最近HRテックという言葉をよく聞きますよね。どんな意味があるのかはっきりと分かっている人は少ないです。
なんとなくて理解しているHRテックと、タレントマネジメントに関するSaaSについて今回は解説していきます。
1 HRテックとは?
HRテックのHRとは、Human Resourceテクノロジーの略です。Human Resouceとは人的資源のことで、人的資源によるテクノロジーのことをいいます。
具体的にはAIを使った人工知能やクラウドやビックデータ分析を基にして、人事領域が抱える問題を解決します。
人が考えても解決しない問題に対して、HRテックを使って最適な答えを見つけます。
(1)これまでの人事管理システム
これまでのITペインターであるERPのSAPとOracleとは、まったく違います。SAPとは、ドイツに本社があるヨーロッパ最大のソフトウエア開発会社のパッケージ商品のことです。
日本法人SAPジャパンが1992年から発足し、多くの企業で取り入れられています。
ERPとはEnterprise Resource Planningの略で、企業資源計画のことをいいます。
企業に関する人、モノ、お金といった経営資源の情報を一時的に管理して、営業を効率よくすすめたり、人材の最適な働き場所を探したりします。
一方、Oracleとは正式には関係データベース管理システムや、リレーショナルデータベースマネジメントシステムのことです。各データの関係性を把握できるのですが、複雑な比較や多方面からの切り取りはできません。
こうしたシステムはHRMSと呼ばれていて、日本よりもアメリカで一般的に実施されています。アメリカでは日本よりも転職や離職、人事異動が多いからです。
(2)HRテックの優れているところ
これまでの人事管理システムと比べて、HRテックの優れているところは感覚による人事管理から、客観的なデータに基づいて人事異動を決定し、最適な人事を実現します。
日本の企業では長年人事を担当してきた社員による経験から来る感覚や、人材の印象や普段の仕事ぶりから勘で判断することが多かったようです。「この従業員は普段こう働いるからこのポジションが合っているだろう」と考えるといった流れです。
しかし、働く環境を徹底的に整えてからスタートを切れるようになった現代の企業で、スタートの段階で失敗してしまう企業も多いです。
その反面でトップクラスの実力があるプログラマーひとりがいれば、会社全体を変えてしまう可能性もあります。
これまで以上に人事を慎重に客観的に判断する必要性が出てきており、それにHRテックが欠かせなくなっているのです。
2 タレントマネジメントに関するSaaS
HRテックが活躍するのはタレントマネジメントです。タレントマネジメントとは、全従業員のスキルを把握・比較し、プロフィールを分析することで客観的な評価を導き出し、人事管理することです。
従来の日本企業でよくある人事部の直感ではなく、本人のこれまでの評価をはじめとするデータを基に人事戦略を練ります。人事に関する情報を一カ所に集めて、可視化することで企業に大きなメリットが出ます。
人事を完全に人の手で行うと、企業全体に優れた人材がいないか確認が行き届かないこともありますし、重要ポジションの人事の際に同じような候補者ばかりになってしまうことが多いです。
そのタレントマネジメントに使うシステムが、すでに多くの企業が導入しているタレントマネジメントSaaSなのです。
(1)タレントマネジメントSaaSを活かす場面
タレントマネジメントSaaSは、人事においてどのような場面で具体的に活かす必要があるのでしょうか?具体的には以下のような場面です。
ア 人事情報を一括管理する
Excelで過去の人事評価や移動履歴を管理していると、データごとに違うシートになります。一人の人に関する情報が散在していると比較しにくいので、まとめて管理すると楽です。このときにタレントマネジメントSaaSが役に立ちます。
イ 上司の評価以外で決める
人事は日本の企業の場合、ほとんど上司の評価で判断します。毎日の業務内容を確認し、上司視点ではなく、客観的な視点での評価を参考にしておくことで冷静な人事ができます。
上司視点のみでの評価では、見落としている従業員の長所や特技、欠点なども把握できるので、より適切な配置に人材を置けます。
ウ 会社全体の中から適切な後継者・リーダーを抜擢する
会社全体の中から適切な後継者やリーダーを抜擢することで、企業をさらに良い方向へ持っていくことができます。
これまでの後継者の選び方は上層部が知っている優れた人材の中から後継者を選ぶことが多かったため、一部の社員からのみ選んでいました。しかし、タレントマネジメントSaaSを活用すれば、会社全体から優秀な人を見つけられます。
エ 人事の人手不足にも最適
人事部の人手不足によって人事に時間や手間をかけていられない場合も、タレントマネジメントSaaSを活用するのがお薦めです。しかし、タレントマネジメントSaaSはこまめに更新しないといけないので、こちらの手間や人材は必要になります。
システムを導入すれば必ずしも負担が減るというわけではありません。ただ専用ツールを使うことで簡単に導入できます。
3 タレントマネジメントに関するSaaSの具体例
