M&A

「TOKYO PRO Market市場」への上場の仕方と他の市場との比較

株式会社日本取引所グループ(本社・東京都中央区)が開設している株式市場「TOKYO PRO Market」(以下、東京プロマーケット)について解説します。

上場を目指す企業の経営者にとっての、東京プロマーケットの最大の魅力は、上場のしやすさでしょう。
東京プロマーケットの上場基準は、東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの上場基準よりはるかに緩いといえます。
ただ、東京プロマーケットはプロ投資家しか参加できず、一般投資家は参加できないため、想定していたほどの資金を調達できないかもしれません。

会社の規模が大きくなる前に上場を果たしたいと考えている経営者は、東京プロマーケットのメリットとデメリットをしっかり把握して、上場のタイミングを計りたいものです。

1 東京プロマーケットの特徴と上場するメリット

東京プロマーケットは、2009年6月に開設されたばかりの、東京証券取引所(以下、東証)の新しい市場です。コンセプトは、「日本やアジアにおける成長力のある企業に新たな資金調達の場と他市場にないメリットを提供する」です(*1)。
このコンセプトをわかりやすく言い換えると、上場基準が緩く、準備する書類が少なく、上場までにかかる時間とコストを削減できる市場、となります(*2)。

東京プロマーケットの特徴のほとんどは、上場を目指している企業にとってメリットになるでしょう。

*1:https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/index.html
*2:https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/tvdivq0000007pqu-att/TokyoProMarket_201912.pdf

(1)上場基準が緩い

東京プロマーケットの最大の特徴は、上場基準の緩さです。上場するためにクリアしなければならない数値基準はなく、東証からJ-Adviserになることを委託された証券会社が、上場を希望する企業の上場適格性要件を判定するだけです。
また、内部統制報告書の提示も、四半期ごとの決算開示義務もありません。

例えばマザーズの場合、株主数200人以上、流通株式数2,000単位以上、流通株式時価総額5億円以上、時価総額10億円以上、内部統制報告書の提出義務、四半期ごとの決算開示義務などの基準があります。
東証2部、そして1部になると、さらに厳しい数値基準が課されます。

東京プロマーケットの上場基準に株主数の規定がないということは、株主がオーナー一族だけでも上場できるということです。

(2)上場スピードが速い、最短で起業2年目で可能

東京プロマーケットなら、監査証明は1期分で足ります。すなわち、最短で起業して2年目で上場することができます。
一方、例えば東証マザーズに上場するには、最低でも会社設立から2年は経過していなければなりません。上場審査に2期分(2年分)の監査証明が必要になるからです。

上場申請から承認までの期間も、東京プロマーケットなら10営業日ですが、東証1部や2部などは2、3カ月かかります(*3)。

*3:https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/securities/20200605_021583.pdf

(3)上場コストも、上場維持コストも安い

東京プロマーケットへの上場コストは、準備に1年かけた場合、大体2,000万~3,000万円ほどとされています。
マザーズなどへの上場コストは、1年間5,000万円ほどといわれています。そしてマザーズなどの上場準備は数年かかることが珍しくありません。その場合「5,000万円×準備年数」の上場コストが発生することになります。準備に2年をかけたら、1億円になります。

上場コストには、上場審査料、新規上場料、公開申請書類の作成費、監査法人や弁護士などへの報酬などが含まれます。

そして、上場を維持するにも多額のコストが発生します。これもマザーズなどは年5,000万円ほどかかりますが、東京プロマーケットならそれより安く済みます。
例えば、決算を1年に一度行えばよい東京プロマーケット上場企業の会計コストは、四半期に一度行わなければならないマザーズ上場企業の4分の1で済むわけです。

(4)「東証上場企業」になることができる

上場する基準が緩くても、東証が運営している東京プロマーケットに上場していれば、その企業は「東証上場企業」です。
東京プロマーケットに上場する最大のメリットは「東証に上場している」という事実でしょう。

「東証に上場している」という事実は、次の副産物を生みます(*2)。

  • 企業の知名度と信用度が向上する
  • 優秀な人材を確保しやすくなる
  • 従業員に「上場企業で働いている」という意識が芽生え、士気が高まる
  • 業界内のライバル会社に差をつけることができる
  • 社内の管理体制の整備が進む

1つずつみていきましょう。

上場している企業としていない企業では、知名度と信用度が段違いです。上場先が「東証」であれば、どちらもさらに強固になります。

そして優秀な生徒や学生の多くは、就職先は上場企業のなかから選びたいと思うでしょう。また、生徒や学生が2社から内定をもらったら、保護者は「上場している会社にしなさい」とアドバイスするかもしれません。

「上場企業で働いているという意識」ですが、東京プロマーケットに上場すれば、社員の名刺に東証のマークを印刷することができます。社員たちは「上場」の名に恥じない働きをしてくれるはずです。

