M&A

【2020年版】子会社売却10選

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、世界的に経済が停滞しました。

一方で、日本の上場企業を中心としたM&Aでは、子会社や事業の売却案件が285件となり、2011年以降の過去10年で最多となっています。

今回は上場企業を中心に、主要な子会社売却案件を10件ピックアップ、案件の概要や注目すべきポイントなどを解説します。

1. ソフトバンクグループが英半導体設計「アーム」を米エヌビディアに売却

注目ポイント:2020年の国内企業のM&A最高額

ソフトバンクグループ(SBG)は2020年9月14日、英国の半導体設計大手で子会社のArm(アーム)を、米国の半導体メーカー大手NVIDEA(エヌビディア)に約4.2兆円で売却しました。2020年の国内企業のM&Aでもっとも高額となった案件です。

2016年に約3.3兆円でアームを買収した当時、SBGにおける買収案件の中でもとくに重要なひとつと位置づけられていましたが、投資から約5年での売却となりました。SBGはアームを売却する理由として、巨額の有利子負債を削減する必要があったと説明しています。

エヌビディアとSBGは今回の取引について、「英国、中国、EU(欧州連合)、米国を含む規制当局の承認が必要」としており、取引の完了までは18ヶ月間かかる見通しです。

SBGはアームの全株式を売却する対価として、取引完了時に現金120億ドル、4,430万株のエヌビディア株、さらにアームが一定の業績目標を達成した場合には最大50億ドルの現金またはエヌビディア株を受け取る予定となっています。

2. ソフトバンクグループが米ロボット企業「ボストン・ダイナミクス」を韓国の現代自動車に売却

注目ポイント:商業科で苦戦を強いられるロボティクスのシナジー

続いてもSBGによる傘下企業の売却案件です。

2020年12月、SBGは100%子会社を通じて、米国の高性能ロボットの開発会社である「ボストン・ダイナミクス」の株式の大半を、韓国の自動車大手現代自動車(ヒュンダイ)に売却することを発表しました。

株式割合は約80%がヒュンダイ、残りの約20%がSBGの保有となり、売却額は全株式の価値が総額11億ドル(約1,146億円)と評価して行われます。2021年6月までにクロージングを完了する見込みです。

ヒュンダイは、ロボティクス(ロボット工学)分野が将来の高性能ロボットの開発・商品化や自律走行車、UAM(都市型航空交通)とのシナジー効果に期待できるとしています。

なお、ボストン・ダイナミクスは「ビッグ・ドッグ」をはじめとする、従来のロボットとは一線を画す運動能力を備えたロボットの研究・開発を手がける企業です。2013年には米グーグルの傘下に迎え入れられましたが、ロボットの収益化の見込みが立たず、2018年6月にSBGに売却されています。

3. LIXILグループがホームセンター子会社「LIXILビバ」をアークランドサカモトに売却

注目ポイント:業界再編が進むホームセンター業界のM&A案件

建材・住設機器最大手のLIXILグループは、2020年11月9日に上場子会社でホームセンター中堅の「LIXILビバ」を、新潟県を地盤とする同業のアークランドサカモトに売却しました。

売却額は総額1,085億円にのぼり、2020年の国内企業同士のM&Aとしては最大規模となります。しかし、より注目を集めたのはホームセンター業界で第11位のアークランドサカモトが、代6位のLIXILを買収するという、大が小を飲み込んだ形のM&Aになったことです。

ホームセンター業界は今まさに、業界再編の真っ只中にあります。

最近ではホームセンター中堅「島忠ホームズ」との経営統合・完全子会社化をめぐって、ホームファッション大手のニトリホールディングスとホームセンター大手DCMが繰り広げたTOB(株式公開買い付け)合戦が知られています。

4. 武田薬品工業が製薬子会社「武田コンシューマーヘルスケア」を米投資ファンドに売却

注目ポイント:OTC(=Over The Counter、大衆薬)業界再編のうごき

2020年8月24日、武田薬品工業は完全子会社の「武田コンシューマーヘルスケア」を米投資ファンド大手ブラックストーン・グループに売却すると発表しました。

武田コンシューマーヘルスケアはアリナミンや風邪薬「ベンザ」シリーズといった大衆薬品や健康食品なども手がける、武田薬品工業のOTC子会社です。売却額は総額2,420億円で、2021年3月31日までに売却が完了する予定としています。

医療用医薬品を主力とする製薬会社のOTCからの撤退は、世界的な潮流です。国内の製薬会社の傾向としては、中外製薬やアステラス製薬はすでにOTC事業を手放しており、医療用医薬品の研究開発にかかるコストが上昇する中で、製薬会社の「選択と集中」が迫られています。

