「海外の企業やイベントがよく日本のアニメに関わるようになったけど、実際はどこまでグローバル化しているの?」「海外から日本のアニメ業界に参入している企業を知りたい」などと疑問に思っていませんか。現在の日本のアニメ市場はグローバル化が進んでおり、関連する海外企業も話題になっています。
今回は日本のアニメ業界の海外企業の関わりを知りたい人のために、参入している主な海外企業を10社紹介します。アニメのグローバル化が国内の業界をどのように変えるかも考察するので、読めば国内アニメ市場の変化をつかめるでしょう。
1.日本のアニメ業界に関わる海外企業10選
現在の日本では、海外企業の動画配信サービスなどでアニメ作品の放送が決まったり、外国企業が制作に関わったりする例が増えています。該当する企業から10社の代表例をまとめました。
(1)Netflix
Netflixはアメリカの動画配信サービスで、世界190カ国で配信中です。会員数は全世界で1億人以上を誇り、日本でも2015年に配信スタートしています。話題の『鬼滅の刃』をはじめ、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』など国内の名作を数多くそろえています。
アニメを楽しむプラットフォームとしても、幅広い世代が自由に楽しめるラインナップなので注目です。2017年に独自のアニメイベントを開催し話題になった他、2020年からは日本のクリエイターと提携しオリジナルアニメを企画しています。
(2)Amazon
Amazonはアメリカを拠点にした世界トップクラスのネットショップです。アニメ作品は「Amazonプライム」という動画配信サービスで視聴可能です。月額325円という価格で動画作品を見放題なので、心のよりどころとしている人も多いでしょう。
対象作品となる国内アニメは少ない状況ですが、『ドラゴンボール』や『イナズマイレブン』など、子どもから大人まで楽しめる人気作品を視聴できます。
(3)Hulu
Huluは、2008年に登場したアメリカの動画配信サービスで、2011年に日本進出を果たしました。3年後には日本テレビが子会社化しており、同局でもHuluの宣伝を見ることがあるでしょう。
国内外の数多くのテレビアニメやドラマを放送中ドラマを放送中です。国内アニメでは『鋼の錬金術師』『それいけ! アンパンマン』『進撃の巨人』などを楽しめます。
(4)BiliBili
BiliBiliは、中国の動画共有サイトです。画面上にコメントを流せる機能から中国版「ニコニコ動画」といえます。2009年のサービス開始以来、アニメ配信にも積極的で、日本作品も多数買い入れています。
国内のアニメ産業とのタイアップに積極的で、日本のアニメ製作委員会への出資を繰り返しています。日本最大級のアニメイベントである「AnimeJapan」への出展もあり、国内エンターテイメント産業において欠かせない存在です。
(5)閲文集団
閲文集団は、中国の大手電子書籍企業です。小説投稿サイトを運営しており、人気が出たら電子書籍化という、国内のライトノベル業界でも定着した流れを展開します。書籍化作品がヒットすればアニメ化にも協力するなど、多くのクリエイターに夢を与えています。
インターネット企業「テンセント」グループの傘下としても有名で、AnimeJapanへの参加など日本での実績も豊富です。AnimeJapanでは同社展開のアニメ作品の人気投票を行い、上位に入れば日本でも放送という動きも見られるなど、日本ファンの取り込みにも意欲を示しています。
(6)Haoliners
Haolinersは、2013年に中国でスタートしたアニメ制作会社で、「絵梦アニメーション」という呼び名もあります。2015年10月には日本支部も設立しています。
2018年8月に日中共同制作である『詩季織々』を公開し話題になりました。他にも『TO BE HEROINE』『銀の墓守り』シリーズなどもHaolinersが制作を手がけています。日本のアニメと遜色ないクオリティに見ごたえを感じる人も多いでしょう。
(7)マンガプロダクションズ
マンガプロダクションズは、サウジアラビアのアニメ制作会社です。2017年11月16日に東映アニメーション株式会社と提携を発表して以来、日本でも話題になり始めました。
提携開始当初は『キコリと宝物』という短編アニメを公開している他、2019年には自社から日本へのアニメ輸出の動きを本格化させると発表しています。
日本語を聞きながら、イスラム文化の一端を味わえる貴重な機会を届けてくれる会社として、今後も要注目です。
(8)クランチロール
クランチロールは、アメリカ・サンフランシスコにある大手アニメ配信会社です。日本のアニメやマンガをWebで配信しており、無料会員だけで全世界5000万人を抱えています。
日本で放送実績のあるアニメの買い入れを行っていましたが、近年はタカハシヒロユキ氏によるWebマンガ『ハイパーソニックミュージッククラプ』を2015年に公開して以降、日本人クリエイターが関わるオリジナルアニメも話題です。
「クランチロールアニメアワード」という賞も設立しており、2019年にはサイエンスSARU制作の『DEVILMAN crybaby』が最優秀作品賞を受賞しました。
(9)ファニメーション
1994年にアメリカ・テキサス州で活動開始しており、日本のアニメ作品をアメリカへ輸入するビジネスを主に展開しています。
2017年にソニー・ピクチャーズ・テレビジョンから買収を受け、日本でも知名度が上がりはじめました。
