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ハイプ・サイクルとは何か? 最新テクノロジーとの関連を中心に解説

「ハイプ・サイクルって何?」「IT技術とどんな関係があるの?」などと気になっていませんか。これはIT技術の成り立ちや進展を説明するためのツールです。

ハイプ・サイクル自体はデジタル技術の一種ではなく、むしろデータの種類といってよいでしょう。しかし複雑なIT技術をわかりやすく人に伝えるうえでは、重要なやり方です。

今回はIT技術をわかりやすく伝えたい人のために、ハイプ・サイクルの意味を紹介します。使い方や実践法などを示すので、この記事を通して正しい使い方を学べるでしょう。

1. ハイプ・サイクルとは何か?

まずはハイプ・サイクルの基本的な定義を学びましょう。こちらは説明方法の一種で、ガートナー社が提唱しました。この会社が示す使い方も含めて解説します。

(1) テクノロジーの成り立ちや現在の立ち位置を示す説明方法

ハイプ・サイクルとは、主にITテクノロジーを解説するための方法論です。テクノロジーの成り立ちや現在の立ち位置を、特殊なグラフに当てはめて解説します。

ハイプ・サイクルはグラフの形が決まっています。タテ軸は期待度、ヨコ軸は誕生から現在までの時間です。ある人の年表を幸福度になぞらえて語ることに似ているという考えもあるでしょう。しかしハイプ・サイクルは技術によって期待度と時間の関係はあまり変わりません。

これまでさまざまなIT技術が生まれているので、それぞれのあり方を知るうえでハイプ・サイクルは重要です。

(2) 提唱したガートナー社とは

ハイプ・サイクルを提唱したのはガートナー社で、世界的なリサーチ&アドバイザリー企業です。法人向けにビジネスの問題を解決するアイデアを出したり、それに見合ったツールを提供したりしています。

ガートナー社の目的は、未来を見据えた新しいビジネスのサポートです。これまで世界1万4000以上の法人にサービスを与えてきました。そのなかには大手上場企業も多く、ガートナー社自体もS&P500構成企業に入っています。

現在流行しているIT技術にも、ガートナー社のサポートで発展したものが多いでしょう。

(3) ガートナー社はハイプ・サイクルを次々発表

ハイプ・サイクルを提唱したガートナー社は、現在も自らさまざまな形で具体例を発表しています。具体的な分野としてインフラ、アプリ、ソーシングからさまざまな技術の状況を示しています。

企業人として自社技術をプレゼンする必要があれば、ガートナー社のハイプ・サイクルを参考にしましょう。顧客や他の働く人にわかりやすく伝えるヒントを見出せるかもしれません。

2. ハイプ・サイクルの5段階

ハイプ・サイクルには5つの段階があります。新しい技術が生まれれば黎明期になり、軌道に乗れば流行期に入ります。しかし課題が見つかれば幻滅期に突入です。乗り越えると回復期に入り、最後は安定期を迎えます。それぞれの詳細を見ていきましょう。

(1) 黎明期

新しい技術が生まれれば黎明期に入ります。この時期は「技術の引き金」とも呼び、ニュースや口コミで話題を呼ぶでしょう。

新製品発表やイベントが開かれれば、マスコミが集まります。SNSのトレンドにも上がるかもしれません。その流れでIT技術に興味のある国民が、関心を寄せるでしょう。生活でどのような役に立つかが議論されたり、既存文明との結びつきを期待されたりします。

黎明期は新しい技術が生まれ、どのように知名度を上げるかがカギです。

(2) 流行期

黎明期で成功すれば、第2段階の流行期に入ります。口コミやニュースで取り上げられる機会が多くなり、期待度がもっとも高まるのです。この時期は「過剰期待の頂」とも呼ばれます。

