M&A

M&Aにおける株主の役割と影響力とは

事業譲渡や合併などのM&Aにおいて、株主はM&A成否のカギを握る存在です。

株主は持ち株比率に応じて会社への影響力が強くなるため、万が一、主要株主がM&Aに反対すれば、スムーズなM&Aの実施が困難になります。

今回の記事では、M&Aにおける株主の役割と影響力、およびM&Aを成功に導くための株主対策について解説します。

1.そもそも株主とは

経営者が会社を大きくしていくうえで、必要な資金を調達するには、銀行からの借り入るほかに、「出資」という方法があります。

会社に出資して、代わりに株式を取得した人が「株主」です。

株主が出資した資本は、銀行からの借入と違って返済する必要がありません。

つまり、株主は出資した会社の事業の理解者として、また、必要な資本を提供する支援者として、会社の経営に参加するメンバーのひとりなのです。

株主が会社を経営する参加メンバーのひとりであるからこそ、会社側は自社の経営や人事にかかわる重要事項を決定するための「株主総会」を開催する必要があります。

2.持ち株比率に応じて株主が行使できる権利

株主には、自益権と共益権という2つの権利があります。

自益権・・・会社から配当金など経済的な利益を得る権利

共益権・・・会社の重要な意思決定に参加、監督して経営を是正する権利

2つの権利をさらに細分化すると、たとえば、配当を受け取る「利益配当請求権」や、会社の剰余金から配当の受け取りを可能とする「剰余金配当請求権」は自益権に、株主総会における議決権は共益権に該当します。

株主は、持ち株比率に応じて、以下のように行使できる権利が増えます。

持ち株比率 株主が行使できる権利
1株以上 議事録閲覧権、株主代表訴訟
1% 株主提案権
3%以上 株主総会の招集請求権、会社帳簿の閲覧および謄写請求権
3分の1超 株主総会の特別決議を単独で否決できる権利
2分の1超 株主総会の普通決議を単独で可決する権利
3分の2超 株主総会の特別決議を単独で可決する権利

3.M&Aにおいて株主総会の議決が必要なケース

M&Aにはさまざまなスキームがありますが、事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転に関しては、会社の経営や組織に大きな影響を与えるため、譲渡側は原則、譲受側は例外的に株主総会の「特別決議」が要求されます(会社法第795条1項)。

株主総会の特別決議が必要となるケースは、以下のとおりです。

  • すべての事業を譲渡する(譲渡側)
  • 子会社株式の全部または一部を譲渡する(譲渡側)
  • 他社の事業をすべて譲受する(譲受側)

3分の1超の持ち株比率がある株主は、単独でM&Aの成立を否決することができ、持ち株比率が3分の2以上になれば、単独でM&Aの成立を可決できるようになります。

したがって、M&Aを推し進めたい経営陣は、3分の1超の持ち株比率がある株主を調査して、M&Aへの影響を判断することができます。

4.M&Aにおいて株主総会の議決が不要なケース

すべての事業を譲渡、あるいは譲受する場合は株主総会の特別決議が必要となりますが、以下のケースでは株主総会の承認を省略することができます。

  • 譲渡資産の帳簿価額が譲渡企業の総資産の20%以下(簡易合併)
  • 譲渡する事業が、会社法における「事業の重要な一部の譲渡」に該当しない
  • 譲受企業が譲渡企業の株式を9割以上保有している「特別支配会社」である

上記3つのケースは、存続企業にとって影響が小さいため、手続きを簡素化させ、柔軟な再編を可能とする趣旨で、株主総会の承認が省略可能とされます。

5.株主の反対によりM&Aが不成立となった事例

譲渡側・譲受側ともに影響の大きいM&Aの場合は株、主総会の議決が必要です。

これはすなわち、株主がM&Aに「異議申し立て」を行うことにより、M&Aそのものが不成立となる可能性もあるということに他なりません。

実際に株主総会によって否決され、M&Aが不成立となった事例を見ていきましょう。

(1)東京鋼鐵と大阪製鐵の株式交換のケース(2007年)

東京鋼鐵は、生産・物流の効率化を目的として、株式交換による大阪製鐵の完全子会社化の方針を2006年10月に発表していました。

しかし、これに待ったをかけたのが、東京鋼鐵の主要株主である外資系ファンド「いちごアセットマネジメント」です。

いちごアセットマネジメントは、株式交換比率が東京鋼鐵の株主に不利であるとしてこれに反対、さらに個人株主500人以上から委任状を集め、反対票が議決権の4割以上にのぼったため、株式交換契約は失効となりました。

