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イスラエルや東欧諸国はIT先進国! その理由や日本に与える影響は?

イスラエル、ウクライナ、ベラルーシ。こういった国々の名前を聞いてもなかなかピンと来ないという人も多いことでしょう。いわゆる先進国に名を連ねるような国ではありません。

これらの国々が属する地域はヨーロッパ。しかし、イギリスやフランスといった先進国が多い西ヨーロッパ(西欧)ではなく、アジアと近い東ヨーロッパ(東欧)です。東欧地域の賃金水準は西欧の5分の1程度とも言われており、発展はやや遅れているのが実情です。

しかし、実は近年、こうした東欧の国々が「IT」の分野で注目されているのです。この記事では、東欧地域におけるIT発展の実情や日本に与える影響などについて、考察していきたいと思います。

1. イスラエルや東欧諸国の近年の経済状況

まずは、今回注目する国々の近年の経済状況について、整理しておきましょう。

(1) イスラエル

近年のイスラエルは、3~4%台の成長率を維持し、堅実な経済成長を続けています。
特に注目すべきは、起業数の多さ。毎年800~1000件程度の規模でスタートアップが誕生しては、GoogleやApple、Microsoftといったテクノロジー分野の巨大企業が買収するという流れが相次いでいるのです。
建国からわずか70年で「イスラエル=起業国家」というイメージは完全に定着しました。

(2) ポーランド

ポーランドは5%台の高い成長率を記録し続けています。失業率が低下傾向にあることも追い風に、個人消費が活発化し、経済を下支えするという構造です。
まだ外資系企業の進出が少ないエリアにおいては、法人税が優遇される投資優遇制度を設けられています。そのため、日系企業も含めて世界各地から、様々な企業がポーランド進出を果たしているのです。

(3) ハンガリー

ハンガリーも5%に迫る成長率を記録し続け、順調に経済成長を果たし、またEU全体の経済の牽引役としても注目されている存在です。失業率が低下していることも受け、人手不足が顕在化し、それが個々の労働者の賃金上昇にも反映され始めています。
日系企業の進出も盛んで、最近では自動車産業の工場自動化なども活発に行われています。

(4) 東欧諸国は経済成長を続けている

紹介してきたように、西欧諸国との格差は否めないものの、東欧諸国は急速に経済成長を進めています。では何の産業が主に、東欧諸国の成長を牽引しているのか。

それが、IT産業なのです。

2. イスラエルや東欧諸国のIT発展状況

では、イスラエルや東欧諸国において、どれだけITが発展しているのか、見てみましょう。

(1) イスラエル

イスラエルはアメリカとともに、世界のIT産業を牽引する存在として注目されています。世界経済フォーラム(WEF)の国際競争力ランキングのイノベーション分野では、世界で第4位にランクイン。5位だった日本よりも上位に位置しているのです。

2015年には農業テクノロジーの分野で、全世界の総投資額は46億ドルだったのですが、イスラエル一国でその1割以上にあたる5.5億ドルの額を投資しました。その結果、ITの力により効率的に農業を行える条件が整い、天候や土地など恵まれない環境下においても、高い自給率を記録することができるようになっているのです。

このほか、毎年スタートアップもどんどん誕生し、新たなイノベーションが生み出されています。グーグルのサジェスト機能なども、イスラエル発で誕生しました。

また、近年注目されているサイバーセキュリティの分野でも、イスラエルは世界のトップを走ります。日本も、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおけるサイバーセキュリティの強化のため、イスラエルと協力することが決まりました。

(2) ベラルーシ

ベラルーシは、アメリカのシリコンバレーになぞらえて「東欧のシリコンバレー」と言われています。

特にICT分野での成長が急速で、GDP全体に占めるICT産業の割合は
• 2010年:2.1%
• 2018年:6.1%
と急速に拡大をしているのです。ICT関連の輸出額も、2019年には2000億円を超えています。

オンラインゲームのWorld of Tanksを開発したWargaming社は、1998年に首都ミンスクで創業。現在はモバイルやeスポーツの分野にも事業を拡大し、国内の超大手企業にまで成長しました。World of Tanksは世界でも爆発的な人気を博し、2011年にはサーバー上で同時にプレイする人数として、ギネス記録にも認定されたゲームです。

このほかにも多数のITスタートアップが、ベラルーシ国内には存在しています。

(3) その他東欧諸国

バルト3国の1つであるエストニアは、IT立国化を国策として推進しています。2005年には選挙において自宅から投票できるインターネット投票を実施、その他にも、行政サービス、教育、医療などあらゆる分野におけるIT化を進めています。日本人にお馴染みのメッセンジャーアプリ「Skype」が誕生したのも、エストニアです。

ウクライナも、IT産業が盛んな国です。国内には2000ものIT企業が集積し、ソフトウェア開発は国の一大産業となっています。開発されたソフトウェアの80%以上が、MicrosoftやGoogleなどの世界的な巨大企業に輸出されているのです。

ハンガリーは、EU内でも特に自動車産業の盛んな国として有名です。日本のスズキや自動車部品メーカーのデンソーなども、ハンガリーに進出し、大きな成功を収めています。中でも特に力を入れているのが、自動車とIT分野の融合です。最近では日本でも注目度の高い自動運転や次世代通信規格である5Gの開発も、盛んに進められています。

