M&A

IPO をめざす企業が留意すべき M&A の注意点

スタートアップ企業のゴールとして IPO を検討している企業は、多いと思います。そのような企業でも、成長戦略として、IPO 前にM&A を検討する企業も多くあります。 しかし、いざ M&A を実行しようと思っていても、主幹事証券会社から内部体制の不備や財務上の問題の指摘があったりM&A の作業中に思わぬ事態が発覚し中止に追い込まれたりすることも少なくありません。また、IPO準備期間中に、過去に行なったM&Aについて、主幹事証券会社などから指摘をうけることもありえます。

IPOが目標であるのに過去のM&Aが理由でIPOが実行出来なければ元も子もないため、せっかく取得した事業を手放さざるを得なくなってしまう可能性があります。 そこで今回は、IPO を目指す企業が留意すべき M&Aの注意点について説明します。

1. M&A の失敗率

社会人であるならば一度はM&A という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。 M&A のイメージは、敵対的な企業買収のようなイメージではなく、企業戦略の一環として好意的なイメージに捉えられることも多くなり、近年、M&A は、日本でも非常に盛んになってきていました。 こうした流れもあり、未上場の企業であっても、将来的なIPO のために M&A という成長戦略を選択する企業が多くなってまいりました。M&Aを効果的に行うことにより、 短期間でIPOに必要な企業規模まで成長することが可能だからです。

しかしみなさんは、M&A の成功率がどのくらいであるかご存知でしょうか? M&Aの成功率は高く見積もって50%、低く見積もると30%以下だといわれています。 つまり、M&A のうち約 50%は失敗するものなのです。 なぜ M&Aの成功率が低いかというと、それだけ、別々の企業が合併することの障壁は高いからです。 企業によって、人事制度は違いますし、仕事の進め方も違います。また財務面や経営方針で妥結することも必要である M&A は、成立させることが非常に難しい仕事なのです。

IPO のために M&A を行う会社にとっても、そもそも M&A の成功率が決して高くないという事実を念頭に置いておかなければいけません。IPO に目が行き過ぎて前提である M&Aを急ぎすると、M&Aが失敗することにより、かえってIPOが遠のいてしまう可能性があることをしっかり理解しておきましょう。 M&A は、そもそもIPO のために行うものではなくシナジー効果を得るために行うものです。IPO に気を取られてシナジー効果の期待出来ないM&Aを行わないように注意する必要があるでしょう。

2. M&Aの成否を分けるポイント

この章では、M&Aの成否を分ける代表的なポイント4つについて説明します。これらのポイントは、主幹事証券会社などから指摘を受ける可能性が高い事項でもあるため、よく理解しておく必要があります。それぞれ具体的にみていきましょう。

(1) シナジーが見込める領域であること 

M&A が失敗してしまう理由の1つ目は、シナジー効果が見込めない場合です。シナジー効果が見込めるという合理的な理由がないM&Aについては、後で主幹事証券会社から指摘を受け、最終的に当該事業を手放す必要が生じる可能性があります。結果として、M&A自体がとん挫してしまうおそれがあります。 そのため、M&Aにおいては、失敗防止の観点からも将来のIPOに備える観点からも、なぜ当該事業を買収する必要があるのか、どのようなシナジーを見込めるのかをよく調査し、外部に説明できる状態を作る必要があります。

(2) デューデリジェンス不足

M&A が失敗してしまう理由の2つ目は、デューデリジェンス不足です。デューデリジェンスとは、買収先の企業の経営状況や将来性について調べることをいいます。 デューデリジェンスは、M&A を成功させるうえで必要不可欠なものです。 デューデリジェンスは、専門的な知識が必要なので、会計士などの専門家に依頼することが一般的です。 しかし専門家を雇うと高額な費用が掛かることに難色を示し、M&Aの買い手の企業が自社で行う場合も少なくありません。

ところが、専門家に頼まずに自力でデューデリジェンスを行うと多くのケースで細かい事象について見逃してしまうなどの不具合が起こります。 デューデリジェンスをしっかり行うか行わないかで、M&A の成否は大きく左右されます。 なぜなら、買収対象先企業から見ると、少しでも高値で売却したいので、マイナスポイントになるところは隠すことが多いです。 しかし、M&Aの買い手側の企業としては、このマイナスポイントこそ見つけるべきポイントになります。 M&A実行後に、未払い給料などの簿外債務が見つかる可能性もありますし、優秀な社員の退職が決まっていたことが発覚するリスクがあるからです。

もちろんお互いが信じ合って、デューデリジェンスを行うことが出来れば一番いいのかもしれませんが、ビジネスである以上すべてのことをオープンにすることは不可能だと思います。そのため、限られた情報の中で、精度の高いデューデリジェンスを行うことがM&Aの成功には必要不可欠になります。 また、このようなデューデリジェンスがしっかり行われたM&Aか否かは、主幹事証券会社からのチェックの対象にもなる可能性があります。そのため、将来のIPOに備える観点からも、デューデリジェンスをしっかり行い、外部にも説明可能な程度にデューデリジェンスの過程や結果を記録に残しておくことが重要です。