例えば、ある業界に同じ年に開設した2つの会社があった場合、先に上場したほうが「勝った」と評価されるはずです。業界で生き残るためには、ライバル会社に勝ち続けなければなりません。

「社内の管理体制の整備が進む」については、次の章で詳しく掘り下げていきます。

(5)社内の管理体制の整備が進む

上場してない企業の社内管理体制が「なあなあに」なっているというわけではありませんが、それほど整備されていなくても、非上場企業であれば許される部分があります。 しかし、上場するには、そして上場を維持するには、社内管理体制が「必ず」しっかりしていなければなりません。

上場基準が緩いとはいえ、東京プロマーケットに上場するには、J-Adviserと呼ばれる証券会社が、上場を希望する企業の上場適格性を厳しくチェックします。
J-Adviserは上場後も、その企業の上場適格性の維持や情報開示、資金調達などを支援し続けます。

上場企業のあるべき姿を熟知している証券会社の担当者から「チェック」を受けることは、社内管理体制整備のコンサルティングを受けるようなものです。証券会社の社員も、自分が担当する企業を上場させようと一生懸命「指導」「指摘」するでしょう。上場に備えて、決算のやり方を大幅に見直すこともあります。
こうした取り組みはすべて、より大きな企業になるための準備になります。

3 東京プロマーケットに上場するデメリット

続いて、東京プロマーケットに上場するデメリットを紹介します。 どの市場であろうと、上場することは、その企業に大きなメリットをもたらすはずなので、ここで紹介するデメリットは、他市場よりも東京プロマーケットが劣っている点となります。

(1)プロ投資家しか東京プロマーケットに参加できない

東京プロマーケットで取引ができるのは、金融機関などの適格機関投資家や独立行政法人、金融商品取引所に上場されている株券の発行会社である会社などの「プロ投資家」だけです。
プロ投資家の正式名称は「特定投資家」といいます。 個人投資家も3億円以上の純資産を持っていれば、申し出によってプロ投資家になることができます(*4)。

プロ投資家に対し、いわゆる「普通の個人投資家」たちのことを、一般投資家と呼びます。

プロ投資家しか参加できない東京プロマーケットは、一般の人の知名度が高くありません。テレビや新聞の経済ニュースでも、東京プロマーケットについて報じられることはあまりありません。

*4:https://www.live-sec.co.jp/stock/outline/professional.htm

(2)資金調達額が想定を下回るかもしれない

マザーズや東証2部の新規公開株は、プロ投資家も一般投資家も「ものすごく」注目します。上場前から知名度が高い企業なら、株式公開によって莫大な金額の資金や創業者利益が得られるでしょう。
しかし東京プロマーケットに上場しても、そこまで多額の資金は調達できないかもしれません。

東京プロマーケットは、成長力のある企業に新たな資金調達の場を提供することを目的にした市場ですが、シンクタンクのなかには、「上場企業数や時価総額を見ると、その目的を十分に果たせているとまではいいにく」と指摘するところもあります(*3)。

東京プロマーケットに上場した企業は2020年6月24日現在37社で、東証1部の2,168社、2部の481社、マザーズの324社、ジャスダックの700社に遠く及びません(*5)。 ジャスダックはスタンダードとグロースの総計です。以下、同じです。

そして2020年5月29日現在の市場別の株式時価総額は次のとおりです(*6)。

取引市場 金額
東京プロマーケット 69,894百万円
東証1部 590,888,611百万円
東証2部 6,462,223百万円
マザーズ 6,707,725百万円
ジャスダック 9,129,898百万円

東京プロマーケットに上場している企業の時価総額の総額は、東証2部の92分の1という少なさです。

*5:https://www.jpx.co.jp/listing/co/index.html
*6:https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/02.html

4 まとめ~上場メリットを早く得たい経営者向け

東京プロマーケットが、登竜門的な存在になっていることは事実のようです。「格」としては、東証1部や2部はいうに及ばず、ジャスダックやマザーズより「下」と感じている経営者は少なくないでしょう。
そして何より、多額の資金を必要としている若い企業が東京プロマーケットに上場すると、「準備に手間がかかった割に、調達金額が思ったほどではなかった」といった結果に陥るかもしれません。

ただ、格よりも「実」を重視していたり、上場企業が得られるメリットを早く獲得したいと考えたりしている企業には、東京プロマーケットは魅力的な市場でしょう。
「ジャスダックはまだ遠い。でも上場したい」と考えている経営者は、東京プロマーケットを検討してみてはいかがでしょうか。

PLEASE SHARE

PAGE TOP

MENU

SCROLL

PAGE TOP

LOADING

Please turn your device.
M&A Service CONTACT