世間的に見ると完全な市民権を得たわけではありません。しかし人によっては実践的に使ってみたり、投資を試みたりするでしょう。

流行期に入ると、新しい技術の進展が楽しみになる人が多くなります。時には非現実的なほどの期待をすることもあるでしょう。ここで成功実績をどれだけ出せるかがポイントです。

(3) 幻滅期

3段階目は幻滅期です。技術の限界を知った人が、距離を取り始めることから「幻滅のくぼ地」とも呼ばれます。流行期に頂点に達した期待度は、この時期で一気に落ちるのが特徴です。

このときメディアも技術への関心を失い、時には問題点を取り上げるネガティブキャンペーンをするでしょう。新技術には限界があるので、開発者や広報はそれとの向き合い方がカギになります。

この時期はメディアや世間の声に惑わされず、問題の解決方法を冷静に導き出すことが賢明でしょう。

(4) 回復期

幻滅期を乗り越えると回復期に入ります。前の段階で一気に落ちた期待度は、流行期ほどではありませんが、緩やかに持ち直します。メディアで技術を取り上げられない状況はあまり変わりませんが、問題を乗り越えると多くの人に使い方を理解してもらえます。このときは「啓蒙の坂」とも呼ばれる段階です。

開発者や広報、営業マンなどは新しい技術について、どのように問題が解決し、現実的に使える方法をプレゼンすべきです。ある程度メリットやデメリットが分かっていれば、話し方次第で顧客に魅力を伝えられるでしょう。

以上から回復期は、開発や問題点の解決を示す絶好の機会です。相手への伝え方も含めて、グループとしての成果を見せるときになります。

(5) 安定期

ハイプ・サイクルの最終段階は安定期です。啓発期からのゆるやかな上昇が止まり、多くの人が客観的に新技術と向き合います。そこで技術の主である会社にとっては、生産や提供体制の確立が重要になります。以上からこの時期は「生産性の台地」と呼ばれるのです。

安定期における生産体制だけでなく、売上の推移も重要になります。この結果次第で一般大衆に受け入れられるか、特定の界隈だけに伝わるマニアックな分野になるかが決まるのです。

3. ハイプ・サイクルの活用法

ハイプ・サイクルは新しい技術の立ち位置を知るうえで重要です。このグラフを参考にすれば、さまざまな実践に使えます。主にビジネスへの採用検討、リスク評価、投資検討になります。それぞれのやり方を見ていきましょう。

(1) ビジネスへの採用検討

新技術に興味があるときは、ハイプ・サイクルからビジネスへの採用を考えましょう。とくに早期採用ならライバル会社を出し抜ける可能性がありますが、ある程度のリスクを受け入れることにもなります。

新しい技術を取り入れるならメリットだけでなく、デメリットとのバランスを考えなければいけません。技術への投資を集中させたからといって、想定どおりの見返りが出るとは限らないからです。

メリットを生かすだけでなく、デメリットを解決する案があれば、採用を考えてもよいでしょう。

(2) リスク評価

ハイプ・サイクルはリスク評価の指標にもなります。新しい技術は幻滅期を乗り越えない限り、信頼性が不十分だからです。

信頼性が足りないうちは、新しい技術に興味があっても穏健な対応に終始する人が多いでしょう。実績不十分となれば慎重な議論が必要だからです。とくにメリットやデメリットのバランスから、費用対効果を想定するのは重要とされます。

新しい技術のリスク評価の基準として、ハイプ・サイクルが参考資料になりえるのです。

(3) 投資検討

起業や投資家から見れば、新技術は魅力的です。ハイプ・サイクルによるそのときの立ち位置から、投資に値するかを考えられるでしょう。

同じ技術でも投資する側によっては印象が変わります。将来性を見込んで一歩を踏み出すか、技術の成熟を待つまで慎重に考えるべきかに分かれるでしょう。

最新テクノロジーは未知の可能性を秘めている一方、どのような形で弊害が生まれるかわかりません。予測不能であることを念頭に置きながら、投資を判断する必要があります。

4. ハイプ・サイクルの深い見方

ハイプ・サイクルというグラフに秘められた深い見方を解説します。流行期がいちばん良く見えますが、実際はそうとは限りません。幻滅期も最悪の事態と決めつけるのは早計です。このように冷静な考え方を覚えれば、新技術との向き合い方がわかります。

