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子会社売却の方法は? 注意点を解説!

子会社を売却する場合、株式譲渡による方法が一般的です。
株式譲渡はもちろんのこと、それ以外の子会社売却の手法や実務上の注意点について具体事例を交えながら解説していきます。

1.子会社売却のメリット・デメリット

子会社売却の主なメリットは以下のとおりです。

  • 手元資金を増やす
  • 不採算事業の切り離し、成長事業へ経営資源を集中させる
  • 管理子会社を減少させることによる管理コストの削減

子会社売却の主なデメリットは以下のとおりです。

  • 売却後、子会社から配当金などの将来キャッシュフローが享受できない
  • 親会社の名前が付いているケースなど、子会社売却することでブランド価値を落とすことがある
  • 売却時の相手探しや条件交渉に時間がかかる場合がある

子会社株式を売却する前に、メリット・デメリットを頭に入れ、定量的・定性的に影響を分析することが重要です。

2.子会社売却の方法

子会社売却の方法は、以下の3つの方法に分類することができます。

(1)株式譲渡

最もシンプルな子会社売却の方法は株式譲渡です。株式譲渡であれば、会社の全部売却でなく一部売却をすることもできます。必要な現金の分だけ子会社株式の持分を売却することができるのです。

ア. 子会社株式の全部譲渡

通常、子会社売却する場合、自社の保有する子会社株式を全て売却するのが一般的です。買い手が決まっていない場合は、M&A仲介会社やFAに相談してプロジェクトを始めるのが良いでしょう。

買い手候補が決まった場合、通常のM&Aプロセスと同様に、基本合意書、デューデリジェンス(買収監査)、最終契約書、クロージングと進んでいきます。

イ. 子会社株式の一部譲渡

株式譲渡であれば子会社株式の全部ではなく、一部譲渡することも簡単にできます。例えば、連結子会社であるA社の株式を70%持っている場合、連結の範囲内にとどめる50.1%まで、約20%分売却することができます。

親子上場しているグループ企業などは、この手法を用いて、子会社株式の一部を売却し、投資回収した資金を別の事業に投資することも珍しくありません。上場子会社株式を売却する際は、インサイダー規制や東証の開示ルールなどは留意が必要です。

(2)会社分割

子会社として運営していないが、事業を切り離して売却したい場合、会社分割を利用することができます。まず、新設分割により新法人に切り離したい事業を承継させ、子会社化します。その後、子会社株式を第三者に譲渡するという手法です。

買い手は新設された子会社の株式を譲り受けることとなるため、簿外負債のリスクがない、デューデリジェンスにかける時間を削減できるといったメリットがあります。一方、会社分割は、組織再編上の行為であるため手続が会社法上厳格に定められており、新設分割の手続だけで最低でも2カ月程度かかる点がデメリットと言えます。

新設分割の後は、(1)株式譲渡と同様の手続が必要になります。分割の手続が入る分、手間になるため、新規事業を行う際は子会社を設立して事業運営しておくと売却の際の手続が簡単になります。

(3) 事業譲渡

会社分割と同じようなスキームで事業譲渡も利用することができます。最初に新しい会社を設立し子会社として売却したい事業だけを事業譲渡するという手法です。

会社分割と異なり、事業譲渡は商取引となるため、引き継ぐべき契約や許認可の個別同意が必要な点に留意が必要です。また、会社分割とは異なり事業譲渡は消費税の課税対象にもなります。

事業譲渡の後は、(1)株式譲渡と同様の手続を行い子会社株式売却が完了します。

3.子会社売却の会計処理

子会社売却を行った場合、子会社株式の簿価と売却金額の差額を子会社株式売却損益として処理します。子会社株式の簿価を2億円、売却額を3億円とした際の仕訳は以下のとおりです。

現預金3億円 / 子会社株式2億円
        → 子会社株式売却益1億円

子会社株式売却損益は、臨時的な費用・収益であるため、損益計算書では特別損益に表示されます。

また、子会社売却前に、子会社株式評価損を計上している場合、評価損を反映した後の簿価にて、子会社売却損益を計算することとなります。2019年に子会社株式評価損の計上、2020年に子会社株式売却を実行した場合の仕訳は以下のとおりです。