ここからは、タレントマネジメントSaaSの具体的な導入例を紹介していきます。情報共有の円滑化ができたり、アンケート機能で従業員視点の企業へ成長したりと、成果を得ている会社があります。
(1) 情報共有の円滑化ができた
従業員数1000名未満の情報通信企業の実例では、すべての従業員を平等に見るために導入しました。上司と部下が1on1で対話する機会を設けており、その記録のためにシステムを入れて、誰が伸び悩んでいるかを把握する目的で取り入れました。
結果的に全社員がIDを導入しているので、指導を改善したり、人事異動の際に上司同士の連絡がスムーズになったというメリットがありました。人事を決める時には情報をすぐに出せる上に、顔を見ながら人事を決められます。
しかし、導入してもどの従業員が伸び悩んでいるかという部分までは把握しきれません。日常的な仕事への評価までなので、本人の悩みまでは把握できないのです。
(2) アンケート機能で従業員視点の企業へ
ある広告代理店ではタレントマネジメントSaaSのアンケート機能を使って、満足度を把握しています。結果的に社員の転職を防止することもできるので、離職率低下につながっています。
また会社MVPの授賞式で社員が分からずに困ることがなくなり、Excelファンが散列していたため、人事データを一括で管理できるようになったのです。
また企業の改善点も把握できるようになりました。
(3) 従業員のパフォーマンス分析ができた
ある従業員100名未満の情報通信企業では、タレントパレットを利用しています。人材抜擢をするためにも、パフォーマンス力が高い人はどのような人かを知ることが大切です。
導入後、社員情報や人事考課シートといった全体的な情報、研修履歴をはじめとする個別情報を一元的に蓄積できるようになりました。人事のシミュレーションの時、円滑に検討できています。
それまでは人事を実際に動かした場合、だれがどのような働きをするか人件費の変動も考えつつ、何度も違うパターンで検討していました。その手間を省けたのです。
このように導入した企業はメリットを感じています。しかしタレントマネジメントSaaSを取り入れればよくなるだろうと思っていた部分が、まったく改善されなかった実例もあります。
商品に改善してほしいことに関する機能があるか、事前に確認しておきましょう。
4 タレントマネジメントSaaSの選び方
さまざまな企業が導入しているタレントマネジメントSaaSは、どのように選べばいいのか知っておきましょう。
(1)機能で比較する
便利な機能がたくさんあるのが特徴ですが、すべてのツールにすべての機能があるわけではないので、企業に必要な機能がついているか確認してから取り入れましょう。
オーバースペックなツールを選んでも高額なだけで、使わない機能ばかりになってしまいます。企業にちょうどいい機能のものを選んでください。
(2)使いやすさで比較する
操作性や使いやすさは、頻繁に行う更新を手軽にします。使いやすさで選ぶ場合は人によって感覚が違うことに留意します。タレントマネジメントSaaSは人事部だけではなく、経営者、現場の責任者など、さまざまな世代、年齢、性別の人が触れます。
シンプルで分かりやすく、世代を問わず快適に使えるものを選びましょう。
(3)値段を知っておく
タレントマネジメントSaaSは商品によって値段が異なります。クラウド型は初期費用が安い分、月額料金がかかります。オンプレミス型は一度料金を支払えばあとは費用がかかりませんが、初期費用が高いです。
費用をかけたくない場合はクラウド型にしましょう。
無料から高額なものまであります。月額500円、30,000円、50,000円など様々です。
(4)セキュリティもチェックする
タレントマネジメントSaaSは、すべての社員のデータを保管・確認します。セキュリティがしっかりしているものを選ばないと、企業全体の個人情報が流失してしまうかもしれません。
セキュリティだけではなく、購入して使い始めてから操作について、機能についてサポートはないのか確認しておきましょう。
使い方のサポート体制や、アップデートでどんな機能が追加するかなど分からない点を質問できるセンターがないと、運営していく上で不便です。
(5)既存のシステムと連携できるか
タレントマネジメントSaaSは他のツールと連携する機能もあります。これまで人事管理に使っていたツールと連携させることができるものを選べば、これまでのデータを移行しやすくなります。
状況に応じて、これまでのツールで情報を一部管理し、それをタレントマネジメントSaaSに流すという方法もできます。一から人事データを入力し直すのはとても大変なので、連携できるかどうかは重要です。
5 関連記事
■不動産テックとは? 実際のサービスやM&A事例の紹介、会社を買収・売却するメリット・リスクなど
こちらの記事では、不動産テックとは何か、その概要が掴めるように実際のサービスなどを大きく3つのジャンルに分けて説明しております。
また不動産テックにまつわるM&Aの事例や、会社を買収・売却するメリット・リスク、そしてパラダイムシフトが実際に担当した成功事例などについても紹介しております。
■今注目のフェムテック|そのプレイヤーや将来性について解説します
今注目を集めているフェムテックについて、用語の解説だけでなく、そのサービスや今後の成長の可能性についても、詳しくお伝えします。