以前からファニメーションでは『ワンピース』や『エヴァンゲリオン』シリーズをアメリカなどで放映していましたが、ソニー傘下に入ったことで、今後はオリジナルアニメなどの新展開にも期待したいところです。
(10)マンガ・エンターテインメント
マンガ・エンターテインメントは、イギリスで日本アニメビジネスを手がける会社です。2019年にはファニメーションの子会社化を受けています。ファニメーションもソニーグループに入っており、マンガ・エンターテインメントでも日本との結びつきがこれから強くなりそうです。
これまで『進撃の巨人』『はたらく魔王さま!』など、ライトノベルや漫画が原作のアニメの放映権を多く持っています。
2.日本アニメの認知度が海外で上昇中
近年は日本のアニメ産業の盛り上がりが、海外にも及んでいます。日本のアニメビジネスがどのように海外と関係しているかを3つのポイントに分けて解説します。
(1)海外でも国内のアニメ市場規模が拡大中
近年は海外の多くの国でも、日本のアニメ作品を見られるようになっており、国内のアニメ市場規模が海外まで広がっていることを物語っています。
2013年から国内アニメの市場規模が拡大しており、2018年には海外展開の市場規模が1兆円を超えました。同年は海外関連のビジネスが市場規模は全体の半分を占めており、本格的なグローバル化を象徴しています。
(2)2017年「Netflixアニメスレート」開催
2017年にNetflixは、自社主催のアニメイベント「アニメスレート」を開催しました。開催時点で500を超えるアニメ作品を配信しており、イベントでは『キャッスルヴァニア』『リラックマとカオルさん』といったオリジナル作品を宣伝しています。
Netflixはイベントやメディアを通してアニメ部門への注力をアピールしており、今後の動向に注目する人も多いでしょう。完成度の高い作品が多い日本アニメを、人気の動画配信プラットフォームで手軽に見られることで、世界中のアニメファンのニーズに適っています。
(3)シンガポールでは「C3AFA」で日本のアニメが話題に
「C3AFA」は、シンガポールで開催の東南アジア最大級のアニメフェスです。日本からもアーティストや声優が数多く参加するなど、国内のアニメ産業を世界にアピールできる貴重な機会として注目を受けています。
イベントではアニメソングのライブや、「AFAフィルムフェスティバル」という上映イベントなど、ボリュームにあふれたサービスを体感できます。
(4)日本企業による海外アニメ・マンガ企業買収が増えている
現在では海外企業による日本のアニメビジネスへの参入が目立ちますが、日本からも海外のアニメ企業を買収する流れができています。
たとえばソニーグループは、2005年に子会社であるアニプレックスのアメリカ法人を設立しました。以降もドイツやオーストラリアなど進出先を増やしています。
小学館・集英社グループも2009年にフランスのアニメ流通企業である「KAZE」を買収するなど、国内のアニメビジネスが海外を取り込む例を多く見られます。
3.海外企業参入による日本アニメへの影響
日本のアニメ産業が海外との関わりを強めていることで、新しい影響を受けているという指摘も見られます。考えられるポイントを3つにまとめました。
(1)アニメ制作現場の負担軽減
海外企業との提携は、日本のアニメ制作現場の労働環境を変えるかもしれません。アニメのグローバル化により、特にクリエイターの負担軽減に期待できます。
日本の制作現場において、クリエイターの安月給かつ重労働という労働環境が問題です。しかし海外のアニメ制作現場では残業代の保証や労働時間の管理などを徹底する動きが目立ちます。絵コンテやシナリオなどの役割分担も日本よりはっきりと分ける傾向のようです。
海外の提携先の方針により、クリエイターの働き方も変わる可能性を想定できます。
(2)日本のアニメの知名度がさらに上昇する可能性
Netflixやbilibiliなどの動画コンテンツの活動により、日本のアニメの知名度が世界的にアップする可能性があります。
人気の動画配信プラットフォームは世界中の多くの場所からアクセス可能です。日本のアニメ配信が決まれば、Netflixなどを通じて世界中に映像が届くことが確定します。
NetflixやBiliBiliなど多くのプラットフォームで配信できれば、日本のアニメの魅力が伝わりやすくなるでしょう。日本人にとっては海外旅行中も日本のアニメを楽しむ手段になりえます。
(3)アニメの制作形態も変わる
海外からの影響を受ければ、日本におけるアニメの制作形態も変わるかもしれません。従来の日本のアニメは、コマごとに絵を描くスタイルが主流です。画のつながりをスムーズに映すなどハイクオリティをアピールできますが、手間がかかりすぎて重労働というデメリットがあります。
海外ではフルCGアニメが増加中で、手書きより手間がかからずローコストというメリットを秘めています。グローバル化でフルCGが主流になれば、制作時間を縮めながら質に優れたアニメを生み出せる可能性があります。
4.まとめ
日本のアニメ産業のグローバル化により、海外からの影響を受けた結果、国内の常識も変わりつつあります。Netflixのような動画配信を通じて世界に届き、制作やビジネスの形態も海外からの影響で変化が起きるかもしれません。
現在では海外の人々が日本のアニメを好むケースも多く見られるため、日本のアニメ産業も世界中に魅力を届けるビジネス戦略を想定すべきでしょう。今後のグローバル化で、日本と海外のアニメビジネスの間で起きる新しい化学反応に注目です。
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