(1)2019年の仕訳
子会社株式評価損1億円 / 子会社株式1億円

(2)2020年の仕訳
現預金3億円 / 子会社株式1億円
        → 子会社株式売却益2億円

子会社株式評価損は、子会社株式売却損益と同様に、臨時的な費用であるため特別損失に表示されます。

4.子会社売却の税務処理

子会社売却の際に、益金・損金を認識することになります。益金が出た場合は、その分課税所得が増えるため、実行税率である約30%の法人税等を納める必要があります。

注意すべきパターンは、会計上において子会社株式評価損を計上している場合です。子会社株式評価損は、会計上は特別損失ですが、税法上は損金とはなりません。

いくら多額の子会社株式評価損を計上したとしても、その年度の確定申告において法人税等に対する影響はありません。あくまでも子会社株式を売却した際に、法人税等に影響することに留意しておきましょう。

5.子会社売却の実務上の注意点

子会社株式を売却するにあたり、2つの注意点を解説していきます。

(1) グループ内再編時の注意点

グループ内再編に伴い、グループ内で子会社株式を売却する場合、合理的な取引であるかどうかに留意する必要があります。

A社は親会社で、B社、C社の株式を100%保有しているケースを考えます。今回、グループ内再編を考えており、A社が保有するB社株式をC社に売却する場合です。
この時、株価によってはA社に株式売却損が計上され、親会社であるA社の課税所得を減少させる節税効果があります。

グループ内再編であるため、株価はある程度自由に決められますが、売却や価格の合理性がない場合、意図的に課税を回避させる行為として、株式売却損が損金として認められない場合があります。

グループ内で株式譲渡を行う際は、事前に顧問税理士などに必ず相談するようにしましょう。

(2)子会社株式売却のタイミング

子会社売却を行う際は、税務のスケジューリングをあらかじめ立てておく必要があります。
多額の子会社売却益が出る場合、年度決算が赤字の年に売却を実行することで、子会社株式売却による法人税等を減らすことができます。

反対に、多額の子会社売却損が出る場合には、年度決算が大きな黒字が出ている年に実行できれば節税効果が見込めます。

売却の実行までには買い手探し、条件交渉、デューデリジェンス、契約締結といった多くのプロセスが必要であるため、余裕のある計画を立てておく必要があります。

6.子会社売却の事例紹介

子会社売却の事例を2つ紹介していきます。

(1)RIZAPが子会社であるエス・ワイ・エス、北斗印刷の2社を売却

RIZAPは2020年12月28日、100%連結子会社であるエス・ワイ・エス、北斗印刷の2社を、株式会社シスコに売却する事を発表しました。

RIZAPは積極的にM&Aを進めて成長してきましたが、シナジーが見込めない分野の買収も多く、現在は構造改革に伴い連結子会社を売却することが多くなっています。

2社の合計売却価格は13億7,700万円で、持株すべてを売却します。子会社売却のスキームは株式譲渡です。

なお、エス・ワイ・エスと北斗印刷の2020年3月期の業績は以下のとおりです。
エス・ワイ・エス:売上高37億6,700万円、営業利益▲1億9百万円
北斗印刷:売上高18億1,200万円、営業利益6,000万円

出典:
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2928/tdnet/1916462/00.pdf

(2)セコムが子会社であるセコムホームライフとホームライフ管理を売却

2020年10月26日、セコムは100%連結子会社であるセコムホームライフとセコムホームライフの子会社であるホームライフ管理を、穴吹興産株式会社に売却することを発表しました。

セコムホームライフとホームライフ管理はマンションの開発・提供を行っている不動産会社です。同じ不動産事業者である穴吹興産に売却することがセコムホームライフとホームライフ管理の発展のために最良と判断した結果の売却とのことです。

売却価格は守秘義務に基づき非開示、2社の持株すべてを売却します。子会社売却のスキームは株式譲渡です。

なお、2020年3月期のセコムホームライフとホームライフを合算した業績は以下のとおりです。
売上高294億1,400万円、営業利益10億4,600万円

出典:
https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/osirase20201026.pdf

7.まとめ

今回は子会社売却について、メリット・デメリット、子会社売却の手法、会計・税務処理、実務上の注意点と事例を見てきました。

子会社売却の手法は基本的には株式譲渡となり、子会社の一部売却、全部売却の2パターンがあります。

RIZAPとセコムの子会社売却の事例ではどちらも子会社の全部売却のパターンでした。ノンコア部門の売却事例となっており、コロナの影響で多くの会社がシナジーの見込めない子会社を売却するケースが増えてきています。

また、子会社売却を行う際は、グループ内売却の場合と税務スケジュールを事前に確認しておく旨の解説をしてきました。2021年もまだまだコロナの影響により、子会社売却の事例が増加することが考えられます。

いつ売却したいかのゴールを設定し、逆算でスケジュールを引き、余裕をもってM&A仲介会社などに早めに相談することが重要です。

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