(1) 流行期だからもっとも良いとは限らない

最初に大切なのは「流行期だからもっとも良い」とは限らないことです。この時期は多くのサクセスストーリーが宣伝される一方、リスクの議論はおろそかにされやすいといえます。

流行のあとには多くの問題が出る可能性を想定しましょう。技術が好調なときに投資する選択も残されていますが、そのあとの幻滅期以降への備えも大切です。

(2) 幻滅期は衰退のサインではない

幻滅期はもっとも悪いイメージですが、必ずしも衰退のサインとは限りません。このときに問題が解決されれば、定着の可能性が残るからです。

幻滅期には実験や実装の失敗、システム、セキュリティのトラブルなど多くの問題が生まれるかもしれません。しかし健全な企業は問題が起きれば解決に努め、迷惑をかけたユーザーへの補償や支援を打ち出すでしょう。

問題が起きたときは、解決による回復の可能性も想定してください。

(3) 回復・安定期は定着可能性のサイン

回復や安定期に入れば、新技術は世間に定着する可能性をもち始めます。多くの人が新しい技術を冷静に受け止めるようになり、メリットやデメリットをバランスよく考えるからです。

このときに新技術の可能性をメモにまとめ、投資やビジネス採用に値するかを考えましょう。定着の可能性がある程度分かってから、新しい技術に手をつける選択肢もあります。

(4) 同じ技術が名前を変えただけで流行する可能性

IT技術によっては、名前を変えて流行する可能性もあります。たとえば近年話題になっているIoTは、かつて「M2M」という名前でした。動画配信や双方向通信もかつては「マルチメディア」として話題になっています。

名前を変える前は問題があってうまくいかなくても、別の開発者や事業者によって流行する可能性があるのです。以上から10年~20年の長期的な視点で技術が浸透する可能性を考えましょう。

5. ハイプ・サイクルと最新テクノロジーの関係

ハイプ・サイクルと近年流行している最新テクノロジーの関係性をまとめました。ガートナー社の発表や、代表例である5Gから考えましょう。

(1) ガートナー社発表の先進テクノロジーのハイプ・サイクル

ガートナー社は2021年8月に、先進テクノロジーのハイプ・サイクルを明かしています。それによると流行期の頂点に「非代替性トークン」「分散型アイデンティティ」などが立っていることが分かりました。

前者は暗号資産(仮想通貨)で話題のブロックチェーンのデータ単位です。後者はユーザーが属性情報のうち一定量を、他人とシェアできる機能で、新しいアカウント管理に役立ちます。

このように実生活で重要性を出す可能性がある技術が、次々と生まれ、流行期を迎えているのです。

(2) 5Gは過度な期待がピークに

2020年代はスマートフォンやパソコンに使われる「5G」が重要とされますが、2020年9月上旬にガートナー社が流行期にあると発表しました。

5Gは次世代通信規格といわれ、動画やネットアクセスをサクサク進められるメリットがあります。しかし問題点を認識する人は少ないでしょう。

5Gにはセキュリティや高い料金、限定的な通信エリアなどさまざまな課題が指摘されています。今後どのように問題を乗り越えるかがカギでしょう。

6. まとめ

ハイプ・サイクルは新技術の社会的な立ち位置を説明する指標です。期待度の高さや誕生からの時間を示すことで、知名度や発展の度合いを確かめられます。

この指標のおかげでビジネスへの採用やリスク評価、投資の可能性などを検討できるでしょう。新しい技術の将来性や問題点、解決の可能性を占ううえでハイプ・サイクルは重要です。

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