(3) 買収対象企業の業績が悪化してしまう&コンプライアンス違反

M&A が失敗してしまう理由の3つ目は、買収企業の業績が悪化してしまうことです。 M&Aは、実際に動き始めてから成立するまで数か月から1年以上かかることが一般的です。M&A の成立までの間に買収対象先の業績が悪化してしまい、M&A 自体がとん挫してしまうことがあります。 また M&Aが成立する前に、買収対象の企業のコンプライアンス違反が発覚することがあります。コンプライアンス違反には様々な例がありますが、内部統制体制に問題があったり、個人情報を流出してしまうことなどがあります。 M&Aの作業中に買収対象先の企業に法令違反などのコンプライアンス違反があった場合は、M&Aを成立させることはほぼ不可能になります。また、そのような事業を保有していたことで、IPOが遠のいてしまう可能性もあります。 そのため、買収対象企業のコンプライアンス遵守体制や内部統制システムについてはよくチェックを行い、怪しい点がある場合などは入念な調査を行うことが必要です。

(4) 買収に必要な手続をしっかり行うこと

M&A の実行には、取締役会や株主総会の決議や、債権者保護手続が必要な場合があります。これらの手続は、買い手企業だけでなく、売り手企業でもしっかり取られているかチェックを行う必要があります。企業の内部手続を経ていないと、後でM&Aが取り消されるなどのリーガルリスクを生む可能性があります。また、主幹事証券会社から指摘を受ける可能性もあります。そのため、買い手売り手の双方について、ちゃんと内部手続が取られているかをチェックする必要があり、議事録などにより手続の証跡を残しておく必要があります。

では、M&Aが失敗すると、IPOにどんな影響があるのでしょうか?

3. M&Aがうまくいかないと…

M&Aが成立しないことにより会社の規模がIPO の基準に届かない場合はもとより、M&Aが成立したとしてもIPO に悪影響を与える場合は、多くのケースでありえます。 M&AがIPO に悪影響を与えるケースについていくつか紹介します。

(1) 想定していたシナジー効果を得ることが出来ない場合

M&A の失敗が IPO に影響するケースの1つ目は、M&Aは成立したものの想定していたシナジー効果が得られない場合です。 IPO を行うには、それなりの規模や業績が必要となります。特に IPO を行うために規模の拡大を狙って M&A を実行した場合は、当該M&Aについてシナジー効果が見込めることの合理的な理由を説明できる必要があります。このような説明ができなかったり、想定したシナジー効果を得ることが出来ない場合、IPO の実現は難しくなったり、せっかく買収した事業を手放す必要が生じる場合があります。

(2) コンプライアンス違反が発生した場合

M&Aの失敗が IPOに影響するケースの2つ目は、買収対象先企業がコンプライアンス違反をしてしまった場合です。 最近の日本は、 コンプライアンスにものすごく厳しくなっています。政治家や芸能人が不祥事を起こした時の世間のたたきかたは、容赦ないものになっています。下手すれば再起不能になる可能性があります。 それは企業であっても同じことがいえます。 IPO の際に、コンプライアンス違反が発覚した場合、上場することはまず出来ません。 M&Aの際に、コンプライアンスの不備について発見することが出来ればいいですが、発見することは非常に難しいのが実情だと思います。 月並みにですが、コンプライアンス違反を事前に発見するには、デューデリジェンスをしっかり行うことや日頃から意思の疎通をしっかり取ることに尽きると思います。デューデリジェンスの過程の中で少しでも気になることがあればすぐに対応することが重要です。

(3) M&A実行後の買い手企業の対応(PMI)が雑な場合

M&A の失敗が IPO に影響するケースの3つ目は、M&A実行後の買い手企業の対応(PMI)が雑な場合です。 M&Aは、元々違う会社同士が合併することになるので、経営方針などを融合させることも難しいですが、最もスムーズに融合することが難しいのは人材です。 お互いの会社の人材が協力をしてシナジー効果を生むためには、お互いの会社の役員などが従業員の融和に細心の注意を払ってケアすることが重要です。 人材のケアを怠ると優秀な人材が流出していまい、 当初想定していたシナジー効果を生み出すことが出来なくなってしまう可能性があります。 当初、想定していたシナジー効果を生むことが出来なければ IPO を実行するのに大きな影響が出てしまいます。IPOの実行に大きな影響を与えないためにも買い手企業の対応が雑になる場合は、早い段階で対策を打つことが重要です。

4. まとめ

今回は、IPO をめざす企業が留意すべき M&A の注意点について説明しました。 IPOのために M&A を計画している企業は多いと思います。 しかし、M&A は成功率が5割を切るように非常に難しい作業になります。しっかりとした準備を行わずにM&Aすると、最終目的であるIPOに悪影響を及ぼしたり、事業を手放す必要が生じてしまいます。IPOを考える企業がM&Aを行う場合、入念なデューデリジェンスなど慎重なM&Aが必要です。そして、入念なデューデリジェンス実施するには、専門知識が必要です。

もちろん、デューデリジェンス以外にもM&Aの実行には、専門知識が必要になります。もし自社に専門部隊がいない場合、プロに任せるのも選択肢になります。 M&Aのプロをお探しの際は、IT特化のM&Aアドバイザリー、専門知識を持つコンサルタント、IPOを念頭にしたM&Aにも対応しているパラダイムシフトにいつでもご相談ください。

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