M&A

アニメ制作会社のM&A事例紹介

2010年代後半から、日本のアニメーション業界は再びピークを迎えています。

記憶に新しいところでは、2016年に新海誠監督作品『君の名は。』が興行収入250億円を突破、同年の劇場アニメの興収は633億円に上ります。

アニメ業界は2007年のピークを境に下がり続けていたものの、2012年から回復基調にあります。

実際に、アニメ関係者やコアユーザーでなくとも、10年前に比べて日本のアニメ産業が大きく変化していることは、昨今のアニメ関連コンテンツの高い人気や深夜アニメ番組の増加により、肌感覚で感じていることではないでしょうか?

それを裏付けるように、昨今はアニメ制作会社のM&A事例が増加傾向にあります。

今回はアニメ制作会社のM&A事例が増加している背景を解説、また国内外のアニメ制作会社のM&A事例もご紹介します。

1.アニメ制作会社のM&Aが増加している背景

帝国データバンクの「アニメ制作業界動向調査(2019年)」によると、2018年のアニメ制作企業の収入高(売上高)の合計は2,131億7300万円、1社あたりの平均収入高は8億4300万円(前年比8.1%増)で、ピーク時の2007年の9割に迫る水準まで上昇しているようです。

昨今、アニメ制作会社のM&Aが増加している背景には、取りも直さず、近年のアニメーション作品の本数の増加があります。

テレビアニメの制作本数は、2017年に340本、18年に332本と年間で300本を超える供給過剰で、アニメ制作の現場は深刻な人材不足に悩まされています。

アニメ制作会社のM&Aの話に戻すと、買収する側の思惑としては、スタッフの囲い込みによって人材不足を解消、制作ラインを増やそうと画策します。

事業売却する側も、昨今のアニメーション業界を取り巻く、コストの拡大や投資増大で経営が圧迫されているという事情があり、事業を継続するには大手の傘下に入れば、収支のバランス改善が見込めるという思惑があります。

一方で、異業種・新興企業のアニメ業界への進出も増えており、これはアニメが日本国内のみならず、世界的に「金脈」として見られている側面もあるでしょう。

増加する制作ニーズに対応するために、アニメ制作会社の「奪い合い」とも言える様相が、現在のアニメ制作会社のM&Aが増加している背景と言えます。

2.国内外のアニメ制作会社のM&A事例紹介

アニメ制作会社が関わるM&Aは、日本国内に止まらず、アジア圏や欧米圏など海外にも波及しています。

ここでは、国内外の主要アニメ制作会社のM&A事例をご紹介します。

(1)「サンライズ」による「ジーベック」のアニメ制作事業の買収

『機動戦士ガンダム』シリーズで知られる大手アニメ制作会社サンライズが、老舗アニメ制作会社であるジーベックを買収した案件は、アニメ関係者を大いに驚かせました。

ジーベックは1995年設立の中核アニメ制作会社で、『機動戦艦ナデシコ』『宇宙戦艦ヤマト2199』といった代表作があり、親会社はサンライズと並ぶ業界最大手の株式会社IGポートです。

2019年春にサンライズがジーベックの制作事業部門を買収、100%出資の新会社SUNRISE BEYOND(サンライズビヨンド)に引き継がれました。

この買収案件がアニメ関係者を驚かせたポイントは、IGポートが、サンライズという系列の違う同業ライバル社へ、主要制作部門をまるごと譲渡したことです。

買収する側のサンライズは、増加する制作ニーズに対応するため、一からアニメーターを集めて制作ラインを増やすよりも、実績のある制作会社を買収すれば、コストカットや制作までのショートカットが可能となります。

一方のIGポートは、制作部門の赤字が長期化していることや、収益分配では赤字をカバーしきれないことから、サンライズの主導で経営体質の強化を図ることが事業と雇用を継続させる最善の方法と判断した結果、事業売却に至ります。

(2)「Klab」と「ぴえろ」の資本業務提携

現在、日本国内のソーシャルゲーム市場は拡大を続けており、大手制作会社が90年代や00年代のアニメとコラボレーションしたコアユーザー向けの作品を配信、ファンの囲い込みを図っています。

株式会社Klabは携帯電話・スマートフォン向けソーシャルゲーム事業を展開する情報通信事業会社、株式会社ぴえろは1979設立以降、『うる星やつら』や『幽遊白書』といったTVアニメをなど、日本のアニメ事業の中核を担ってきた老舗アニメ制作会社です。

2020年4月にKlabとぴえろは資本業務提携契約を締結、映像コンテンツのモバイルゲーム化や、ゲームを含めた各種グッズ・イベント展開など、世界中のアニメ・ゲームファンが楽しめるコンテンツ作りを強化する目的があります。

