発達している理由をまとめてみました。中国のQRコード決済が発達した事情と重なるところがありますが、中国・アフリカ共通の理由を検討してみると、次のような理由が挙げられます。

(1) 銀行口座は持っていないから

世界銀行の調査によれば、2018年時点で、銀行口座を持たない成人は17億人、うち中国が2.2億人(一国の人数では最多)・アフリカは諸国を合わせると10億人が該当するとされています。

普及率で言うと、中国はすでに6割超の銀行口座普及率があるのですが、それも2005年以降普及率が上がったものですし、また、2.2億人という数は少なくないインパクトを市場に与える数といえます。

アフリカ諸国に至っては、銀行口座普及率のデータそのものがない国もあり、2割を割っている国が多数見られます。

銀行口座を持たずに決済・送金をする手段の必要に迫られて、手軽な携帯電話端末によるプリペイド式の決済・送金手段が発達しているのです。

(2) 携帯電話はもっているから

銀行口座よりもはるかに普及しているのが、携帯電話であることも中国とアフリカに共通しています。
携帯電話は、決済・送金・投資、最近ではマイクロクレジットに必要な技術的手段として利用されています。

GSM端末を最も普及させた携帯電話メーカーはNOKIAですが、2000年代初頭から中盤、NOKIAは途上国にGSM端末を普及することに特に力をいれていました。
そのため、銀行口座を持たない中国・アフリカの特に農村地帯の住民も、携帯電話・スマートフォンは高い確率で保有しているのです。

2015年のITU調査によれば、アフリカの特に沿岸諸国での携帯電話普及率は軒並み75%を超えています。約7億5000人が携帯電話を持っています。
かつてGSM端末が爆発的に普及したことが要因としては大きいものと見られます。

(3) 経済成長・人口増がつづいているから

中国の経済成長率は、2000年代は軒並み二けた成長を続けており、低くなったとはいえ、いまだに6%の成長を続けています(2019年、中国国家統計局)。
FinTechサービスプロバイダからすると、いまだに有力な投資先であるといえます。

アフリカの場合、サブサハラ地域(サハラ砂漠以南地域)はポテンシャルがあるものの、成長率は2%にとどまる国が多いようです。
しかしながら、海沿いの諸国は大半が5%を超える成長率を2010年以降安定して記録しており、その上、人口増がどの地域よりも顕著にみられます。

例えば、サブサハラ・アフリカの都市人口は、2010年からの人口増加率が3.4%(2014年国連調べ)、今後2050年までこのペースが続くものとしており、都市人口が特に増えています。
同じく国連の発表している見通しでは、2050年までにアフリカ全体の人口は21億人、現在の約13億から倍近い増加が見込まれているそうです。

そこで、今まで金融手段を持たなかった人が必要性に迫られて持つようになってきているといえ、手っ取り早いのがプリペイド式モバイル口座です。今後もこの傾向はしばらく続くと見込まれ、FinTech投資の有望投資先となっています。

実際に、南アフリカや、ナイジェリアなどでFinTech産業の勃興と成長がみられています。
サービスとしても、M-PESA=モバイル口座の普及が進んでいます。今後仮想通貨版M-PESAの普及も期待されています。

(4) 治安が不安定で、現金を持ち歩きたくないから

盗難の危険に備えるために、先進国では旅行中など特にクレジットカードを複数枚準備することが多いと思われます。

しかし、治安が良くない地域に住み、銀行口座が普及していない場合は、QRコード決済やモバイル口座からの送金にしておけば現金は持ち歩かなくてよいことになります。

中国にも、アフリカにも各地で差があるとはいえ、治安に不安な地域が点在しており、QRコード決済・モバイル口座送金の普及の要因になります。

(5) 先進国のTech CompanyはFinTechの投資先を探しているから

先進国のソリューションプロバイダも、持続的発展可能な金融経済のために、発展途上国に積極的に投資しています。

特に、国連のSDG’s方針の制定以来、投資家にSDG’sに関連する投資活動をアピールする意味でも、貧困層に金融サービスを提供する動きが増えてます。

ゲイツ財団が貧困撲滅のためにFinTechに投資する、としているように、貧困層の底上げにFinTechは役に立つと考えられているのです。

5. 中国・アフリカ・発展途上国で今後伸びが期待されるFinTechサービス

中国・アフリカ、またこれらの地域に類する事情をもつインドなどの途上国では、FinTechサービスとして有望なサービスの伸びが期待されています。

例えば、銀行口座を持ってない人でも利用できる、マイクロクレジット(貧困のため通常では融資を受けられない人々に対する少額の融資のこと)による融資です。

マイクロクレジットでは、サービスプロバイダから携帯電話でプリペイド支払額に相当するお金を借りることができます。返済するとスコアが上がり、信用をためていくと、より多額のお金が借りられるようになります。

そして、車・家など大きいものを買う場合も、こういうマイクロクレジットのスコアを使うことができます。

マイクロクレジットは、サービスプロバイダだけが貸し付けるのではなく、貸したい個人が投資目的で貸すこともできるようなシステムが登場しています。ソーシャルレンディングから一歩進めて、仲介サービスも登場しているようです。

金融というと、法規制の多い分野ではあります。しかし、既存の法規制も、どうしたらテクノロジーで超えられるか、という発想で臨むサービスプロバイダが登場しており、今後も金融サービス全般にFinTechの知恵が集まっていくものと見られます。

例えばID・取引履歴管理なども、より強固なセキュリティで管理できるブロックチェーンの効果が注目されているように、もう少し技術が改良されればですが、比較的に安価に法規制の「趣旨」を実現できそうです。

既存の金融インフラに依存し、FinTechで大胆なサービス改革を行うリードをとらない先進国も「逆輸入」のごとく、恩恵を受けることができるのではないでしょうか。

6. 日本のサービスプロバイダもこんなことを考えている

日本のFinTechサービスプロバイダも、発展途上国を意識したFinTechサービスをこんな風に提供しています。
すでに中国やアフリカでのサービスプロバイダの成長があるものの、今後発展途上国全体のFinTechの普及・発展をにらんだ日本での動きとして注目されます。

  • クラウドクレジットは、世界各国の消費者金融とネットワークを組み、日本の投資を希望する個人に、投資の機会を与え、特に発展途上国向け貸付の原資としています。

  • Global Mobility Servicesは、自動車の遠隔機動装置を用いて、ローンの踏み倒しを予防する仕組みを作っています。お金を返さないと、車を止めて返済を強制します。この仕組みで、いままで与信がなくオートローンを使えなかった層に、オートローンサービスを提供できることになります。この層は潜在的に20億人ともいわれ、ビジネスのポテンシャルから、Global Mobility Servicesは、2019年にシリーズDで17億円の資金調達にも成功しています。

7. まとめ

中国・アフリカでのFinTechの普及は、今まで見たように、複合的な要因が相まって生じた現象です。共通する金融サービスを支えるテクノロジーとして、固定電話よりも安価で、爆発的普及があった携帯電話が使われています。

今後も携帯電話のテクノロジーに、さらにブロックチェーン・その他のテクノロジーを利用して、FinTechの発達が発展途上国を中心にみられることでしょう。

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