実際に、大阪製鐵と東京鋼鐵には、時価総額で10倍もの開きがあり、実質的には大阪製鐵による東京鋼鐵の買収と見なされたことが、株主の反対を招いたとされています。

株主交換を行う経営陣同士では合意に至っていたものの、株主総会でM&Aが否決され、破断となったのは、これが日本で初めてのケースです。

(2)HOYAとペンタックスの合併のケース(2007年)

光学ガラス・光学レンズの開発で知られる「HOYA」と、カメラ・光学デバイスの「ペンタックス」は2006年12月21日、経営統合して翌年10月1日付けで合併することで基本合意したと発表しました。

しかし、企業規模で2倍以上、時価総額で18倍もの差がある両社の合併は、ペンタックス株主から対等な合併というよりも実質的な買収と見られ、株主総会で否決されます。

これを受け、HOYAはペンタックスとの統合スキームを合併から、TOB(株式公開買い付け)に切り替えます。

TOBはM&Aスキームの一種であり、買収側があらかじめ期間や株数、価格を提示して、市場外で一括して株式を買い付けることです。

市場を通さないことで、買収側は市場価格よりも若干高い価格を提示して、多くの株主から幅広く申し込みを受け付けます。

株主は買収プレミアムが上乗せされた価格で株式を買い取ってもらえるため、短期間で大きなリターンが得られるというメリットがあります。

一度は株主総会で否決されたHOYAとペンタックスの経営統合ですが、HOYAが統合スキームをTOBに切り替えたことで、株式交換による完全子会社化の道が拓けた形となります。

6.M&Aを成功に導くための株主対策

主要株主が反対したために、M&Aが失敗に終わることも少なくありません。M&Aを成功に導くためには、どのような株主対策を行うべきなのでしょうか?

(1)株主構成の確認

株主の構成は、企業によってさまざまです。

たとえば、オーナー経営者が株式のすべて、あるいは大部分を保有しているパターンもあれば、配偶者、子、兄弟姉妹などの家族や親族、従業員や取引先までも株主となっているパターンもあります。

事前に株主構成を確認しておくことで、M&Aに反対の意見を示しそうな株主を予測できます。

(2)株主ごとの株式保有数・持ち株比率の調査

株主構成の確認と並行して、株主ごとの株式の保有数、持ち株比率の調査も実施しましょう。

上場企業など一定の要件に該当する企業は、有価証券報告書で株主の状況や株式の数を確認します。有価証券報告書は、金融庁のEDINETというサイトで閲覧できます。

https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

また、中小企業などの非上場企業は、会社法第125条により株主名簿の作成が義務付けられています。

作成した株主名簿は本店等に備えておき、株主や債権者から開示を求められた場合は、閲覧や謄写に対応しなければなりません。

これらの方法で、経営者以外の株主や株数が確認でき、M&Aの成否にどの程度影響を与えるかの判断ができます。

(3)「名義株」と「譲渡制限株式」への対策

名義株とは、他人の名義を用いて株式の引受、あるいは取得がなされ、会社の株主名簿に記載されている名義上の株主(名義を貸した株主)と、その株式の実質的な株主(経営者)が異なる株式のことです。

平成2年以前の旧商法では、会社設立に7名以上の発起人が必要だったため、7名に満たない場合は、親族などから名義を借りるといったケースが少なくありませんでした。

M&Aにおいては、譲渡企業に名義株が存在すると、実質的な株主である経営者が名義株を含めて株式を譲渡しようとする際に、名義上の株主が真の株主であることを主張し、譲渡を阻止する、あるいは対価の支払いを要求するなど、さまざまな問題が生じるリスクがあります。

譲渡制限株式とは、文字どおり、譲渡が制限されている株式のことです。

日本の中小企業、とくに家族経営をしている企業に多く、外部の人物が株主になって経営に関与するのを防ぐ目的で活用されています。なお、譲渡制限株式以外の株式を1株も発行していない会社を非公開会社と呼びます。

譲渡制限株式を譲渡するにあたっては、取締役会もしくは株主総会で承認を得たり、株主が株式譲渡承認請求書を会社に提出したりするなどの手続きが増えるため、早い段階で譲渡制限株式の有無を確認しておく必要があります。

7、まとめ

今回の記事では、M&Aにおける株主の役割と影響力、さらにはM&Aをスムーズに進めるための株主対策について解説しました。

株式交換や株式譲渡は言うまでもなく、会社の特定の事業のみを売買する事業譲渡においても、株主の存在や意向はM&Aの成否を左右する重要なカギとなります。

家族経営の中小企業であっても、M&Aを実施する際は必ず株主総会を開き、厳格な手続きのもとで実施することをおすすめします。

パラダイムシフトは、IT領域のM&Aをサポートしてきた豊富な実績があります。

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