(3)「ブシロード」「KADOKAWA」と「キネマシトラス」の資本業務提携

出版事業、映像事業、ウェブサービス事業などを行うKADOKAWA、カードゲーム、ゲームソフト、キャラグッズの開発・制作・販売を行うブシロードが共同で、アニメ制作会社のキネマシトラスと包括的業務提携を結んだ案件です。

大手2社がアニメ事業を強化することになった今般の業務資本提携は、「世界屈指のアニメ制作同盟」と評されています。

キネマストラスは2008年創設の比較的新しいアニメ制作会社で、近年では『メイドインアビス』『盾の勇者の成り上がり』など、若年層を中心に世界的な評価の高いアニメ作品を手がけています。

同社は第三者割当増資により、KADOKAWAとブシロードの両者が、合計で株式の63.6%を取得しています。

昨今のアニメ関連の買収案件で注目すべきポイントは、「IP(知的財産)」です。

IPとは、自社商品のデザインや仕様、ノウハウといった知的財産の価値を認めることで、そのような知的財産をライセンスとして販売するIPビジネスというビジネスモデルがあります。

出資した2社は、今回の資本提携を機に、世界的なIP を安定的に生み出せる協力体制を強化するとしています。

(4)「ソニー」による米「シルバーゲート・メディア」の買収

アニメ制作会社の買収で目立った大型案件には、ソニーの米子会社を通じた子ども向けアニメ制作会社の米シルバーゲート・メディアの買収です。

2019年12月、ソニーの米映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントは、米番組制作会社「シルバーゲート・メディア」を213億円で買収、中国市場に強いシルバーゲートの買収で、IP(知的財産)の収益化を加速する目論見があります。

シルバーゲート・メディアは未就学児童向けコンテンツの権利を取得して設立され、過去数年にわたって子ども向けのIPを大幅に拡大、収益化してきた会社です。

今回の買収により、ソニーはシルバーゲート・メディアと人気アニメ『すすめ!オクトノーツ』の権利を保有する別会社の49%持ち分や、人気TVシリーズ『ピーターラビット』を制作する会社の31%の持ち分も取得、子ども向けコンテンツ事業の強化を目指します。

ソニーは今後もアニメ事業を拡大していく見通しで、完全子会社で長編アニメ映画を手がけてきたソニー・ピクチャーズ アニメーションが、テレビシリーズにも事業を拡大することを発表しています。

(5)「Bilibili Inc.」と「ファンメディア」の資本業務提携

中国の動画共有サイト「ビリビリ動画」運営を中心に、ビデオ、ライブ放送、モバイルゲームなどのコンテンツを提供するBilibili Inc.(以下、ビリビリ)が、複数のアニメ制作会社を子会社に持つ、持株会社のファンメディアへ投資実行を行った案件をご紹介します。

現在の中国の動画市場は競争が激化、ビリビリを含めた数社で動画市場の覇権を争っている状況です。

ビリビリ動画は、ユーザーの8割近くが18~35歳の若いユーザー層で占められており、この年齢層はアニメへの関心が高く、同社は日本のアニメの版権取得や国内のアニメ製作委員会に出資を行うなど、アニメコンテンツの拡充を積極的に進めていました。

その中で、ビリビリは中国でも人気の高かったアニメ作品の制作実績があり、クオリティーの高さにも定評があるファンメディアと、2018年8月に資本業務提携を行います。

両社はM&Aアドバイザリーを手がけるパラダイムシフトが仲介を行い、今回の協業に至りました。

パラダイムシフトのM&Aレポートはこちら https://paradigm-shift.co.jp/news/97/detail

3.まとめ

近年増加傾向にある、アニメ制作会社のM&A事例をご紹介しました。

2010年代後半から、ピーク時に迫る勢いで拡大している日本のアニメ産業は、「制作ニーズの増加」と「アニメ制作環境の改善」という背景があり、また「海外への進出」という要素が加わって、異業種や海外資本が次々と参入、複雑化の様相を呈しています。

弊社パラダイムシフトが仲介を行った「Bilibili Inc.」と「ファンメディア」の資本業務提携の案件も、中国におけるアニメコンテンツの需要の高まりと、高良質なアニメコンテンツを世界へ提供するという共通の目標があったからこそ、成立したと考えています。

2020年代に入ってからも、この傾向は続くと予想されます。どのようなアニメ作品が生み出されるのか、また、課題として挙げられるアニメ制作会社の経営環境と制作スタッフの就業環境がどのようにして改善されていくのか、今後に注目です。

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