M&Aを行う際に、EPSについて気になる方も多いのではないでしょうか?
EPSとは、(Earnings Per Share)の略で1株当たり純利益のことをいいます。言い換えればEPSは、当期純利益を発行株式数で割ったものになります。EPSが高いほど、その企業の収益力は高いとみなすことができる数値になります。
企業の収益力を図るうえでEPSは非常に重要なものですが、M&Aを行うとEPSが減ってしまうと思われている方もいるのではないでしょうか?本当にM&Aを行うとEPSは減ってしまうのでしょうか?
M&AとEPSの関係について事例を交えて説明していきます。
1. EPSの計算方法
この章では、EPSの計算方法について説明をします。M&AとEPSの関係について説明する前に、EPSの計算方法について理解が出来ていないと、EPSとM&Aの関係も理解出来ないのでこの章でEPSの計算方法についてしっかり理解して頂ければと思います。 EPSは、
EPS=当期純利益÷発行株式数
で求めることが出来ます。例えば、
当期純利益が100
発行株式数が10
の場合、EPSは、当期純利益(100)÷発行株式数(10)=10
となります。
非常に簡単な計算式でEPSは求めることが出来ます。
次の章からは、本格的にEPSとM&Aの関係について説明をします。
2. M&Aを行うとEPSが減ってしまうと思われている理由
この章では、M&Aを行うとEPSが減ってしまうと思われている理由について説明をします。
M&Aを行うとEPSが減ってしまうと思われている理由は、M&Aによって合併を行うと、新たに株式を発行することが多いので発行株式数が増えるからEPSが減ってしまうと思われているからです。前の章の例で説明をすると、
当期純利益が100
発行株式数が20
の場合、EPSは、当期純利益(100)÷発行株式数(20)=5
というように発行株式数が増えることによってEPSは減ってしまっています。
しかし本当にM&Aを行うとEPSは必ず減ってしまうのでしょうか?
3. M&Aを行なってもEPSは増える場合もある
M&Aを行うとEPSが必ず減ってしまうというのは結論からいうと間違いです。確かにM&Aを行うことによって発行株式総数は増えます。しかし、発行株式数も増えますが当期純利益も増えることが一般的です。M&A対象企業が十分な利益を上げていれば、EPSは減少どころかむしろ増加する可能性もあります。
そこで皆さん疑問に思うはずです。EPSが増加もしくは減少する分かれ目は一体どこなのだろうかと。
M&Aを行うことによってEPSが増加もしくは減少する分かれ目について次の章で説明をします。
4. M&Aを行うことにEPSの増減の境目
この章では、M&Aを行うことによってEPSが増えるのかもしくは減ってしまうのかの境目について説明をします。具体例を出して説明をします。
A社
発行株式数:100株
当期純利益:1,000
EPS:10
B社
発行株式数:100株
当期純利益:3,000
EPS:30
A社がB社を吸収合併し、合併の対価としてB社株主にA社の株式を割り当てるものとし、
その際のA社とB社の株式の交換比率はとして、
(1) 1:4
(2) 1:3
(3) 1:2
の場合で見ていきましょう。(のれん代などの諸費用は考慮しません。)
(1) 株式交換比率が1;4の場合
最初のケースは株式交換比率が1:4の場合です。新A社は、株式を400株発行するので
発行株式数:500株
当期純利益:4,000
EPS:8
となります。今回のケースの場合、株式交換比率が1:4の場合は、EPSは減ってしまうことになります。
(2) 株式交換比率が1:3の場合
最初のケースは株式交換比率が1:3の場合です。新A社は、株式を300株発行するので
発行株式数:400株
当期純利益:4,000
EPS:10
となります。今回のケースの場合、株式交換比率が1:3の場合は、EPSは変わらないことになります。
(3) 株式交換比率が1:2の場合
最初のケースは株式交換比率が1:2の場合です。新A社は、株式を200株発行するので
発行株式数:300株
当期純利益:4,000
EPS:13.33
となります。今回のケースの場合、株式交換比率が1:2の場合は、EPSは増えることになります。
このようにM&Aの対象企業の利益率によって、M&A後のEPSは大きく変わっていくことになります。決してM&Aを行うことによって絶対にEPSが減ってしまうということではないのです。
5. まとめ
今回は、M&AとEPSの関係について説明をしました。
何故かM&Aを行うとEPSが減ってしまうと考えている方が多いようですが決してそんなことはありません。M&A後のEPSはM&A対象企業の財務状況や株式交換比率によって変わってきます。特に上場企業の場合、EPSは投資家にとって投資をするか否かの大きな判断材料になるため、M&Aを行うことによってEPSが少なくなってしまうことを避けたい企業も多いと思います。
今回の説明では、単純化のため、のれん代などの諸費用を考慮していませんが、実際にはこれらの費用についても考慮の上で決定する必要があります。そのため、正確にEPSへの影響を検討する場合は、是非M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
この記事を参考にEPSの理解を深めて頂ければ幸いです。