5. NECがNECディスプレイソリューションズをシャープに売却

注目ポイント:相互補完関係にある2社の提携に期待

2020年3月25日、NECは100%子会社で業務用ディスプレイ「NTCディスプレイソリューションズ(NDS)」を92億4,000万円でシャープに売却すると発表しました。

欧米市場に展開するNDSと国内市場に強みがあるシャープという2社が連携することで、新しい製品カテゴリーの創出や事業拡大、コストの削減などシナジーに期待が寄せられています。

なお、シャープはNDSの株式を66%取得、株式譲渡が完了した同年11月1日付で「シャープNECディスプレイソリューションズ」へと社名変更しています。

6. 三井物産が傘下の「サンエイ糖化」を昭和産業に売却

注目ポイント:完全子会社化による安定供給体制の強化、生産性向上のシナジーに期待

2020年10月1日、昭和産業は三井物産の傘下で糖化品や乳酸菌を製造・販売する「サンエイ糖化」の発行済全株式を取得、完全子会社化しました。

昭和産業は糖質事業において既存の東西2製造拠点に加え、今回の買収でサンエイ糖化の高い技術力・競争力を取得、国内での安定供給体制を強化して、更なる生産性向上を推進していくようです。

7. 三井E&Sホールディングスが昭和飛行機工業を米ベインキャピタルに売却

注目ポイント:昨今の潮流の一つである「親子上場解消」の一例

親子上場解消とは、親会社が子会社株をすべて売却して親子関係を解消することです。

2020年3月11日、米投資ファンドのベインキャピタルは、三井E&Sホールディングス傘下の昭和飛行機工業を約900億円で完全子会社化しました。

昭和飛行機工業は輸送用機器の製造販売のほか、不動産関連の事業を行っていましたが、今回のM&Aによって上場廃止となります。

親会社であった三井E&Sは主事業の造船が不振で2018年3月期より赤字が続いており、経営再建を目指して大規模なリストラや事業売却を進めている最中でした。昭和飛行機工業の売却もその一環で、三井E&Sは今回の売却で約243億円の売却益を計上しています。

1990年代には上場企業が子会社を上場させる「親子上場」が流行していましたが、近年ではデメリットが目立つようになり、さまざまな業界で親子上場解消が進んでいます。

8. 東芝が物流子会社「東芝ロジスティクス」を物流大手SBSホールディングスに売却

注目ポイント:経営再建の途上にある東芝の子会社売却

2020年11月2日、SBSホールディングスは東芝傘下の物流子会社「東芝ロジスティクス」の株式66.6%を約201億円で取得、買収手続きが完了したと発表しました。

東芝は原子力発電事業の巨額損失などによって経営危機に陥り、大規模なリストラや事業売却などで経営再建を進めている最中です。

なお、東芝ロジスティクスの社名は2021年1月1日付で「SBS東芝ロジスティクス」に変更されています。

9. RVHがエステ「ミュゼプラチナム」と「不二ビューティー」2社をG.Pホールディングに売却

注目ポイント:新型コロナウイルス感染症拡大のリスク回避を目的とした売却

東証2部上場のRVHは2020年4月にグループ売上高の大半を占めていた美容脱毛エステ「ミュゼプラチナム」と「不二ビユーテイ」の2社を、髙野友梨が筆頭株主を務めるG.Pホールディングに売却しました。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、接触機会の多いエステ事業のリスク回避を目的とした売却と見られます。

RVHは元来の主事業であったシステム開発やWEBサービスを残すのみとなり、事業規模は大幅に縮小しています。

10. フェローテックホールディングスが半導体ウェーハの中国子会社を売却

注目ポイント:米中貿易摩擦という政治的イシューが市場に及ぼす影響を見据えた案件

半導体関連メーカーのフェローテックホールディングスは、2020年9月5日に半導体ウェーハの中核的な子会社を同国での株式上場を目指すことを前提に、株式の6割を地方政府および民間の当敷金等へ売却すると発表しました。

今回の売却の背景には、昨今の米中貿易摩擦の激化により、中国で半導体の国産化の流れが急速に高まっているという事情がうかがえます。

11. まとめ

2020年の子会社売却のM&A案件の中から、注目すべき10の案件を選定、解説しました。

今回は大型案件を中心にピックアップしましたが、案件の大小に関わらず、今後も業界再編やニューノーマルを見据えたM&Aが加速していくと予想されます。

M&Aを検討中の方や、M&Aに関するご相談のある方は、お気軽に弊社パラダイムシフトまでお問い合わせください。

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