3. イスラエルや東欧諸国でITが発展している理由

イスラエルや東欧諸国において、なぜこのようにITが発展しているのでしょうか。

(1) 質の高い教育体制を整備

IT産業が盛んな背景には、それを担うための人材が積極的に育成されているということがあります。各国とも、工学系の大学環境の整備に力を入れており、毎年優秀なエンジニアが多数輩出されるのです。

また、日本でも2020年より小学生のプログラミング教育が必修化となりますが、東欧諸国ではすでに導入していました。

イスラエルでは、2000年にコンピューターサイエンス教師センターが設立され、高校でのプログラミング教育が必須化されました。最低でも90時間、難易度の高いコースならば450時間の学習を行う必要があり、数多くのエンジニアが育っているのです。

(2) 国策としてITを推進

IT産業が盛んな各国は、外資系企業を中心に法人税での優遇を図るという制度を設けることで、積極的な誘致を図っています。そして、外資系企業が進出してくると、現地人が雇用され、技術やスキルを習得、向上させていくことができるのです。

例えばベラルーシでは、2005年にソフトウェア産業の強化のために特別法を制定し、首都のミンスク郊外にハイテクパークを設立しました。このハイテクパークに入居した企業は、税制面で数々の優遇を受けることができるなど、多くのメリットを享受することができます。

また、イスラエルでは高校卒業後、男子は3年間、女子は19~24か月の徴兵義務があります。この徴兵期間中に、最先端の軍の技術に触れられることもIT推進の大きな一助となっているのです。

(3) 挑戦しやすい社会環境

IT産業がさかんな国々は、総じて多くのスタートアップが誕生します。つまり、誰もが企業をしやすい社会環境があるということです。

例えばイスラエルでは、起業しやすい体制のために、GDPの4~5%の予算を割き、投資をしています。そのおかげで、誰もが失敗を恐れずに起業するという土壌が整えられています。

また、事業に成功すると、GoogleやMicrosoftを始めとする外資系企業に売却し、得た資金を元にして再び次の研究・開発を進めていくというプロセスが一般的です。このサイクルが有効に機能しているからこそ、次々にスタートアップが誕生していくのです。

4. イスラエルや東欧諸国のIT発展が日本に与える影響

イスラエルや東欧諸国においてITがどんどん発展していくことで、日本にはどんな影響があるのでしょうか。

(1) 最先端のITサービスを享受できる

IT発展のメリットは、国境を越え、世界中のどこにいても享受することができます。日本からは遠く離れた東欧地域であっても、そこで生まれたイノベーションは、我々の生活にも直接的に影響してくるのです。

ITが発展すればするほど、どんどん我々日本人の生活も便利で豊かなものになっていくことが期待されます。

(2) 日系企業の進出が増える

現状、イスラエルや東欧諸国に日系企業はそれほど進出していません。やはり、中国や東南アジアの国々が中心です。

しかし、ビジネス拡大において、潜在的に大きなチャンスがあると考えられるので、今後はイスラエルや東欧諸国への日系企業の進出も増えていくでしょう。する、従業員が現地へと派遣される可能性はあります。

(3) 優秀な人材が流出する

日本は諸外国に比べて、起業がさかんな国ではありません。会社に雇われて働くという生き方が一般的です。

しかしITが発展している国々においては、「スタートアップがどんどん誕生する」という特徴があります。それを支えるための社会システムもしっかりと整備されているのです。

実際に成功事例が多数ありますので、野心に溢れる優秀な人材が、日本を離れてイスラエルや東欧諸国へと拠点を移すという可能性もあります。また、優秀なエンジニアを養成するための教育体制も整備されているので、大学生や高校生といったさらに若い人材が、早い段階で日本を離れてしまうこともあり得るのです。

ただでさえ日本は物価が高く、それだけで生きづらさを感じる人もいます。一方、イスラエルや東欧諸国ならば物価は比較的安い一方で、エンジニアならば高い給料も期待できます。生活水準の向上という点で見ても、日本からの人材流出は十分にあり得るでしょう。

(4) 国際競争力が低下する

上記で説明した通り、日本からITが発展している国々へと人材が流出する可能性があります。また、海外の優秀な人材も、日本を選ばなくなるようになるかもしれません。すると、日本の産業は衰退し、国際競争力が低下する懸念があります。そして、さらに人材が流出、といった形で負のスパイラルに突入していくということも十分に考えられます。

(5) エンジニア教育が強化される

世界の情勢を見ても、今後はIT分野が世界の一大産業となります。そのため、その担い手を育成することが国家全体の課題になるのは間違いありません。日本でも、2020年から小学校におけるプログラミング教育が必修化となりました。しかし、それだけでは世界に追いつけないと判断した場合には、より充実した教育体制を整えるでしょう。

どれだけのコストを割くのか、現場の教員の負担はどうするのか、といったように議論すべきことは枚挙に暇がありません。しかし、この急速な時代の流れにおいて、悠長に物事を考えていられる場合でもないのです。

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